片岡千次郎

昭和61年度 演劇・舞踊部門(歌舞伎)

【略歴】
門閥外から歌舞伎の世界に入り、十三代目仁左衛門のきびしい薫陶を受けて期待に応える成長を見せた。先代上村吉弥に見込まれて、大きな名跡を継いだ。本領は女方だが、和事の二枚目もできる。美しい容姿に華があり、上方狂言に向いたはんなりと柔らかな色気があるのがいい。上方歌舞伎に欠かせぬ貴重な女方として、義太夫狂言の時代物の局や女房から、近松物の遊女や〈花車方〉の役、老け役まで、活躍の幅が広がりつつある。『伊勢音頭恋寝刃』の万野など、憎々しい中に色気がただよういい出来だった。『伽羅先代萩』の栄御前も高貴な雰囲気がいかにもその役らしく、格調があった。
昭和30年4月27日生まれ。48年8月片岡我當に入門し、同年10月大阪新歌舞伎座『新吾十番勝負』の寛永寺の僧ほかで片岡千次郎を名のり初舞台。62年名題披露。平成5年11月南座『草摺引』の舞鶴ほかで六代目上村吉弥を襲名。
昭和61年十三夜会賞奨励賞。同年咲くやこの花賞。62年大阪府民劇場奨励賞。平成9年国立劇場奨励賞。同年和歌山県文化奨励賞。11年歌舞伎座賞。14年松竹会長賞。19年国立劇場優秀賞。