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【報道発表資料】大阪市公正職務審査委員会による勧告及び意見書について

[2010年2月8日]

問い合わせ先:情報公開室 監察部 公正職務担当 (06-6208-7445)

平成22年2月8日 14時30分発表

 本日、大阪市公正職務審査委員会から、大阪市長に対して、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例(以下「条例」という。)第9条第1項の規定に基づき、勧告を行うとともに、条例第24条第1項の規定に基づき、意見を述べましたので、お知らせします。

  1. 住吉区社会福祉協議会における不適正な経理処理(勧告)
  2. 健康福祉局における超過勤務命令の適正化(意見書)

 

(参考)

大阪市公正職務審査委員会(コンプライアンス委員会)

         つじ きみお

委 員 長   辻 公雄  (弁護士)

         ごろかわ やすし 

委員長代理  五郎川 康 (公認会計士)  

         せきね みきお

委   員     関根 幹雄 (弁護士)

 

1. 住吉区社会福祉協議会における不適正な経理処理(勧告)

1 通報概要

 『平成20年度に大阪市住吉区社会福祉協議会(以下「住吉区社協」という。)で行われた事務所改装工事等において、その工事代金に工事とは全く関係のない液晶テレビ等の代金を含み入れている。納入された液晶テレビ等は固定資産として計上をしておらず、また、「寄贈」と記したシールが貼られているが寄贈元が記されていない。住吉区社協は、同区社協の会計顧問(税理士)に対して会計処理に関する申し入れを行い、事実を隠蔽した。そもそもこの工事契約は、入札はおろか相見積も取らずに行われており、大問題である。』

 

2 健康福祉局による調査・報告

 本件について、健康福祉局からは、次のような報告を受けている。

 (1) 調査対象について

 健康福祉局は、本件通報の事実確認のため、住吉区社協その他の関係先に対して調査を行った。

 (2) 住吉区社協について

 住吉区社協は、健康福祉局が監理所管である社会福祉法人で、2名の本市派遣職員、2名の本市OB職員を含む43名の職員が常勤している(平成20年度)。

 平成20年度の事業活動収支計算書によれば、総収入は約4億1,900万円であり、総収入に占める大阪市からの委託料は約1億9,365万円(総収入の46.2%)、補助金等は約9,382万円(総収入の22.4%)となっている。

 (3) 工事契約について

 住吉区社協の経理規程は、「予定価格が250万円を超える金額の工事請負契約を締結する場合は競争入札に付さなければならない」と規定している。

 しかし、本件工事は全体で5,481,000円(税込み金額)であったにも関わらず、競争入札を行わず、特名随意契約により、株式会社A(以下「A」という。)と契約を行っていた。なお、住吉区社協によれば、Aを選定した理由としては、Aを通じて他の2社から比較見積りをとった結果、Aが最安値であったことからAを随意契約の相手方としたとのことである。

 (4) 液晶テレビ等について

 本件通報にある液晶テレビ等の代金が、本件工事代金に含まれていることは健康福祉局としては確認できなかったとのことである。

 また、この液晶テレビ等は、A又はAの担当者Xからの「匿名」の寄付であり、住吉区社協は寄付金収入としての会計処理を行うとともに、寄付台帳、財産目録等に記載して管理する必要があったにも関わらず、これらを行っていなかった。

 (5) 償却資産に係る固定資産税について

 地方税法(昭和25年法律第226号)は、固定資産税の非課税の範囲を定めている。

 社会福祉法人の施設やその事業に供する固定資産はこれに該当すると考えられ、一定の手続きを経て非課税となるが、住吉区社協は、結果として非課税になるため、そもそも申告の必要がないものと誤認し、この液晶テレビ等を含めて従来からこれらの手続きを行っていなかった。

 (6) 経理相談業務等を委嘱している税理士に対する申し入れについて

 住吉区社協は、同区社協が計算サービス業務及び経理相談業務の委嘱契約を締結している税理士(以下「委嘱先税理士」という。)に対して、この液晶テレビ等を寄贈者の希望等に沿って匿名の寄付として受け入れること、液晶テレビ等を固定資産として計上しないことへの同意の申し入れを行った。

 (7) 今後の健康福祉局の対応について

 健康福祉局は、住吉区社協に対して、上記の(3)から(6)までの行為について不適正であると判断し、以下の内容を口頭で改善指導した。

  1. 予定価格250万円を超える工事請負契約を締結する場合には、区社協経理規程に基づき入札を行うこと
  2. 寄付台帳を整備するなど適正な財産管理を行うこと
  3. 固定資産税(償却資産)の申告について、市税事務所の指示に従い、適切に行うこと
  4. 経理処理に関して委嘱先税理士に対する不適切な指示は行わないこと
  5. 法人以外の第三者による再発防止委員会を設置し、原因究明及び再発防止策の策定を行うこと
  6. 決算関係書類の誤りを修正すること

 また、他に不適正な事案が判明した場合には、それらを含めて指摘し、改善させる予定である。

 さらに、住吉区社協の改善への取り組みが確実に履行されるよう、健康福祉局の各事業所管担当が継続的に確認していく予定である。

 これらを時系列で整理すると次のようになる。(健康福祉局からの報告によるもの)

経過

年月日

事項

平成2074

Aから事務機購入に関する見積が取られる。

平成20725

Aから事務所改装工事等に関する見積が取られる。

平成20912

液晶テレビ等について、A又はXから「匿名」での寄付申込書が住吉区社協に提出される。(本委員会はこの点に疑義を有している。)

平成20913

事務所改装工事等が完了し、同日付でAから請求書及び納品書が住吉区社協に提出される。

平成20916

寄付の受入れについて、住吉区社協事務局長が決裁を行う。

平成20918

事務所改装工事等の代金支出決議行われる。

平成2197

本件公益通報が行われる。

平成211013日、15日、21日、22日、27日、29日、112

健康福祉局の住吉区社協及び関係先に対する調査が行われる。

現在も継続中

 

3 判断

 以上の健康福祉局からの報告に対して、検討を行ったところ、次のとおり判断するに至った。

 (1) 本件随意契約の問題点

 住吉区社協は、大阪市の事業関連団体として、大阪市から大阪市立住吉区老人福祉センターの指定管理を受けているほか、大阪市住吉区在宅サービスセンターの施設を所有・運営するなど、社会福祉事業の企画・実施について、大阪市及び住吉区と密接な関係を有している社会福祉法人である。

 そのため、住吉区社協経理規程では、地方自治法及び大阪市契約規則の定めに準じて、予定価格が250万円を超える工事の請負契約については、その性質又は目的が競争入札に適しないものを除き、競争入札によりこれを行わなければならないこととされている。

 本件契約は、住吉区社協が所有し、その事務所が入居する住吉区浅香1丁目所在の住吉区在宅サービスセンターの施設内に設置する地域包括支援センターの改修に伴い、同施設1階及び2階の区社協事務所の①改修工事(事務室間仕切り工事、フロア・カーペット工事、建具・電気コンセント・照明器具工事等)3,690,225円、②電話LAN配線工事1,055,775円、③事務機購入(耐火金庫、引き違い書庫、シュレッダー等)735,000円、合計5,481,000円(いずれも消費税込み)を一括してAに発注したものである。

 工事の請負契約と、物品購入契約は、契約の性質が異なり、事務所の改修工事や電話LAN配線工事と関連の薄い事務機の購入を一括の契約として、同一業者Aに発注していることは、そもそも問題である。

 また、工事の請負契約(①+②)のみを合算しても、4,746,000円(消費税込み)となり、経理規程で定める250万円を超えている。上記工事の性質からして、特殊な技術、工法、特許が必要なものではなく、かつ、火災の復旧工事のように緊急性を有したものでないことから、随意契約の要件を満たしていないことは明白である。

 したがって、住吉区社協が本件契約について、競争入札に付すことなく、一括してAと随意契約を締結したことは、住吉区社協経理規程に違反し、不適正であることは明らかである。契約の締結に際しては、競争性、公正性、透明性を確保するとともに、競争入札によるコスト削減努力を行う必要があることは言うまでもない。

 本件契約について、決裁権限を有する住吉区社協の事務局長(大阪市職員であり、住吉区役所副参事(課長代理級)を併任)は、容易に上記事実を知り得たにもかかわらず、Aとの随意契約締結を承認し、支出決議書に押印している。

 このような契約事務の取扱いは、極めてずさんといわざるを得ないし、3社の比較見積りにより最安値のAを随意契約の相手方として選定したとの住吉区社協の説明も、Aを通じて他の2社から見積書をとっていることからすれば、実質的には競争性が働いているとは言い難い。

 (2) 液晶テレビ等の取扱いについて

 健康福祉局からの報告では、住吉区社協職員及びAの担当者Xに確認したところ、いずれも「寄付」である旨を主張しており(ただし、区社協職員はAからの、XはX自身の寄付としており、寄付者の認識に食い違いがある。)、平成20年9月12日にA又はXから匿名による寄付申込書の提出を受け、9月16日に事務局長が決裁し、テレビの裏側には、「平成20年9月12日寄贈」のシールが貼られていることから、購入の事実は確認できなかったとしている。

 しかしながら、本委員会は、以下の理由から、液晶テレビ等がA又はXからの寄付であったと事実認定するには、合理的な疑いが残ると考える。

 通報者からの情報提供によれば、Xからの聴き取りにより、Aが住吉区社協に提出した見積書のうち、「1階、2階電話LAN配線工事 一式 1,005,500円(税抜き)」の中の、「1F LANケーブル配線工事 一式350,000円」及び「2F LANケーブル配線工事 一式250,000円」に、「SHARP 37型液晶テレビ LC-37EX5 納入金額165,600円」及び「SHARP ハイビジョンレコーダー DV-AC82 納入金額51,400円」の合計217,000円を組み込んで請求しており、代金は収受しているとのことである。

 ところが、健康福祉局のXへの聴取結果によると、当初、「液晶テレビ等については、売買ではなく寄付であることには間違いないが、誰が寄付者かわからない」旨の発言をしていたが、再三確認したところ、「X個人が営業ノルマを達成したことによるAからの表彰の賞品として受領したものを、個人として寄付した」と主張するなど、不自然に供述が変遷している。

 すくなくとも、Aからの寄付として処理した区社協の報告や事務処理と、Aの担当者Xからの個人的な寄付であるというXの供述に食い違いが生じている。

 本来、誰が寄付したかは、寄付申込書をみれば明らかなはずであるが、本委員会がその写しを検分したところ、氏名(代表者)欄に「匿名」とのみ記載され、性別欄は記載が無く、団体名、住所、電話の欄及び希望事項の欄には、斜線が引かれている。

 匿名での寄付の場合であっても、寄付金控除等の税制上の必要から、寄付申込書には、氏名、住所(団体の場合は、団体名、代表者名、本店所在地)その他寄付者を特定する事項を寄付者本人が記載し、「希望事項」の欄に、「匿名を希望」と記載するのが、通常の方法であるにもかかわらず、上記の申込書にはこのような記述がなく異例である。

 この液晶テレビ及びDVDレコーダーは、住吉区社協事務室隣の応接室(2階)に設置され、専ら区社協職員の利用に供されており、地域包括支援センターなど社会福祉事業の用には直接には供されていない。

 区社協の事務局長が寄付収受の決裁を行いながら、社会福祉法人として寄付金収受の会計処理を行わず、寄付台帳の作成、財産目録への記載、固定資産の計上など、寄付収受を受けた際に当然行うべき手続をしていなかったことも不審である。

 さらには、住吉区社協の委嘱先税理士が固定資産計上の必要があることを助言したにもかかわらず、区社協の総務課長(大阪市職員OB)が、FAX送信と電話で、当該税理士に対して、液晶テレビ等の固定資産計上等を行わない処理の同意の申し入れを行ったことが認められ、極めて不自然である。

 以上からすれば、証拠収集の限界もあり、事実認定までは至らないが、実際には、区社協の事務局長、総務課長らの意向により、事務所改修工事を機に同人らが使用する液晶テレビ及びDVDレコーダーを購入することとし、個別に契約すれば使用目的等や購入の必要性についての説明が困難なため、Aと打ち合わせて電話LAN配線工事一式の中に潜り込ませて代金を支払い、取扱いとしては、匿名の寄付として処理することとしたのではないかとの疑いを払拭できない。

 (3) 寄付の適法性について

 上記の疑いとは別に、健康福祉局からの報告を前提とした場合には、さらに重大な疑義が生じる。

 すなわち、改装工事の契約及び実施日時と寄付を受けた日時との時間的関連性などの外形的事実から見るに、液晶テレビ等がA又はその担当者Xからの寄付であるならば、住吉区社協の契約に関し、決裁権限を有している事務局長(市職員)が、本来競争入札に付すべき契約を、経理規程に反してAと特名随意契約を締結する見返りとして、Aから液晶テレビ等の贈与を受け、これを匿名による寄付として処理し、かつ、税理士にも依頼して、固定資産の計上や財産目録への記載を行わず、事実の隠蔽を図ったと受け取られるおそれが生じる。

 こうした住吉区社協の経理処理は不適正にとどまらず、場合によっては、業者との癒着を疑われかねない由々しき事態を招くおそれがあると言わざるを得ない。

 (4) 固定資産の計上等の懈怠、委嘱先税理士への申入れ等について

 住吉区社協は従前から固定資産税(償却資産)の申告を行っておらず、また本件でも、区社協の事務局長が寄付収受の決裁を行いながら、寄付金収入の会計処理、寄付台帳の作成、財産目録の記載、固定資産の計上、固定資産税(償却資産)の申告など、社会福祉法人として当然行うべき手続を行っていなかったことは、明らかに不適正である。

 さらには、住吉区社協の委嘱先税理士が固定資産計上の必要があることを助言したにもかかわらず、区社協の総務課長(大阪市職員OB)が、FAX送信と電話で、当該税理士に対して、液晶テレビ等の固定資産計上等を行わない処理の同意の申し入れを行ったことについては、極めて不適切な行為であり、してはならない行動である。

 (5) 社会福祉法に基づく適正な監督権限の行使について

 住吉区社協をはじめとする24の区社協及び社会福祉法人大阪市社会福祉協議会(以下「市社協」という。)の監督官庁である大阪市長(健康福祉局)は、社会福祉法第56条に基づき、社会福祉法人の業務又は会計の状況について、調査権及び監督権を有していることから、市及び24区社会福祉協議会の経営改善等について必要な指導・監督に努めなければならない。

 健康福祉局は、今回の調査の過程で、2(7)1.から6.の改善指導を口頭で行っているとのことであるが、関係者の供述に大きな食い違いがあるにもかかわらず、「寄付」を前提として必要な事務手続を行うことを主たる内容としており、調査に限界があるとはいえ不十分である。

 住吉区社協で本件のような重大な契約手続違反等が見られたことから、経理規程等がほぼ同一で、同様の職員構成、事業内容を有する他の区社協、市社協においても、本件のような不適正事案が存在するおそれがあり、健康福祉局としては、不適正な行為の是正及び防止の観点からも、契約手続の一斉調査を検討する必要性が高いと考えられる。

 

4 勧告

 上記判断に基づき、次のとおり勧告を行う。

 (1) 大阪市長(健康福祉局)は、住吉区社協の今回の契約手続、会計処理、及び寄付収受について、事実関係の解明も含めて、さらに調査を継続し、業務の改善、再発防止等の措置命令又は行政指導など、社会福祉法第56条に基づく適正な監督権限の行使に努めること

 (2) 全区社協及び市社協について、その随意契約等の手続が経理規程等に基づき適正に行われているか自主的な調査を促し、その報告を求めるなど、適正な監督権限の行使に努めること

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    勧告文を掲載しています~住吉区社会福祉協議会における不適正な経理処理~

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2. 健康福祉局における超過勤務命令の適正化(意見書)

1 通報概要

 『健康福祉局生活福祉部保険年金担当においては、その繁忙事由を一切考慮せず、職員に一律に無理な退庁を促している。その結果、職員は深夜勤務をしているにも関わらず早めの退庁打刻をした後にサービス残業せざるを得ない状況となっている。また、深夜帰りとならざるをえない職員に対し、タクシー券を利用させないような雰囲気を不用意に醸成し、結果として部下職員が心身だけでなく、財産的に被害を蒙っている。』

 

2 調査結果

 (1) 超過勤務手当の根拠・内容について

 一般職の地方公務員については、地方自治法第204条第2項により、地方公共団体は時間外勤務手当を支給することができ、同条第3項により、その額及び支給方法は、条例で定めなければならないとされている。

 また、一般職の地方公務員に対しては、適用除外と定められている条項を除き、原則として労働基準法の規定が適用されることとされており(地方公務員法第58条第3項)、時間外、休日及び深夜の割増賃金を定めた労働基準法第37条第1項も適用がある。

 大阪市では、これらの法律の定めに基づき、職員の給与に関する条例第15条及び給料等の支給に関する規則第9条で、時間外勤務に対する割増賃金(大阪市ではこれを「超過勤務手当」と呼んでいる。)の支給割合及び支給方法を以下のように定めている。

 ① 支給割合

支給割合

勤務日

所定時間以外

勤務1時間当たりの給与額の100分の125

深夜(22時~5)

勤務1時間当たりの給与額の100分の150

休日

深夜を除く時間

勤務1時間当たりの給与額の100分の135

深夜(22時~5)

勤務1時間当たりの給与額の100分の160

 ② 支給方法 その月分を翌月の給料の支給日に支給する。

 

 (2) 超過勤務手当の申請及び認定手続

 大阪市では、平成16年に発覚した「カラ超勤問題」の反省から、超過勤務手当の命令、申請、認定手続を厳格にするとともに、市長部局では平成21年2月から勤務情報システムを導入(本格稼動)し、出退勤時刻をタイムカード・リーダーで打刻、記録するとともに、超過勤務命令申請等の手続や手当の支給等の手続も、勤務情報システムを利用して、職員本人からの入力、上位者の認定を基にシステム上で処理している。

 超過勤務命令は、命令権者(事務専決規程等で権限を付与された者。通常は課長又は課長代理)が事前にその都度職員に対して命令し(口頭又は黙示の命令を含む。)、命令を受けた職員は、勤務情報システムの画面から、命令内容[対象日(2010/01/25など)、命令時間(17:30~20:00など)、休憩時間(17:45~18:00など)、業務内容及び理由(「明日9時からの会議資料の作成のため本日中の作業が必要」など)]を入力して、命令権者へ超過勤務命令申請を行う。

 命令権者は、その申請内容を確認して、承認する。

 承認を受けた後、職員は、超過勤務に従事する。

 超過勤務終了後(翌日でも可)、職員は、実際に超過勤務に従事した時間(超過勤務を行わなかった場合は、「実績なし」にチェック)及び休憩時間(食事等で複数回休憩を取った場合は、その全て)を入力し、超過勤務認定申請を行う。

 命令権者は、その認定申請の内容を確認して、承認する。

 命令権者によって認定された時間が、当該職員の超過勤務手当の基礎となる実績時間となり、その月分を集計して、翌月の給料日に超過勤務手当が支給される。

 緊急の場合や、命令権者が不在の場合は、その上位の者(課長代理が命令権者の場合は、課長)が上記の承認等の行為を行う。

 (3) 健康福祉局からの報告

 本件通報について、健康福祉局からは、以下の報告を受けている。

 ① 健康福祉局生活福祉部保険年金担当における取り組みについて

 保険年金担当課長は、毎月始めに各担当係長から部下職員の健康保持を主眼とした超過勤務削減策の聴取を行い、超過勤務の縮減に努めている。

 また、係員の超過勤務実態を踏まえた内部配置転換を試行するなど、職員間の超過勤務の均一化を図るよう努めている。

 さらに、全庁的に行われている「ノー残業デー」には、超過勤務申請のなかった職員に対して穏やかな口調で退庁を促している。

 ② 本件通報に関するヒアリング調査結果について

 担当課長等が適切な業務執行を促していたにも関わらず、自らのポリシーから一旦申請した超過勤務の終業予定時刻を厳守しようと、退庁打刻を行った後もなお勤務するという「サービス残業」を行う職員があった。

 タクシー券については、管理担当で保管しており、利用しにくい状況ではないが、担当課長ができるだけ公共交通機関を利用するよう呼びかけている。職員の中には、この指導を自らの解釈でタクシー利用は制限されているものとの認識から、本庁で仮眠の上始発電車で帰宅する者のほか、帰宅せず自費で宿泊する者、自費でタクシー利用する者が存在した。

 ③ 改善状況について

 ②の調査結果を局内の課長会で報告したうえで、職員の勤務状況を注意深く見守った結果、平成20年度上半期時点では、サービス残業やタクシー利用の状況も一定改善されていると判断した。

 (4) 委員会事務局(情報公開室監察部)による追加調査

 健康福祉局からの報告では、一定の改善がなされているとのことであったので、その経過を見守ることとし、平成21年度の状況について、報告どおりの改善がなされているかを、本委員会の事務局である情報公開室監察部に命じて追加調査させた。

 ① 保険年金担当に所属する職員(係長・係員級)の超過勤務の状況について

 平成21年4月から9月までの6箇月間(平成21年度上半期)の超過勤務の状況についてサンプル調査を行った。具体的には、委員会事務局が、対象となる職員74名のうちから無作為に抽出した27名の職員(うち1名は育児時間取得者、2名は病気休暇取得者)の出退勤の実績、超過勤務の実績を、勤務情報システムの記録を出力して提出させたものを基に分析した。

 その結果、病気休暇取得者等を除いた24名の6箇月間の超過勤務認定時間(以下「超勤認定時間」という。)の平均は、148時間となり、1箇月当たりにすれば職員1人平均約25時間となっている。このうち、最も多い者は、6箇月間で470時間もの超勤認定がされており、次いで416時間、315時間、288時間となっている。これは、平成13年12月に改正された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」という厚生労働省労働基準局長通達(以下「過労死労災認定基準」という。)において、「発症前1か月ないし6か月にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること」との基準を超える者(6箇月間で270時間を超える者)が、4名もいることを意味している。さらに、6箇月間で150時間以上の者(年間300時間を超える場合、総務局のヒアリング対象となる)が24名中10名(約42%)にも上っている。

 また、実際に職場にいたと考えられる退勤打刻時刻から推定される拘束時間(終業時刻の17時30分から退勤打刻時刻までの時間から、労働基準法上8時間を超える勤務に取得が義務付けられている15分の休憩時間を控除した時間。以下「拘束時間」という。)と、上記の超勤認定時間を比較して見ると、毎月の拘束時間と超勤認定時間との差は、24名の平均で、多い月で19時間、少ない月でも13時間生じている。これを個々の職員で見ると、最もその差が大きい者は、1箇月に64時間(拘束時間73時間-超勤認定時間9時間)もあり、中には、1箇月の拘束時間が52時間に及ぶにもかかわらず、全く超過勤務命令申請を行わず、超勤認定時間がゼロという者もいた。

 1箇月の要勤務日は約20日であり、超過勤務終了後の帰宅準備に約15分要すると考えると、1箇月当たり約5時間の差が生じることは想定されるが、上記のような大きな差が生じることは、超過勤務手当の支給を受けないサービス残業が行われているのではないかとの疑問が生じる。

 なお、上記の超過勤務時間等の調査結果を一覧表にすれば、以下のとおりとなる。

超勤認定時間の推移

214

215

216

217

218

219

合 計

24名平均

25時間

22時間

31時間

24時間

17時間

29時間

148時間

多い者

A

78時間

84時間

88時間

92時間

77時間

51時間

470時間

B

56時間

60時間

82時間

80時間

74時間

64時間

416時間

C

65時間

38時間

44時間

56時間

55時間

57時間

315時間

参 考

11箇月平均25時間、6箇月270時間超 4名、6箇月150時間超 10

拘束時間と超勤認定時間の差異
 21年4月21年5月21年6月21年7月21年8月21年9月合計
平均拘束41時間41時間50時間42時間30時間45時間249時間
認定25時間22時間31時間24時間17時間29時間148時間
差異16時間19時間19時間18時間13時間16時間101時間
最多※拘束52時間64時間80時間73時間63時間77時間421時間
認定0時間13時間17時間9時間18時間23時間113時間
差異52時間51時間63時間64時間45時間54時間308時間

※ 各月の最も多い差異があった者を上げたので、同一人とは限らない。
  また、最多の合計欄は、6箇月の合算で最も差異が多い者の時間数を記載したので、各月の合計時間とは一致しない。

 ② 職員に対するヒアリング結果について

 ①の結果を踏まえ、サンプリング抽出した27名中25名の職員に対して個別にヒアリングを行った。

 拘束時間と超勤認定時間にこのように大きな差異が生じた理由については、「食事や休憩の時間を除いて、自分自身の仕事をしている時間はこの程度と思う」、「部下の管理をしながら書類整理等をしている時間は超勤と考えておらず申請していない」、「超過勤務命令を受けずに急に行った超過勤務について、翌日以後遡って申請することを忘れた」などの意見が多く、上司からの強要があったと答えた者はなかった。

 超過勤務に関する上司のヒアリングについては、「超勤認定時間が月30時間を越えている翌月以降、定期的なヒアリングはあるが、超勤の縮減や業務の効率化等の改善はなかなか進まない」と答えた者が多かった。

 定時退庁等の周知・徹底については、ノー残業デーは、定時退庁するよう周知徹底されており、それ以外の日でも「残業する必要のあるときは超勤申請を事前申請するように」「残業しないときは速やかに退庁するように」といわれているとの回答が多かった。

 退勤打刻後になお残って業務を行う「サービス残業」をしたことはあるかの問いに対しては、多くの者は、「サービス残業は行ったことはない」と回答したが、「超過勤務命令申請の承認を受けずに庁内に残っている職員はいる」との回答も数名あった。

 タクシー券の利用についての問いに対しては、一部の職員が自身の仕事の仕方で終電に間に合わなかったときに自腹で帰宅したことはあるが、タクシー券を利用し難いという雰囲気は感じず、むしろ「居酒屋タクシー問題」後、タクシー券の管理が厳正に行われているとの回答であった。

 その他自由意見としては、「退勤打刻の時間と超勤実績の話は、今回初めて言われたことで、とくに意識していたことはなかった」、「人や予算(超過勤務手当関連と思われる。)が増えず、仕事が増えているという印象は大きい」、「超過勤務を付けていい仕事とそうでない仕事の基準がよくわからない」などの意見があった。

 

3 判断

 以上の確認できた事実に対して、検討を行ったところ、次のとおり判断するに至った。

 健康福祉局からの報告及び委員会事務局による職員からのヒアリング等の結果を総合的に考慮すると、通報のあった平成20年度当初の段階では、退勤打刻後も自らの意思で職場に残り、超過勤務手当の支給されないサービス残業を行っていた職員が一部存在したことが認められるが、その後は、保険年金担当課長をはじめとする管理監督者が、毎週水曜日の「ノー残業デー」における定時退庁等の取組み、超勤認定時間が月30時間を超える職員に対する定期的なヒアリング、係長・係員への周知などにより、一定の改善は図られてきており、管理監督者がサービス残業を強要していたような事実は見受けられなかった。

 タクシー券についても、これを意図的に使用させず、自腹での宿泊や帰宅を強要していたような事実は認められず、調査の範囲内では適正な利用に努められていたと考えられる。

 しかしながら、今回の委員会事務局調査によって新たに判明した拘束時間と超勤認定時間との大きな乖離は問題であり、加えて、保険年金担当に所属する職員の超勤認定時間は依然として極めて多く、十分な改善が図られたとは言い難い。

 一般職の地方公務員に対して除外規定を除き原則として適用される労働基準法の規定上、大阪市(市長部局の職員にあっては市長)は事業主に当たり、事務専決規程等で事業主から超過勤務命令等の権限の行使を委ねられた課長、課長代理等の管理監督者は、労働基準法第10条に規定する使用者に該当し、労働者たる職員の健康管理、勤務労働条件等に関して、その安全に配慮する義務を有している。

 保険年金担当は、全市的にも超過勤務が多い健康福祉局の中でも、特に超過勤務が多く、病気休暇取得中の者や体調不良による年休取得者を複数抱える部署であることは、管理監督者は認識していたことから、よりきめ細かい配慮が要請されるところである。

 ところが、平成21年度の上半期の実績で、無作為抽出した27名のうち病気休暇取得者等を除いた24名の職員の1箇月当たりの超勤認定時間が平均約25時間となっており、過労死労災認定基準(1箇月当たり概ね45時間)を超える者が4名もいる事実は問題である。

 一方で、月平均4時間程度の超勤認定時間しかない職員もおり、著しく業務量に均衡を欠いている。また、一定の取組みはされているとは考えるが、現行体制内においても、超過勤務をさらに削減する努力が求められる。

 拘束時間と超勤認定時間との間に生じている大きな乖離については、退勤打刻までの間に、食事等の休憩を取ったり、他の職員や関係部局からの報告・回答待ちなどのいわゆる「待機時間」も含まれ、これを超過勤務として認定申請するか否かについては、個人差があるのも事実であろう。

 しかしながら、民間企業の労働事件(未払賃金請求訴訟)の判決では、特段の事情のない限り、タイムカードに打刻された出勤時間から退勤時間までが労働時間と認定され、明らかに勤務に従事していなかった時間(職務と関係のない外出、食事、私用等)は、使用者側に立証責任があるとの判例が主流になりつつあることからすれば、公務員の労働関係についても、より厳格な運用が求められる。

 特に、勤務情報システムを導入しながら、実従事時間で認定申請をするのを忘れたり、面倒に思って職員が申請をしないようなことがあっては良くない。

 管理監督者側も、職員の意思で超過勤務命令申請をしない又は認定申請時に遠慮して実従事時間への変更をしないことを理由に、申請が無いから認定できないと現状を放置しているとすれば問題である。

 職員に対して、超過勤務縮減に対する意識啓発をさらに行うとともに、勤務情報システムを利用した正確な事前申請、事後の認定申請、承認行為を徹底する必要がある。

 

4 意見

 上記判断に基づき、次のとおり意見を述べる。

 (1) 健康福祉局にあっては、保険年金担当に所属する職員の拘束時間と超勤認定時間に大きな乖離が生じていることを重く受け止め、今後は勤務情報システムによる適正な超過勤務命令手続を徹底し、その解消に努めるとともに、仮に、乖離した時間の中に「サービス残業」が含まれていることが判明した場合には、適正な超過勤務手当を支給するように努めること

 (2) 健康福祉局は、過労死労災認定基準を超える超過勤務が常態となっている状況を改善するため、時間内での効率的な事務執行はもとより、係長・係員の弾力的配置、不要・不急の業務の省力化・簡略化、担当業務の平準化等の改善策を策定・実施するよう努めること。上記措置を講じてもなお所属職員の勤務状況が改善されない場合には、業務量や人員配置の見直しなど、抜本的な対策を講じるよう努めること

 (3) 健康福祉局以外の所属においても、超過勤務が常態化し、職員の拘束時間と超勤認定時間に大きな乖離が生じているような場合には、上記⑴、⑵に準じた措置を講じるように努めること

 

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