平成18年8月29日    大阪市長会見要旨
 
【芦原病院、飛鳥会等をめぐる一連の問題に対する処分、市長のお詫びと今後の対応策について】

(市長)
 今朝、飛鳥会や芦原病院にかかわる一連の事案について、不適切な事務処理にかかる関係者の処分を行いました。
 本市職員99人に対し厳正な処分を行うとともに、大阪市開発公社、大阪市社会福祉協議会などの監理団体等においても、あわせて固有職員6人の処分を行いました。このような多数の処分者を出さざるを得ない事態となりましたことについて、改めて市民の皆様方に深くお詫び申し上げます。
  飛鳥会や芦原病院に関わっては、架空の補助金支出や虚偽の申請書等の作成など、著しく不適切な事務処理が行われており、公金の支出や事務の執行に対する市民の信頼を大きく損なうこととなり、誠に申し訳なく思っています。
 先日、私自身、責任を痛感し、10分の5、6か月の給与減額を発表しましたが、一連の事案にかかる大阪市としての責任を明らかにするため、柏木助役については、当時の財政局長であったことや健康福祉局の担当助役であることを踏まえ、10分の1、3か月の給与自主返還を、井越助役と小西収入役については、 10分の1、1か月の給与自主返還をすることとしました。
  前健康福祉局長については、芦原病院の処理にかかる一連の方針を決定するとともに、不適切な事務処理を命じた責任者として、本日付をもって「諭旨免職」としました。
  その他の健康福祉局の局長級、部長級職員についても、それぞれの職責や役割に応じて「停職1月」や「減給3月」といった非常に厳しい処分を科しました。
  「停職1月」は、元健康福祉局理事、医務保健総長に対して、「減給3月」については、元健康福祉局理事、健康福祉局理事、2名の元健康推進部長、健康推進部長を対象としました。
 また、飛鳥保育所などの委託業務にかかわる事案などについては、事務事業の実施にあたっての事実の確認や報告の点検など十分な検証を行うことなく漫然と事務を実施しており、事務事業の適正な執行管理を怠った課長級を「減給1月」など厳しく処分しました。
  なお、今回の処分にかかわっての人事異動を本日付けで行いました。
  次に、今回の調査の中で判明した大阪市の損害については、適正に損害賠償請求等の法的措置をとることとしています。
  個別の事案については、請求の相手方や、その法的根拠、請求すべき金額、あるいは、いかなる方法が最も効果的か、といった点について、専門家である弁護士の意見を伺いつつ、各局で鋭意作業を進めています。
  いずれにしても、本市の回復すべき損害額が最大限に確保され、できるだけ早期に結論が得られるよう、取り組んでいきます。  また、この度の一連の事案にかかわっては、二度とこのような事件を起こさないための実効性のある再発防止策を実行しなければなりませんが、監査結果で指摘されたように、補助金支出や迂回融資にかかる不適正な事務処理が長年続けられたこと自体、個々の職員の責任ばかりでなく、制度的欠陥であり、また本市組織の構造的、組織風土的な問題であると考えています。
  本市としては、この監査結果報告等の意見を真摯に受け止め、指摘を受けた制度的欠陥や、組織の構造的問題など、関係者のヒアリングを通じて浮き彫りになった問題点を根本的に解消するため、再発防止策を取りまとめたところです。  その柱として、ひとつは、リーガル・サポート体制の強化、プロジェクトチームによる抜き打ちの内部監察など、コンプライアンスの徹底を図ることです。二つ目は、補助金等交付規則に照らした補助金の全件調査及び調査結果の公表、補助金のあり方に関するガイドライン策定など、補助金等公金支出の適正化を図ることです。
 今後は、こうした防止策を徹底して実行するとともに、各局が抱える課題については、執行会議や外郭団体等調整会議などにより、全庁的に認識を共有して対処するとともに、二度とこのような事件を起こすことのないようコンプライアンス体制の推進に取り組み、職員一人一人の意識改革を図り、公正・公平な組織体質を作り上げ、職員が安心して職務に専念できる職場環境を構築し、市民の信頼回復に努めていきます。
  さらに、外郭団体においても、コンプライアンス体制の充実や監査体制の強化は急務であり、この面での指導・徹底を早急に図ります。
  今回の非常に厳しい処分を契機に深い反省のもとに立ち、職員の日常業務におけるコンプライアンス、私を含めた管理責任者のガバナンスの徹底を図り、大阪市政に対する市民の信頼回復を図る再出発の節目にしたいと考えています。

質疑応答
(記者)
 局長経験者の処分は、いつ、どこで、誰から行ったのか。そのとき、局長経験者はどのようにコメントをしたのか。また、市長自身が局長経験者を処分することについて、どのように考えておられるのか。
(市長)
 諭旨免職にした前健康福祉局長については、今朝8時30分から市長公館で、私から処分の趣旨を伝えた上で、退職発令を交付しました。その他の局長級、部長級以下の職員に対しては、9時から市役所内で処分を行いました。
  前健康福祉局長については、8月21日に処分の主旨を説明しており、翌22日に本人から退職願いが出されたと聞いています。本人は、市民の信頼を大きく損なったことについて誠に申し訳ないと話し、お詫びの言葉を述べていました。
 局長級に対するこのような厳しい処分は大阪市政において前例のないもので、長年にわたり福祉分野で真面目に勤めていただいた方ですから、ある意味で、辛く、残念な気持ちです。しかしながら、きちんとけじめをつけるということが、これからの市政改革を進めていくうえで、コンプライアンス、ガバナンスを重視した市政を進めていくといううえで、必要と判断して、厳しい処分を行いました。
(記者)
 職員の同和対策関連事業に対する偏った思い込みが原因となっていると監査報告で指摘されていて、今後、職員の運動団体への意識の改革が必要だと思われるが、この点についてはどう考えておられるのか。
(市長)
 以前から申し上げているように、各々の事業には当初それぞれ一定の使命があったわけですが、使命が終わった段階で見直しをしてこなかったこと、また地対財特法期限後においても事業が続けられていたものがあったことについては、深く反省しています。
 私は、基本的には、特別扱いをしないということをメッセージとして送り続けていきたいと考えています。特別扱いをしたことが、かえって差別を助長する結果につながったことを反省していますので、今後は特別扱いをしないという理念であらゆる事業に対処していきたいと思います。
(記者)
 人事異動で、前市長室長の森下氏が市場長に選任されていますが、この異動はどのような考えによるものか。
(市長)
 今年の10月で更迭人事をしてから概ね1年になることから、非常に能力のある人材なので、10月の人事異動くらいで適所にと考えていました。もうすぐ9月なので、この機会に異動してもらいました。
 中央卸売市場は、物流の形態が変わる中、法改正によって民間との競争が加わり、転換期を迎えていることから、改革プロジェクトチームを立ち上げて活動を始めているところです。中央市場として、昭和の初めから今日まで、消費者に対する役割を果たしてきましたが、転換期を向かえていることから、今のプロジェクトチームと協調して、今後の方向性を見極め、当面の対応をどうしていくのかを明確にしていく必要があります。その任に最適な人材と考え、お願いすることにしました。
(記者)
 前健康福祉局長は、懲戒免職、諭旨免職、減給とある中で、なぜ諭旨免職としたのか。また、今回の職員の処分で、大阪市の同和行政のゆがんだ部分・膿は出し切ったということなのか、お考えを聞きたい。
(市長)
 今回の事案は、前述のように極めて不適切な事務処理を行ったというもので、私腹を肥やしたとか、罪を犯したというものではないので、懲戒免職にはあたらないと考え、諭旨免職といたしました。職を失うという点ではどちらも同じであり、厳しく、重い処分だと考えています。
  また、膿は出し切ったのかとのご質問ですが、まだ明日、明後日ともに、この問題での調査・監理委員会が開かれ、政策的事項など議論もいただくことになっており、この委員会の報告を受けて、市としての今後の方針を決めていくこととしています。
ただ、長い経過があり、しかも象徴的な事案であった飛鳥会の問題と芦原病院の問題については、ひとつの節目、ひとつの区切りにしたいと思っています。
(記者)
 飛鳥会に関連して、市の職員が自腹を切って補助金を捻出していた事案があったが、こうしたことは、大阪市の上司に相談し難いといった風土、減点主義の風土などの問題であって、これからもあまり変わらないと思われるが、市長はどう考えられるか。
(市長)
 これは職場風土の問題、構造的な問題で大きなものであると認識しています。これを根底から変えることが、今進めている市政改革の最大のねらいにもなっているわけでして、私自身も各職場へ出向いて、問題をひとりで抱えないこと、職場で問題を共有し必ず議論する職場風土を作ってくれるよう、職員に対して直接働きかけを行っています。
 もちろん長年培った仕事の進め方を変えるのは大変ですし、最後は職員個々人の意識の問題に行き着くわけですが、これを改め、職員個々人がコンプライアンスの考え方を徹底し、個々人の力だけではなく、組織トータルの力が働く職場にしていけるよう、メッセージを発信して働きかけています。私だけでなく、執行会議のメンバーもそういった働きかけを続けています。
  私の感覚では、この間ずいぶん変わってきているように思いますが、未だ途上にあるのが実態です。今後も継続して働きかけを続け、職場風土をぜひとも変えたいと思っています。徹底してやっていきたいと思います。
(記者)
 記者会見において、本日のように市長ご自身が立礼してお詫びをされたのは、これまでなかったように思うが、それはどういう理由か。
(市長)
 当然それだけ重みのある処分であるということです。冒頭申し上げたように、公金、税金を扱うことに関して不適切な事務を行い、この点に関して市民の不信を招いたことは、非常に大きい、重みのあることと考えています。市民の皆様方に、率直に心からお詫びを申し上げたい気持ちを表したものです。
 
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