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「大阪市財政の現状」について(平成23年4月)

2011年6月2日

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「大阪市財政の現状」について(平成23年4月)

大阪市の財政について市民の皆さんに知っていただくため、「大阪市財政の現状」についてを作成しました。

ここでは平成23年4月に作成したものを掲載しています。

1章:大都市の税財政における現状と課題

(1)大都市としての大阪市の実態

〈1〉広範な通勤圏

 大都市は、政治、経済、文化など各分野において主要な地位を占め、我が国の発展に貢献しており、大阪市も、大阪圏域、関西圏域の中核都市として広い範囲の人々にも貢献する大都市としての役割を担っています。

 また、大阪市内への通勤者を見ても、西は兵庫県明石市、東は三重県名張市、南は大阪府岬町までと非常に広範囲にわたっています。

〈2〉膨大な昼間流入人口 

 大阪市の夜間人口は昭和40年の316万人をピークとして減少していますが、昼間人口は多少の増減はあるものの、360万人から380万人の水準で推移しています。平成17年度は夜間人口263万人に対し、昼間人口は358万人、昼夜間人口比率は1.38倍となっています。

 また、大阪市は事務所や事業所などが集中しており、昼間流入人口は、大都市の夜間人口に匹敵する規模となっています。このような物と人の集中により、財政需要は増嵩することになります。

 〈3〉圏域に貢献する大阪市

 大阪市は、大阪都市圏や関西の発展に貢献する都市として、地下鉄等の都市交通網の整備や社会教育施設の運営など、さまざまな事業を実施しており、高度な都市機能が集積しています。このような施設等にかかる税などと利用する市外居住者の割合を見ると、年間154億円を要する地下鉄の乗車人員の66.4%、121億円を要する大阪市立大学の平成22年度入学者の83.5%、78億円を要する社会教育施設の平成22年度利用者では70.3%、また44億円を要する平成22年度中央卸売市場の搬出先の72.2%が市外となっています。

〈4〉昼間流入人口に対応するための都市施設

 大阪市では、高密度の人口集中や膨大な昼間流入人口により、市域面積1平方キロメートルあたりの昼間人口が16,112人と横浜市や名古屋市の7千人台と比較しても2倍以上あり、このような経済活動の集積などに対処するため、早くから地下鉄や下水道などの都市基盤と生活環境の整備を進めてきました。都市基盤としては、例えば他の政令指定都市に比較して交通網の整備された営業距離129.9kmの地下鉄や行政区域内普及率がほぼ100%の下水道などがあります。

 また、早くから都市施設の整備を進めてきた結果、こうした諸施設が順次更新時期を迎えつつあります。

〈5〉大阪経済の現況

 大阪都市圏の中核である大阪市の市内総生産(名目)は、214,656億円(平成19年度)となっており、国内総生産(5158,048億円)の約4%を占めています。また、国内総生産の約16%に相当する近畿圏(24)の域内総生産のうち、約4分の1を大阪市が占めるなど、大阪市に経済活動が集中しています。

 大阪市経済の特徴として、各種産業の集積密度が高いことがあげられます。また、主要な産業・経済指標を単位面積当たりで換算した「密度」で比較すると、東京都区部に匹敵しています。

〈6〉急速に進む少子・高齢社会

 少子・高齢社会が進み、大阪市では、65歳以上の老年人口比率が増加し、2割を超えている一方で、15歳未満の年少人口比率は減少しつつあります。平成17年度では65歳以上が20.1%、15歳から64歳までが67.9%、15歳未満が12.0%となっています。

 また、大阪府や指定都市との比較では大阪市の65歳以上の老年人口比率は、大阪府の18.5%や指定都市平均の17.9%を上回っている一方で、15歳未満の年少人口比率は、大阪府の13.7%、指定都市平均の13.2%を下回っている状況です。

(2)現行税財政制度における現状と問題点

〈1〉歳入に占める割合が低い大阪市税

 住民に身近な行政について、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにする地域主権の実現のためには、地方税の充実確保が必要です。しかし、全国的に見ても、歳入に占める地方税の割合は3割程度と、地方税中心の歳入構造とはなっていません。とりわけ大阪市は、現行の税制度による要因や、地価下落などを反映して固定資産税・都市計画税が減収してきたことなどにより、歳入に占める市税の割合が他の指定都市と比較しても低い状況にあります。

 平成21年度における歳入に占める地方税の割合は、名古屋市47.7%、横浜市46.5%、指定都市平均40.0%に対して、大阪市は37.3%となっています。

〈2〉配分の少ない市域内税収

 大阪市は、高密度な経済活動の場となっており、平成21年度における市内で納められた税は、国税、地方税を合わせて約4.0兆円と非常に多額となっています。

 しかし、豊かな税源を充分吸収し得ない税制度のために、このうち市税として大阪市へ入る割合は、わずか15.7%、6,236億円にすぎません。また、国や府から補助金等として大阪市へ還元される分を含めても、大阪市へ入る割合は、市域内税収額の32.9%13,042億円にとどまっています。

 なお、市内で納められる国税分27,791億円のうち一定割合分は地方交付税の原資となるため、大阪市民は7,987億円もの税収を、地方交付税として地方に還元していることになります。

〈3〉都市的税目に乏しい市町村税

 市町村税は、法人所得課税、消費・流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため、増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています。具体的に市町村税、道府県税、国税のそれぞれの構成比率を比較すると、市町村税では都市的税目である法人所得課税は8.7%、消費・流通課税は4.7%、その他の個人所得課税などが86.6%であるのに対し、道府県税では法人所得課税23.1%、消費・流通課税37.9%、その他39.0%、また国税においては法人所得課税17.5%、消費・流通課税44.4%、その他38.1%となっています。また、法人所得課税、消費・流通課税から見た市町村税、道府県税、国税への配分状況では、法人所得課税は国税80.9%、道府県税10.4%、市町村税8.7%、消費・流通課税では、国税73.3%、道府県税22.8%、市町村税3.9%となっています。

〈4〉大都市特例事務にかかる税制上の措置不足 

 大都市では、地方自治法に基づき府県に代わって行っている事務のほか、道路法に基づく国・府道管理事務なども行っています。しかし、これらに要する一般財源のうち、税制上の措置がなされているのは、大阪市では約2割にすぎません。

 地方自治法に基づくものは、児童福祉、民生委員、身体障害者福祉、生活保護、行旅病人・死亡人、社会福祉事業、知的障害者福祉、母子家庭及び寡婦福祉、老人福祉、母子保健、障害者自立支援、食品衛生、興行場、旅館及び公衆浴場営業規制、墓地、埋葬等規制、精神保健及び精神障害者福祉、結核予防、都市計画、土地区画整理事業、屋外広告物規制の19項目あり、またその他の法令に基づくものとして、国、府県道の管理、衛生研究所、道府県費負担教職員の任免、研修、定時制高校人件費、土木出張所などがあり、大阪市の平成22年度予算では、これらの所要額として564億円を計上していますが、税制上の措置がなされるのは、120億円にすぎません。

〈5〉大都市税財政制度の確立への取組

 税制をはじめとする現行の市町村税財政制度は、昼間流入人口などによる大都市特有の財政需要や、都市の成熟化に伴う更新需要など、大都市の財政需要の実態に見合ったものになっていません。大都市が自主的かつ総合的に行政を担うためには、国と地方、道府県と大都市の役割分担を抜本的に見直したうえで、大都市の実態と新たな役割分担に応じた大都市税財政制度を確立することが必要です。

 このため、複数の基幹税からの税源移譲により、国と地方の「税の配分」を、まずは5:5とすること、さらに、国と地方の新たな役割分担に応じたものとするよう、他の指定都市と連携を図りながら、国等に引き続き強く求めていきます。

 また、大都市特例事務の税制上の措置不足額や新たに道府県から移譲される事務の所要額が措置されるよう道府県から大都市への税源移譲による大都市特例税制の創設に向け、国等に引き続き強く求めていきます。

〈6〉急増する生活保護

 大阪市では、平成2年から生活保護受給者が増加の一途をたどっています。平成22年度においては、被保護世帯数・人員が約11万世帯約15万人であり、平成2年度を100とした場合の被保護人員の指数は323.6になっています。また、生活保護を受ける人の割合(保護率)は、平成223月で、全国では約1.5%であるのに対し、大阪市では約5.3%で20人に1人が生活保護を受給するなど、総じて大都市を中心に保護率が高くなっています。

 生活保護世帯の約半数の5万世帯程が、自立が困難と考えられる高齢者世帯であり、また、近年の急激な景気後退により、多くの非正規雇用者が失業し生活保護に直結することなど、生活保護制度が創設から60年を経過し、制度疲労を起こしている状況です。

 したがって、雇用・労働施策や、年金制度をはじめとする社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的な改革が必要です。

 生活保護は、地方に裁量の余地がないことから、ナショナルミニマムとして国の責任において実施すべきものであり、その経費は全額国が負担すべきです。現行制度では、地方負担に交付税措置がなされていますが、交付税は標準的な財政需要を客観的に算定するものであり、地域の実態が十分に反映されないため、生活保護のような経費になじみません。 

 大阪市では、平成219月に設置した「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」において、制度の抜本的改革や市民の信頼回復に向け取り組みを進めることにより、いわゆる貧困ビジネス事業者による申請同行が平成22年7月以降なくなったほか、過剰診療の疑いがある医療機関に対する調査などを行っています。

 あわせて、大阪市が中心となり他の自治体と連携して国に対して制度改革提案を要望するなど、社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的な改革に取り組んでいます。

〈7〉他市町村と差を設けられた大阪府からの補助金

 大阪府は、府下の市町村に補助金等を支出する場合に、指定都市である大阪市や堺市を対象から除くなど、他の市町村と差を設けており、これを「差等補助」と言います。

 大阪市民も府内の他の住民と同じように府民税を負担しているにもかかわらず、教育などの基礎的な行政サービス分野において、指定都市という理由で差を設けるべきではありません。大阪市民にも補助金が配分されるよう、府に対して強く求めていきます。

2章:大阪市財政の現状と課題

(1)大阪市の当初予算(平成23年度)

〈1〉一般会計の当初予算

 大阪市の平成23年度一般会計当初予算の歳出規模は、前年度比1.8%、300億円増の17,205億円となっています。

職員数の削減や給与カットの継続等により人件費を縮減するとともに、生活保護費については適正化の取り組みを強力に推進し、施策の選択と集中による事業の重点化を行っています。

 歳入予算17,205億円の内訳は、市税6,226億円、国府支出金3,956億円、公債収入1,691億円、譲与税・交付金602億円、地方交付税580億円、地方特例交付金62億円、その他諸収入等4,088億円となっています。

 歳出予算17,205億円の内訳は、扶助費5,056億円、投資的経費3,531億円、特別会計繰出金等2,604億円、人件費2,328億円、公債費2,304億円、管理費等1,382億円となっています。

〈2〉特別会計の当初予算

 大阪市の平成23年度特別会計当初予算は次のとおりです。

 まず政令等特別会計では、食肉市場事業会計237,300万円、市街地再開発事業会計2484,700万円、駐車場事業会計16800万円、有料道路事業会計42,200万円、土地先行取得事業会計6545,400万円、母子寡婦福祉貸付資金会計4億円、国民健康保険事業会計3,3021,700万円、心身障害者扶養共済事業会計52,000万円、介護保険事業会計1,8868,600万円、後期高齢者医療事業会計2502,800億円。

 準公営企業会計では、中央卸売市場事業会計209700万円、港営事業会計3095,200万円、下水道事業会計1,4118,600万円。

 公営企業会計では、自動車運送事業会計2736,000万円、高速鉄道事業会計2,7066,300万円、水道事業会計1,0335,400万円、工業用水道事業会計33400万円、市民病院事業会計5059,900万円。

 公債費会計では9,2697,300万円と、特別会計では22,1485,300万円を計上しています。

〈3〉予算総額

 大阪市の平成23年度全会計の予算総額は39,354億円、一般会計では17,205億円と全会計、一般会計ともに指定都市のなかで最も大きくなっています。

(2)大阪市の市税

〈1〉市税収入

 最も基本的な収入である市税収入の平成23年度予算は、企業収益の改善による法人市民税の増収が見込まれることなどから、前年度から135億円の増収を見込んでいるものの、リーマンショック前の平成20年度と比較すると482億円の減収、ピークである平成8年度と比較すると1,550億円の減収となり、まだまだ低い水準となっています。

 なお、平成元年度の市税収入を100とした場合、平成23年度予算では86.0となっています。

 また、大阪市の平成23年度予算の市税総額は6,226億円で、横浜市6,969億円に次ぐ指定都市で2番目の規模であり、その特徴として、市税総額に占める法人市民税の割合が大きいことが挙げられ、指定都市平均11%に対し大阪市17%となっています。

〈2〉個人市民税

 個人市民税は、ピークである平成4年度を100とすると、平成23年度予算では全国が91.2であるのに対し大阪市は78.4と落ち込みが厳しくなっています。また、納税者1人当たりの個人市民税額は、府下33市ではトップの箕面市が164千円に対して大阪市は118千円と16番目となっており、指定都市及び東京都特別区との比較では、大阪市は16番目となっています。

〈3〉法人市民税

 法人市民税は、ピークである平成元年度を100とすると、平成23年度予算では大阪市は43.7と大きく落ち込んでおり、全国49.1よりも落ち幅が大きくなっています。なお、業態別では、特に金融・保険業や卸売業などが大きく落ち込んでいます。

〈4〉固定資産税・都市計画税

 固定資産税は、近年地価が下落傾向にあることから、ピークである平成8年度と比較すると、大きく減少しています。なお、土地に係る固定資産税及び都市計画税は、平成8年度を100とすると、平成23年度予算では全国が88.8であるのに対し大阪市は56.5と大きく落ち込んでいます。

(3)性質別経費の状況

〈1〉性質別経費の推移

 市税収入が低水準で推移するなか、人件費や経常的施策経費等の抑制を図ったものの、生活保護費などの扶助費や市債償還のための公債費といった義務的経費が高い伸びを示しています。平成8年度を100とすると、平成23年度予算では扶助費223.5、公債費218.8と大きく増加しています。

〈2〉経常収支比率

 経常収支比率とは、地方税、地方交付税、譲与税・交付金などの経常的な一般財源が、どの程度経常的な経費に充てられているかを示す指数で、財政構造の硬直度を表す「ものさし」とされているもので、経常収支比率が高いということは、義務的経費以外に使える財源に余裕がないことを示し、財政構造の弾力性が低いことになります。本市においても、市政改革に取り組み、人件費をはじめとした歳出削減に努めたものの、市税収入が大幅に減少するなか扶助費が増加している状況であり、平成21年度の経常収支比率は、前年度に比べて1.0ポイント悪化し、100.2%となっています。

 本市は扶助費が高いため、指定都市平均が95.6に対し、大阪市は100.2と指定都市の中でも高い数値となっています。

〈3〉扶助費

 被保護世帯数の増に伴う生活保護費の増や子ども手当の創設・制度拡充による児童福祉費の増などにより、扶助費は増加を続けています。とりわけ、扶助費のうち約6割を占めている生活保護費は、高齢化の進展やリーマンショックに端を発した急激な景気の後退により、大幅に増加しており、生活保護に要する負担の増加が財政全体を圧迫し、行政運営に支障をきたしています。生活保護受給者が増え続けるなか、「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」における生活保護の適正化に向けた取り組みを強力に推進し、平成23年度において、生活保護費を71億円圧縮することとしています

※生活保護費については、こちらをご参照ください。

〈4〉市債残高と公債費

 大阪市では、都市基盤と生活環境の整備のために、早くから積極的に市債を活用してきましたが、近年においては、臨時財政対策債の多額の発行があるものの、公共事業費を減少させることによって、市債の新規発行額を極力抑制してきました。平成23年度末の市債残高は、一般会計では6年振りの増となりますが、後年度に地方交付税で全額措置される臨時財政対策債を除くと6年連続の減となり、全会計では7年連続の減となる見込みです。また、大阪市の市債残高は、平成21年度末決算で、一般会計は2兆8,052億円、特別会計を含めた全会計では5兆1,344億円にのぼっています。これを夜間人口ひとりあたりに換算すると全会計では約195万円、昼間人口あたりでは約143万円となります。

 市債の活用に伴い、累積した市債残高の償還は本格化し、償還のための公債費は平成25年度前後にピークとなりますが、その後、公債費や市債残高は減少していく見込みです。このため、今後、市税や料金収入などにより多額の市債を償還していく必要があります。

〈5〉特別会計繰出金等

 高齢社会の進展に伴う医療費の増嵩や、市街地再開発事業の収支差補てんの増などにより、一般会計から特別会計へ多額の繰出を行っています。とくに国民健康保険事業については、加入割合が高いうえ、加入者に高齢者や低所得者が多く、財政基盤が脆弱であることから、平成8年度当時は356億円であったのに対し、平成23年度予算では438億円を繰入れるなど毎年多額の一般会計からの繰入を行っていますが、累積赤字は平成21年度決算で366億円となっており、事業運営は非常に厳しい状況となっています。

 このため被保険者や地方公共団体の負担の増加を招くことなく、長期に安定した制度が確立できるよう、国に対して、引き続き医療保険制度の抜本的改革を求めていきます。

〈6〉管理運営費

 大阪市は、さまざまな市民ニーズに対応するため、都市基盤や生活環境の整備を行ってきました。それらの施設を維持していくためには、多額の管理運営費を要します。

 事務事業の見直しにより、管理運営費は平成14年度1,709億円をピークに近年減少し、平成23年度予算では1,349億円まで削減しましたが、今後ともさらなる経費の削減に取り組む必要があります。

(4)地方交付税等の補てん財源

地方交付税等の補てん財源

 大阪市は、近年の厳しい税収動向を反映して、多額の地方交付税や特別債などの補てん財源に頼ってきました。平成23年度一般会計予算では、歳出17,205億円の財源として市税収入6,226億円に対して、地方交付税580億円、特別債828億円などを計上しています。しかし、膨大な昼間流入人口や、少子・高齢社会への対応など、大都市特有の財政需要については、交付税での算入が十分とはいえないため、地方交付税の算定にあたっては、大都市特有の財政需要を的確に反映させる仕組みを構築することを国に求めています。また、臨時財政対策債の発行等による負担の先送りではなく、地方交付税の法定税率の引上げによって、必要な地方交付税の総額を確保することを国に求めています。

 地方交付税の依存度を示す指標として財政力指数がありますが、これは地方交付税の算定に用いる収入額を需要額で除した値です。指数が高いほど、地方交付税に依存しない、自立した団体といえます。本市の財政力指数は、指定都市のうち高いほうから川崎市、名古屋市、相模原市、さいたま市、千葉市、横浜市に次いで7番目となっています。

 なお、地方交付税とは、国税のうち所得税、法人税、酒税、消費税及びたばこ税のそれぞれ一定割合の額で、地方公共団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるよう、一定の基準により国が交付する税のことです。

(5)基金の状況

〈1〉蓄積基金の運用

 大阪市は、条例によって蓄積基金を設置しています。基金の目的に応じ、短期運用と中長期運用を組み合わせた、確実かつ効率的な運用を行っています。平成23年度3月末時点の交通・水道事業・市民病院整備基金を除く蓄積基金運用状況は、総額4,422億円で、うち短期運用2,822億円、中長期運用1,600億円となっています。

〈2〉公債償還基金への積立 

 市債の満期一括償還に備え、国のルールどおり公債償還基金へ確実に積み立てており、償還財源が確保されています。なお、平成23年度末の公債償還基金(一般会計・満期一括分)の残高見込は、3,432億円となっています。

 また、大阪市については、この積立金からの借入れは行わず、公債償還基金に頼らない財政運営をしています。

(6)健全化判断比率等

〈1〉健全化判断比率等

 平成21年度決算に基づく健全化判断比率は、4指標とも早期健全化基準をクリアしています。

 4指標のうちいずれかの指標が早期健全化基準以上となった場合には、自主的な改善による財政健全化のため、年度内に議会の議決を経て、「財政健全化計画」を定めなければなりません。さらに、いずれかの指標が財政再生基準(将来負担比率については、早期健全化基準のみ)以上となると、従来の財政再建団体にあたる財政再生団体となります

 平成21年度決算で資金不足が生じている2会計のうち、中央卸売市場事業会計は、経営健全化基準(20%)を超えています。

 平成20年度決算で経営健全化基準以上であった中央卸売市場事業会計は、平成28年度に資金不足を解消する「経営健全化計画」を、平成223月に議会の議決を経て、策定しています。なお、経営健全化計画の平成21年度実施状況は、計画(189.8%)より11.0ポイント改善しています。

〈2〉各会計の実質収支額・資金剰余(不足)額

 平成21年度の大阪市の一般会計や公営事業会計等を含めた市全体では、国民健康保険事業会計、市民病院事業会計、中央卸売市場事業会計において資金不足が生じているものの、高速鉄道事業会計や水道事業会計など、資金剰余が生じている会計があるため、438億円の黒字となっています。

〈3〉実質公債費比率

 実質公債費比率は、借入金(地方債)の返済額及びこれに準じる額の程度を示す指標で、早期健全化基準は25%以上、財政再生基準は35%以上とされています。また、18%以上の場合は、地方債の発行にあたり総務大臣の許可を要します。大阪市は10.4%と、いずれの基準も下回っています。

〈4〉将来負担比率

 将来負担比率は、借入金(地方債)や将来支払っていく可能性のある負担額等の現時点での残高の程度を示す指標で、数値が大きいほど、今後の財政を圧迫する可能性が高いことを表します。将来負担比率は238.7%と、早期健全化基準(400%)を下回っています。

(7)財務書類4表

〈1〉財務書類4表(平成21年度・普通会計)

 現行の公会計制度(現金主義・単式簿記)に加え、企業会計的手法も導入し、より正確な財務情報を公開するとともに、資産・債務の適正な管理を一層進めるため、「公会計制度改革」に取り組んでおり、国が示した「総務省方式改訂モデル」に基づき、財務書類4表を作成・公表しています。

 貸借対照表は、大阪市が持っている資産と債務を表しています。大阪市は8兆円以上の資産を保有しており、全体の約8割は行政サービスを提供するために必要な資産です。

 行政コスト計算書は、1年間の経常的な行政活動にかかるコスト(費用)を表しています。生活保護等の社会保障給付といった「移転支出的なコスト」が約6割を占めています。

 純資産変動計算書は、貸借対照表の純資産(過去・現世代がすでに負担したお金)の1年間の変動額を表しています。純資産は、1年間で324億円減少しました。

 資金収支計算書は、1年間の資金(現金)の流れを性質別に表しています。地方税などの収入により経常的収支で生じた資金をその他の収支に充てた結果、年度末の資金(現金)は19億円となりました。

〈2〉一人当たり資産額と負債額

 1人当たり資産額は、公共事業の縮減により減少傾向にあります。

 しかしながら、他都市(横浜市、名古屋市、京都市、神戸市)との比較(20年度)では、1番多くの資産を保有していることも分かります。これは本市が早くから道路などの都市基盤整備に取り組んできたことによるものです。なお、今後も現在の公共事業の規模で推移すれば、資産額は減少する傾向です。

 1人当たり負債額は、地方債の発行抑制や職員数の削減により、資産額と同様に減少傾向にあります。
 しかしながら、他都市との比較(20年度)では、1番多くの負債(将来世代の負担)を負っていることも分かります。今後も地方債残高の圧縮などに努め、負債額の縮減に努めていく必要があります。

〈3〉一人当たり経常行政コスト

 これまでの市政改革の取り組みにより、「人にかかるコスト」及び「物にかかるコスト」は減少していますが、生活保護の急激な増加や、21年度は国の緊急経済対策による定額給付金の支給など、「移転支出的なコスト」は大幅に増加しています。

 また、他都市との比較(20年度)では、本市が一番多くの行政コストを掛けていることが分かり、その主な「移転支出的なコスト」は、他都市と比べ突出していることも分かります。なお、「人にかかるコスト」及び「物にかかるコスト」も他都市と比べ依然として高いことから、今後も行財政改革に取り組む必要があります。

3章:市政改革の取組と今後の方向性

(1)市政改革の取組成果と今後の取組

〈1〉経費の圧縮(これまでの成果)

 大阪市では平成18年度から22年度まで「市政改革基本方針」に基づき、着実に市政改革を進めてきました。

 経費の削減では、目標額2,250億円を大きく上回る2,719億円を削減し、5年間の削減累計額は8,961億円にのぼります。また、平成16年度まで増える一方だった市債残高も5年間で約4,000億円削減しました。

〈2〉職員数の削減

 大阪市の夜間人口1万人当たりの職員数は、夜間人口では150人、昼間人口では109人と、他の指定都市と比較すると最も高くなっています。これは、約100万人の昼間流入人口に対処するための地下鉄等の都市交通網や市立幼稚園・高等学校等の教育施設が充実していることなどもあり、直接的に行政サービスを行う職員や教職員等が多いことによるものです。

 「市政改革基本方針」において、平成17年から22年の5年間で5,000人超の職員数の削減、市立大学等の独立行政法人化による2,000人程度の削減により、総職員数3万人台とすることを目標に取組んだ結果、5年間の削減数は8,623人となり、22年度の職員数は削減目標どおり3万人台となりました。

 「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針」では、持続可能な確固たる行財政基盤を構築していくため、今後、平成27年度までにさらに4,000人の職員数削減を図り、将来的には2万人台を目指すこととしています。

〈3〉人件費の削減

 職員の給料および管理職手当のカットなどにより、人件費の削減を進めてきました。今後も、給料等のカットを継続し、さらに削減します。

 このような給料のカットにより、平成22年4月1日現在において、大阪市の職員一人当たりの給料は指定都市で2番目の低さとなっています。

〈4〉歳入の確保

 歳入確保はもとより、市民負担の公平性・公正性の確保の観点などから、未収金対策に取り組んでいます。「新たな未収金を極力発生させない」「既存未収金の解消」を二つの柱として、平成20年度に、全市的な取組を総括する「大阪市債権回収対策会議」の設置、各局で対応困難となっている高額事案などを集中的に回収する「市債権回収特別チーム」を設置するなど、全庁的な取組を強化しています。その結果、未収金は減少しつつあり、平成225月末時点における未収金は、徴収の強化などにより、752億円となっています。今後も取組みを徹底し、平成27年度末に未収金の残額を551億円まで圧縮します。

 また、未利用地の売却については、大阪市土地流動化委員会の意見を受け、平成19年度に「大阪市未利用地活用方針」を策定し、平成21年度末までに608億円(一般会計)を売却しました。現在の厳しい財政状況の下、今後も可能な限り売却に取り組み、平成22年度から30年度までに1,500億円(一般会計)の売却を目指します。

〈5〉外郭団体等の改革

 大阪市では、極めて厳しい財政状況のもと、徹底した行政運営の効率化を図るため、これまで外郭団体等の抜本的な改革に取り組んできました。

 外郭団体等の団体数については28団体、委託料については417億円、外郭団体等への派遣職員については1,651人、それぞれ削減しました。この改革をさらに推進するため、大阪市外郭団体等評価委員会からの提言(平成229月)を踏まえ、平成27年度までの「大阪市外郭団体改革計画」(平成233月)を策定しました。今後の取り組みとして、外郭団体等の団体数については平成27年度までに3分の1以下にし、委託料総額については3割、また競争性のない随意契約については5割、それぞれ削減し、外郭団体等への派遣職員については平成27年までに2分の1以下にします。

 今後も不断の外郭団体等の改革に取り組み、市民サービスの向上を図ってまいります。

(2)中期的な財政収支概算〈一般会計〉(平成23年度予算版)

中期的な財政収支概算〈一般会計〉(平成23年度予算版)

 大阪市では、平成23年度予算ベースで、平成30年度までの収支概算を試算しました。

 公債費の増や社会保障費の自然増があるものの、市税収入や地方交付税等の一般財源を確保するとともに、経費の見直しなどの改革の効果により収支を改善し、平成30年度の累積収支不足額は、前回(22年度予算版)の約マイナス2700億円(平成22年度から平成30年度)から約1,500億円改善し、約マイナス1200億円(平成23年度から平成30年度)となっています。

 また単年度収支不足額は、補てん財源充当後は30年度においてマイナス180億円、補てん財源充当前(通常収支)でも、30年度においてマイナス320億円となっています。

 単年度収支不足の解消はもちろんのこと、補てん財源依存からの脱却もめざし、更なる財政構造の強化を図る必要があります。 

 収支均衡に向けた取り組みとして、「中期的な収支均衡に向けたフレーム」(平成222月)の三本柱に基づき、8年間でマイナス1,200億円の解消を図ります。この内訳は、「成長戦略」による税収の回復促進 が年間プラス30億円(税収の増プラス120億円、地方交付税の減マイナス90億円)、生活保護費の措置不足解消 が年間プラス150億円、「新たな市政改革」による経費の削減が、年間プラス120億円となっています。

  ※但し、「税収の回復促進」「生活保護費の措置不足解消」については、効果発現までのタイムラグを勘案。

(3)大阪市債の格付け

大阪市債の格付け

 地方分権の進むなか、地方公共団体の市債発行においても、これまで以上に自己責任が求められています。このような状況において、客観的で透明性の高い情報開示を一層積極的に行う観点から、大阪市の評価を依頼し、2社から格付けを取得しています。

 平成233月末時点での大阪市債の格付けは、ムーディーズではAa221段階表示の上から3番目、スタンダード&プアーズではAA-で20段階評価の上から4番目となっています。

 これらの評価は、今後も財政健全化の図られることが前提であり、高い格付けを維持するべく努めています。

巻末資料

指定都市の財政状況〈平成21年度決算等〉

会計の定義(一般会計・特別会計・普通会計)

会計の定義(一般会計・特別会計・普通会計)

○一般会計とは、通常の公共事務事業に要する経費の収入・支出を扱う会計です。

例えば、保健医療、福祉、教育、住宅、道路橋梁、公園、清掃、消防等の各事務事業の収支を経理しています。

○特別会計とは、特定の事業を行う場合に、その他特定の歳入を持って特定の歳出に充て、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合、法令又は条例に基づいて設置される会計です。大阪市では、特別会計をさらに性質により、次の4つに区分しています。

・政令等特別会計

特別会計のうち準公営企業会計と公営企業会計を除いた会計です。

一般会計と同様地方自治法の財務関係規定の適用をうけ、単式簿記の会計経理の方法により処理されます。

・準公営企業会計

地方公営企業法の規定(財務規定等、組織、身分取扱い)のうち財務規定等の規定が適用される企業にかかる会計です。

・公営企業会計

地方公営企業法の規定の全部が適用される企業にかかる会計です。

・公債費会計

各会計の公債関係の歳入・歳出を一括して経理する整理会計です。

○普通会計とは、総務省の地方財政決算統計上における会計区分です。

公営事業会計以外のすべての会計を普通会計とし、地方公共団体間の比較や時系列比較が可能となるようにされています。

○公営事業会計とは、

・公営企業会計(地方財政法施行令第12条に掲げる事業)

・収益事業会計、国民健康保険事業会計等の事業会計

・上記以外の事業で地方公営企業法の全部又は一部を適用している事業にかかる会計です。

 

大阪市の場合の普通会計

一般会計に市街地再開発事業会計の一部と土地先行取得事業会計、母子寡婦福祉貸付資金会計、心身障害者扶養共済事業会計を足して会計相互間の重複を除したものです。

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