平成18年6月2日    大阪市長会見要旨
 
【地対財特法の期限後の事業等の調査・監理委員会について】

(市長)
 本日は、大阪市において当初同和対策事業の一環として始めた事業について、今後の方針を説明します。
 まず、現在、市会でも問題となっている芦原病院の民事再生手続による処理の問題、そして飛鳥会をめぐる一連の事件と言いますか、顕在化した一連の事実・実態につきましては、大阪市が、社会や時代の変化の中で事業の使命を終えたと考え得る時点で、速やかに事業を見直すべきであったにもかかわらず、それを怠ってきたということが大きな原因だと考えています。この間、多くの市民を含む内外から厳しい批判を招いていること、また、地対財特法の期限であった 2002年3月以降の度重なる市会の附帯決議など市会からも度々指摘を受けながら、我々行政サイドとして十分な見直しができなかったことについて、大阪市として、行政を預かる最高責任者として、率直にこの事実を認め、真摯に反省しなければならないと思っています。
 そういう深い反省の上にたって、本日は、先日の記者会見の内容とも重なりますが、地対財特法期限後の事業等のあり方について、市長として次のような項目についてスピード感を持って取り組む決意をいたしましたのでご報告します。
 大きくは4つの項目に分かれていますが、一つ目は、関連事業の総点検で、これについては先日も説明しましたが、社会情勢・時代の変化の中で、事業の使命を終えた時点で適切な見直しをしていなかったものについて、市会から指摘があったものも含めまして、同様のことがないか、他にも残っていないかどうかを、外郭団体も含めて徹底した調査を行います。調査内容は、地対財特法の期限内で同和対策の一環として事業を始めた経過がある事業で、法期限が過ぎた後も見直しをせずに事業が残存していて、コンプライアンスの観点や契約手続きの関係等から不適切と考えられるものがないかどうか、一般社会通念から見て、特別な優遇措置と市民の目から見て疑念をもたれるものがないかどうかを調査するというものです。対象は、委託事業、補助金・貸付金、未利用地等の使用、建物、用地等の使用貸借などです。
 それと平行して、総務局がすでに調査を始めていますが、職員の法人等の役員への受嘱や勤務時間中の職務専念義務について、違反しているようなことがないかどうかも、適切に調査をします。調査期限は6月末を目途としますが、明らかに不適切なものはすぐにでも対応していきたいと思います。また優遇措置といえるかどうか、即断できないようなもの、グレーゾーンに含まれるようなものについては、7月中に取りまとめて、それに対する本市の方針を明らかにしたいと思っています。
 二番目は、関連団体との協議のあり方についてです。  部落解放同盟も含めてすべての団体との協議のあり方について検討し、ガイドライン、ルールづくりを適切に行って、実行していこうということです。対象はすべての団体で、検討内容は、例えば協議の告知や要望書・議事録の公表などで、オープンにして透明性を高めるルールをガイドラインの中で明確にする予定です。6月中に、後述するプロジェクトチームが中心となって、ガイドラインの策定を目指すこととしています。
 三番目に、政策的な課題、政策的に進めてきた施策について、これまでも指摘されてきている4つの項目・施策をあげていますが、これらについて適切に見直すこととします。
 学校における管理作業員、給食調理員の配置、いわゆる加配と呼ばれているものや、青少年会館への職員の配置、保育所の保育士、そして、ふれあい人権住宅について公営住宅の募集地域を学校区などに限ってきていたものなどについて、今日的な視点から見直すというものです。早急に調査・見直しを進め、可能なものは19年度予算に反映できるようにしたいと思っています。また、残ったものについても、遅くとも20年度予算では、整理がついたということが見えるような形にしていきたいと思っています。
 最後に、これらを実施する体制とその進捗管理ですが、市の内部から、経営企画監、総務局長、市民局長、財政局長、そこに弁護士や民間有識者など外部委員 3名程度を加えたプロジェクトチーム、仮称ですが、「地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」というプロジェクトチームを早急に立ちあげます。
 プロジェクトチームでは、総点検調査に基づく市の方針の策定、先述の団体との協議に係るガイドラインづくり、そして政策的な課題について、外部委員の客観的なアドバイスもいただいて適切な方針を策定していきます。
 いずれにしても大変な作業になりますが、大阪市の事業は不透明感があると指摘されてきた経緯も踏まえ、きっちりとした調査をして、問題をすべて洗い出し、今日的視点から見て透明感のあるものにしていきたいと思っています。差別を解消することが我々の最終目的でありますから、それに適う事業としてなされているのかどうか、はっきりと峻別して、見直すべきものは見直しができるよう、細部にわたる徹底した調査を指示しています。調査の後から、また新たな問題が出てくるようなことがないよう、職員を守る観点からも、徹底してやりきらねばならないと思っており、執行会議のメンバーも全員全力をあげて取組む強い意志を固めていますから、これをやりきりたいと思います。

質疑応答
(記者)
 学校における職員配置の適正化というのは、管理作業員等の数、配置されている人数を見直すということか。
(市長)
 こういう学校の職種については、地対財特法の時代に同和対策事業として、いわゆる加配ということで、一般校よりも多く職員を配置してきた経緯がありますが、それを見直すということです。これらは法の期限後、市の施策としてやってきたことですから、私が決めなければならないことですが、一般校と同じにするという方向で施策を見直したいと思います。  この政策的課題については、プロジェクトチームの外部委員の意見も聞いた上で決めなければなりませんが、これまでも検討してきた課題であり、私も以前から考えてきたことなので、適切に見直したいと思います。
(記者)
 端的に言うと、同和加配は止めると、そういう方針であるということですか。
(市長)
 この管理作業員、給食調理員に関しては、加配を止めるという方針です。
(記者)
 青少年会館については、職員配置を見直すということで、会館を閉めるとか、完全委託にするなどといったことは関係がないのか。
(市長)
 そういったことも含めて検討したいと思っています。
(市民局長)
 補足して申し上げますと、すでに職員配置を見直すということでは方針が決まっているものでも、その方法が職員の退職待ちということでスパンが長いものもあります。今回は、もう少しスピード感をあげるということで、その見直しのやり方そのものについても考え直すこととしています。退職待ちということではなく、例えばこの4月1日に、人権文化センターの2号職員が区役所の安全安心のための職員として配置されたということもありますので、そういうことも含めて、見直しのやり方そのものについても再考していくということを含んでいます。
(市長)
 今説明があったように、見直しすることは決めていても、自然に退職者が出るのを待つといったスピード感のないことはしないということです。
(記者)
 このタイミングで、この4事業の見直しを市長が明らかにされたのは、市会が芦原病院に関する債権放棄をめぐって議論噴出し、議案が提案できていないことが一因であると思うが、これらの見直しによって、市会も理解を示してくれるというご感触か。
(市長)
 理解を頂かなければならない事項です。市会で審議してもらわねばならない事項は、もちろん提案して議論してもらわねばならないわけですが、私は理解していただけるものと思っています。
(記者)
 いや、この4事業の見直しについては市会も理解されると思うが、芦原病院にかかる債権放棄について、これらの見直しを示すことで、市会の理解が得られると考えておられるのか。
(市長)
 芦原病院にかかる債権放棄については、市会は市会の立場でお考えになる問題です。我々としては、市から公金を出さないという時点で、医療生協が経営について立ち行かなくなり、民事再生手続きをとったわけですから、私はこういう裁判所が関与した民事再生という枠組みの中で、芦原病院の経営が純粋の民間病院に委託されるプロセスを望んでいます。しかし、市会は市会の中で様々なご意見があるわけですから、これからどういう審議結果になるのかはわかりません。
(記者)
 市側としては、姿勢を示したということなのか。
(市長)
 我々は、芦原病院の民事再生手続きが成立することを望んでいますし、一方で、事業等については、本日申し上げたスタンスでやるということを明確に示したということです。
(記者)
 先ほど、部落解放同盟という団体名称も市長ご自身の口からありましたが、先日の会見では、そういう具体の名称に踏み込まれることはなかったと思う。そういう意味で、この間、この問題に対するご認識が進んだように思うが、どうか。
(市長)
 認識というか、協議の仕方が他とは違うことをやってきたという点はあったと思います。これは双方の責任ですが、この協議をあるべき姿に適切に改めたいと思っています。部落解放同盟以外にも、様々な団体があるわけですが、これらについても協議の仕方が良くないものについては、同じレベルで見直します。当然、部落解放同盟との協議についても例外ではないということです。
(記者)
 部落解放同盟大阪府連と毎年協議をされていると思うが、それまでに間に合うように見直すということか。
(市長)
 ガイドラインを策定して、それに則って協議をします。
(記者)
 差別をなくすことが最終目的で、その目的に適っているかどうかをチェックするといわれたが、その目的に適っていないものがあったというご認識か。
(市長)
 時代背景との関係で、使命を終えているのに事業を継続していたようなものは、かえって差別を助長していた側面もありうると私は思っています。そういう意味で、行政側が的確な、きちっとした姿勢を持たないといけないと考えています。
(記者)
 学校における職員配置の適正化については、教員は対象に入っていないのか。
(市長)
 これは、現段階では、対象に入れていません。教育問題とのからみがありますから。
(記者)
 これまでの市の事業について、不透明な点があったのではないかということですが、今少し、市長の言葉で、これまでの課題なり問題点なりをご説明願えないか。
(市長)
 運動団体が悪かったという問題ではなくて、行政サイドの組織風土にも大きな問題があったと強く反省しています。これは、やはりどこかで断ち切らないと双方にとって良くないと思っています。私は、行政サイドの反省を踏まえて、この機会に、抜本的にこれまでのやり方を見直して、正しいやり方で今後の事業を進めていくという趣旨です。
(記者)
 青少年会館の職員配置の適正化について、2号職員が多くいるということですが・・・
(市民局長)
 2号職員と言いますか、もともとは子ども会活動を行う社会教育主事補などが、社会教育施設が指定管理者制度などで配置先として限られるようになったために、配置変えが柔軟に行いきれていない実情が見受けられます。大阪市全体として、こうした職員の活用の仕方を考えていくべきだと思っています。
(記者)
 青少年会館などの職員配置の適正化というのは、これまで職員数を固定していたものを流動化するということなのか、数自体を減らすということなのか。
(市民局長)
 両方です。
(記者)
 政策的課題の解消のところで、4項目のあとに「など」がついているが、これから何事業くらい見直しをされるのか。
(経営企画監)
 これから課題も整理していく予定で、現時点で4項目をあげているということです。今後、作業を進める中で、各所属から新たな課題も出てくると思いますので、順次整理していきます。
(記者)
 団体との協議といっても、いわゆる支部との交渉は、やっているところとやっていないところがあったり、内容も頻度もまちまちだと思うが。
(市民局長)
 これまでのお互いの話し合いの結果、交渉の仕方も随分様変わりしてきています。府連との交渉は、ご存知のように公開で行うようになっています。以前の、差別の実態が厳しい時代には、行政の対応も遅れていたことがあり、各支部との交渉もかなり厳しいものがありましたが、一定行政の対策が進むにつれ、節度のある交渉ということで、そのやり方も各支部を含めて、かなり様変わりしています。交渉自体を行っていないところもありますし、現在は交渉するとしても要望を文書でもらうことが前提になっています。しかし、なお正すべき、見直すべき点もあろうかということで、他の団体も含めてルール化して、適切にやっていきたいということです。
(記者)
 各支部で交渉の形式は、口頭であったり文書であったり、各支部でバラバラなのか。
(市民局長)
 以前はいろいろありましたが、今は、文書で要望事項なり、協議事項なりを示してもらわなければ交渉はできませんという姿勢をとってきました。
(記者)
 これからガイドラインを策定されるわけだが、今の時点でも、文書を出すということが前提であるというルールはあるということか。
(市民局長)
 そうです。
(記者)
 職員の職務専念義務についての調査で、市職員の運動団体役員への就任についても調査されるものと考えていたが、そのような調査はしないというある所属の見解もあり、どうされるのか方針を確認したい。
(経営企画監)
 職務専念義務に関わるような受嘱について調べるのが調査の趣旨ですから、地元の町会の役員をやっているというような、専念義務に関係のないものは調査対象にはならないと思います。従って、専念義務について疑義を生じるようなものであれば、ご指摘のような役職も範疇にはいる可能性はあると思いますが、総務局に確認をお願いします。
(市民局理事)
 職務専念義務についての調査ということで、職場を離脱する、しないという実態から入っていく調査です。専念義務について、違反することが確認できるものであれば、当然調査であがってくることになります。
(市民局長)
 職務時間中に、法人や団体の役員の仕事をするには、休暇なりの手続きが当然必要なわけで、そういう観点から受嘱関係についても調査しようというものです。従って、職務の時間外に活動していたとしても、それは職務とは何ら関係がないものであり、また調べようもないものです。あくまで、職務に影響があるかないかの観点からの調査です。
 
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