平成18年5月19日    大阪市長会見要旨
 
【飛鳥会をめぐる問題についての調査について】

(市長)
 今朝、所属長会を開いて各所属長に指示した内容をご説明します。
 この間の芦原病院の問題、また今回の飛鳥会の問題については、大変厳しい批判を招いているわけですが、これらの問題については、大阪市からの補助金や委託金等のあり方が問題点に挙げられています。私は、これらの補助金や委託金などは、それを始めた当初は一定の使命があって出発した制度だったと思っています。就職差別、これは雇用対策が必要ですし、医療機関がない、あったとしても非常に劣悪な条件の診療所しかない、そういう時代が現にあったわけであり、こういう大阪市としての制度は、出発時点では適切なミッションがあったと思っています。しかし、社会或いは時代の変化、時の経過の中で、一定の使命が終わったと考え得る時点で、速やかに、そのやり方なり内容なりについて、組織として見直しを適切にすべきであったにもかかわらず、これがやり切れていなかったところに問題があると思っています。
 これからは、個々の職員任せではなくて、大阪市の組織としての対応こそが必要であると思っています。直接職務にあたっている職員は皆まじめに職務に当たっているわけですから、これらの職員をきちんと守るという責任もトップにはあるわけで、過去の経緯などから職員が萎縮したりすることがないように、各局、区役所それぞれにおいて、いろんな関連団体との関係を今日的観点からあるべき姿に見直すということを、まさに今成さなければならないということです。
 当然のことですが、人権施策は今後とも大阪市として実施していく大事な施策のひとつであるわけです。同和建設協会会員企業の入札にかかわる問題なども含めまして、この間非常に厳しい批判を招いている問題の原因は、いずれも大阪市として適切な見直しを怠ってきたというところにあると考えています。我々は、この点を率直に、真摯に反省しなければならないと思っています。  その上で、今後は二度とこういう問題を起こさない適正な組織体質、職場風土づくりを進め、職員が安心して職務に取組むことができる環境を作らなければならないと考えています。
 そのために、今回の飛鳥の問題についてだけでなく、同和対策特別措置法の期限内で同和対策の一環として事業を始めた経過があるもので、特定の団体を優遇するような措置が残っていないか、これまでも見直しは行ってきましたが、その見直しの漏れがないかどうかを、全所属及びそれぞれの外郭団体も含めて総点検することを指示しました。この総点検は、個々の職員の責任を追及することが目的ではなくて、あくまでこれまで行ってきた見直しの漏れを改めて総点検して、見直すべきものは見直すために調査を行うものです。今回、見直すことなく、将来に課題を先送りするようなことになると、将来に更に大きな課題を残すことになると考え、全面調査をすることにしました。
 総点検の中で、明らかに不適切なものは直ちに見直さなければなりません。また解決に当たって、大阪市として今後の方針等を決定する必要のあるものは、グレーゾーンにあるようなものも含めてそういう必要があるものがあれば、私が市長として職員を守る立場から責任をもって対応していく決意です。
 これら総点検の結果、改めて大阪市として対応の方針を示す必要のあるもの等については、7月中には全体の取りまとめを明らかにしていきたいと思っています。
 改めて申しあげておきますが、私は、差別は今も存在し、皆無になったとは思っていません。また、人権行政というものは、これからもますます重要性が増すものと考えています。
 しかし、これとは別の次元の話として、特定の団体との付き合い方とか、過去の慣習を引きずったまま見直しのない特別な扱いがあるとすれば、これは今日的には問題であります。
 いずれにしましても、これは私自身が責任をもって対応し、きちっとしたことを市民に説明する義務があると思っていますので、しっかりとやっていきます。

質疑応答
(記者)
 調査はどういう形で結果を公表されるつもりなのか。
(市長)
 報告書の作り方はこれから考えますが、多くの所属にわたる調査なので、大阪市として適切な形や必要な措置、また課題を考えなければならない問題など、全体像、全体の姿がわかるものを調査結果として示していきたいと思います。
(記者)
 市としては、飛鳥会への西中島駐車場の業務委託は同和対策事業であったかどうか以前分からないとしていたが、現時点ではどのように判断しているのか。
(市長)
 先ほど総論的に申し上げましたが、出発時点では、雇用対策など当時の問題を解消するために出発したと思っています。ただ、その後の経過が適切であったかどうか、これは現在警察も捜査をしている段階でありますので、その結果も待ちたいと思います。飛鳥会の件に限っては、警察の捜査との関連も十分考えながら、大阪市の対応を決めなければならないと思っています。
(記者)
 出発時の雇用対策とは、同和対策としての雇用対策という意味なのか。
(市長)
 そうです。
(記者)
 今回の内部調査で調査対象になるのは、運動団体と事業団体、両方ともということなのか。
(市民局理事)
 基本的には、今事業を行っている、市から業務などを委託しているものを含めたものが対象となると考えており、関係局にもその趣旨で調査を指示しています。その中で、相手方との契約が不適切なものや、手続きに本来必要なものが備わっていないものなどがあれば、それについてしっかりと調査をしていきたいと考えています。
(記者)
 その相手方は、運動団体と事業団体に限られるのか。それ以外の株式会社形態のものなども含めて調査するのか。
(市民局理事)
 基本的にはすべてを含めて調査をします。
 ただ、運動団体に対する事業委託というのはないのですが。
(記者)
 土地等の賃貸などではあるのではないのか。
(市長)
 それはあると思います。それも対象になります。
(記者)
 その点の調査も、運動団体と事業団体だけではなく、他の営利法人形態や公益法人形態のものも含めて行うのか。
(市民局理事)
 適切な契約ができていないものがあれば、どこの団体が対象ということではなく、契約等の現状を以って調査をしていきます。
(記者)
 契約等が不適切であるか、不備があるかなどは、どこがどう判断するのか。
(市長)
 各所属からは今どういうものがあるのか、すべて出してもらおうと思っています。 担当局でおかしいと判断できるものもあれば、判断が難しいものもあると思いますが、まずは窓口になる市民局に一旦すべてを出してもらって、適切、不適切と判断していきます。もちろん各所属で不適切と直ちにわかるものは、すぐに見直さなければなりませんが。
(記者)
 では、最終判断は市民局か。
(市長)
 最終判断は市長である私が行います。
(記者)
 先ほど関係の見直しという言葉があったが、事業や契約の見直しをするだけでなく、相手方・団体との関係そのものを変えていこうという趣旨か。
(市長)
 今やろうとしているのは、事実関係の調査であって、しっかりとした事実関係をまず把握して、自治体・行政として契約や手続きが適切になされているのかどうかをチェックすることが目的です。どこかの団体と大阪市との関係を変えていこうということが課題ではありません。
(記者)
 今回の事件では、駐車場の収入報告を作るという行為を開発公社側が長年行っていたり、府に出す法人の報告書を人権文化センターの館長が作成していた事実などが明らかになったが、それらは市から説明されたものではなく、報道によって明らかになってきたものである。そういう状況の中で、適切・不適切の明確な基準が示されていない現在の段階で、内部調査によって事実を明らかにできるのか。
(市長)
 事実関係は明らかにできると思っています。それが適切であるかないかは、私が判断しなければならないケースが多々あると思いますが。
(記者)
 職員厚遇問題では、当初内部で調査をされて、それでは十分でないのではということで、途中から外部の人の視点を入れて調査をされた経緯があるが、今回はそういう考えはないのか。
(市長)
 まず、第一義的には、内部の職員による調査をしようと思っています。ひとつは、芦原病院については特別監査をお願いしていますし、別の外部委員会を新たに設けることがこの場合果たして効率的かどうかということもあるので、まずは内部調査で事実関係を把握したいと思っています。ただ、事例によっては、例えばコンプライアンス委員会の力を借りるという場合もあると思いますが、それはその時々で判断していきたいと思っています。
(記者)
 先ほど個々の職員はまじめにやってきたので守らねばならないという話があったが、開発公社や館長が果たしてきたことなどが、公務員という立場に照らして果たしてまじめにやってきたと言えるのか疑問である。昨日人権文化センターが捜査を受けたことも含め、外から、市民から見ている職員像と、市長のそれとでは職員に対する受け止め方が違うのではないのかと思う。一連の職員関与の実態について、どのように受け止めておられるのか。
(市長)
 先ほど申し上げたように、組織として個々の仕事に対応することができていなかった。個々の担当者はまじめにやってきたが、組織としてのガバナンス等が非常に不十分であったと反省しています。人権文化センターは捜査も受けたわけですが、本来なら個々のケースに対する対応を大阪市という組織で、基準を明確にして対応すべきであった。これまでやってきたから継続するという組織風土を変えようと思っているわけで、その一環として、今回の事件を起点として、同種のことがないかどうか、全組織について総点検しようということです。
(記者)
 この内部調査を、調査委員会などの組織に発展させて調査していくお考えはないのか。
(市長)
 将来それが必要な時期が来るかも知れないが、現時点では、まず全体の事実関係をしっかりと把握したい。  コンプライアンス委員会も利用は可能でありますから、まずは事実関係を把握したうえで、その後のことは判断していきます。
(記者)
 組織の問題であることは分かるが、一連の行為が組織として決定してやったことなのか、それとも個々の現場・個人レベルでやったことなのか分からないのが現状である。その中で組織の問題と言ってしまえば、責任が不明確というか、どこに問題があったのかが結局見えなくなるように思いますが、この調査では個人の責任は問われないのか。
(市長)
 いずれにしても最終は組織の責任であって、そのような組織風土になっていなかったことに問題があると思っています。それぞれの個人も組織の一員として動いていたわけですから、その中で個人の責任があったのかどうかは別の問題です。調査は個々の職員の責任を追及するために行うのではなく、むしろ職員を今後守っていくために行うのです。組織として対応できていなかった点を課題として、まずは事実関係を把握したいと考えています。
(記者)
 職務専念義務の調査については、今の話は当てはまらないと思うが、こちらの調査はどうなのか。
(市民局理事)
 職務専念義務の調査については、受嘱関係も含めて適正に行われているのか、総務局が職員のヒアリングなども含めて、再確認していくこととしています。
(記者)
 その調査の結果、問題が発覚した場合は、個人の処分も視野に入れているのか。
(市民局理事)
 明らかな職務専念義務違反とか、公務員では制限されている営利業務への従事など、違反が明らかになった場合には、そういう扱いになると思います。
(記者)
 まだ事実関係がはっきりしない段階ですが、こういう形で職員なり開発公社なりが問題に関与してきたことについて、市長ご自身としては以前からご存知だったのか。今回初めて知られたことなのか、ご感想を聞かせてほしい。
(市長)
 私は組織の責任者であり、私自身も組織の人間でありますから、当然応分の責任があり、それを前提に今回の調査を進めようとしているものです。今、全貌を明らかに出来るか否かが、将来に大きな影響を及ぼすわけですから、まず事実関係全体を明らかにしたいと思っています。
 私は、市長になる前にも職員のひとりであったわけですが、すべてのことを知っていたわけではなく、今回知ったことも多々あるのが実状で、そういう意味では組織を把握できていなかったと言われればそのとおりだと思っています。まずは、事実関係がすべて洗いだせる調査をしたいというのが、今の本心ですから、しっかりとやりきりたいと思います。
(記者)
 基本的なことですが、運動体というと私は部落解放同盟しか思い浮かばないのですが、他にありますか。運動体はすべてが対象か。
(市民局理事)
 他にもいわゆる運動体といわれているものはあります。
 事業との関係で言うと運動体と契約しているものはありませんが、どこの団体と契約しているかということではなく、大阪市の事業として、或いは施設の管理として、どういう形で契約が結ばれているのか、そこに着目して調査を進めてまいりたいと考えています。
(記者)
 事業体というのは人権協会のことなのか。
(市民局理事)
 各々の地元で法人を持っている場合もあり、大阪市から委託なり、補助なりを受けているものもあると思いますので、そういうものも契約関係が適切に行われているかどうかを調査してまいりたいと思っています。
(記者)
 同和対策特別措置法の期限後は、同和対策はなかったというのが大阪市の公式見解であり、西中島駐車場の件も、期限後の同和対策事業とは位置づけてこられなかった。しかし同和対策事業と何ら変わらない事業が続けられていたわけで、どれが同和対策事業であったのか、なかったのか、その線引きを明確にしないと調査にならないのではないか。その線引きはどこに置いているのか、どこまでを今回の調査対象にするのか明確にしていただきたい。
(市民局理事)
 市長から先ほど申し上げましたが、特に飛鳥会の問題では、当初は同和対策の一環としての事業であったと思いますが、時の経過の中で、その使命が終わったものと考えています。実際に、この飛鳥会の駐車場の件は、特別措置法の失効直前に同和対策事業として把握していたものの中に入っていませんでしたが、そういうものも含め、同和対策の一環として始められたものについて、今回調査をするものです。
(記者)
 そうすると特別措置法の期限後に、新たに始めた事業は調査の対象にならないのか。
(市長)
 特別措置法の期限後に、新たに同和対策として始めたものはありません。それ以前のものを一部引きずってきていたものはあったと思いますが、法の期限後に新たに同和対策としてやったものはありません。一般施策として始めたものは、当然、行政として必要なものを事業として行っているものです。もちろんこういったものにも、全体像を把握するためにチェックはかけます。
(経営企画監)
 事業の調査という切り口から見れば、そういうことになりますが、例えば土地の現在の管理ということに着目して調査するものについては、別に法の期限前や後ということは関係がなく、現在の管理状況がどうかという観点から調査することになります。  従って、対象をどの側面から見るのか、事業として見るのか、補助金・貸付金の事業として見るのか、或いは物としての未利用地の適正な管理という側面から見るのか、それぞれの性質によって調査対象自体も変わってくるものです。一概に特別措置法の期限前、期限後の施策というところで切れるものではないのです。
(記者)
 では、例えば法期限後になされている人権協会への職員の派遣や、駐車場の管理委託など、つまり同和対策として始めた経緯があるもので、ここ1、2年に見直されたような事業は今回の調査の対象には入らないのか。
(市民局理事)
 現時点で、契約の手続きやその内容、補助手続きなどが適切になされているかどうかについて調べてまいります。
(記者)
 事業や契約が今も続いているものが対象になるのか。終了して済んでしまっているものは対象にならないのか。
(市長)
 現在の状況の把握ですから、今続いているもの、現状をしっかりと把握したいと思っています。
(記者)
 何度か言われている、「職員を守る」というのは、何から職員を守るということなのか。
(市長)
 いろんな意味を含めて言っていますが、例えば外部の団体との狭間に立って、ひとり悩んだりすることのないように守りたいという趣旨です。一人で受け止めないようにと職員には話していますが、まだそういう組織風土になっていないこともあり、重ねて申し上げているものです。
 
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