平成22年10月20日 大阪市長・神戸市長共同会見全文

【指定都市市長会要望『社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案』を終えて】


<資料>

神戸市長(指定都市市長会会長)
今日はですね、日本の中で政令指定都市というのは19ありますが、この政令指定都市の市長会、市長会でもって、この生活保護制度に関する提案をですね、今日は民主党の幹事長室、そして、この厚生労働省の藤村副大臣はじめ、政務官のほうにお話をさせていただきました。中身について少し触れまして、後ほど詳しくは平松市長からお話をいただきますが、平松市長は政令指定都市の市長会の市民生活部会というのがありまして、そちらの部会長をされておられます。で、主に、今、この生活保護というものが、大変な状況にさしかかっておるという点から、今日の提案をさせていただいておるわけでありまして、考えてみますと、生活保護制度は昭和25年、1950年にできて以来、若干の手直しはありましたけれども、根本的な改正というところには至っておらず、もう我々としては制度疲労を起こしておると言わざるを得ない状況でございます。加えて現況の超高齢化社会を迎えていく中で、高齢者の皆さん方のそうしたセーフティネットとしての役割、さらに、この稼働年齢層におきましても、現状の中でのリーマンショック以降の正規・非正規の労働者の分離というふうな状態の中で、やはりこのセーフティネットの対象に入っていかざるを得ないというふうな現象が、ひいてはこれは今、地方自治体にとって大変大きな財政負担になっておるというところでございまして、こういった現象は、主に大都市で顕著に表れておると言っても過言ではないというふうに思っております。そういう中で、やはりこれからのこのセーフティネットをどうすべきか、これをこの市民生活部会の中で検討をして、平松部会長さんを中心にして、これをまとめをいただいておるところでございます。で、今後ですね、やはり社会保障制度全体の制度のあり方を含めて、国等でこれを協議していかれる際に、今は、例えば地域主権部会では北九州の市長、北橋さんが入っておられますし、それから国と地方の協議の場ということでは、仙台市長が入っていただいておるというようなかたちでもって、この社会保障制度のあり方検討協議会というようなものが仮に発足すれば、その場に私どもは平松市長にお入りをいただきたいというふうに実は考えてございまして、そういった提案も今日、先ほど申しました民主党の幹事長室、及び藤村副大臣にお話を差し上げたところでございます。で、今日はそうしたこの中身について、提案の中身をですね、皆さんのお手元にはいってますか。いっておりましたら、それをご覧いただければいいと思うんですが、かいつまんでですね、平松市長のほうからご説明をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
大阪市長(指定都市市長会市民生活・都市活力部会部会長)
はい、わかりました。今日はありがとうございます。それでは資料として皆様のお手元にお配りしておりますこの生活保護、こちらです。こちらのほうです。『社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案』、これのまず3ページをご覧いただきたいと思います。図が書いてございますけれども、あるべき制度の姿としまして、ボーダーライン層や稼働可能層は、まず生活保護制度に優先する制度として、雇用・労働施策で就労自立し、高齢者については年金制度と整合する生活保障制度を創設するということを提案しております。で、今回提案させていただいた事項には、社会保障制度全般にかかわるもの、主に生活保護制度の改革にかかわるもの、そして地方自治体の取組みに対して国による制度設計が必要なものなどに分かれておりまして、幅広い観点からこの制度を変えていかなければならないという思いがにじみ出たものだと、私は思っております。
次に6ページをご覧いただきたいと思います。これは具体的な内容になるわけですけれども、生活保護制度におきまして、受給者のうち、稼働可能なものについては一義的には就職活動を行い、就労・自立していただくということが原則になっているわけですが、就労できない場合には、集中的かつ強力な就労支援制度をして期間を限定して就労支援を行うこととしております。
それから7ページでございます。で、就労へのインセンティブが働くようにということで、就労収入の一部を自立する際に本人に還付することなどを提案するとともに、一般世帯との均衡を考慮した保護費の見直し、これを要請しております。さらに被保護者がボランティアや軽作業、短時間の就労等へ参加することによって社会的自立を促すということにしています。
そして本体の8ページのほうでございますが、生活保護の適正化ということで、図も描かせていただきながらご説明申し上げておりますけれども、我々、生活保護行政を国から受託して事務を行っている地方自治体、基礎自治体としましては、実施機関の権限の無さという、その壁にぶつかっております。その権限強化として、資産調査等への調査先の回答義務、不正受給に関する調査、返還金の差し引き等が行えるように、これは生活保護法の改正案というかたちで提案をさせていただきました。
次に10ページのほう、ご覧いただきます。ごめんなさい、9ページです。生活保護費のおよそ半分を占めるのが医療扶助でございます。やはり、この医療費について適正化を図りたいということで、医療制度や生活扶助の考え方について、是非、国に整理をしていただきたいというふうにお願いを申し上げました。医療機関に対する指導・監査等を総体的に行う国機関の設置でありますとか、医療費の一部自己負担の導入などを提案しております。
そして、10ページです。生活保護費の全額負担、これは前からずっと国に対して申し上げております。本来、ナショナルミニマムであるものを、地方が4分の1負担というかたちになっていること自体、おかしいのではないかという声を上げてきているわけでございますが、一気にこの制度を全額国庫負担にいけないとするにしても、大前提としてそれを認めたうえで、リーマンショック以降の不況による生活保護世帯の増加、これはもう全国的な問題であると、大阪市が一番多くの受給世帯、受給人員、人数、それを抱えているわけでございますけれども、周辺市、あるいは政令市ともに、この間の不況のせいと、さらには派遣切り、雇い止め、非正規雇用、あらゆるものが一気に生活保護になだれ込んできているという状況がございます。で、そんな中で、是非、国による、この全国的に増加している部分について、国による財源措置を行っていただきたい。大都市に負担が集中しております。これは、職を失くした人が、大都市に行けばなんとかなるんではないかというかたちで来られて、結局、大都市とて職が無いという状況は変わりないわけですから、そのまま生活保護申請に来られる。そういったことから、地域間の不公平というものが現在存在しております。ですから、制度改革がなされるまでは、少なくとも、居住地不定者にかかる生活保護費は全額国庫負担としていただきたいというお願いをしてまいりました。
自立の促進、自立の助長をより促進するための制度設計、さらには生活保護の適正化を図るために、生活保護法等、この改正案というかたちでまとめさせていただきました。今、一番ここを触っていただけると、我々、生活保護行政をやっている基礎自治体にとっては、新たな展開、あるいはさらに不正受給の問題等も防げるのではないかという思いから、条文まで踏み込んだかたちで書かせていただいたものです。これを今朝は民主党の企業団体対策委員長の山根委員長、そして、先ほど厚生労働省副大臣と政務官にお渡しし、ご説明申し上げました。以上です。

質疑応答
記者
改正案からまず質問させていただきます。先ほど副大臣、政務官にこのご提案を説明されましたけれども、副大臣、政務官からはどのような考えが示されたでしょうか。
神戸市長
まずはですね、こういった現状の中における社会保障制度としての生活保護制度の抱えておる問題点というものは、十分ご認識があるということは私どもも感じましたが、その中でやはり、先ほど平松市長からお話ありましたように、当面のですね、リーマンショック以後の、この実際に急増しておる、この生活保護世帯に対する国の手当、あるいはこの居住地不定の方の生活保護に対する国の支援というふうな点についても触れさせていただいたところ、第2のセーフティネットとも言うべきものを、現在、次の国会に向けて提案をすべく、今、練っておるんだというお話を頂戴をいたしました。具体的に1つ例を挙げておっしゃいましたのは、例えばですね、高齢者の場合に、先ほど平松市長のほうからお話を申し上げて、表中に「年金制度と整合する生活保障制度」ということで、6ページの上の具体的な制度の内容に出てきておりますが、とにかくこの話についてはですね、この高齢者の実際の受け取られる年金というものについて、やはり、これを実際の生活レベルに合わせたものとして考えていく必要があるんではないかというお話は、先ほどもちょっと触れていただいたわけであります。で、全体として、やはり今の生活保護制度は、持つ本来のセーフティネット対策としてのあり方というものに関して、これからやはり詰めていかなきゃいけないという話は、実は幹事長室に行きました時にも、このお話をいただいたところでございますんで、私どもとしましては、やはりこれを早期にですね、やはり検討に入っていき、そしてこの政令指定都市をはじめとする地方自治体の声がですね、十分に生かされるようにしていっていただく必要があるんだということを、再度、申し上げてきたところであります。
大阪市長
副大臣、それから政務官、さらには、午前中に伺いました山根委員長、ともにすごく前向きにこの問題に取り組んでいただけるという感触を得ました。私どもは政令市、あるいは事務をやっている自治体として、本当に様々な矛盾の中で戦わざるを得ない、あるいは事務をこなさなければならないという中において、日本人の本来置かれているっていうか、本来あったはずの勤勉に労働にいそしむというかたち、さらには、勤勉に労働にいそしんで、なおかつ働けない人を、あるいはハンディキャップを背負った人たちをみんなで支え合おうという制度であったはずでございます。それが、その制度どおりに運営できないという法的な部分、さらには社会全体で、そういった勤労というものに対する価値観みたいなものが、失われてしまいつつあるんではないかという危機感、こういったものを是非、皆さんにもわかっていただくためにも、大阪市、一番受給者が多い大阪市が声をあげさせていただいて、具体例を全部集めます。具体例を全部集めたうえで、我々のやっている中の不十分な部分も表に出しますから、制度を変えないとこの日本は底割れしますよということを言い続けてまいりました。それに過去2回、我々のプロジェクトチームの会議に政令市、あるいは周辺市の皆さんに参加してもらい、こういった意思を、それぞれがお互いの情報交換をしながら、この提案、さらには条文までも踏み込んだかたちでつくらせていただいたことが、重く受け止めていただいたというふうに理解しております。
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
ちょっと補足いたしますと、副大臣のほうから法改正の前に、運用あるいは予算でできるものがないかということも、事務レベルで検討するということも付け加えて言っていただきましたので、補足させていただきます。
大阪市長
どうなんでしょう、矢田市長。これ、こういった要望っていうものは、我々も何度も何度も国に対してやってまいりましたけども、今日ほど踏み込んだ回答って言うか、反応をいただいたことは無かったんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
神戸市長
あのですね、どうも結局、話というのは、今までのような要望ではなくて、我々の実態を踏まえた1つの、もう法の改正にまで踏み込んだ提案ですから、だからそういう点で、やはり相当、出ていただいた皆さん方にはインパクトを与えたんではないかなというふうに私は思いますね。
記者
今、これまでにない踏み込んだ反応が返ってきたというふうにおっしゃってましたけど、もう1回確認ですが、具体的にどういう部分に関して具体的な反応が副大臣から返ってこられたのか、返ってきたのかということを教えてください。
大阪市長
はい。まず私から言わせていただきます。具体的提案というものをさせていただいたということに対して敬意を表したいと、これは副大臣がおっしゃいました。それから、民主党の党としてもプロジェクトチームをつくっている。そして、貧困ビジネス、これは私ども大阪市が中心になって情報を発しましたところ、すべてのメディアの方に協力いただいて、メディアの方々が独自取材をする中から貧困ビジネスの実態というものが浮かび上がってまいりました、囲い屋の存在ですとか。そういったかたちで、その貧困ビジネスをきちんと締め出せるような議員立法を考えているというふうにもおっしゃいましたし、求職者支援制度、これは生活保護にすぐに移行してしまわないような第2のセーフティネット、さっきお話ありましたけれども、それを来年の通常国会でなんとしてでも実現させたいというようなこともおっしゃっておりまして、やはり、さっきも申し上げましたように、この日本という国という感覚で見ないと、このモラルハザードというものが解消できないのではないかという訴えに、大きく呼応していただいたように感じております。
記者
追加で。具体的に、何度も要望重ねてらっしゃる全額国庫負担ということとかですね、リーマンショック後、増加分に関しての国庫負担、それに関してはなんのリアクションもなかったですか。
大阪市長
これは、すぐに「うん」と言えないという、わかってこちらからお願いしている部分もございます。ですから、3段階に分かれておりまして、基本、根本は当然、全額国庫負担でしょうというのは、これはずっと言い続けます。で、言い続けますけれども、そうは言ってもこの間、国の財政状況等も考え、なおかつ一気に増大している数、全国で増えている数を考えても、やはり特異事情として一番この最低でも地域間不公平をなくすために、この居住地不定者にかかる生活保護費、「これは国庫負担をお願いしたい」という思いを強調はしましたが、「わかりました」と言ってもらえるとは思っていませんでしたし、で、それも含めて、すべて今後の国会内で、あるいは政府の中で検討するという方向で、今日の提案に関してはすべて検討しましょうというふうに受け止めていただいたと理解しております。
神戸市長
あのね、過去のね、経緯ちょっと触れますとね、今は国の負担が4分の3で、4分の1、地方になっとるんですが、ある時期に国の負担を3分の2に変えて、3分の1地方に持ってほしいという案件が出てきた時に、これはもう、与野党ともにですね、非常に議論をされたという実は経緯がありまして、また元の4分の3に戻ったということがあるんですが、私たちはもう今、平松市長がおっしゃいましたように、一貫してこれは国が全額を負担するというセーフティネットの体制ではないのかということを言い続けてきたわけでありますんで、だから本来、我々、言い分としては、もうそこにあるわけですね。全額を国がやっぱりきちっと準備すべきじゃないですかと、そういうことでもってやらないと、単に裏の4分の1の分を地方交付税で措置をしとるんだからというふうに言われるわけですが、地方交付税っていうのは、仕組みが非常に、全体の制度の中の地方交付税の制度ですから、何も生活保護だけに焦点あたっているわけじゃないわけで、すべての点を、そういう総合的な財源調整としての役割を果たしているもんですから、やっぱり穴が開いてしまうんですね。だから、そうでなくて、やはりきちっとしたこの国の全額負担というかたちのセーフティネットを張っていただきたいということを申し上げてきてますんで、それと合わして、今、平松市長がおっしゃったように、居住地不定者の問題等々ですね、緊急性を要するものについては、やはり対応を是非お願いしたいということで提案をさせていただいたということですね。
記者
すみません、中身についてちょっと、伺いたいと思います。期間を設定して就労支援ということなんですけれども、これ、1年間、就労支援を強化してやって、で、かつ3年から5年で一回打ち切って更新制にするような、こう、イメージでの制度設計なんでしょうか。で、また、この点について、今日、厚労省側や民主党側から何か反応というのはございますでしょうか。
大阪市長
まず、そこまで細かい点の議論というのは、今日の提案ではございませんでした。ただし、これを決める際にですね、こういったかたちに決める際に、そこのところが大きな議論があった点の1つであります。平成18年全国知事会、全国市長会から出させていただいた新しいセーフティネットの提案の中では、「有期保護」という言葉を使っておりました。これはあたかも、ある一定の期間が過ぎると就労できない人は保護を打ち切りますよというようなかたちで受け取られ、大きな反発を得た経緯がございます。で、今回も一部に前回の政令市長会で、こういった基本方針を認めていただいた後、特に北海道でこのことに対して、札幌市議会で議論になったということも聞いておりますが、そういった点から、これはもともと働ける人、稼働年齢層にある方には働いていただくっていうのを一番基本にしましょうよということから、強力な就労支援策、それをやり、ずるずる続けるのではなく、3年、あるいは5年、1年、いろんな期間があるでしょうけど、その期間をもってプログラムを組む。だからといって、それが終了したからといって、本人に稼働能力があり、あるいは稼働意思もあるという方の場合は、新たなプログラムをつくっていって就労していただくというかたちを、期間を設定した集中的かつ強力な就労支援制度というかたちに言い換えております。ですから、どうしても、これを短く言うと「有期保護」っていう4文字になってしまうと、それに対する反発っていうものが起きるのは承知しておりますし、もともとこの制度っていうのは、弱い人を絶対救うんだっていう制度ですから、弱い人はもう、みんなの力で助け合って救うという制度であるにもかかわらず、制度の不備によって違う方向に使われていることを防ごうというものでございます。一番議論があったところで、当初は私どもも「有期保護」、「一定期間の有期保護」みたいなことを言ってたんですが、言葉は変えました。
記者
すみません、それから、医療費の一部負担とかですね、不正受給した場合の差し引きとか、ちょっと規制にからむ部分が明記されてますけれども、最低生活費からさらに引くことで、最低生活が保障できなくなるという憲法上の問題もあるかと思うんですが、それについてどう整理されたんですか。
大阪市長
はい。これをですね、こちらのほうの生活保護法等改正案を見ていただきたいんですけれども、この改正案のうちの3ページ、下に「医療費の一部自己負担」でございますが、この観点のところに書かせていただいております。最低生活、つまり、受診者としての被保護世帯が自らの受診内容等を把握する動機付け、仕組みづくりが必要、自己負担を導入しても、最低生活は保障する仕組みとする。で、それは、どういう制度にするかっていうのは、これは国にも考えていただきたいと思っております。生活保護費の算出方法が、時代時代によって少しずつ変わっては来ておりますけれども、その最低生活保障というものの考え方自体が、今のままでいいのかとか、あるいはそこにその、今、医療費の問題をクローズアップしてるのは、大阪市だけを見ましても年間1,000億円を超える医療費扶助というものが出ております。具体的には、いくらになった?
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
1,400億ぐらいです。
大阪市長
1,400?医療費やで。
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
1,200億円台です。
大阪市長
1,200億円という、その医療費扶助が出ている。で、今、私どもで具体的に今回のこの取組みっていうのは、あらゆる具体的なものを表に出して問題点を問いかけようということですから、そのレセプトが回ってまいりますよね。そのレセプトをすべて照合する中から、医療機関の中で、いかにも不自然であるというようなレセプトの医療機関の調査に入っております。で、その調査がある程度進展したところで、近畿厚生局と相談をする中で、どういった指導が厚生局としてなせるのか、この医療機関の医療が本当に適切なのかどうか、医者の皆さん、お医者さん、それから法律の専門家、あらゆる方たちに意見を聞いて、表出しできる情報は全部表に出していこうと、こういう決意で取り組んでおります。ですから、いいですか?大阪市の生活保護部長です。
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
今の、おっしゃいました返還金差し引きでございますとか、あるいは医療費の自己負担におきまして、その最低保障ですね、の考え方はどうかというお問い合わせでございました。で、この生活保護法の条文の改正の、今の3ページのところ、もう一度ご覧いただきたいんですけれども、上段の、保護費からの差し引き徴収の条文でございます。80条というところに書いてございますが、下から3行目でございます。「当該被保護者の最低限度の生活の維持に支障のない程度において」という条文も入れておりますし、それから医療費の自己負担につきましても、この第2項のところで、厚生労働大臣は第8条、これは生活保護費の金額でおさめる(正しくは、定める)条文になりますが、おさめる(定める)際には一部負担金の負担を考慮しなければならないということを、条文上考慮させていただいております。
記者
今の質問にも関連するかと思うんですが、資料の9ページの医療機関に対する指導・監査のあり方なんですけれども、現在の地方厚生局を中心とした指導・監査について、どのような問題があって新たな機関を創設しようということをご提言に盛り込んでらっしゃるのか、教えていただけませんか。
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
はい。その点につきまして、私のほうから。先ほど申し上げましたように、今、大阪市でも生活保護受給者の診療が非常に多いところ、あるいはケースワーカーから見て非常に過剰診療があるのではないかという観点からですね、基本的にはあんまり強力な調査権限無い中で、個別の医療機関に対して調査入っております。で、何が一番問題かと言いますと、どこまでが過剰診療で、どこまでが適切な医療行為なのかということを判定する、我々は資格もございません。で、基本的にはいわゆる医療行為につきましては、医療従事者の裁量範囲となっております。例えばそれが、過剰診療、通常であれば2回、3回の診療ですむところを、例えば6回、7回した、それが過剰だとか。あるいは、通常よりも10倍もやってるということが過剰だとか、ということについて、客観的にですね、判定する仕組みも無ければ権限も無いという中で、やはり近畿厚生局、国における厚生局というのは、最終的には医療機関のいわゆる資格の得喪にも関係する部署でございますから、こういった観点も含めて、いわゆる医療全体の観点からですね、何が適正な診療かというところをですね、是非とも、判定する仕組み、あるいはそういう基準づくりをお願いしたいというのが、我々現場の切実な思いでございます。
大阪市長
それで、付け加えますと、レセプト点検を、生活保護にかかるレセプト点検、徹底的にやります。そんな中から30医療機関をまず抽出いたしまして、その30医療機関は、ほとんどの患者が生活保護世帯であると、生活保護受給者であると。で、なおかつその中から今、部長が申しましたような事例が、かなり多く見受けられる医療機関を16に絞り、今、調査を行っている最中でございます。で、この調査を行うにあたりましては、大阪市に所属しておりますドクターも意見を聞いておりますし、大阪府医師会、歯科医師会、薬剤師会、その3つの機関にも協力をお願いをし、弱い人は助ける制度であるという前提のもとで、協力を約束していただいていると。ですから、これから具体的な問題点がいっぱい出てくると思いますんで、それを出てくるたびに、また、メディアの皆様にもご協力をいただければという気持ちでおります。
記者
すみません、1点だけ確認なんですが、今回のご提言に盛り込まれているのは、被保護者に対する指導・監査の国としての強化ということをうたわれているのか、それとも全般的な強化ということについてうたわれているのか。
大阪市長
何に関するですか?
記者
被保護者に関する。
大阪市長
費用負担、費用負担ですか?
記者
被保護者。
大阪市長
被保護者の?
記者
被保護者の診療に関する指導・監査を強化してほしいということなのか。
大阪市長
両方です。
記者
全般的なっていうことですか。
大阪市長
両方です。診察側の問題、それから受診される方の問題、両方ございます。ですから、そういった面も含めて、医療機関だけの調査ではなく、受給者、受診者の聞き取りっていうものも、丁寧にやらせていただいてます。
記者
今のことと関連してなんですけれども、国保と社保で、レセプト点検の関係で書いてありますけど、具体的にどういった仕組みをご提案されてるんでしょうか。
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
具体的な仕組みという制度設計まではまだ至ってないんですが、要は生活保護の場合は、いわゆる健康保険に対する、いわゆる医療保険の仕組みはございません。ですから、全額がいわゆる税金で医療費は支払うという問題がございます。その中で、生活保護受給者も自らの一部負担もいらないということで、ついつい過剰な医療を受けがちである。あるいは医療機関のほうも、そういった観点から、これは間違いなく役所から医療費が入るわけですから、本来であれば、どこまでの例えば検査するのかなというものも、非常に手厚い検査をしたりする。そういったことも散見されますので、ですから、これは医療行為全体の問題ではないかと。で、この間、大阪市のほうでもよく問題にされておりますが、向精神薬等をですね、不当に請求して、それを売買していると。こういったことが必ずしも生活保護の局面だけじゃないと思います。ですから、医療全般にわたりまして、こういうきちっとした適正診療をですね、適正医療のあり方を判定する仕組みがいるのではないかというのが我々の考え方でございます。
記者
すみません、確認なんですけれども、3年から5年の一定期間ごとにあらためて判断するというのは、これ、先ほど北海道(新聞)の方がおっしゃったように、更新制をイメージすればいいんですか。いったん切ってですね、3年から5年でいったん切って、継続するかどうかっていうのを当局が判断してということなのかということと、それは更新制という言い方をしていいのかということと、あと、国のほうとしては、例えば、10分の10で見ている就労支援とかですね、あとケースワーカーを増やしていって就労自立をさせるというような方向性のほうが現実的ではないかという見方もあるようなんですけれども、この件に関しましてはいかがでしょうか。以上です。
大阪市長
まず、一番目。
大阪市健康福祉局生活保護制度担当部長
先ほどの更新制かどうかということなんですけれども、基本的には更新という考え方ではないんですね。ですから、基本的な就労支援をする場合に、そんなにすぐにですね、就職先が見つからないケースが多いですから、そういう意味では1年間タームで最低1回切りましょうよと。で、そのうえで3年なのか、5年なのかはこれからですけれども、そういうこと繰り返してでもですね、3年後、あるいは5年後にまだ就労自立できないというときに、その段階で果たして本当に稼働能力がありながら、真摯な就労活動もやったうえでもまだ就労に結びついていないのかどうかということを、その段階で改めて判定しましょうということでございますから、更新とかいうことは今の時点としては考えておりません。要は、その段階で例えば3年、あるいは5年たった段階でそういう真摯な就労活動をしていないと、稼働能力があるにもかかわらず真摯な就労活動をしていないという状況であれば、最終的には保護の停廃止ということも考えられると。で、ただ、これは現状制度でも同じでございまして、現状でも、真摯な就労活動をしていないケースに実施機関のほうがですね、当初は口頭注意、あるいは文書による注意を行っても、なお改善されない場合は保護の停廃止ができると、そういう状況でございますから、それを漫然となくやるんじゃなくて、1年間のちょっと長いタームやったうえで3年、あるいは5年でもう一度判定しましょうと、こういうふうに考えたとご理解いただきたいと思います。
神戸市長
あのね、この社会保険というものを、根源を考えていただいたらわかるんですけどね、みんなで支え合っとんです、これ。誰かが、特定の人が何か支援したのだったら別ですけども、みんなで支えとんです、これはね。皆さんもそれぞれの出されておる税でもって、あらゆるものが支え合っておるんだという前提に立ってものを考えたら、やはり働ける状態にある人が実際に稼働せずにですね、稼働せずに、それでもって、いろんなかたちの給付を受けるということが、よその目から見てね、これ本当に正しいんかということなんですよ。だから、そこのとこを、やはり原点において物事を判断していただかないと、誰がそしたら、これ金出すんやというところにあるんやということをね、はっきりとね、押さえてください。そうでないとこの問題はね、あいまいなことにね、方向が向くと思いますよ。
 

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