平成22年2月25日 大阪市長会見全文

【『生活保護の現況と今後のセーフティネットのあり方≪大阪市の提案≫』について】

大阪市長の平松でございます。こんにちは。
本日は、厚生労働記者会の皆さんのお許しをいただきまして、ここ厚生労働省会見室をお借りしての、『生活保護の現況と今後のセーフティネットのあり方≪大阪市の提案≫』につきましてご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
一昨年の秋以降でございますが、景気の急速な後退によりまして、大都市を中心に生活保護申請、さらに受給者が急増しております。いまだにとどまる気配はございません。生活保護費の負担は、大阪市だけではなくて全国の地方自治体の財政を大きく圧迫しております。
大阪市では、今年1月現在でございますが、保護受給者が13万8176人、保護世帯数が10万6657世帯、保護率になおしますと51.9パーミル(‰)となっておりまして、この数字は大阪市民の20人に1人が生活保護受給者という、まさに危機的な状況となっております。大阪市では、去年の9月に、私をトップといたしまして、大阪市の全庁体制で『生活保護行政特別調査プロジェクトチーム』を設置いたしまして、真に生活に困窮する方へ適切な保護の実施に努める一方で、生活保護制度をとりまく諸課題について検討してまいりました。大阪市では、平成21年の12月時点で、生活保護受給者数が前年度比15パーセント増という状況でございましたので、この結果、本年度にはおよそ270億円もの予算不足が生じる見込みになってしまっております。まさにこのような危機的ともいえる状況の中で、プロジェクトチームで検討した内容を取りまとめ、緊急的な対応を求める要望を、本日、行わせていただきました。
この要望の内容についてでございますが、お手元に資料をお配りしておりますように、4点ございます。
1点目は『生活保護に至らないための緊急的対策の実施』として、実効ある第二のセーフティネットの構築、そして、働ける方には働ける環境を整備していただきたいということでございます。
2点目は貧困ビジネス事業と言われる事業、この『「貧困ビジネス」事業に対する規制と貧困者支援の強化』として、いわゆる貧困ビジネス事業者に対しまして適切な法規制等の措置を講じるとともに、生活困窮者への自立支援の枠組みの構築などを進めていただきたいということでございます。
3点目として、『住居のない方の保護の実施にあたっての現在地保護の徹底』として、市外から流入された方の生活保護費を特定の自治体が負担することには市民の理解というものが得られません。こうしたことから、国において、より一層、現在地保護、この徹底を図っていただきたいということでございます。
そして、4点目は『緊急的な財源措置』として、今年度の当初予算を上回る補正予算額につきまして、大阪市の場合、先程申しましたように270億円ということになるわけですけど、その予算額を全額国庫負担とするなどの措置を講じること、この4点でございます。
簡単にご説明するために、フリップを用意させていただきました。 まず、生活保護制度というものが、昭和25年以来、ほとんど抜本的な改正というものがされずのまま、今日にきております。で、こちらでございますが、最後のセーフティネットであったはずのものが、失業保険や年金などの社会保障制度が十分に機能しておらず、家族形態や雇用形態などの変化や、失業者などの増加に対応できていないということで、たったひとつの『最後のセーフティネット』であったものが、今や『たったひとつのセーフティネット』になっているんではないですかということを、是非、分かっていただきたいというふうに思います。例えば、派遣切りに遭われた若い方も、本来ですと、ほかに色々な制度があって、生活保護に至るまでに、まだ働けるという体力もあり気力もある方たちが、いきなり垂直的に生活保護に来られているという現状がございます。こうしたことから見ましても、もはや制度疲労を起こしているというふうにはっきり言える制度になっています。で、『大阪市の提案』としましては、ご存知のように、派遣切り、今申しましたように、派遣切りなどに遭って、すぐに生活保護受給者になられている方に対して、働きたいんだけど場所がないんだ、働く場所がないんだ、働き口がないんだという方に対しまして、やむを得ず生活保護に頼っているんだ、そういう方には、やはり、働きたいという意思を持っておられる方に働いていただけるような環境、これを整備しなければならないというふうに思っています。ですから新たなセーフティネットとして、社会保険、高齢者対策、就労支援・雇用創出などの制度が整備されて、生活保護制度がその最後のセーフティネットとしてその機能を果たしているというのが、今後、あるべき姿であろうということです。
そして、先ほど要望の3点目で申しました『現(在)地保護の徹底』ということなんですが、これ、大阪市のほうで調査いたしました。そうしますと、生活保護申請者のおよそ1割が、6カ月以内に大阪市内にやってきた人たちであり、職を求める方が地域間移動をして、移動してきた先でも職がないということで、結局、その先で生活保護を申請するという現象がすでに起きてしまっております。それで、私どもで初めて生活保護の申請をされますと、要件が整っていれば、当然、その受給資格ありという判定になりまして、それが全額国庫負担でないがゆえに、大阪市が4分の1負担という事態を引き起こすことが、大阪市民、善良な納税者である大阪市民にとって何をもたらすのかということを、是非、お考えいただきたい。大阪市で働いて、一生懸命税金を納めて、そして自分たちの生活が楽になるようにと思っているのに、半年前に来た人が生活保護を受けて、そのお金まで我々の税金、大阪市民の税金から出ていくんだという実態が、いかに異常かということを分かっていただきたい。そういった意味から、この地域間不公平の解消ということで、やはり国民がすべて平等に弱い人を助ける制度であると、最後のセーフティネットっていうのはまさにそういうものであろうということから、市民負担の地域間不公平を解消し、平等に負担し、支える仕組みとしての生活保護、それを考えますとやはりどう考えても全額国庫負担であるべしというのが、我々が一番大きい声で言っていることでございます。
「制度疲労」という言葉、何度も使いますけれども、制度疲労を起こしていると言っておかしくないこの制度をいつまでも続けていることによって起きる様々な矛盾、それは勤労意欲であるとか、例えば年金、国民年金をずっと払っていらっしゃる方が6万少し受けておられる横で、生活保護を受けておられる単身世帯で、大阪市の場合で、14万近いお金が支払われる、しかも医療費がかからないという状態が放置されていると。で、そのご本人は働きたいんだけど働き口がないと。これはやはり、是非、正していただきたいということを、我々は『今後のセーフティネットの在り方』としてここに書いておりますように、働ける方は働けるような仕組みっていうものが必要であって、あくまでも生活保護っていうのは最後のセーフティネットとして機能すべきであるということを言っております。今回、去年の9月に立ち上げましたこのプロジェクトチームで、今までは健康福祉局という私どもの部局が担当しておりましたけれども、それにあわせて様々な局が縦割りを廃して情報交換をする中から、具体的な提案というものを、今後も国に対して様々な提案をしていきたいと思っております。それと同時に、今までは1歩、踏み出しにくかった部分でも、その多局間連携をすることによって、その情報はこっちにいけばあるよと、あるいはこの情報についてはこの部局でなんとかできるというようなことまで含めた形で、実態をまず明らかにすることによって、この矛盾が大きく出ていく。さらには、その地域間移動というものを申しましたように、大都市に集中する傾向がございます。これはもう、皆さんよくご存知のとおりです。大都市に集中する傾向があるから、逆に地方でそれだけのケースワーカーの人数もいない、あるいはノウハウもないというところで生活保護を出してしまわないといけないという現状から、どうしてもそれを忌避したいという動きがおきるというものも一定理解できます。そんな中で、是非、抜本改革というものに踏み込んでいただきたいというふうに、私、思っております。ですから、大阪市だけが突出しているというのは、現実の数字はそうなんですけれども、今、すでに、今日お配りしております資料の中のグラフを見ていただいたら分かるんですけれども、政令市を中心としまして、大都市には顕著にこの間、生活保護受給者の数が増え続けているという現状がございますので、この影響を最も過酷に受けている大阪市であるからこそ様々な対応ができ、様々な具体的な提案ができるという立場で、全国の自治体を代表して国に制度の抜本改革を訴えかけていきたいと思います。で、根本的な議論を進めていただくためにも、早急に大阪市を含めた国と地方の協議の場の制定をお願いしてまいりました。今日、山井政務官にもお話をし、さらには民主党のほうでは、青木副幹事長にもお話をし、つい先程小沢幹事長にもお会いしてまいりました。こうした、繰り返して繰り返して、何度でも国に対して、この制度が持つ矛盾点を抜本的に改革していただかないと、本当の意味で、日本が持っているいい点、要するに、働かない人、働けない人は、みんなで助けましょうよという部分と、それと同時に、この制度が持っている本来の姿というものを、もういっぺん、皆さんに訴えていきたいと思っています。
今日、山井政務官から、かなり、この間、我々がずっと言っておりますことに対して、具体的なお返事もいただいた部分もございますので、それを少しご紹介しますと、第2のセーフティネットっていいますか、新たなセーフティネットを拡充してほしいということに対しましては、訓練・生活支援給付というものを3万円から10万円(正しくは「3万人から10万人」です)に引き上げるという方向、それから住宅手当も大幅に要件を緩和したという具体的な形になってあらわれております。で、山井政務官ご自身も、生活保護というものは、最後のセーフティネットであるべきだという信念も語っていただきました。それから無料低額宿泊施設については、時期は未定ですが、法規制を検討しているというふうにはっきりおっしゃっていただけたのが、我々としては非常に心強い思いがしております。山井政務官としても、野放しにしておけないとおっしゃっておりました。それから、現在地主義、現地主義ですね、現在地主義は、去年3月に通達はお出しいただいているんですが、なかなか守られていないという現状がございます。これは徹底するとおっしゃっていただきました。最後の、その270億、私どもにとりましては270億、ここがいちばん苦しいわけではございますけれども、この問題は多くの自治体からすでに悲鳴があがっており、聞いているが、山井政務官にとっても最もハードルが高い。これはやはり、今、国が置かれている財政状況というものだと思いますが、国庫負担について4分の3を変える予定というのは、今のところはないんだけれども、今後、法制化を考えて、国と地方の協議の場について、法制化を考えて、しっかりとその生活保護を、私のほうから、生活保護を具体的なテーマとしたその場を持っていただきたいというふうにお願いした次第でございます。
以上、今日の動きを皆様の前でご説明申し上げました。よろしくお願いいたします。
健康福祉局生活福祉部生活保護担当課長
ちょっと、ご説明いただいた中で、山井政務官のお答えされた訓練・生活支援給付、市長、3万円とおっしゃってましたけれども、3万人から10万人にということでございます。
市長
あっ、ごめんなさい。3万人から10万人。はい。3万人から10万人に。訓練・生活支援給付でございますけれども、その枠を3万人から10万人に拡充したということであり、住宅手当も要件の緩和をしたということでございました。
質疑応答
記者
幹事社から何点か。先程、今、山井政務官は国と地方の協議の場を持つということについては前向きなお考えを。
市長
はい。これは、ですから、生活保護に特定したものではない、従来から言われている国と地域の協議の場というものの法制化であろうと私は思いましたが、その場で具体的に、やはり生活保護のことをしっかりと話していただきたいという私の要望と、その場には大阪市を必ず入れていただきたいという要望をさせていただきました。はい。
記者
確認ですが、小沢幹事長に対してもこの生活保護の問題をお願いされたのですか。
市長
はい。幹事長ご自身がやはり、20人に1人という現実、これを非常に驚いておられるような印象は受けました。で、どうして大阪市がそういうふうな形になったんだろうなあっていうこともおっしゃっておりましたが、この間、ずっと私どもがお願いしていることについては、かなり具体的に、特にこの働ける人は働けるようにっていうのは、例えば、私にはこの仕事が合わないから、今、例えば夜勤で仕事あるんだけれども、行かないで生活保護を受けてるっていうのは、これは、生活保護を受けるべきではないと、私は思うんです。で、私は思うんですが、そういうことと同じトーンで、やっぱり働ける人は、えり好みせず、その職種にこだわらず、まず働いて、自分で何がしかの生活の糧を得て、で、そこで足りない分はその生活保護なりを支給すると。これが本来のあるべき姿であろうというのは、かなり強く今日はおっしゃっていただいたんで、具体的な形に進めば、我々としても、この間、取り組んできた甲斐はあるかなと思っております。はい。
記者
小沢幹事長はこの国と地方の財政負担の割合についてとか、この緊急な財政措置とかについてはどのようにおっしゃってますか。
市長
そこまで時間がなかったのが現状でして。で、確かに、小沢幹事長にお願いして、ずっと今までもお願いしていることでございますし、やはり、当面、確かに各自治体とも一番苦しい部分が、この補正予算をもういっぺん、我々も270億、補正をする訳ですけれども、全国の自治体で生活保護が急増しているところは必ず同じ問題ございますんで、今後も粘り強く国に要望していきたいとは思ってます。
記者
すみません、山井さんとのやりとりなんですけども、今までで、こういうこと、その枠の拡充とか住宅手当の要件緩和とかいうのがあったというふうなことでしたけども、その第2のセーフティネット関係で、今後こうしていきたいとか、そういうお話はありましたでしょうか。
市長
まだ具体的にここをこうするという形では、今日のところはございませんでした。ただ、我々はここに、その新たなセーフティネットと、3種類おかせていただいてます。で、高齢者対策であるとか就業支援・雇用創出、その個々について、今日はお答えいただいた部分がございますから、もう個別具体的な対応策というものにお入りいただいているという感覚は持ちました。で、この3つっていうものは、平成18年の10月に全国知事会と全国市長会から、新たなセーフティネットのあり方っていう要望を国のほうに出しております。で、その要望と同じ延長線上にある話でございますから、是非、もう一度、平成18年の我々のお願いというものをしっかりと読み返していただく。まあ、当時とは政権が代わっておりますけれども、しっかりと読み返していただく中から具体的な施策を打っていただければという思いがございます。
記者
市長、すみません、かねてから要望されている、全額国庫負担の件なんですけれども、今日の段階ではですね、その4分の3、4分の1を変えるということは考えてないとお答えだったんですが、それに対しての感想と、今後も国庫負担っていうのは求めていくおつもりなのかどうか。
市長
これは、大阪の民主党府連の選挙前で、シンポジウムがありました。そのシンポジウムの際に、地域主権とは何かというシンポジウムだったんですが、その際に、民主党大阪府連は、これはやっぱり全額国庫負担であろうというふうに言っていただいた記憶がございます。今の財政状況から、軽々に国としても全額国庫でやろうというふうにおっしゃれない部分は分からないでもありませんが、しかし制度の趣旨、そしてすべての国民が弱い人を支えるということからすると、これは地域間格差があっていいはずはございません。その地域地域によって、生活保護を受ける方たちの人数が違うことによる負担の大小というものがあっていいものではないと思いますんで、私は、市長である限り、ずっとこれを言い続けていきたいというふうに思っております。
記者
市長、すみません、今回初めてですね、国へ、国、民主党さんへのですね、具体的な提言ということで、されましたですけども、実際、提言されてみてのですね、中央の方々が受け止めておられる、その、市長、どういうふうにお感じになられたかなという、その印象をですね、伺いたいんですけども。
市長
はい。山井政務官は、関西のご出身でございますから、その、大阪が今抱えている生活保護の厳しさというものを、肌で感じていただいている方だと思います。で、やはりこれも地域間格差がありすぎる問題ですから、粘り強く国に現実を知っていただくという努力を続けることが大切であろうと思います。以前に、去年のいつごろでしたかね、まいりました時に、厚生労働省の局長の方とお話をした時に、全然、その、実感を伴っておられないというのを、私、感じたことがございましたので、あらゆる具体的なデータを国にお示しすることが、今、日本の国の一地域、あるいは、大都市と言われる場所で起きている現実に触れていただくきっかけになると思って、我々はプロジェクトチームの動きを今後もどんどんどんどん進めていき、で、その都度まとまった提言をですね、具体的な形として国にお伝えするのが役目であろうと。これが、新たな地域主権というもの、地域の思いをしっかりと国に届ける我々の役目でもあるし、そっから、本当に、年金を受けてるよりも生活保護受けたほうが楽やなあみたいな、そういう考え方が起こらないような国の形をつくっていただきたいというふうに思っております。
記者
市長、今、関西ではかなり生活保護っていうのは大きな問題となっていますが、東京とかですね、なかなか全国、その東京なんかのほうには伝わってないような感じもするんですね。で、今後、国に訴えかけることをされるというんですが、ほかにはですね、例えば他の都市と一緒になって何かをするとかですね、どういうやり方があるんでしょうかね。
市長
ほかにも、随分この問題で苦しんでいるまちはたくさんございます。政令市でいいますと、やはり川崎が多いのかなとも思いますし、私どもで22年度予算の編成で一般会計のうち17%が生活保護に取られてしまうという現状ございますが、例えば大阪市の隣にございます門真っていうまち、門真市の場合は、確か一般会計の10%を超えている状況があります。ですから、もちろん統一行動という形でも色々な問題点を指摘することはできます。それをやっていこうとも思っていますし、今回も、大阪市の提案として出させていただきましたが、まとめた内容につきましては、政令市長会の事務局のほうにもすでにデータをお渡しして、今後、政令市市長会としてどういったことを国に対して要求していくかという参考になればとも思っています。具体的なものを出していくことが、やっぱり一番インパクトが強いんだと思います。特に東京にいらっしゃる、中央にいらっしゃる官僚の方にしても、大阪というまちが、生活保護、それだけ多いのは、乱給、乱用の乱に給と、つまり、のべつまくなしに生活保護が欲しいという人には渡してるんではないかといったようなことをおっしゃって、で、だからそんなに多くても仕方がないんだ、それは地域が被るべきだ、地方が被るべきだみたいなことを、さもおっしゃってるかのような口ぶりをされたことがありまして、私、是非、現場を見に来いと、見に来いじゃない、見に来ていただきたいというふうに申しました。現場でケースワーカーがどれだけしんどい思いをして、毎日、生活保護の申請に来られている方と対応しているか。で、そういったものを見ていただくと、大都市が持っている様々な矛盾、で、過去にそういったことがあったにしても、乱給という問題ですが、過去にそういったことがあったにしても、今、制度として完全に金属疲労っていいますか、制度疲弊、疲労を起こしているものを見直さずして、決して中央の厚生労働省という局がなさねばならない仕事をやっておられるようには見えないということで、声を大にして言い続けていかなければならないと思ってます。一度、東京の市政会館でシンポジウムがございました。生活保護のシンポジウムがございました。で、その際にもこちらでコーディネーターをおやりになってた、むしろ生活保護制度に対しては進歩的な感覚を持っておられたはずの大学教授と、私とが、ちょっと言い合いになるような局面もございました。やはり、一番しんどい思いをしている現場を見るということ自体が、制度を抜本的に変えていく原動力になると思いますので、様々な具体的なものを、私は大阪からデータを集めて持ってきたいと、このように思っています。
記者
今、ケースワーカーの方は、お一人、ガイドラインは80だと思いますが、何ケースぐらい。
市長
はい。私どもは、大阪市独自の方向性といいますか、つまり、高齢者の生活保護を受けておられる方、もう社会で働くにも働けない、しかも収入も年金もない、そういった方たちは、やはり、毎月何回かお会いしてという、その面談の必要性というものが少のうございますんで、しかも、お元気でいらっしゃるかどうかという確認で済む部分もございますから、これは非常に多い数をみてもらってます。西成だけではなく、全員、全部一緒やね?
健康福祉局生活福祉部生活保護担当課長
380です。
市長
380人。1人で380人の高齢者。で、高齢者じゃない、つまりまだ稼動年齢層を上回る人もみてるね?稼動年齢層で切ってたっけ?70人というのは。
健康福祉局生活福祉部生活保護担当課長
65歳未満と以上ということで。
市長
65歳未満の方は70人に1人ということでみてもらってますが、ところが、やっぱり去年からの急激な増え方に、それだけのケースワーカーを配置するという施策が追いついておりません。今、一番たくさん持っている人で、稼動年齢層では国の基準をはるかに上回る170人ぐらいの方を持っているケースワーカーがいます。で、こういう現実に対して、今回、大阪市としては任期付き職員の、任期付き職員でよかったっけ?
健康福祉局生活福祉部生活保護担当課長
はい。
市長
任期付き職員のケースワーカーへの採用ということで、新たに100人を超える人の枠を用意しました。ただ、そういう方たちにこれから来てもらう訳ですけれども、区役所にそれだけのスペースもないという状況になりつつありまして、大変に頭の痛い状況が続いています。
記者
すみません、自治体の格差をなくすうえでもですね、その現在地保護っていうのも重要だと思うんですけども、今回の要望だと徹底を求めるにとどまってらっしゃるんで。国のほうからもその通知を守るようにってだけで、ふわっとしてる感じがするんですが、具体的な何か方策とかがあれば。
市長
例えばですね、これは関西のある放送局が取材して放送してくれた部分でもあるんですけれども、どっから来られたかってのははっきり分かる訳です。例えば、四国のあるまちから来られて、大阪には全然土地勘も何もない、親戚もいない。で、じゃあ、その四国のあるまちからどういう形でいらっしゃったかと。で、そこへ、現地へ取材に行っていただいたら、「大阪へはどうして行くんですか」と聞いてこられたと。How toですね。どういうルートで大阪に行けばいいんですか、どこから乗ってどういうふうにして行けばという経路の問題として受け取ることができる聞かれ方をしたから、自分たちはそこで生活保護の申請だとは思わなかったということになってしまう。で、もちろん、はっきりと、昔、片道切符で地図まで付けて渡したっていうようなケースもあった。その場合は、証拠として残っている部分、地図というものがございますから、これは今日、生活保護担当の課長来てますんで、課長からちょっと具体例を1つ、2つ。つまり、証拠があったケース、証拠があって現地まで赴いたケース。僕から言おうか。つまり、証拠があった場合は、「お宅の市役所で、こういうものをお渡しになりましたよね。で、この人ですよね」っていうので、現地までいっしょに行って、それで現地で生活保護なりを受けていただくということができるんですが。ただ、それをするにしても、13万人生活保護があって、20人に1人という状況で、ケースワーカーの数が限られている、対応しきれないというのが現実問題としてあります。この間、プロジェクトチームをつくったがゆえに、ケースワーカーとは別の部隊で実態把握に努めましたので、これだけのデータを揃えることができましたが、やっぱり国の制度をしっかり、もういっぺん見直していただかないことには、いずれ皆さんのまちにもっていうのが、去年、東京でシンポジウムをやらせていただいた時の私の思いでしたけれども、どこのまちでもいずれ起こりうる状況である、なるがゆえに、国の制度としてもう一度しっかりと考え直していただきたいということを申し上げた次第です。
記者
すみません、地域間格差をですね、何とかというのは、基本的には国の全額負担でやってくれということとイコールと考えてよろしいんですよね。大都市の問題として、人が集まってくるというのはありますよね。あの高度経済成長の時に人が集まって来たというのもありますし、大阪もそれでまちが発展した訳ですから、仕事がないから大都市に人が流れていくっていうのも当然ある話ですよね。その中で格差をなくしていくということは、イコールそれは全額国でみてくれという、そういう主張なんですね、ここは。そういう理解でよろしいんでしょうか。
市長
あのね、地域間格差っていうものよりも、本来この制度っていうものは、憲法25条に保障された文化的で最低限の生活を保障している訳ですから、そこを国がどうみられるのか。そこで、今日、表を、用紙をお付けしてますかね、これ、資料としてお渡ししていますかね、この資料の中のシーソーの部分なんですけど、ここで全国の平均が市民200人に対して3人、これが全国平均です。指定市でいいますと、200人に4.6人になって、大阪が200人に10人になると。これ本来、この市民200人は何人を支えるのかっていうのは、均一でないとおかしい制度であると思っています。ですから、これが、地域間格差がなくなって、国の全額国庫負担であるとするならば、例えば暮らしやすいまちに来られる分には、別に構わないんです。暮らしやすいから来るという部分には、別に大阪市にたくさん来ていただいても構わない。しかし、これを、市の負担が4分の1という形で、ほかのまちから来られた方までもみるということが、善良な納税者にとってどういった気持ちになるかということを考えていただいても分かると思いますけれども、今、ご質問になっておられる趣旨としては、「これは大都市だから我慢すべきことだ」ということですか?
記者
あの、そういう意味じゃ全くないです。地域間格差の問題をおっしゃてるので、要するにそれのねらいは、国が全額を出してくれと言いたいんですねっていうふうに聞いてるんです。
市長
あっ、そうです。
記者
で、「大都市の問題として人が集中するという問題はありますよね」とは別の話で、別に、「我慢してください」とかいう、そういう話ではありません。
市長
はい。ですから、それについてはまさしくそのとおりです。本来あるべき制度の姿っていうのは、まさしく国民で弱い人を支える、国民全体で等しく支えるべきであろう、そのためには全額国庫負担じゃないですかということでございます。申し訳ありません、私、こっちの耳(右耳)が聞こえないんで、どうしてもはっきりと音がとれない部分がありますんで申し訳ございません。
記者
先程の職業訓練の話なんですけども、これは確認ですけど、全国市長会とかが前に言ってたのは、生活保護の受給者を対象に、有期保護というか、その間に集中的に職業訓練をするとかいう話だったと思うんですけども、今回の提案というのは、生活保護に受給する前の人についてということなんですか、それとも両方含むんでしょうか。
市長
両方含める方向性が、私は一番いいと思っています。というのは、すでに受けている方たちも、その対象に入れたいという思いがございますから。これから受ける、受けたいと思っている人も当然そうですし。で、やはりこの拡充という部分ですね、『訓練・生活支援給付』制度、これを3万人から10万人に増やしていただく。でも、10万人で果たして足りるんだろうかっていう思いもございますし、どういった訓練をしていただいたら、長い期間働いていただけるようなスキルを身に付けていただけるのかというのも、これから、これは産業界側の気持ちもあるでしょうし、働きたいという側の気持ちもあるでしょうと。
 

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