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第3章 基本理念 ~「自律と協働の社会」をつくる生涯学習の推進~(2)

[2009年7月27日]

2 「自律と協働の社会」づくりに向けた生涯学習の視点

(1)人間の尊重と共生

  • 基本的人権は、日本国憲法の中で、市民一人ひとりが人間として平等に持っている、だれも侵すことのできない権利として保障されています。最近では、市民一人ひとりが自らの能力を高め、その可能性を開花させ、意思決定に参画できるようになることが、平和や安全の保障に不可欠であり、すべての人々の能力を高めるためには、個人のさまざまなアイデンティティ(*24) や集団としての文化の多様性を尊重すること、基礎教育を完全普及することが必要であるという「人間の安全保障」という概念が生まれてきています。
  • このように、今日では、世界の人々とともに、一人ひとりが人権尊重を基礎として歩む姿勢が求められています。昨今の急激な社会変化のもとで、外国籍住民や障害のある人をめぐる問題、高齢者、子どもをめぐる問題、男女共同参画に関わる問題や同和問題に加え、HIV感染者・ハンセン病回復者等にたいする偏見や差別意識による人権問題、個人情報保護をめぐる問題など新たな課題が生起しており、一人ひとりの人権を尊重し差別のない共生社会を実現することがいっそう重要となっています。
  • さらに、社会や経済のグローバル化にともない、近年新たに滞在・居住する外国人が増加しつつあり、すべての人、互いの文化の違いや、多様なアイデンティティを認めあい、同じ地域社会の構成員として共生していくことをめざして、交流を進め、相互に理解を深めることが大切です。
  • 大阪市では、「大阪市人権行政基本方針」(平成11年(1999年))を定めるなど、人権尊重を基本として将来を見通した総合的な行政を推進してきており、平成17年(2005年)に策定した大阪市基本構想においても、「大阪に集い、暮らし、活動する人びとが互いに人権を尊重し、将来にわたる安心を感じ、自らの夢に挑戦できるまち」を、めざすべき将来像として掲げています。
  • また、平成17年(2005年)4月に策定された「大阪市人権教育・啓発推進計画」においては、「自らの人権について学び、自らの権利を行使することにともなう責任を理解し、他の人々とともに問題の解決に取り組み、それを通じて人権が尊重されるまちづくりにつなげていくこと」を基本的な考え方として掲げています。この考え方は、「生涯学習大阪計画」が基本理念として掲げる「自律と協働の生涯学習社会」づくりと意味を同じくするものです。
  • このように、生涯学習と人権教育との関係は密接不可分のものであり、大阪市の生涯学習の推進が人権教育の推進に役立ち、人権教育の推進が生涯学習の推進に役立つべきであるとの観点が必要です。
  • これまで大阪市においては、「識字学級」、「地域識字・日本語交流教室」やボランティア養成などの識字施策を進めてきましたが、平成15年(2003 年)からの「国連識字の10年」の趣旨もふまえて、「大阪市識字施策推進指針」(平成5年(1993年)策定)を改定し、総合的な施策の推進と非識字者(*25) エンパワメント(*26) を図ることが重要となっています。
  • また、児童虐待、いじめなど、近年の青少年を取り巻く深刻な状況に対する取組みを強めるため、青少年会館では、基本的人権尊重の精神に基づき、広く青少年の健全育成に資する施設としての役割を果たせるよう、取組み内容の充実を図るとともに課題を抱えた青少年への支援として、不登校をはじめとする子どもたちの「居場所づくり」や専門的な人材の導入による相談事業の創設などの取組みを進めていますが、今後とも人権教育の視点に立った、次世代の大阪を担う青少年の自立と社会参加の支援に向けた諸事業を充実していくことが必要です。
  • 「生涯学習大阪計画」においては、本市における人権教育・啓発の基本計画と位置づけられている「大阪市人権教育・啓発推進計画」との整合性を図りながら、「人間の尊重と共生」を計画推進の基本的視点として位置づけた取組みを積極的に進めます。

(2)「市民力」を育む生涯学習の推進

  • 今後、大阪市は、市民の主体的な学習や活動を支援することを基本とし、自ら課題解決のために考え提案できる力、主体的に生きるための力、自己実現のための力といった「市民力」を、市民一人ひとりが身につけられるよう、「シチズンシップ」教育(*27) に力を入れていくことが重要です。
  • 「知識・技術等の学習」「社会への参加(地域活動やNPO活動への参画)」「課題解決のための提案・行動」がひとつの連続した流れとなり、市民一人ひとりの学習と行動を結び、循環させていくような学習を支援する必要があります。
  • こうした「市民力」を育む生涯学習を推進することは、「教育コミュニティ」づくり、生涯学習を通じた「まちづくり」にも大きな役割を果たすものとして期待されています。

(3)「まなび」を基本としたコミュニティづくり

  •  近年の全国的な動向として、教育に関わる分野だけでなく、さまざまな分野で、小学校区が社会的・現代的課題を市民とともに解決するときの単位として、また、コミュニティづくりの基礎単位として注目されてきています。
  • 子どもが健やかに成長するために、社会参加のための第一歩といえる地域である小学校区において、地域社会でのボランティア活動や職業体験、自然・環境・歴史・文化にふれる体験など、「本物」の活動に参加・参画することはとても大切なことであり、そのためにも、「教育コミュニティ」づくりが欠かせません。
  • また、子どもの成長を乳幼児から小学生・中学生へと継続して見守る必要があり、小学校区での活動を基盤としながら、中学校区での連携・交流も重要です。
  • 今後、さらに「地域に開かれた学校づくり」を進め、学校・家庭・地域社会の連携を深めることにより、学校教育のいっそうの充実や活性化を図り、不登校、いじめ、問題行動など、今日の子どもに関する諸課題の解決に資することが期待されています。
  • また、学校、特に小学校は、子どもだけでなくだれでもが通いやすい身近な場所にある地域社会の共有財産でもあります。学校の施設等を地域社会に開放し、より多くの市民が気軽に諸活動に参画できるようになれば、生涯学習の振興が図られ、「地域社会で暮らす活力」や人のつながりが育まれることになり、コミュニティづくりにつながります。
  • 学校に地域社会の教育資源を導入することと、学校の施設等を地域社会に開放・活用することとは、双方向的な営みであり、「地域の教育力」の向上と学校教育の充実を同時に進めていく必要があります。
  • さらに、地域社会で活躍する人たちの連携を図る組織として「教育コミュニティ」づくりのための協議会を設置し、青少年、教育、スポーツ、環境美化、福祉、人権、文化など、これまで行政の各部局により小学校区で実施されてきた施策を一元化・体系化して実施するなどにより、地域社会での主体的な活動が促進され、子どもの教育や地域社会の再生に資することになります。また、近年問題となっている子どもの安全についても、地域社会における人のつながりによって、立ち番や巡視活動のほか、積極的な声かけの実施など、子どもの安全を見守る取組みが進められることになります。

(4)地域資源の再発見と魅力の発信を支える「まなび」のネットワークづくり

  • 大阪は、古代以来、「都市」として栄え、市内には豊かな歴史や文化が存在しています。市民にとって日常の見慣れた風景の中に溶け込んでしまい、ともすれば見過ごされがちな、長い歴史に育まれた文化資源、人々の日常生活が育む生活文化に着目する必要があります。
  • 歴史的遺産や建造物だけでなく、「まち」とそれを取り巻く自然がつくりだす景観も歴史・文化資源ととらえることができます。「市民力」も、重要な資源であり、古くから相互扶助と自治の精神に支えられた社会が今も健在で、例えば、商店街や町工場が今もしっかりと地域社会に根付いています。また、数多くの外国籍住民が居住している大阪の「まち」には、多文化が共生する魅力があります。
  • まず市民一人ひとりが、地域社会づくりに主人公として積極的に関わる中で、地域社会の歴史や文化について、新たな価値を生みだす「資源」であることを再認識し、その多様な魅力を積極的に活用・発信していくことが、大阪の歴史・文化の継承・発展とともに、新しい文化の創造につながります。
  • 市民が主体的に生きる力をつけ、地域資源の再発見とその魅力の活用・発信という「まなび」と活動の循環をつくりあげられるよう支援することが、生涯学習の重要な役割であり、歴史・文化・自然環境を軸にしたいきいきと活力ある大阪のまちづくりにも資するものとして期待されています。
  • 大阪で長らく培われてきた、市民主体のまちづくりの伝統や豊かな地域文化を礎として、市民をはじめ大阪を訪れた人がその魅力を発見し、体感できる事業や、国内外に向けて大阪の魅力を広くアピールする事業を充実させながら、地域社会やNPO、大阪市、企業などが互いに連携・協働する「まなび」のネットワークづくりを進める視点が必要です。
基本理念:「自律と協働の社会」をつくる生涯学習の推進

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