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「能にみるSDGsの発見!~大道具『作り物』&小道具『能扇』と仕舞~」を開催しました

2022年11月30日

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令和4年度区の歴史と文化を活かした生涯学習事業

「能のSDGs」ポスター

令和4年10月3日(月曜日)に大阪市立中央会館 ホールで「能にみるSDGsの発見!~大道具『作り物』&小道具『能扇』と仕舞~」を開催しました。

区の歴史と文化を活かした生涯学習事業は、中央区における伝統芸能などの歴史・文化について学び、中央区の魅力を再発見し、街への愛着を深めること、また学びの深まりによって地域に根差した生涯学習のさらなる活性化をめざしております。

中央区と能

「能」は、中央区にある大坂城を天下統一の拠点として築城した豊臣秀吉を中心とした武将らの庇護の下、約700年に渡り今に伝えられてきました。「能」の歴史をみると安土・桃山時代の能文化が現代のルーツになったとも云われています。

SDGs(持続可能な開発目標)

2015年国連サミットにて全会一致で採択された「誰一人取り残さない」持続可能な社会実現のため、2030年をゴールとする17の国際目標です。
2025年の大阪・関西万博は、世界の英知を結集しSDGs達成に貢献することを目標としています。

当日の様子について

開場

看板
受付

9月は雨天が多かったので、当日は雨を心配しておりましたが、曇りの涼しい日でした。
参加者の皆さまには、新型コロナウイルス感染症対策にご協力いただきながら、入場していただきました。

講師について

講師
当日はシテ方観世流能楽師であり重要無形文化財総合指定保持者である梅若基徳さんと
シテ方観世流能楽師の梅若雄一郎さんに講師をしていただきました。

作り物について

小屋・藁屋について

台座
小屋
藁屋

作り物は、普段は舞台裏で組み立てられるので、表舞台でその過程を見ることはできません。
今回は特別に見せていただく貴重な機会となりました。

まずは、床に台座(角枠)を置き、切り込みが入った4本の竹を台座とかみ合わせて組み立てます。柱となる4本の竹には包地(ぼうじ)と呼ばれる布を巻きます。この包地も再利用されて使われています。
柱の上部にひもを通して屋根の部分を固定すると小屋になります。
柱の上部に藁屋根をのせると藁屋になり、庶民の家であることを表します。

「引き廻し」と呼ばれるカーテンのようなものがつけられて舞台上に運ばれてくるときの小屋は、舞台上には「存在していないもの」として扱われます。

昔はいろいろな場所に移動して能を演じていたため、作り物をすぐに解体して持ち運ぶ必要がありました。今でも作り物を作ったり解体して運ぶ方法を習得するのも、能楽師の大切な修行の一つとなっています。
江戸時代までは大道具(作り物)を作る専門の人、衣装を作る専門の人などがいましたが、明治時代からはシテ方が作り物を作るようになりました。能楽師にはシテ方以外に、ワキ方、囃子方、狂言方などもいますが、作り物を担当するのはシテ方のみです。シテ方は開演時間の1時間半から2時間ほど前に会場に入り、作り物を組み立てています。

山について

山
山2

次は山の作り方です。
竹を湾曲させて台座にはめこみ、もう1本の竹をクロスしてはめ込んで、上部を麻ひもで縛ります。この麻ひもも再利用されて使われています。

山は人の墓や朽ち木などを表すこともあります。山らしくするため、上部に造花の葉の輪を3つ重ねますが、昔は榊(さかき)という植物を重ねていました。『土蜘蛛』という演目では、ここに蜘蛛の巣をたらして、土蜘蛛の巣をあらわします。

山の外側に引き廻し(カーテン)を巻き、中で装束を着替えることもあります。90㎝四方の中で着替えるには技術が必要で、引き廻しを揺らさずに着替えられるのが上手な人とされます。

能楽師が育つにはとても長い時間が必要です。技術や能力をそなえた人を育てることもSDGsの目標の1つでもあるので、観客のみなさんは能楽師の若手のこともぜひ温かい目で見守ってほしいとのお話もありました。

船について

船
山で湾曲して使用した竹を、横にしてひもで縛ると船になります。
この船を用いて、『船弁慶』の仕舞を上演いただきました。

仕舞『船弁慶(ふなべんけい)』

船弁慶の様子

『船弁慶』は平家を討った後の義経の話です。義経は頼朝の疑いを解くため、妻との別れを惜しみ、弁慶とともに船で西国に向かう海上で平知盛の亡霊に襲われます。知盛は、平教経の得物である薙刀を振りかざして義経たちに襲い掛かりますが、弁慶が数珠をもみ祈祷することで波間に消えていきます。

装束を着けての上演と違い、紋付き袴で演じられる仕舞は見る側の技術が必要で、そこに難しさと楽しさがあります。同じ舞を見ていても、おそらく観客1人1人の想像力や想像するものは異なります。能の台本は700年前のもので、それだけ続くだけの深みがあるため、同じ演目でも毎回見方が変わります。観客が能に理解を深め、温かく包み込むように見守ることが、能楽師の演技力を育てていくことにつながります。

解説の前と後では、参加者のみなさんの能や仕舞の見方も変わったのではないでしょうか。

能の扇について

能扇の解説

能は最低限の道具で演技するため、扇ひとつで盃やお酌、短冊、刀、合掌、弓矢など様々なものを表現します。
仕舞の時に、薙刀には薙刀を用いますが、刀は扇で表現します。他の流派では、扇2本で刀と盾を表現することもあるそうです。

能扇の絵柄には意味があります。女性の演目で赤い扇が用いられていれば若い女性、青い扇であれば40歳以上の既婚女性であることを表します。年配の女性が春にいなくなった子どもを探す演目では青地に桜が描かれた扇を使用します。

平家を演じる時の扇と源氏を演じる時に使う扇には、共に赤い太陽が描かれていますが、平家の扇の太陽には貝が描かれています。貝は海底にあることから、平家の太陽は下方に沈むことが表現されています。一方、源氏の扇の太陽には雲が描かれており、上方に昇ることが表現されています。
また、源氏の扇には松なども描かれ、華やかな絵になっています。平家の扇には白い波が描かれていますが、これは壇ノ浦で滅びたことだけでなく、修羅道に堕ちたことを表しています。

世阿弥は平家を滅ぼした源氏の義経についても修羅道に堕ちたとしています。勝っても負けても正義ではないというのが彼の考えで、武士や戦を賛美した曲は1つもありません。しかし、戦国武将はみな能を愛しました。能は教養であり、格調高い文や言葉を知るためにも必要だったのです。

仕舞『猩々(しょうじょう)』

猩々の様子

『猩々(しょうじょう)』は、中国の高風(こうふう)という人間と猩々という妖精の話です。
市場で酒を売ることで富を得る夢を見た高風が、市場でお酒を売るとたちまち富貴の身になりました。毎日訪れる客の中に、酒を飲んでも顔色が変わらない人がおり、名を聞くと海中に住む猩々だと名乗ります。高風が猩々のために岸辺で酒壺を用意して待っていると、猩々が現れ、汲んでも尽きない酒壺を高風に与えて消えていきます。

『猩々』は酒の話であるので、菊酒の伝説から、赤地に菊の扇子を用いて、酒、盃、枕、観客への祝福を表します。

解説のあった扇を使い『猩々』の仕舞を上演いただきました。扇の動きや持ち方、開き具合より、表現が変わるのを目の当たりにし、あらためて能における扇の大切さがわかりました。

質問について

解説と仕舞の上演後、講師に質問していただける時間がありました。

Q.拍手のタイミングはいつですか?
A.拍手をするようになったのは明治時代からです。終わった後の余韻を楽しんでほしいので、東京では出演者の最後の人が舞台から退場する時に拍手が起こるのですが、地域性があり、大阪はシテ方が退場する時に拍手が起こります。

Q.子ども向けの能はありますか?
A.中央区の山本能楽堂でもワークショップをされています。文化庁のホームページに、学校向けの能の解説があるので、解説を見てから能を鑑賞すると楽しめると思います。

Q.能と狂言の違いは?
A.能と狂言の2つあわせて能楽になります。能はシリアスな文学なのに対し、狂言はコミカルで庶民的です。とはいえ、客を笑わせるためではなく、冠者は一生懸命がんばっているのですが、やられてしまうので滑稽に感じられるのです。狂言は室町時代の言葉で、能の平安時代の言葉より200年ほど現代に近いので、能より言葉がわかりやすいと思います。

さいごに

参加者のみなさんにご記入いただいたアンケートでは、「とても詳しい理解しやすい解説をしていただいた。おかげで能を観る理解がとても幅広くなり、興味を増すことができました。ありがとうございます。能楽堂にも行きたいと思います。」「今まで能はとっつきにくいものと思っていましたが、今日の説明を受けて身近なものに感じました。」などのご意見・ご感想をいただきました。

大阪市中央区にゆかりある能の魅力が伝わりましたでしょうか。

中央区には歴史的・文化的資産が沢山あり、能もその一つです。
中央区には、「大槻能楽堂 」と「山本能楽堂」という大きな能楽堂が2つあります。他にも歌舞伎も文楽など伝統芸能を鑑賞できる劇場があり、これだけ多くの伝統芸能の劇場が集中している区は全国的に見ても他にはないと講師もおっしゃっていました。

これをきっかけにぜひ、大阪市中央区で伝統芸能にふれてみてください。

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