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大阪新美術館建設準備室所蔵のモディリアーニの絵画がハンガリーへ!~貸出随行の学芸員によるハンガリー訪問記

2016年7月7日

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アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》

大阪新美術館建設準備室が所蔵するアメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》〔写真〕が、ハンガリー国立美術館に貸し出されています。以下は、貸出時に作品に付き添った学芸員によるハンガリー訪問記です。


 2016年6月、所蔵するモディリアーニの絵画とともにクーリエ(作品随行者)としてハンガリーへ行きました。前日に美術品輸送業者のトラックで大阪から東京へ移動して、20日朝、成田空港の貨物ターミナルでパレット積み付けに立ち会ってから出発です。ハンガリーへは日本から直行便がないためオーストリア航空を利用しましたが、同じ飛行機には何と、東京公演を終えて帰国するウィーン少年合唱団のご一行様も!お揃いのセーラー服を着た愛らしい少年たちは搭乗口で思い思いに静かに過ごし、また騒ぐような無粋なファンもおらず、和やかな光景でした。

 7時間の時差をこえて同日夜18時過ぎにウィーン空港へ着陸。現地係員と合流し、貨物ターミナルで作品を受け取ります。税関審査のため1時間半ほど待機して通関。ハンガリーから迎えにきた美術品輸送業者のトラックに積んで、ブダペストまで時速120km(!)にてノンストップで走りました。途中、片言の英語で「ここからハンガリー」と教示され、無人の検査所を通過すると、オーストリアの洗練された田園風景から、やがて自然で素朴な景色が広がりました。夏至の頃なので夕刻を過ぎても空は明るく、ゆっくり暮れていきます。22時すぎ、目的地であるブダペストのブダ王宮内にあるハンガリー国立美術館に到着。遅い時間でしたが、美術館スタッフと警備が到着を待ち構えており、展覧会場へ無事に搬入できました。

ハンガリー国立美術館(王宮の中央にある建物)

ハンガリー国立美術館(王宮の中央にある建物)

 ブダペストは夜景が美しい街です。ライオンの石像に守られた王宮の丘のライトアップによる豪華さには息をのみました。古くどっしりした建物に囲まれたエリアを観光客がゆったりと夜の散歩を楽しみ、13世紀に建てられたマーチャーシュ教会のゴシック様式の尖塔も漆黒の夜空に輝いていました。海外では安全のため遅い時間に一人で外出しないので、搬入時に夜の風情を見られたのは幸運でした。

 作品の開梱、点検、展示には、修復家やレジストラーなど現場スタッフに加えて、ブダペスト国立美術館のラースロ・バーン館長も立ち会いました。テレビや新聞などメディアの取材が設定されていたためと思われます。用意周到なスタッフの発案で、当日早めに参集して、木箱の開梱、作品点検と調書の確認、壁に金具を取り付けての展示を一通りやってみました。うまくいくことを確認してから、再び作品を木箱に納めます。本番の取材では予行演習の通り、あらためて開梱、作品点検と展示をスムーズに行いました。点検は同館修復家とともに、懐中電灯を当てて細かく画面をチェックして調書へ記入します(幸い、状態に変化なし)。バーン館長が《髪をほどいた横たわる裸婦》についてプレスへ解説されました。ハンガリー語は理解できませんでしたが「この絵は早くから日本にあったためヨーロッパではあまり紹介されてこなかった」などと話されていたとのこと。展覧会のクライマックスにあたる壁に堂々と展示された大阪市の裸婦は、その後も盛大にフラッシュを浴びていました。作品を引き渡した後は、まるでわが子を他人に預けるような心境になります。「がんばれ!」と心の中で裸婦にエールを送って会場を後にしました。

展示作業と取材陣

展示作業と取材陣

 今回のモディリアーニ展は、フランスのリール市で立ち上がり、ブダペスト、ヘルシンキへ国際巡回するものです。大阪新美術館建設準備室へ出品の打診があったのは今年2月のこと、通例の海外貸出では一年ほどかけて出品の交渉を行いますが、今回は先方の熱意と互いの努力(そしてIT技術の進化)により5月末に契約を交わし、ブダペストとヘルシンキへの出品が実現しました。展覧会は6月28日(内覧会)から10月2日までハンガリーで、続いてフィンランドの国立アテネウム美術館で10月28日から2017年2月5日まで開催される予定です。

 モディリアーニの本格的な回顧展がハンガリーとフィンランドで初めて開催されることに加え、この展覧会の見どころのひとつは、大阪市の《髪をほどいた横たわる裸婦》と同じモデルを描いた作品が会場に集まったことであると個人的に考えています。ハンガリーで出品される裸体画は全部で5点ですが、そのうち3点が黒髪で強いまなざしをもつ女性像です(大阪新美術館建設準備室《髪をほどいた横たわる裸婦》、アントワープ王立美術館《うずくまる裸婦》、リール近現代美術館[LaM]《肌着を持って座る裸婦》)。大阪市の絵が、明らかに同じ風貌をもつアントワープの絵と一緒に展示される、という夢が今回叶いました。他の2点も、ブロンドの同じモデルを描いたと思われる裸婦像です。

裸婦のコーナー/向かって右端がアントワープの裸婦、左端が大阪市の裸婦

裸婦のコーナー/向かって右端がアントワープの裸婦、左端が大阪市の裸婦

 待機時間には、ドナウ河をはさんだ両地区(西側のブダ、東側のペスト)に点在する美術館や博物館を、時間の許すかぎり回りました。国立博物館では数世紀におよぶハンガリーの複雑な歴史を学び、国立美術館では同時開催中のピカソ展や独特の美意識をもつハンガリーの絵画史にふれました。大阪新美術館建設準備室が作品を所蔵するデザイナーのマルセル・ブロイヤーはハンガリー南部の出身で椅子作品が展示されており、オプ・アートを代表するヴィクトル・ヴァザルリの個人美術館は来年まで改装のため休館中でした。

 最後に余談ですが、ハンガリーでは煮込み料理のグヤーシュ(グラーシュ)に加え、揚げパンのランゴーシュ(ランゴス)に挑戦してみました。私事で恐縮ですが、幼い頃に家族でウィーンに暮らした頃、ニンニク風味たっぷりの揚げパンがこの世で最も美味しいものだと信じていました。ブダペストの中央市場2階でようやく見つけた本場の専門店。しかし、冷めたランゴーシュはピザ台のような扱いで、「パンだけ食べたい」との希望は却下され、最低限のトッピング(サワークリームとおろしチーズ)をのせて渡されました。素朴な風味でしたが、積年の想いは幻に。念願の油っこくアツアツのランゴスを賞味するため、次回は個人旅行でウィーンを、できれば冬に訪れたい、その折にはハンガリーを再訪し、今度こそ水着を持参してブダペストで温泉巡りして・・と、新たな夢を手に入れた旅でした。
(研究副主幹 小川知子)

大阪新美術館建設準備室ホームページへ

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