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「体罰・暴力行為を許さない開かれた学校づくりのために」~体罰・暴力行為の防止及び発生時の対応に関する指針・児童生徒の問題行動への対応に関する指針~

2015年1月13日

ページ番号:274391

体罰・暴力行為を許さない開かれた学校づくりのために ~体罰・暴力行為の防止及び発生時の対応に関する指針、児童生徒の問題行動への対応に関する指針~

大阪市教育委員会の新たな方針と決意

桜宮高等学校において発生した事案について

 平成24年12月23日、大阪市立桜宮高等学校2年生の男子生徒が自宅で自らの命を絶つという痛ましい事案が発生しました。教育委員会としましては、生徒を守るべき教育の場において、生徒のかけがえのない命、取り戻すことのできない命を失う事態に至った、この事案を極めて厳しく受け止めております。

 当該生徒は、男子バスケットボール部に所属しており、顧問教諭による暴力行為があったことが判明しています。自らの命を絶つという選択をした生徒の苦しみと悩みは、計り知れません。顧問教諭がこの生徒に対して行った行為は、何の落ち度もない生徒に対する暴力行為でありました。

 当該教諭は、バスケットボール部の顧問に就任してから、暴力を指導の一環と位置付け、指導方法として効果的であるとの考えのもと、バスケットボール部員に対して恒常的に暴力を行っていたところ、当該生徒に対して行った暴力行為は、当該生徒の自殺との間に関連性が認められることから、大阪市教育委員会は、当該顧問教諭に対して懲戒免職という最も重い処分を行いました。また、事案発生時の同校校長・教頭に対しても、教員による進言など事案発生を防ぎ得たかもしれない複数の契機を放置し、適切な対応を怠ったこと等の責任の重大さにかんがみ、停職という極めて厳しい処分を行いました。さらに、教育長及び教育次長その他の事務局職員に対しても厳正な処分を行うとともに、委員は報酬を自主返納することにより、これまで体罰・暴力行為に有効な対策を出せなかったこと等に対する教育委員会自らの責任を明らかにしました。

本市における実態の把握について

 この事案を受けて、教育委員会は、体罰と暴力行為との違いを明確にしました。それに基づき、体罰・暴力行為の実態把握のため、全校調査及び児童生徒・保護者アンケート調査を実施いたしました。その結果、各学校からは264件の体罰・暴力行為の報告があり、児童生徒・保護者アンケートでは5、123人から体罰・暴力行為を受けたことがあるとの回答がありました。これらの調査結果から、多くの学校で体罰・暴力行為が行われている実態が浮かび上がったと言えます。

 学校教育において、体罰・暴力行為は絶対に許されるものではなく、決して容認できないものであります。体罰・暴力行為を行うことだけでなく、周囲の人間がそれを許容することも、見て見ぬふりをすることも、あってはならないことです。

 しかし、これまでの体罰禁止の徹底等を求める通知を繰り返すだけでは、体罰・暴力行為を防ぐことができませんでした。教育委員会としては、この事実を極めて重く受け止めております。また、声を上げることができなかった児童生徒や保護者の方々に思いを致すとともに、教育現場で日々児童生徒と向き合い、時にはぎりぎりの状況下で指導を行っている教職員の皆さんの声に耳を傾け、これらを活かすことができなかったことを深く反省しております。

外部監察チームの報告書による指摘・勧告について

 本市の委嘱により桜宮高等学校の事案の調査に当たった、弁護士から成る外部監察チームは、その最終報告書(平成25年4月30日)において、同校における事案のみならず、中学校における体罰・暴力行為の事案の調査結果をも踏まえ、体罰・暴力行為が根絶されない理由について、次の通り、教育委員会及び学校に対する厳しい指摘を行っています。

 「学校内において、体罰等が発生しても、これを受けた生徒及びその保護者が異を唱えなければ、当該教員が生徒及びその保護者に対して謝罪をしてその理解を得ることで処理され、管理職である校長及び教頭の知るところとならず、また、管理職がこれを知ったとしても、管理職がこれを教員に対する人事権を有する教育委員会に対して報告せず、さらには、指導部に対して報告されても、教務部に対して報告されずに処理されることにより、結局、当該教員が人事権を有する教育委員会から懲戒処分や注意等を受けることなく、せいぜい人事権を有していない学校管理職による注意を受けるに留まり、最終的には、当該体罰等は顕在化しない。」

 そして、同報告書は、学校現場におけるチェック機能が正常に機能する体制を速やかに整備するとともに、教育委員会において、体罰・暴力行為が顕在化し難い傾向があることを十二分に認識した上で、事案に対する適切な処理体制を整備する必要があること等を勧告しています。

大阪市教育委員会の新たな方針について

 大阪市教育委員会といたしましては、上述の指摘及び勧告を真摯に受け止め、体罰・暴力行為は決して許されないとの姿勢を大前提としつつ、同時に、体罰・暴力行為は発生し得ること及び発生しても顕在化しにくい傾向があることの認識の上に立って、発生時には必ず報告が上がる透明性の高い報告体制の構築及び報告漏れに対する厳正な対処をはじめ、発生時の適切な対応及び組織体制を明示し、徹底することにより、体罰・暴力行為を許さない学校づくりを進めてまいります。この指針は、その重要な第一歩です。

 一方、学校現場で直面している課題や問題行動を起こす児童生徒に対する指導に苦慮している状況等について、アンケートを通じ、教職員の皆さんの声を寄せていただきました。その声を活かして、この指針は、ただ単に体罰・暴力行為はだめだと言うだけではなく、毅然とした指導が必要な時には教員がこれを行うことができるよう、適切な生徒指導のあり方を示すとともに、学校における指導だけでは対応し切れない児童生徒に対してどのような対応が可能か、また、教育委員会としてどのような支援を行うのか、について示しております。それらにより、暴力的指導に頼らない、人格の尊厳に根ざした指導方法の確立を図ります。

 その一環として、この指針では、「体罰」と「暴力行為」は、いずれも許されない違法行為であるが、異なる概念であること、自他の防衛や危険回避のためにやむを得ず行った有形力の行使は、「正当防衛」や「正当行為」として法的な責任を免れ得る場合があること、児童生徒の指導のために認められる「懲戒」に該当する行為として幾つかの例が挙げられることなど、これまで学校関係者の間で十分に理解が浸透しているとは言い難い諸概念の整理を行っております。このような概念の明確化が、教職員の皆さんが自信を持って適切な指導を行っていく一助となることを願っています。

「体罰」と「暴力行為」の区別について

 なお、桜宮高等学校における事案の発生後、基本的な事実関係が明らかになって以降は、教育委員会としては、当該顧問教諭による当該生徒に対する行為は、何の落ち度もない生徒に対する「暴力行為」であるとの認識を明確にし、同行為について「体罰」という言葉を使用しないよう、注意を払ってまいりました。「体罰」は、学校教育法上の定義によると、「懲戒」の目的をもって行われる行為です。児童生徒側に非が無いにもかかわらず、叩く等の行為を行った場合は、「懲戒」目的はあり得ませんので、「体罰」には当たらず、「暴力行為」に当たります。「体罰」と「暴力行為」のいずれも、法的に禁止された許されない行為であることに変わりはありませんが、その意味は以上のように異なります。

 「暴力行為」に対してまで、「体罰」という言葉を日常的に使用することは、何の落ち度もない児童生徒にあたかも「罰」に値する非があったかのようなイメージを与えかねず、「愛のムチ」といった体罰・暴力行為に寛容な考え方の温床と無関係とは言えないことから、法的な定義の面だけでなく、語意・語感の面からも、適切でないと考えています。

体罰・暴力行為を許さない学校づくりに向けた決意

 大阪市教育委員会といたしましては、本市においてこのような痛ましい事案が二度と発生することのないよう、教職員の皆さん、保護者、及び地域・関係諸機関の皆様と力を合わせ、一丸となって、体罰・暴力行為を許さない学校づくりに取り組んでいく決意です。

 この指針は、そのための方針を具体化したものであり、十分に活用してください。

 平成25年9月

 大阪市教育委員会

1.「体罰」「懲戒」「暴力行為」「正当防衛、正当行為」の定義及び具体例

1 定義

 「体罰」と「暴力行為」は、以下の通り、異なる概念であり、混同を避けなければならない。しかし、いずれも法的に禁止された許されない行為である。

(1)体罰と懲戒

◎「体罰」とは

 体罰とは、非違行為を行った児童生徒に対する懲戒の目的をもって行われる行為で、身体的性質を有するものである。体罰は、学校教育法により、禁止されている。また、態様・程度等によっては、刑法上の暴行罪又は傷害罪に問われる場合がある。次に挙げる行為は、体罰に該当する。

  • 身体に対する侵害を内容とする行為

(殴る・蹴る・叩く・突き飛ばす・物を投げつける等)

  • 肉体的苦痛を与えるような行為

(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)

◎許される「懲戒」とは

 法的に許される懲戒権の行使と考えられる行為としては、学校教育法施行規則第26条に基づいて校長が行うことができる退学及び停学(いずれも高等学校及び特別支援学校高等部のみ)並びに訓告のほか、注意、叱責、居残り、別室指導、宿題、清掃、文書指導等がある。

(注)懲戒権の行使と体罰は外形上も明らかに異なる!

(注)有形力の行使を伴う懲戒は体罰である!

<学校教育法第11条>

 「校長及び教員は、教育上必要と認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」

(2)暴力行為

◎「暴力行為」とは

 暴力行為とは、児童生徒側に非違行為がなく、したがって、懲戒を目的とするとは言えない行為で、身体的性質を有するものである。暴力行為は、非の無い児童生徒に対して行われる非違行為であり、決して許されない。また、態様・程度等によっては、刑法上の暴行罪又は傷害罪に問われる場合がある。

 (注)例えば、運動部活動の練習中に、児童生徒が指示通りのプレイができないこと、ミスをしたこと等は、児童生徒の非違行為ではないので、こうした時に当該児童生徒に対して叩く等の行為を行うことは、懲戒目的とはみなされないため、体罰ではなく、暴力行為に該当する。

体罰・暴力行為は、違法行為である!

体罰・暴力行為は、児童生徒の心身に深刻な悪影響を与える、重大な人権侵害行為である!

(3)正当防衛、正当行為

 児童生徒からの教職員等に対する暴力行為に対して、教職員等が防衛のためにやむを得ず行った有形力の行使は、これにより身体への侵害又は肉体的苦痛を与えた場合にあっても体罰・暴力行為には該当しない。

 また、他の児童生徒に危害を及ぼすような暴力行為に対して、これを制止したり、(たとえば児童生徒が自身又は他の児童生徒の生命又は身体を危険にさらすような行為を制止する等)目前の危険を回避したりするため、やむを得ず行った有形力の行使も、同様に体罰・暴力行為に当たらない。

 これらの行為は、正当防衛又は正当行為として、刑事上又は民事上の責任を免れ得る場合がある。

2 具体例

 教職員意識調査の集計結果では、どのような行為が「体罰・暴力行為」に当たり、どのような行為が許される「懲戒」あるいはやむを得ない「正当な行為」に当たるのか、はっきりしていないという意見が多く出されていた。「子どもが教職員のささいな行動をとって、『暴力教師や』『体罰や』というような過剰な反応をすることは指導を困難にしている。」「教師が手を挙げることで処分になることを生徒もわかっていて挑発的なことをしてくるケースもあり、エスカレートすると思う。」といった意見があり、児童生徒の問題行動に対しての指導の困難さを感じている状況がうかがえた。

 そこで、どのような行為が「体罰・暴力行為」「懲戒」「正当な行為」に当たるのかについて整理し、適切に指導を行うことができるようにしたい。なお、「体罰」と「暴力行為」は、懲戒の目的をもっている(児童生徒に非違行為がある)か否かで区別される異なる概念であるが、いずれも法的に許されない行為であることから、ここでは、便宜上、一括して「体罰・暴力行為」としている。許されない「体罰・暴力行為」と許される「懲戒」「正当な行為」の違いが、ここでの焦点であるからである。

 たとえ許される懲戒や正当な行為であっても、証言できる人がいない場合には困難に陥ることもあり得るので、可能な限り複数の教職員で指導に当たることが望ましい

 (注)教職員意識調査…平成25年3月1日付で大阪市教育委員会 体罰・暴力行為等対策本部長(教育長)名で各校に依頼した、教職員の体罰・暴力行為に対する意識の把握に関しての調査。

(1)体罰・暴力行為

1 身体に対する侵害を内容とする行為は、無条件に体罰・暴力行為であり、違法

 身体に対する侵害を内容とする行為、つまり、殴る(平手か拳かを問わない)、蹴る、故意に踏みつける、つねる、突き飛ばす、投げて転倒させる、物を投げつける等の行為は、態様・程度(部位・回数・強度等)のいかんにかかわらず、体罰・暴力行為に該当して違法である。たとえ児童生徒側に非違行為や反抗的な言動があったとしても、体罰・暴力行為は許されない。学校外でその行為を目撃した人が暴力とみなすような行為は、通常、学校内でも許されない体罰・暴力行為である。

〔例〕 

  • 体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。
  • 帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛ばして転倒させる。
  • 授業態度について指導したところ反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。
  • 立ち歩きの多い生徒を叱ったが、言うことを聞かず、席に着かないため、頬をつねって席に着かせる。
  • 生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩く。
  • 給食の時間、ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したが聞かなかったため、持っていたボールペンを投げつけ、生徒に当てる。
  • 部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該生徒の頬を殴打する。
  • 柔道の指導で、生徒が受け身をできないように投げたり、「まいった」と言っているのに攻撃を続けたりする。
  • 剣道の指導で、防具で守られていない身体の特定部位を打突することを繰り返す。

2 肉体的苦痛を与えるような行為は、社会通念に照らし、個別に判断

 上記1以外の肉体的苦痛を与える可能性のある行為について、体罰・暴力行為に該当するかどうかは、「行為の態様のほか、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境等の諸条件を総合的に考慮し、肉体的苦痛を与えるものと言えるかによって決すべきである」というのが基本的考え方である。その際、単に、行為をした教職員等や行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断する。

〔体罰・暴力行為に該当し許されない行為〕

  • トイレに行かせない。
  • 給食・昼食等の食事を与えない。
  • 正座で授業を受けさせる。
  • 校則違反として髪の毛を切る。
  • 長時間にわたって、無意味な正座・直立等の特定の姿勢を保持させたり、反復行為をさせたりする。
  • 忘れ物をした罰として、顔にマジックで印を書く。
  • 社会常識を超えて長時間走らせる。
  • 熱中症の発症が予見される状況下で、水を飲ませずに長時間ランニングさせる。

 等の行為は、前述のような諸事情を考慮して、社会通念上、「肉体的苦痛を与えるもの」と評価されるので、体罰・暴力行為に該当する。

【参考】言葉の暴力

 言葉による脅し、配慮のない言葉等によって、精神的な苦痛を与える「言葉の暴力」も、子どもの人権を侵害する行為である。

(2)認められる懲戒

○学校教育法施行規則に定める退学・停学・訓告(いずれも校長が行う懲戒)以外で、認められると考えられる懲戒の例として次のような行為が挙げられる。

(注)ただし、肉体的苦痛を伴わないものに限る。

  • 宿題を忘れたので、放課後等に教室に残留させる。
  • 授業中、私語を続けたり騒いだりする児童を教室内に起立させる。
  • 授業妨害をした児童生徒に対して、学習課題や清掃当番を課す。
  • 清掃当番をよくさぼる児童生徒に対して、清掃区域や日数を多く割り当てる。
  • 立ち歩きの多い児童生徒を叱って席に着かせる。
  • 練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させる。          等

 たとえ許される懲戒や指導であっても、証言できる人がいない場合には困難に陥ることもあり得るので、可能な限り複数の教職員で指導に当たることが望ましい。また、不必要に児童生徒の身体に触れることは、避けなければならない

(3)正当な行為

 教職員等が自らの生命・身体を守るための正当防衛が認められるのは当然である。また、他の児童生徒・教職員等に対する暴力行為を制止したり、危険を回避したりするためにやむを得ずにした行為も、正当行為として免責される。教職員や他の児童生徒に暴力をふるい、ふるおうとしている児童生徒、暴力的な喧嘩をしている児童生徒、物を壊す等して暴れている児童生徒に対する制止行為(腕や肩を押さえる、背後に回って身体を押さえつける、腕等をつかんで引き離す、腕をひっぱって引き離す、激しい場合には押さえ込んだり壁に押さえつけたりする等の行為)は、体罰・暴力行為に当たらない。

 【正当防衛】

○児童生徒による教職員等に対する暴力行為に対して、当該教職員等が防衛のためにやむを得ずにした有形力の行使。これにより当該児童生徒に対して肉体的苦痛等を与えた場合であっても、体罰・暴力行為に該当しない。

〈文部科学省通知:例示より〉

  • 児童が教員の指導に反抗して教員の足を蹴ったため、児童の背後に回り、体をきつく押さえる。

〈教職員意識調査より〉

  • 自分の言い分が通らず教員に対して体当たりを繰り返す児童に対して、両手で押しかえし壁に強く押さえつける。
  • 言葉遣いについての指導を受けた生徒が、指導に納得がいかず、教員と口論となった。おさまりがつかない生徒は、教員に殴りかかった。そのため教員は殴りかかってきた腕をはらい、背中にまわり生徒の体を壁に押さえつけた。
  • 友だちと口論になり興奮状態になった児童がカッターナイフを持ち出したところに、教員が駆けつけ制止しようと声をかけた。当該児童は制止しようとした教員に腹を立て、教員に向かってカッターを振り回した。教員は制止のために児童用の椅子で児童の体を止め、壁に押しつけカッターを取り上げた。
  • 教職員が胸ぐらを掴まれて、生徒の手を持って外した。

 【正当行為】

○他の児童生徒や他の教職員に被害を及ぼすような暴力行為を制止したり、目の前の危険を回避するためにやむを得ず行ったりした有形力の行使。これにより有形力の行使対象となった児童生徒に対して肉体的苦痛等を与えた場合であっても、体罰・暴力行為に該当しない。

〈文部科学省通知:例示より〉

  • 休み時間に廊下で、他の児童を押さえつけて殴るという行為に及んだ児童がいたため、この児童の両肩をつかんで引き離す。
  • 全校集会中に、大声を出して集会を妨げる行為があった生徒を冷静にさせ、別の場所で指導するため、別の場所に移るように指導したが、なおも大声を出し続けて抵抗したため、生徒の腕を手で引っ張って移動させる。
  • 他の生徒をからかっていた生徒を指導したところ、当該生徒が教員に暴言を吐きつばを吐いて逃げ出そうとしたため、生徒が落ち着くまで数分間、肩を両手でつかんで壁へ押しつけ、制止する。
  • 試合中に相手チームの選手とトラブルになり、殴りかかろうとする生徒を、押さえつけて制止する。

〈教職員意識調査より〉

  • 掃除をさぼっていた生徒に対して注意したところ、言うことを聞かず、ほうきを振り回し暴れだした。周りの生徒に危害が加わるおそれがあるため、ほうきを取りあげ、冷静になるまで体を床に押さえつけた。
  • 友だちとのケンカで興奮状態になり机や椅子を倒す等当たりかまわず物に当たったり、物を投げつけたりした児童に対して、教員が両手を押さえ、静かになるまで体を床に押さえつけた。
  • 興奮し、激しく暴れる生徒を教職員3人がかりで手足を持ち、押さえこんだ。
  • 他の教職員に危険が及ぶ可能性がある場合に、生徒を押さえつけて制止する。

(注)ただし児童生徒の行為に比して過剰な態様で防衛や制止を行うことや殴ったり蹴ったりすることは体罰又は暴力行為として違法となる。

2.体罰・暴力行為を許さない学校づくりのために

 桜宮高等学校における事案を受けて、「社会で許されない行為は、学校内であっても許されるものではない。」という認識を、教職員はもとより、子ども、保護者、地域の方々も含め、徹底して普及していかなければならない。

 一切の体罰・暴力行為を排した指導のあり方については、全教職員が子どもを一人の人格をもった人間として尊重し、生活指導をはじめとするあらゆる指導の中において子どもの人権を守りながら、望ましい人間関係を構築し、人格の尊厳に根ざした教育活動を推進していくことが重要である。

 生活指導においては、たとえ軽易な事案であっても問題を見逃さずに、「ダメなものはダメ」という毅然とした指導を行うとともに、そのことを日常的に指導することで、子どもに責任ある行動を促すことが必要である。また、道徳教育において、幼児期から小・中学校を通じた義務教育修了までの期間に、基本的な道徳心・規範意識を培い、例えば「人を大切にする」、「嘘をつかない」、「法を犯さない(ルールを守る)」、「勉強する」等、社会で生きる上で身に付けておかなければならない普遍的な事柄について、明確化して繰り返し指導しなければならない。

 桜宮高等学校の事案における外部監察チームの報告書では、次のような事項が指摘されている。1.体罰・暴力行為が禁止されているにもかかわらず、今日に至るまで根絶されていない根本的理由の一つは、体罰・暴力行為が行われても、当該生徒及びその保護者が異を唱えない場合、これが顕在化しないということ。2.体罰・暴力行為の根絶を早期に実現するためには、まず教職員側において学校現場におけるチェック機能が正常に機能する体制を速やかに整備する必要があること。

 これらのことを踏まえ、『体罰・暴力行為を許さない学校づくり』を目指し、各学校においては、次の事項について共通認識を深めていくことが大切である。

1 教職員に必要な自覚と認識

○体罰・暴力行為は、子どもの人権及び人間としての尊厳を損なう行為であることを強く認識する。

 体罰・暴力行為は、指導の放棄であり、子どもの心身を深く傷つけ、人格の尊厳に立脚すべき教育の根底を崩すもので、絶対に許されるものではない。

○体罰・暴力行為を許さず、見逃さないことは、教職員の責務であることを自覚する。

 「愛情に基づく体罰・暴力行為は許され、教育的にも効果がある」とするいわゆる『愛のムチ』論は、教職員や保護者の中にも根強く残っている。しかし、これは絶対に許容できない誤った考え方であり、たとえ体罰・暴力行為を子どもが表面的には受け入れたかに見えても、強い否定を貫くことが大切である。また、体罰・暴力行為を目撃したら、必ず報告しなければならない。

○体罰・暴力行為を容認する学校に対する子どもの不信感と教育的悪影響は計り知れない。

 体罰・暴力行為を目撃した子どもは、教職員に対して不信感を抱く。また、他の教職員による体罰・暴力行為を止められない教職員も体罰・暴力行為を容認していると受け止められ、学校全体に対する不信感につながり、教育に及ぼす悪影響は計り知れない。

○自らカウンセリングマインドの涵養に努める。

 長期的な視点に立って、子どもの成長を願う心の余裕をもち、子どもの話をじっくり聴き、根気よく指導するカウンセリングマインドが大切であり、体罰・暴力行為の防止につながる。

○子どもの変化を捉え、常に指導力の向上を目指し、研鑚を積んでいく。

 教職員としての自尊心を傷つけられるような子どもの態度に、自分の感情を抑え切れなくなり、体罰・暴力行為を行う場合も多い。授業中の私語が絶えない、自分の熱心な指導を無視されたり、反抗されたり等、自分の思いが子どもに伝わらない、というあせりを感じている教職員の姿がそこにある。これは自らの指導力不足からくると認識すべきである。多様化している現代の子どもに対して、旧態依然とした指導が通用するとは限らず、日常的に子どもの実態把握を行うとともに、最近の子どもの心理・行動様式の変化を踏まえた対応について研究し、指導力の更なる向上に努める必要がある。新任教職員だけでなく、全教職員が研鑽を続けなければならない。

2 学校体制のあり方

○管理職をはじめ、全教職員が校内に体罰・暴力行為を引き起こす土壌がないか、いわゆる『愛のムチ』肯定論を認める体質がないか常に点検する。

 職員会議、学年会、生活指導部会等で、体罰・暴力行為が疑われる事案の確認を常に意識して行う。

○一部の教職員に生活指導を任せきりにしたり、逆に担任等がそれぞれ一人で抱え込み、孤立する指導になったりしないよう、組織的に取り組むことのできる体制づくりを進める。

 指導に関して決して秘密主義や閉鎖性があってはならず、管理職はもとより、学年や生活指導部が指導内容を共有する機会を日常的にもつ。また、毎月の職員会議でも全教職員が全ての生活指導事案を共通理解できるような情報交換会を実施し、学校全体の組織的な連携を図る。

 また、日常的にお互いの指導に対して指摘したり、相談したりできる、開放的で率直な人間関係・職場環境づくりに努める。

○教職員研修を通して体罰・暴力行為を排した生活指導の確立に努める。

 「校内研修の手引き」等を活用し、事例を通した研修やワークショップ研修等の効果的な方法を工夫し、全ての教職員の意見が反映できるような校内研修を定期的に開催し、人格の尊厳に根ざした教育観を確立する。

○子どもが何でも話せる環境づくり等、教育相談体制の充実に努める。

 定期的に相談週間を設けるだけでなく、いつでも気軽に相談できる仕組みを学校として確立する等、子どもの声を聞き逃さない体制を構築する。その際、子どもの悩みや不安が潜在化・深刻化しないように留意するとともに、子どもの人権・プライバシー保護について十分配慮する。

○保護者・地域からの情報が入りやすいシステムを確立し、体罰・暴力行為事案を含む様々なことについて、学校外からの声をキャッチできるようにする。

 PTA活動や地域の行事等を通して、管理職をはじめ教職員が保護者・地域の方々と意思疎通を図り、直接・間接に、学校長のもとに情報が入るように心がける。

3 生活指導のあり方

○子どもたちが心の触れ合いを通して、互いに認め合い、思いやり、ともに育ち合う力を育て、互いの人格を尊重し合うよう指導する。また、いじめ・暴力等を決して許さない指導を徹底する。

 常に集団を意識した学級・学年活動を行うとともに、子ども一人ひとりが自己肯定感を高め、自分の居場所を確保できるよう、個を意識した取組を行っていくことが大切である。また、子ども同士が間違った行為を指摘し合い、助け合い、高め合いながら、自分たちの力で正しい方向へ進んでいく集団づくりに努めるとともに、孤立しがちな子どもを支援することも重要である。

○子どもたちの友人関係、学校生活、家庭の状況等、多面的な状況把握が必要である。また、子どもの行動のもとになっている心の動きや、環境要因等との関係を探っていくことも大切である。

 問題行動に対処するには、原因・背景を知ることが重要である。児童生徒一人ひとりには、それぞれの生活背景がある。その生活背景を踏まえ、原因を探り、掴んだ上で児童生徒を指導することが大切である。こうした児童生徒理解に基づく指導により、児童生徒との信頼関係が着実に深まる。子どもは、問題行動の指導の中で、全く理屈の通らないような言い訳をする場合がある。表面的には、自らの過ちを認めず、正当化しようとしているように見えるかもしれない。しかし、そうせざるを得ないような背景が潜んでいる場合もある。日頃から過度の期待を受けてプレッシャーを感じている、逆にあまりにも期待をされずに放任され寂しい思いをしているのかもしれない。指導の場面だけでなく、日常的に子どもを観察し、会話を交わし、時には家庭に足を運び、学校とは違った顔を見てみる等、子ども理解に努めることが大切である。

○生活指導で重要なことは、子どもが自分の過ち等に気づき、今後の自身の改善・成長につなげることである。そのためには、感情的な指導ではなく、自身が冷静になるとともに子どもを落ち着かせ、子どものためを思う教職員の意図が伝わるような内面に迫る指導をめざす。

 まず、子どもの声にしっかり耳を傾け、なぜそのような行為に至ったのかを辛抱強く聞き出すことが必要である。子どもは自分の過ちを正面から頭ごなしに非難されれば、自分を守ろうとして理屈をこねたり、反抗的な態度をとったりしがちである。指導は、子どもに自分自身を振り返らせ、本当の気持ちを見つめさせるチャンスと捉え、愛情とカウンセリングマインドをもってじっくりと話し込むことが大切である。子どもは自分の話を聞いてくれ、自分を本当に理解し、愛情を注いでくれる人にしか心を開かないものである。

○寄り添いながらも厳しさをもって、「ダメなことはダメ」「君のことを信じているよ」という二つのメッセージを両立させながら、子どもたちに伝える。

1.愛情を保障する…「大切に思っている」「絶対に見捨てない」「自信をもて」「不安に感じなくていいよ」「信頼している」等のメッセージを明確に伝える。

2.発達を保障する…「ダメなことはダメ」と、許されないことをきちんと説明しながら、本気でしかる。その子どもの課題を客観的に把握し、身に付けるべき力を示して、課題に向き合って克服できる力を付けなさいと、とエンパワーメントする。

3.自立を支援する…自分のしんどさを周りのせいにするのではなく、社会の中で自分の力で生活し、正しく生きていく力をつけるよう励ます。

 等の姿勢を明確に意識することによって、教職員がよりゆとりをもって対応できる。このような視点をもって、感情的に揺さぶられない=感情的にならない、子どもを嫌いにならないことが決定的に重要である。

○全教職員の共通理解のもとで組織的に取り組み、複数名で子どもに対応し、多面的に子どもを理解、指導するよう心がける。

 いろいろな背景や原因から教職員の指導に従いにくい子どもがいる場合、例えば担任一人で悩み、行き詰まり、ストレスを溜めることが体罰・暴力行為につながることも多く見られる。そこで日頃から、生活指導においてはできる限り複数で対応するようにし、たとえ一人で対応しても常に学年や生活指導担当と指導内容の共有を図っておき、チームとして取り組んでいくことが大切である。

4 保護者・地域との連携と開かれた学校づくり

○子どもの自主性・協調性を育む。

 子ども一人ひとりが互いの人権を尊重し、ともに一つのことをつくり上げる経験を通して、自主性や協調性をはぐくむことが大切である。仲間を大切にし、いじめや暴力は許さない、という学校風土づくりに心がける。

○PTAと協力して、「体罰・暴力行為を許さない学校づくり」に保護者とともに取り組む。

 「躾のためならたたいてもいい」「多少の体罰は許しますから」といった保護者が見受けられるのも事実である。そのような意識の改革のために、学校と保護者が協力して、体罰・暴力行為問題のみならず児童虐待等幅広いテーマでの研修会を実施することが大切である。

○保護者・地域と連携する「開かれた学校づくり」に努め、指導方針に対する理解を求める。

 保護者や学校協議会の委員に対して、年度当初や適当な機会に体罰・暴力行為を否定する明確な指導方針を説明し、理解を求めることが大切である。また、オープンスクールを学期に1回開催する等、保護者・地域住民に常に開かれた学校となるよう努めることを心がける。

○“指導”の中には「愛のある力による指導」「保護者が納得した上での体罰」が含まれる、といった教職員・保護者等の誤った認識があった。

○体罰・暴力行為による指導はあり得ない。

○『指導・懲戒』と『体罰・暴力行為』を明確に区別する。

3.体罰・暴力行為が発生した時の対応

 これまで、教職員が体罰・暴力行為を行った時、「本人・保護者が納得しているから問題にはならないだろう」という考えで、当該教職員の対応のみで完結させる場合があった。また、校長の中にも、「頑張っている教職員の経歴に傷を付けたくない」「報告書を上げたら校長である自分も処分されるのではないか」といった思いで、教育委員会に報告しない場合もあった。さらに、教育委員会事務局においても、指導部から教務部へ報告されないことがあった。

 平成25年4月30日の外部監察チーム報告書は、以上のように、生徒及び保護者が異を唱えなければ、顕在化されることなく、処理されてきたことが、体罰・暴力行為が根絶されない根本的理由の一つである旨、厳しく指摘している。

 大阪市教育委員会は、同報告書の指摘・勧告を真摯に受け止め、体罰・暴力行為は決して許されないとの姿勢を大前提としつつ、同時に、体罰・暴力行為は発生し得ること及び発生しても顕在化しにくい傾向があることの認識の上に立って、発生時には必ず報告が上がる透明性の高い報告体制の構築及び報告漏れに対する厳正な対処をはじめ、発生時の適切な対応及び組織体制を明示し、徹底することにより、体罰・暴力行為を許さない学校づくりを進めていくことを新たな基本方針とすることとした。

 この基本方針に基づき、教育委員会は、以下の3点を全市立学校に徹底するとともに、学校からの報告先を教務部に一元化することにより、体罰・暴力行為事案に対する適切な処理体制を整備することとしたので、各学校においては、遺漏なきよう、全ての教職員に周知徹底されたい。

1.体罰・暴力行為を行った教職員は、たとえ被害児童生徒・保護者が納得していても、必ず管理職に報告すること。また、体罰・暴力行為を発見した教職員も、必ず管理職に報告すること。

2.校長は、教職員が体罰・暴力行為を行った場合、たとえ被害児童生徒・保護者が当該教職員を許したとしても、管理職に必ず報告するよう周知徹底すること。

3.校長は、教職員からの報告等により体罰・暴力行為を把握した場合、学校内での対処に留めることなく、必ず教育委員会(教務部教職員人事担当【服務・監察グループ】)へ報告を行うとともに、「体罰・暴力行為等に関する報告書」を提出すること。

 教職員人事担当への報告により直ちに懲戒処分を行うものではなく、教育委員会が調査を行った上で処分の必要性の有無を判断するものである。

 以上のことを踏まえ、本市の全市立学校の校長及び教職員は、体罰・暴力行為に該当する可能性がある行為については、軽微な事案、不確かだが疑わしき事案も含め、全ての事案を報告すること。

 なお、校長から教育委員会への報告は、学校管理規則第12条に基づくものであり、報告を怠った場合、体罰・暴力行為を行った所属教職員に対する管理・監督責任にとどまらず、報告義務違反という校長自身の非違行為が生じ、懲戒事由となり得るので、くれぐれも留意されたい。

学校の対応

体罰・暴力行為を起こした 体罰・暴力行為を発見した

管理職に報告

被害を受けた子どもの救済(けがの治療・心のケア)正確な事実確認

被害を受けた子どもやその保護者への対応

○ 被害児童生徒やその保護者への誠意ある対応

○ 体罰・暴力行為の非を認め、謝罪する

(児童生徒に問題行動等があっても、峻別して説明)

○ 必要があれば、加害教員との接触を避ける等、被害児童生徒が学校に通いやすくするための対応策

○ 体罰・暴力行為発生の原因分析と再発防止策の検討

○ 加害教員に対する再発防止研修その他の措置の実施

       

報告

教育委員会への報告  教育委員会教務部

○教務部教職員人事担当服務・監察グループへ一報の上、体罰報告書を提出

○必要に応じて、専門家チームを活用

・スクールカウンセラーを要請する。

・弁護士に法律相談をする。 等

4.体罰・暴力行為を行った教職員の責任

 体罰・暴力行為は、法律で禁止されている。したがって、体罰・暴力行為を行った教員は、行政上、刑事上、民事上の個人責任を負う。

1 行政上の責任

○職務義務違反(地方公務員法第29条)⇒懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)

○校長の監督責任(学校教育法第37条4項)

※「職員基本条例」別表
 項番号非違行為の類型懲戒処分の種類
 38教職員が児童等の身体を傷害するに至らない体罰を行うこと停職、減給又は戒告
 39教職員が前項に掲げる行為を常習的に行うこと免職又は停職 
 40教職員が体罰により児童等の身体を傷害すること免職、停職又は減給

2 刑事上の責任

○ 暴行罪(刑法第208条)・・・殴る、蹴る等(相手をけがさせていない)

○ 傷害罪(刑法第204条)・・・殴る、蹴る等(相手をけがさせた)

○ 監禁罪(刑法第220条・・・不当に長時間居残りをさせる等

3 民事上の責任

○ 不法行為による賠償責任(民法第709

 →傷害に対する治療費や慰謝料等の損害賠償を行う必要がある。

○ 国家賠償法第1条第2項

 →体罰・暴力行為を行った教職員に対しては、原則としてその賠償額を求償している。

 (注)求償・・・、市が被害児童生徒に支払った賠償金について、体罰・暴力行為を行った教職員に対して市が請求すること。

4 体罰・暴力行為を行った教職員の懲戒処分例

事例1 以前、複数の生徒に対し、長期間にわたり度々掌で頬を叩く等の行為を行い、停職3月の懲戒処分を受けていたにもかかわらず、生徒に対し掌で頭を2回叩く行為を行った。⇒停職6月

事例2 生徒が注意に従わなかったため、みぞおち付近を蹴り、顔面を殴る等の体罰を行い、顔面挫傷等、全治10日の傷害を負わせた。⇒停職3月

事例3 長期間にわたり、複数の児童に対し、宿題や持ち物忘れが続いた際に、平手で軽く頭を叩いたり、教室の後方で5分から10分程度正座をさせたりする体罰を行った。⇒減給1月

※教職員が懲戒処分等を受けると、昇給の号給数や勤勉手当の成績率が標準より減額されます。なお、懲戒免職になると、退職手当は支給されません。

処分等の給与等への影響一覧の表

処分により昇給や勤勉手当にどのような影響があるかを表した表

(注)昇給については、昇給日(1月1日)前1年間に処分等を受けた場合、勤務成績に応じた昇給号数から減じる。なお、府費教職員及び市費教員については、前年度の評価が「A」の場合の影響を示している。

(注)勤勉手当については、基準日(6月1日、12月1日)前6ヶ月に懲戒処分を受けた場合。

◎生涯獲得賃金への影響

(例)30歳の府費教諭が、懲戒処分を受けた場合の生涯獲得賃金への影響の目安

   (注)あくまでもモデル的な計算であり、実際には昇給や昇格(昇任)経過等によって、異なります。

生涯獲得賃金への影響額
停職1月430万円以上
減給3月230万円以上
戒告150万円以上
文書訓告1万円以上

5 体罰・暴力行為事案の判例

判例1 中学校のバレーボール部の合宿で、顧問の教諭がスパイクミスに腹を立て、中学校2年生徒の顔面にバレーボールを投げつけ、生徒は脳内出血により植物状態になった。

 ⇒裁判所は、教諭の暴行と生徒の症状に因果関係を認め、市に損害賠償として1億6千万円の支払いを命じた。

判例2 小学校において、他の児童に対して叩く等の行為を行った児童の頭部を担任教諭が30発から40発にわたって平手で叩いた。

 ⇒裁判所は、精神的慰謝料として、市に140万円の支払いを命じた。

判例3 中学校の部活動において、態度の悪さを指導したが改まらなかった生徒の両頬を平手打ちし、聴力低下の症状が残った。

 ⇒裁判所は、精神的慰謝料として、市に120万円の支払いを命じた。

6 教職員へ求償を行った事例

事例1 体罰を行ったことにより、裁判所から220万円の支払いを命じられた事案

 ⇒当該教員へ一部を除いた全額を求償した。

事例2 体罰を行ったことにより、裁判所から120万円の支払いを命じられた事案

 ⇒当該教員へ全額を求償した。

5.体罰・暴力行為から生じる問題点

体罰・暴力行為は、その行為を直接受けた子どもだけでなく、周りにいる子どもたちをはじめ、保護者や地域にも大きな影響を与える。

体罰・暴力行為

子どもへの影響

○「心」への影響⇒心の傷を残す 心の成長を阻害

 肉体的・精神的苦痛、屈辱感、自虐感、自尊感情の減退

○「学習」への影響⇒学習意欲、集中力の低下

○「子ども同士の人間関係」への影響

 ⇒関係の歪み、価値観の変化、力で解決する風潮

○「子どもと教員の人間関係」への影響

 ⇒子どもの持つ教師像に歪み

 

地域・保護者への影響

 当該教員が子どもや保護者からの信頼を失う

 教職員全体への不信感

 学校の様々な取組への信頼が崩れる

 地域社会で体罰についての風評

 学校の教育方針や指導体制への不満・不信感

6.児童生徒の問題行動に対して

 教職員意識調査の集計結果からは、「体罰・暴力行為等は絶対に許されない。」「当然のことながら法律を遵守すべきである。」等、体罰・暴力行為は許されない行為であると全体的に認識されていることが分かる。一方で、「生徒が暴れていて、止めようとして怪我をさせてしまったことを体罰と言われたら身体接触できない。」等、生徒の問題行動に対する指導に学校現場は困惑している状況も見られる。

 そこで、児童生徒の問題行動の発生時に学校として必要な対応について、レベル1~5の5段階に分けて例示した。レベルごとに分けて対処する意義は、

1.加害者の加害行為を早期に指摘し、本人の自覚を促し、保護者の協力を要請する。

2.問題行動等による被害者の被害の拡大を未然に防ぐ。

3.教員が適切な指導が行えない状態を避ける。

4.レベルによって対応の主体を学校から教育委員会、外部機関へと移行し、問題行動の改善を図っていく。

 の4点であり、加害者・被害者の保護、および教員の保護にもつながるものである。

 問題行動の重篤度に応じた具体的な例をもとに、学校としての対応について理解し、教育委員会との連携を図り、適切に生徒指導を行うことができるようにしたい。

 なお、「いじめ」も問題行動に含まれるが、被害者への共感的支援、加害者への毅然とした指導、傍観者への指導等も必要であることから、別立てで後述している。

 また、この「4.児童生徒の問題行動に対して」は、学校現場の生活指導において、体罰を生みださずに指導するために示した対応方法であり、事例についてもそこに焦点を当てたものにした。児童生徒間の暴力行為についても、絶対に許さないという強い決意をもって、ここに示したレベルに応じて対応していく。

留意事項

(注)レベル1~3については学校が主体で対応するが、問題行動をどのレベルの行為として扱うかの判断を学校長が迷う場合は、教育委員会に相談する。

(注)また、いかなるレベルであっても同様の問題行動を繰り返す場合は、ひとつ上の重いレベルとして対応する。

(注)問題行動、とりわけ児童生徒間暴力・対教師暴力等の暴力行為については、レベル3以上に位置付け、警察への通報・被害届の提出等連携を行い、毅然とした姿勢で対応する。

(注)第三者専門家チームの派遣については、事案の内容に応じて必要性を判断し、教育委員会と相談して決定する。

1 児童生徒の問題行動の発生時

 問題行動が発生した場合、単に現象面にのみとらわれるのではなく、その背景を的確に把握するために、以下に示す初期対応を大切にし指導をすすめる。

○事実確認をする。内容をできる限り詳細に聞き取る。(いつ、どこで、だれと、だれが、だれに、どのように、何をして、何を思った、どうなった等)

○指導方針、指導方法等を教員間で協議し、対応する。

 レベル1~5のうち2以上のレベルでは、校内対策会議を開催し対応に当たる。 

校内対策会議の開催

 メンバー:管理職、生徒指導担当、学年主任、担任学年教員、養護教諭

(注)学校長の判断で必要に応じて部活動顧問やスクールカウンセラーを加えることが可能

 ☆役割分担

 (児童生徒からの聴取、聴取後の対応、保護者対応等)

 ☆状況把握…事実を時系列で整理【記録】

 ☆対応方針の確認

相談・連携

教育委員会に状況を随時伝え、相談して対応を図る。≪報告書の提出≫

※対応については、教育委員会への報告・相談を大切にし、例えばレベル1・2であっても警察との連携を図ることが考えられる。とりわけ、いずれのレベルであっても問題行動の中の犯罪行為については、被害者の意向をよく聞き、被害者が警察への通報(被害届を含む)を望む場合は、警察へ相談・通報する。

レベル1

●管理職に報告し、担任・学年が把握し、注意・指導を行うレベル。

○担任・学年で対応し、解決を図る。

○必要に応じ、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携を図り、指導・相談を実施する。

【問題行動の例】

◇無断欠席・遅刻

◇反抗的な言動

◇服装・頭髪違反

◇授業をさぼる

◇学校施設の無許可使用

【事例1-1】

 放課後、体育館に無断で入り込み、バスケットボールをして遊んでいた数名の生徒に対し、担任が指導したが、反抗的な態度をとった。

【事例1-2】

 図画工作科の学習中、彫刻刀の使用について指導していた担任に対して、6年生男子児童がふざけた態度をとった。危険な行為に及ばないよう注意したところ、担任を挑発しからかうような言葉をあびせた。

 管理職への報告を行い、放課後、担任と学年主任が当該児童生徒と保護者を学校に呼び、指導した。

レベル2

●管理職・生活指導部(担当)を中心とする学校全体で共通

 理解を図り指導・改善を行うレベル。

○校内対策会議を開催する。

○担任・学年とともに管理職・生活指導部(担当)が指導し、同様のことを繰り返さないよう、保護者を交えて指導する。

○状況に応じて、第三者専門家チーム、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を活用する。

【問題行動の例】

◇攻撃的な言動・軽度の暴言

◇軽微な賭けごと

◇軽微な授業妨害 

◇軽微な器物破損

◇授業をさぼって校内でたむろする

【事例2】

 始業のチャイムが鳴ったにもかかわらず、2名の生徒が廊下で遊びを止めなかった。A教諭が遊びを止めて教室に入るように促したところ、2名は遊びを止めず暴言を吐いた。他の教諭も駆けつけ、遊びを止めさせた。

 放課後、担任及び学年主任とともに管理職及び生活指導担当教諭が、当該生徒2名に対し、保護者も交えて指導した。その後、管理職及び教員が学校を巡回し、再発防止に努めた。

レベル3

●警察や関係機関と連携して学校内で指導を行うレベル。

○校内対策会議を開催する。

○担任・学年とともに管理職・生活指導部(担当)が指導し、同様のことを繰り返さないよう、保護者を交えて指導する。

○状況に応じて、第三者専門家チーム、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を活用し、関係機関と連携して指導を行う。

○管理職が警察・こども相談センターと連携し指導計画を立て、学校で指導するとともに、保護者にも働きかけ、家庭でも指導する。

○教室での指導だけでなく、別室等を活用した指導を行い、問題行動の改善を促す。

☆状況に応じて学校または個人(被害者)が、警察に被害届を提出する。

【問題行動の例】

◇暴言・誹謗中傷行為

◇脅迫・強要行為

◇暴力

◇軽微な窃盗行為

◇悪質な賭けごと

◇著しい器物破損

◇バイクの無免許運転

◇喫煙

◇著しい授業妨害

【事例3-1】

 他の生徒に対して暴力行為を行った生徒を指導した。その際、指導する教師に対しても、制止を振り切ろうと突き飛ばしたり、反抗的で暴言を吐いたりもした。

【事例3-2】

 授業中、集団で奇声を上げながら廊下を走り回る授業妨害を繰り返したり、器物破損を続けたりする生徒たちに対し、継続して指導を実施する。担任に加え、生徒指導担当教員等も一緒に指導に入るがおさまらない。制止する教員に対して暴言を吐いた。

・管理職が警察やこども相談センターに連絡を取り、当該児童生徒の状況を報告した。スクールソーシャルワーカーにも相談し、保護者の役割を明確にしながら、指導計画を立案し、学校・家庭で指導を強化した。

・管理職及び教員が学校を巡回し、再発防止に努めた。

レベル4

●教育委員会が主導的役割を担い、出席停止措置を行うとともに、警察等と連携して学校外で指導を行うレベル。

○校内対策会議を開催する。

○管理職が警察・こども相談センターと連携した指導を行う。

○状況に応じて、第三者専門家チーム、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を活用し、関係機関と連携して指導を行う。

○教育委員会が出席停止措置を行い、指導計画に基づき家庭・校外で指導する。

○教育委員会・学校が中・長期的な指導計画を立て、継続的な対応を行う。

☆状況に応じて学校または個人(被害者)が、警察に被害届を提出する。

【問題行動の例】

◇重い暴力・傷害行為

◇重い脅迫・強要・恐喝行為

◇危険物の所持

◇違法薬物の所持・販売行為

◇窃盗行為

◇痴漢行為

【事例4-1】

 授業妨害や指導に対する反抗的な態度を繰り返す生徒に対して注意をしたところ、暴れだした。数名の教員が制止したがおさまらず、担任教諭に殴りかかり頬を殴って、軽傷を負わせた。

【事例4-2】

 これまでも問題行動を繰り返していた十数名の生徒が、校内をバイクで走り回る行為を行った。その行為を制止しようとした教諭を足で蹴り、振り払った。その後も30分ほどバイクで走り回る行為を続けた。

・管理職が関係諸機関と連絡を取り、継続して指導を行ったが改善が見られないため、教育委員会が出席停止を命じ、学校とともに立てた指導計画に基づき、警察やこども相談センター等と連携して校外で指導した。

・教育委員会が学校に対して、継続的な対応の指示を行った。

レベル5

●学校・教育委員会から、警察・こども相談センター等、外部機関に対応の主体が移るレベル。

○校内対策会議を開催する。

○状況に応じて、第三者専門家チーム、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を活用し、関係機関と連携して指導を行う。

○教育委員会主導で、警察・こども相談センター・児童自立支援施設等における対応に移行し、関係機関と学校の連携を図りながら指導する。

【問題行動の例】

◇極めて重い暴力・傷害行為

◇極めて重い脅迫・強要・恐喝行為

◇凶器の所持

◇放火、強制わいせつ、強盗

【事例5】

 当該生徒は授業妨害・生徒間での暴力行為を繰り返し、再三にわたり指導されている。時には指導に対して反抗し、教員に対しても暴力行為を行うことがあった。この日も立ち歩き等を繰り返し教員から注意を受けた。冷静さを失った生徒は、教員に殴りかかり数回顔を殴り全治3カ月の重傷を負わせた。

・管理職と相談の上、当該教員は傷害事件として警察へ通報し被害届を提出した。同時に教育委員会へ報告し、教育委員会・警察・こども相談センターと相談の上更生プログラムを作成し、児童自立支援施設で指導を行った。

 

いじめのレベル例示                         

(注)警察と連携が必要な事案については、レベルに関わらず警察に通報・相談する。

レベル1

(注)同種の行為を2回繰り返す場合は、レベル2の対応を行うこととする。

◇ことばによるからかい 

◇無視

◇攻撃的な言動(荒っぽい言葉づかい・乱暴な振る舞い等)

(注)その他、教育的見地からレベル1として指導するのが適切と判断される場合

レベル2

(注)同種の行為を2回繰り返す場合は、レベル3の対応を行うこととする。                

◇仲間はずれ 

◇悪口・陰口、軽度の暴言

(注)加害者と被害者の関係性、頻度、周囲への影響等の要素を総合的に見て、レベルを判断する

(注)その他、教育的見地からレベル2として指導するのが適切と判断される場合

レベル3

(注)同レベルの行為を繰り返す場合は、レベル4の対応を行うこととする。

◇暴言・誹謗中傷行為

〈「死ね」「うざい」等の書き込み、集団による誹謗中傷等、態様が悪質で被害が大きいもの〉

◇脅迫・強要行為〈態様・被害・影響が比較的軽いものでレベル4に至らないもの〉

◇暴力(蹴る・叩く・足をかける等、態様・被害・影響の比較的軽いものでレベル4の暴力行為にあたらないもの〉

(注)その他、教育的見地から、レベル3として指導するのが適切と判断される場合

レベル4

(注)同レベルの行為を繰り返す場合は、レベル5の対応を行うこととする。

◇重い暴力・傷害行為

◇重い脅迫・強要・恐喝行為(金品を求める、屈辱的な行為をさせる等、大きな被害を及ぼすような行為のうち、レベル5に至らないもの)

(注)その他、教育的見地から、レベル4として対処するのが適切と判断される場合

(注)被害生徒の状況を考慮し、被害生徒の保護・加害生徒への教育的指導という見地から必要があると判断した場合、出席停止を活用する。

レベル5

◇極めて重い暴力・傷害行為・脅迫・強要・恐喝行為(態様・被害の程度・背景事情を考慮する)

(注)その他、教育的見地から、レベル5として対処するのが適切と判断される場合

                                                                          

≪日常的に学校をサポートする体制≫

○生徒指導支援員

教育委員会が、生徒指導が困難な状況にある中学校からの要請を受け、警察OBを生徒指導支援員として派遣し、教職員の生徒指導の支援・助言に当たる。

(注)学校の要請により教育委員会が派遣する。(各担当指導主事と生活指導グループに相談)

○スクールカウンセラー(SC)

スクールカウンセラーは、本人の抱える心の問題を改善・解決に向けて支援していく臨床心理の専門家である。子どもや保護者の心理的な葛藤をときほぐすために、カウンセリングにより問題解決を図る。

(注)週1回各中学校にカウンセラーを配置している。校区の小学校も活用が可能。

○スクールソーシャルワーカー(SSW)

スクールソーシャルワーカーは、子どもに影響を及ぼしている家庭・学校・地域環境の改善に向けて、学校・家庭・地域の支援ネットワークを築く福祉の専門家である。子どもが置かれた背景や状況に焦点を当て、福祉関係機関等と連携・調整を進めながら、子どもを取り巻く環境の改善を図る。また、家庭訪問や福祉関係機関とのネットワークを活用し、教職員と協働体制をとって課題の解決に当たる。

(注)学校の要請により教育委員会が派遣する。(各担当指導主事と生活指導グループに相談)

≪第三者専門家チーム≫

いじめ、不登校、児童虐待、暴力行為等、学校だけでは解決が困難な事案について、弁護士・精神科医・臨床心理士・社会福祉士・警察OB等から構成される第三者専門家チームが、第三者として専門的な立場を生かした支援を行う。学校長のみならず、学校協議会・教育委員会からの要請により、メンバーを派遣する。事案の内容によっては、保護者や子どもの声を直接聴いて助言・相談を行う。

重大な事件・事故発生の場合は、チームとして対応に当たり、それぞれの専門的な立場を生かして、より効果的な支援・助言を行う。

【第三者専門家チームの活用】

○ 学校への支援

  • いじめ・問題行動を起こす児童生徒への対応
  • 児童虐待に関する諸問題への対応
  • 重大な事件・事故発生時の対応
  • 指導体制の再構築
  • 保護者対応、地域・関係機関との連携  

等、対応や解決策についての助言を学校に行う。

〔第三者専門家チームの構成メンバーと役割〕

専門家による第三者としての立場を活かした支援を行う

○弁護士…法的な観点から児童生徒及び保護者への対応に関する助言を行う。

○精神科医…児童生徒に医療的な支援・対応や介入等が必要な場合の相談・助言を行う。

○臨床心理士…児童生徒の心理面や悩みに関する相談、環境整備等の支援を行う。

○社会福祉士…福祉関係機関との連携や児童生徒及び家庭への支援を行う。

○警察OB…関係機関と連携した対応、支援及び助言を行う。

2 問題行動への対応例

各段階で示した対応と併せて、加害児童生徒に自分のおかした行為の重大性を認識させ、改善に結びつけていくとともに、いじめ等の傍観者に対する指導にもつなげるために、下記の例を参考に、事案に応じて組み合わせる等して対応を進める。

対応の例示                         
A加害児童生徒への説諭

  ◇担任・学年教員・養護教諭・部活動顧問等による説諭

  ◇生徒指導主事(生活指導担当)・管理職による説諭

B学級会での話し合い

  ◇学級全体の問題としてとらえ、各自が自分の行動を振り返るとともに、学級の連帯感や人間関係が確立できるような実践目標、具体的な行動・取組等を話し合う。また、話し合いを通じて、いじめにつながるような学級の諸問題の解決を図る。

  ◇いじめをテーマとして取り上げ、未然防止や解決の手立て等について話し合う。

C加害・被害の児童生徒による話し合い

 ◇状況に応じて必要だと判断される場合、教職員がサポートし、当事者による解決に向けた話し合いを行う。

D教職員、管理職による講話

  ◇学級会・学年集会・全校集会等での講話。

Eゲストティーチャ―による講話

  ◇保護者、地域の方、外部人材等による学級・学年・学校全体への講話。

F清掃活動、ボランティア活動、体験活動への参加

  ◇加害の児童生徒が自主的に取り組むことができるような活動への参加。

  ◇達成感や人間関係の深化が得られるような行事・活動を企画し(活動と連携し)、学級・学年や学校全体で取り組む。

G児童会・生徒会の活動

  ◇学校全体の問題としていじめの未然防止や解決に取り組むことができるよう、児童会・生徒会活動として取り組む(○○宣言、△△アピール等)。

H読書・映画等の教材活用、感想文

 ◇加害児童生徒が自身を振り返り、言動を改めるきっかけとなるような本や映画を加害児童生徒に紹介し、感想をまとめたり話し合ったりする。

I家庭での話し合い

  ◇保護者の協力を得て、加害児童生徒が家族で話し合い、自身の行動の反省と決意を整理する。

J作文、反省文等による加害児童生徒の意思表明

  ◇家庭で話し合った結果を文章にまとめる等して、今後の決意を表明する。

K保護者への説諭

  ◇加害児童生徒に対する学校の指導方針を示し、家庭と連携した指導を行うための助言・説諭を行って保護者の協力を求める。

L「非行防止教室」の活用・連携した取組

  ◇いじめの未然防止や早期解決に向けた内容を盛り込んだ「非行防止教室」の開催。

M少年サポートセンターとの連携

  ◇少年相談、立ち直り支援活動等の活用。

N警察、こども相談センターへの相談・通報

  ◇相談・通報をもとに、外部機関・施設等と連携した対応を進める。

O.スクールカウンセラーとの連携

  ◇中学校に配置(小学校に派遣)しているスクールカウンセラーと連携し、カウンセリングを通して児童生徒および保護者への対応を行う。

P第三者専門家チームの支援要請・・事案に応じて専門家の助言・支援を要請する。

≪専門家チームの支援要請は教育委員会生活指導グループへ≫

弁護士

    法的な観点から児童生徒および保護者への対応に関わる助言を行う。

精神科医

    児童生徒に医療的な支援・対応や介入等が必要な場合の相談・助言を行う。

臨床心理士

    児童生徒の心理面や悩みに関する相談、環境整備等の支援を行う。

社会福祉士

    福祉関係機関との連携や児童生徒及び家庭への支援を行う。

警察OB

     関係機関と連携した対応、支援及び助言を行う。

 

短期、中・長期の指導計画

~事案に応じて以下の内容を柱にした計画を立て、取り組む。~

      ◇規範意識・社会性等の育成

      ◇学習支援

      ◇情緒の安定

      ◇福祉機関と連携した家庭への支援

      ◇警察・こども相談センター等と連携した立ち直り支援

3 出席停止措置

 ○ 公立小中学校における出席停止制度は、学校教育法第35条に規定されており、出席停止を命じる児童生徒本人に対する懲戒という観点からではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられている。

(注)学校教育法第35条

    市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であって他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。

   一 他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為

   二 職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為

   三 施設又は設備を損壊する行為

   四 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

  2 市町村の教育委員会は、前項の規定により出席停止を命ずる場合には、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない。

  3 前項に規定するもののほか、出席停止の命令の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定めるものとする。

  4 市町村の教育委員会は、出席停止の命令に係る児童の出席停止の期間における学習に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずるものとする。

大阪市立学校管理規則 第13条

  校長は、次に掲げる行為の1又は2以上を繰り返し行う等性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあると認める児童生徒があるときは、教育委員会に報告し、又は出席停止についての意見の具申をしなければならない。

 (1)他の児童生徒に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為

 (2)職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為

 (3)施設又は設備を損壊する行為

 (4)授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

2 前項の規定による出席停止の命令は、次の各号に定める手続きにより教育委員会が命ずる。

 (1)あらかじめ当該児童生徒及び保護者の意見を聴取する。

 (2)理由及び期間を記載した文書を保護者に交付する。

3 校長は、教育委員会の指示に基づいて、出席停止の命令に係る児童生徒の出席停止の期間における学習の支援その他教育上必要な措置を講じなければならない。

【事前の指導】

1保護者及び児童生徒への指導

  • 学校は、児童生徒の状況に応じて指導計画を立て、一定期間、別室等で当該児童生徒を指導する。
  • 学校はSCやSSW等と連携を図りながら解決を図るが、解決が困難な事案については専門家チームを学校に派遣して対応する。
  • 状況の改善が見られず、他の児童生徒の教育が妨げられると判断して出席停止を措置しようとする場合、学校は当該保護者の意見を聴取なければならない。意見聴取は、保護者と直接対面して行い、今後の指導方針等の説明をあわせて行う。
  • 出席停止の警告後も改善が図られない場合、全教職員の共通理解をふまえ、校長が教育委員会への具申を行う。

2措置の決定

  • 出席停止の措置の決定は、問題行動の状態及び学校の実情をふまえ、校長の判断を尊重しつつ、保護者等からの意見聴取を行った上で教育委員会において判断する。
  • 出席停止を保護者に命ずるに当たっては、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない。
  • 出席停止を命じた趣旨や、個別の指導計画の内容等今後の指導の方針について、学校から保護者に十分説明することが必要である。

【期間中の対応】

1教育委員会及び保護者の責務

  • 教育委員会は出席停止を措置する場合、学校の協力を得ながら、当該児童生徒に対する出席停止期間中の指導計画を整備して、学習への支援等教育上必要な措置を講じ、当該児童生徒の立ち直りに努めることが必要である。
  • 出席停止期間中においては、当該児童生徒に対して保護者が責任をもって指導にあたることが基本であり、保護者に対し自覚を促し、監護の義務を果たすよう積極的に働きかけることが重要である。
  • 保護者に理解と協力を求めるとともに、必要に応じて、家庭環境の改善を図るため、関係機関の協力を得て支援を行う。

2当該児童生徒に対する指導

[出席停止期間中の指導内容 例]

  • 規範意識や社会性を培う。
  • 学校や学級の一員としての自覚をもたせる。
  • 学習面において基礎・基本を補充する。
  • 悩みや葛藤を受けとめて情緒の安定を図る。
  • 家庭の監護に問題がある場合は、関係機関と連携し、適切な役割分担のもとに児童生徒及び保護者への指導や援助を行う。

【期間後の対応】

  • 当該児童生徒の状況や関わり方について、全教職員の共通理解を徹底し、かかわる教職員の役割分担を明確にする。
  • 校内の秩序回復に取り組むとともに、他の児童生徒に十分指導を行い、当該児童生徒が学校復帰後に疎外感をもつことがないよう配慮する。
  • 出席停止の期間終了後においても、保護者や関係機関との連携を強化しながら、将来に対する目的意識の醸成等、適切な指導を継続していくことが大切である。

7.体罰・暴力行為の防止のための児童生徒アンケート

体罰・暴力行為の防止のための児童生徒アンケート調査モデル

◆ 体罰・暴力行為等を未然に防止したり、繰り返し行われたりしないようにする方法として、「アンケート調査」があります。体罰・暴力行為に特化した「アンケート調査」を実施することによって、児童生徒から体罰・暴力行為の状況を把握するとともに、体罰・暴力行為をしない、許さない、学校づくりを進めていきましょう。

  次の「アンケート調査モデル」を参考にして、「アンケート調査」を実施しましょう。

◆ アンケート調査についての留意事項

【実施に当たって】

  • アンケート調査は、定期的に実施する。
  • アンケート調査の回答は、児童生徒の個人情報として適切に扱うようにする。

【作成について】

  • 児童生徒が回答しやすいように、児童生徒の発達段階に応じて、文章を変えたり、ルビを加えたりする等、工夫して作成する。

【実施方法について】

  • アンケート調査を実施する際には、全ての児童生徒を対象として実施する。
  • 児童生徒が、自分の思いを書けるように、実施方法を工夫する。また、児童生徒の発達段階や特性に応じて、家庭に持って帰り、保護者と一緒に記入させてもよい。
  • 記名については調査の目的に応じた工夫をして実施する。

(注)記名式の場合、封筒と一緒に回答用紙を配付し、厳封をした上で回収する。回収した回答用紙は、厳封のまま管理職に提出する。

(注)全体の傾向を把握するために、無記名で実施する場合は、本人が特定されないように回収箱等を用意し、回収する。

【実施後の対応について】

  • アンケート調査の結果については、校長に報告する。
  • 体罰・暴力行為があったと記載している場合で、記載した児童生徒が特定できるときには、複数で面談し事実確認を行う。
  • アンケート調査に、特定の教職員名を記載している場合には、管理職が当該教職員と面談し、事実確認を行う。
  • 体罰・暴力行為の事案が確認されたときには、当該児童生徒と保護者に謝罪するとともに、たとえ被害児童生徒・保護者の理解が得られたとしても、必ず教育委員会に報告すること。

アンケート調査モデル

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「体罰・暴力行為の相談窓口」

メールアドレス:iken-jyouhou@city.osaka.lg.jp

FAX:06-6202-7055

≪弁護士による外部通報窓口≫

メールアドレス:gaibutsuuhou@yodo-law.com

FAX:06-6223-5170

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