郵便配達夫(1928年)

郵便配達夫

《郵便配達夫》 1928年(昭和3) 油彩,カンヴァス 80.8×65.0cm

作品解説

1928年3月、佐伯は創作の無理がたたり、床に伏せる日が続きました。わずかに恢復に向かった時、偶然に佐伯家を白ひげの豊かな郵便配達夫が訪れ、創作意欲を掻き立てられた佐伯は即座にモデルを依頼します。濃紺の制服に身を包み、椅子に腰かけた郵便配達夫は、左手に火の付いたたばこを持ち、目を見開いて正面を凝視しています。その体は左に大きく傾き、丸みのない直線的なフォルムで固められ、その場で凍りついているかのようです。斜め左上から右下への勢いのある筆の運びは、配達夫の身体のみならず背景の床や壁にも見られ、佐伯の渾身の力を込めた筆跡が心に迫ります。今日、佐伯の代表作として広く知られる《郵便配達夫》。短い画家人生の最後に最高のモデルとして現れたこの配達夫について、妻米子は、後にも先にもその時しか姿を現さず、日が経つにつれてこの人は神様ではなかったかと不思議に思うようになった、と回顧しています。

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