多文化共生のまちづくり
~地域でくらす生活者として外国に
ルーツ・つながりをもつ隣人とのかかわりを考えよう~
- 監修
- 子どもの夢応援ネットワーク
- 制作
- 教育委員会事務局生涯学習担当
本学習コンテンツは・・・
- 2019年10月31日に実施した「多文化共生のまちづくり~地域でくらす生活者として外国にルーツ・つながりをもつ隣人とのかかわりを考えよう~」をタイトルとして、「子どもの夢ネットワーク」に参加しているメンバーによる基調講演と就学前・小・中・高・若者とそれぞれの年代に関わる取組についてのリレートークの内容をもとに編集したものです。
- 改正出入国管理法の施行や「外国人材受入れのための総合的な対応策」の公表、さらには「日本語教育の推進に関する法律」の成立などの新たな動きが進む中で、市民・NPO/NGO・企業と行政が協働して、多文化共生社会の実現に向けて取り組むことが必要になってきています。
- 本資料をとおして、地域で暮らす市民の立場で、国籍や民族、文化、言葉の 「ちがい」を認め合い、ともに暮らしていくために、私たちが何を心がけていくべきかを考える機会となれば幸いです。
資料の構成
子どもの夢応援ネットワークのメンバーが、「外国にルーツ・つながりをもつ隣人、特に子どもとその親とのかかわり」について説明します。
- 最初に、基調講演として話された外国人を受け入れてきた日本社会の大きな流れについて確認します。
1.多文化共生のまちづくりに向けて
~金光敏(特定非営利活動法人コリアNGOセンター)
- 次に、以下の年代ごとに、外国にルーツをもつ子どもたちとその親がどういった状況にあり、どういった課題を抱えているか、周りがどうかかわっていけばよいか、これまで実践されている取組事例をもとに見ていきます。
2.乳幼児~学校に入るまで ~山根絵美(公益財団法人とよなか国際交流協会)
3.小学校 ~山田文乃(大阪市立高津小学校)
4.中学校 ~坪内好子(西淀川インターナショナルコミュニティー)
5.高 校 ~橋本義範(NPO法人おおさかこども多文化センター)
6.若 者 ~ラボルテ雅樹(公益財団法人とよなか国際交流協会若者事業コーディネーター)
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子どもの夢応援ネットワークとは~岩城あすか
(公益財団法人箕面市国際交流協会)
- 日本では少子高齢化や労働力の減少などを背景に、年々外国人の数が増えていますが、必ずしも受入体制が整えられているわけではありません。
- 2016年の夏、「マイノリティ性をもつ子ども・若者の教育や就労を支援する人たちのネットワークづくり」を目的に、地域で活動している団体、個人が集まって子どもの夢応援ネットワークを結成しました。
- それぞれの地域で活動している団体や個人が単独では進められないことや難しいことも、ネットワークを広げながら、少しずつ課題を解決したいと思い、いろいろな取組を進めています。
- 具体的には定期的な情報交換会、シンポジウムなどを開催しています。
多文化共生のまちづくりに向けて
日本社会で外国人はどのように暮らしてきたか。
また日本を選んできたのか。
これから多文化共生のまちづくりに向けて
どういった取組が必要になるか。
1.多文化共生のまちづくりに向けて
- 日本に在留する外国人の数は年々増加しており、2001年に200万人を超えた。
- リーマンショックで日本に暮らす外国人の数は一時減少したが、今は年10万人以上のペースで増加を続けている。
- 外国人労働者数も増えているが、分野別、都市、地方などで偏りがあることから、この1年、政策が大きく動いた。在留資格「特定技能」(5年間働くことができる。業種によっては最長10年)を設け、新たに外国人労働者を呼び込もうとしている。今後5年間で14業種で最大34万5千人が来日するということだが、実際にはまだ交付者数は数百人(2019年10末現在)の来日にとどまっている。
- もしかしたら、日本社会には「日本で働きたい」「ジャパニーズドリームを叶えたい」外国人がたくさんいるという錯覚がないか。
- 「国際化」「グローバル化」が当たり前に言われているが、私たちは日本のおかれている状況を正しく理解しているか。外国から見える日本の姿が意識できなくなってきていないか。
1.多文化共生のまちづくりに向けて
- 出身別に見た場合、韓国・朝鮮が一番多かったが、2006年に中国が一番多くなった。
- 在留資格別に見た場合、特別永住者(「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」に基づく永住者)が一番多かったが、2006年から永住者が一番多くなっている。
※(出入国在留管理庁)http://www.immi-moj.go.jp/
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1.多文化共生のまちづくりに向けて
- 日本だけでなく、韓国や中国、台湾でも外国人労働者受入れは始まり、人材獲得競争は激しくなってきている。
- 韓国の最低賃金は大阪よりも高いだけでなく、在韓外国人処遇基本法という法律で外国人の身分は守られている。台湾では日本よりも長く働くことができる。
- 「誰を入れるか」という発想ではなく、「誰が日本を選ぶか」という発想で考える必要がある。今や移住者がどこに行くかを選ぶ時代。外国人を袋小路に追い込むような状況では日本は選ばれなくなる。
- 「多文化共生」という言葉が急速に広がったが、日本社会の中で都合のいい言葉として使用してはいけない。外国人労働者をどう確保するかということではなく、一番大事なことは生活や暮らし、人権であり、そこをどう守っていくかということが大事。それがあって初めて、今後も日本が働く場所、暮らす場所として選ばれる。
生活や暮らし、人権をどう守るか、外国にルーツをもつ子どもと親に焦点を当て、
「乳幼児~学校に入るまで」「小学校」「中学校」「高校」「若者」
の年代ごとに状況や課題を見ていく。
だれもが暮らしやすい社会、外国人に選ばれる社会、生活者や暮らし、
人権をどう守っていくか見ていく。
乳幼児~学校に入るまで
外国につながる子どもは、
海外で生まれて日本にやってくるだけではなく、
日本で生まれる子どももたくさんいます。
また、親が地域社会とつながっているかどうかで
親や子どもの暮らしが変わります。
2.乳幼児~学校に入るまで【状況1】
- 日本では婚姻数全体の約3.5%(およそ28組に1組)が国際結婚です。日本全体の婚姻数 … 約60万組(2017年)
うち、夫、妻のいずれかが外国人 … 21,457組(2017年) - また、夫と妻のどちらが外国人かということで国際結婚の数や出身国の内訳が変わります。
2.乳幼児~学校に入るまで【状況2】
- 国際結婚が一定の割合を占めていること、さらに夫婦ともに外国人の家族の数も増えており、外国にルーツをもつ子どもの数は増えています。
日本全体の出生数 … 963,191人(2017年)
- うち、妻外国人、夫日本人の夫婦から生まれた子ども…8,674人
- うち、夫外国人、妻日本人の夫婦から生まれた子ども…9,460人
- うち、両親ともに外国人(外国籍)の子ども…17,126人
⇒(親あるいは本人の国籍が)外国の子どもの割合…約3.7%
- 「ルーツ」と「国籍」と「言葉」について、組合せは一様ではなく、多様な時代になっています。
外国籍だけど日本生まれ・日本育ちで日本語しかできなかったり、日本国籍だけれど海外生活が長くて日本語ができなかったり。
また、生まれ育った環境によっては、日本で生まれ育っているけれども日本語が十分にできないこともあります。
国際結婚の子ども(“ハーフ”や“ミックスルーツ”など)、在日コリアンなど、外国ルーツであることが見えない/見えにくいことがあります。
2.乳幼児~学校に入るまで【状況3】
- 保護者、特に外国人ママたちの抱える課題
- 来日後、1年以内に妊娠・出産するケースが多い。
→日本語がままならないまま子育てを行うことになる。
日本の教育システムについてもよく分からず、情報格差が生じる。 - 子育ての不安は国を問わず共通だが、日常の些細なことが心配になる。
→「自分が外国人だからではないか」と思ってしまう(越境による喪失体験から)。 - 夫や義理の両親からしばしば文化が否定され、心理的負担が大きい。
- 日本での生活に必死で、日本語をじっくり学んだり、子どもとゆっくり向き合う時間が取れない。
- 子どもは日本語が上手になるが母語を忘れていってしまう。一方で親は日本語がなかなか上達しない。
→母語で話す親、日本語で返す子どもの間でコミュニケーション不全となる。
思春期の悩みや、将来の相談などがしにくくなる。
2.乳幼児~学校に入るまで【取組事例1】
親子参加型日本語交流活動/外国人ママと子ども居場所づくり
おやこでにほんご
日時:毎週火曜日10:00~12:00
場所:豊中市内3か所の図書館(岡町図書館・庄内図書館・千里図書館)
概要:外国人ママと子どもの居場所づくり。ボランティアも親子で参加。
- 子どもを連れて、地域で安心して集える場
- 情報交換や子育てについて悩みを話したり相談できる場
- 友だちづくり/出会いの場(ママ友、外国人先輩ママとの出会い)
~ボランティアがピア(子育て中という同じ立場)であるメリット - 悩みを共有できる
- 支援-被支援の関係の転換…関係が固定化されない
- 子育て中でも社会とのつながりができる
~図書館で活動することのメリット - 公共施設の中でも足を運びやすい(敷居が低い)
- 図書館にとっても新しい利用者層の参加は施設活性化につながる
2.乳幼児~学校に入るまで【取組事例2】
多文化子ども保育「にこにこ」
日時:とよなか国際交流センターで実施している日本語教室と同じ時間帯に実施
(毎週木曜日、金曜日の2回)
場所:とよなか国際交流センター
概要:ボランティア(保育士資格または同等の資格を持つ方)が子どもたちと
一緒に遊んだりしている。
- 就学前の多文化な子どもたちが社会性を身につけることができる
- とよなか国際交流センターが子連れで来やすい場所になる
- ときどき、保護者も一緒に保育の活動に入る。そのとき、ボランティアが
子育ての悩みを話したり、アドバイスを得ることができる
2.乳幼児~学校に入るまで【取組事例3】
「こども母語」
-
日時:第2・4日曜日10:00~12:00
場所:とよなか国際交流センター
概要:母語・母文化学習を通じた仲間づくり
-
- スタッフは主として外国にルーツをもつ大学生、若者。
スタッフがピア(仲間)として子どもたちを支える。
また、子どもたちにとって身近なロールモデルになる。 - 幼児・小学生・中学生・高校生が参加している。
同じルーツをもつ仲間との出会いの場になっている。
※中国語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語
それぞれ分かれて活動しています。
(ポルトガル語は現在お休み中)
- スタッフは主として外国にルーツをもつ大学生、若者。
2.乳幼児~学校に入るまで【取組事例4】
豊中市小学校外国語体験活動
概要:地域に暮らすアジアを中心とした外国人ボランティア(約50人、約15言語)が外国語や自国の文化を紹介する。豊中市内の全小学校(41校)の3~6年生の全クラスで実施(豊中市教育委員会委託事業)
- ボランティアの多くは、日本で子育てをする外国人女性。自ら学校に行くことで、学校文化について知ることが出来る。
- 授業での交流を通して、子どもたちからパワーをもらえる。
- 「日本語ができない」「仕事が見つからない」「何をするにも助けが必要で自分は役に立たない」と思っていた人が、「私にもできることがあるんだ!」ということを実感できる。
- 社会とつながる喜びと自信を得ることができる。
→外国人(女性)の自立、外国にルーツをもつ子どものエンパワメントにつながる。
小学校
子どもが日本社会にどっぷりと入っていきます。
一方で親はそもそも日本の学校についてあまり詳しくなく、
結果、子どもの様子が見えにくくなっていきます。
子どもをしっかり受け止め、
学校と親がつながることが大事です。
3.小学校【状況1】
外国にルーツのある子どもと保護者について、保護者の仕事で一家そろって日本に移り住むことになるケースだけでない。様々な背景があって、今、共に日本で暮らしている人たちがいます。
- 家族で移住するケース
~日本が好き。日本に期待して来日。子どもに日本語を学ばせたい。 - 子どもを呼び寄せるケース
~保護者だけ先に来日し、仕事などが落ち着いてから子どもを呼び寄せる。
初めて保護者と一緒に住む子どもだけでなく、保護者も子育ての経験がなく戸惑うことも多い。
子どもにとって、生活、言語、文化が変わるだけでなく、一番身近で信用できる大人まで変わる。 - 日本で生まれ育っているケース
~両親や祖先に外国にルーツがある。家庭内言語が母語(継承語)の家庭もあるが、その場合、 文化の差が学校に入ってから見える。子どもは生活言語ができるため、困り感が見えにくい。
そのため、日本語指導の対象となりにくく、学習言語の習得が思うように進まない。
3.小学校【状況2】
「外国にルーツのある子ども」の捉え方~大阪市の場合~
※大阪市立小中学校の児童生徒数の状況
※児童生徒数の総数は、大阪市HP(都市計画局)「平成30年度学校基本調査結果の概要」より引用
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000464187.html
※外国籍児童生徒数及び日本語指導の必要な児童生徒数は、大阪市教育委員会事務局より提供
3.小学校【取組事例1】
言葉の壁を乗り越えるための取り組み
まずは、今までの学校文書に
①アンダーライン ②ひらがなのルビ をつけたり、
③多言語に翻訳 ④やさしい日本語 にする取り組みから。
しかし、翻訳しても、こちらが思うように伝わらないこともある
【例】
遠足の日にリュックサックではなくランドセルで登校した子どもがいた(中国)
中国では昔は布や皮革製の肩掛けカバンを使っていたが、今は小学生ではリュックタイプのカバンを使う子どももいる。そのため、「リュックサック」で行くようにというつもりで「书包(書包)」と翻訳したが、それは厳密には「学校用のカバン」という意味だったため、ランドセルで遠足に来ることになった。「リュックサック」は「背負うかばん」という意味で「背包(背包)」になる
→言葉に頼らず誰もが理解できる視覚的にもわかりやすい工夫が、保護者の学校文化理解につながり、ひいては子どもの学びを保障することに繋がる。
3.小学校【取組事例2】
保護者の理解・協力を得る
- QRコードでその学用品の使用方法、購入場所、ピクトグラムの意味が理解できるようにした工夫
保護者がこのプリントを持っていけばお店で必要な物が購入できる!※プリント例は、大阪市教育委員会事務局作成
写真・アルファベット・ひらがなでわかりやすく
3.小学校【取組事例3】
保護者の理解・協力を得る
3.小学校
子どもや保護者と関わりをもつときに次のことが大切です。
一人の人間として関係を作る
- 「教える・教えられる」でなく、対等な立場で関わること。
折り合う力をつける
- 自文化第一主義ですすめるのか、互いの文化を尊重するのか。
- 例えば、習慣・風習・慣習・決まりを伝えたり、それに合わせるように求めるとき、そもそも必要なものか振り返ってみることも大切。
→多文化共生の新しい文化の創造
通じるまで、粘り強く
- 言葉の壁は翻訳アプリなど文明の利器で超えられるが、文化の差は時間をかけることが必要。
- ステレオタイプで簡単に判断しないこと。無意識に傷つけてしまうような言動(マイクロアグレッション)を避ける。
中学校
授業はますます難しくなり、
子どもによってはついていくのが難しくなります。
そんな中、高校入試です。
親も子どもの手助けが難しい中、子どもだけでなく
家族単位で地域につなぎ、支えることが大事です。
4.中学校【状況1】
厳しい高校への道 ~大阪府の公立高校入試の主な制度~
- 海外から帰国した生徒の入学者選抜
原則として外国に継続して2年以上在留し、帰国後
2年以内の者。数学・英語の学力検査と面接。
配慮事項の申請もできる - 日本語指導が必要な帰国生徒・外国人生徒入学者選抜
原則として小学校4学年以上の学年に編入
数学・英語の学力検査と作文(母語可)
※配慮事項あり
- 全日制の課程…5教科(国語、社会、数学、理科、英語)
- 定時制の課程…3教科(国語、数学、英語)
- 通信制の課程…面接
4.中学校【状況2】
今、受験を迎える子どもたちは来日して数年という子どもたちだけでなく、親や祖父母の代に来日した(特に1990年代)第二世代、第三世代の子どもたちも増えてきている。
第一世代である親が学齢期に日本語・日本文化をどれだけ習得できたかにより、日本語・日本文化の獲得や伝承理解に大きな差がでる。
大阪弁を駆使する子どもたちが必ずしも学習用語や日本の文化習慣を理解しているとは限らない。そのため日本語の読解力が弱い場合が多い。母語についても同じであり、簡単なコミュニケーションができるからと言って、読解力までついているとは限らない。
第三世代は、さらにことばの理解や文化習慣の理解に差が出ているように見受けられ高校受験の際、壁にぶつかるケースが多い。
ここでの第二世代第三世代の子どもたちの多くは高校入試は一般入試(国語を含む5教科の入試科目で受検)となり非常に厳しい状況となる。
将来の進学や就職への不安が大きい
4.中学校
○子どもに対する当面の学習支援だけでは解決できないものがあり、
保護者も含めて、生活への伴走が必要。
西淀川インターナショナルコミュニティー(NIC)での実践例を紹介
淀川の河口、兵庫県尼崎と隣接する工業地帯
4.中学校【取組事例1】
Tabunka相談タイム
日時:毎週月曜日14:00~15:30
場所:ゆうせいホール
概要:地域のキーパーソンと共に主にスペイン語、ポルトガル語対応で
学校のおたよりを読み解く、各種申請書(育休・保育所入所・就学支援申し込み、奨学
金等々)の書き方を説明する
課題:書類上でルビうちや多言語対応が必要
子どもだけでなく就労や家族関係の相談がでてくるため
関係機関の協力が必要となる
乳幼児と共に来所のため、別途子ども対応が必要
4.中学校【取組事例2】
子どもの居場所と学習支援の場作り
○小学生への学習支援教室「きらきら」
日時:毎週月曜日16:00~17:20
概要:学校の宿題を一緒にみる。
算数、国語のドリルで学習する。
クリスマス会等のイベント実施
4.中学校【取組事例3】
高校へつなぐ中学生への学習支援
〇Tabunka Juku“Animo”(たぶんかじゅく「アニモ」)
日時:毎週月曜日15:30~19:00
概要:学習支援(数学/英語/日本語学習)
高校の制度やアクセス、奨学金や就学支援金等の説明
大阪市塾代助成事業活用
※大阪市塾代助成事業…一か月に一人最大1万円の補助…を活用
4.中学校【取組事例4】
地域での活動 ○地域とつながる活動…イベント参加など
4.中学校【地域での取り組み図】
高校
高校に入っても、学業に励み、
自分のルーツも大事に過ごす。
5.高校【状況1】
外国にルーツをもつ子どもが抱えている不安や課題
- 異文化社会(日本)での学習への不安と戸惑いがある
- 日本語が話せないことで、いじめを受けたり、孤立したりする
- 日本語(子どもにとって外国語)による学校での学習は困難
- 母国ではなかった日本特有の学校生活での戸惑い
【例】お弁当、プール授業など
- 次第に使わなくなる母語の力が失われていくことへの親と子の不安
- 子どもにとっては自分のアイデンティティ確立への不安
- 親にとっては子どもとコミュニケーションがとれなくなる不安
- 描きにくい高校卒業後の展望(就職、進学)
- 自分の進路を決める際の参考となる情報が得にくい
- 一般の生徒に比べ目指すべきロールモデルの情報に接する機会が少ないので、
日本での将来の自分の姿を描きにくい - 親は日本での社会経験が少ないので子どもに助言を与えにくい
5.高校【状況2】
「日本語指導が必要な児童生徒数」は都道府県別に見た場合、大阪府は全国でも上位に位置する
5.高校【状況3】【状況4】
外国籍児童生徒の母語別在籍状況(在籍数上位5位)
大阪府では中国語を母語とする子どもが多く、ベトナム語、フィリピン語が続く。
大阪府の日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の言語別在籍状況
国籍が日本であっても日本語指導が必要な子どもも多い。
5.高校【状況5】【状況6】
大阪府の外国籍生徒と日本語指導が必要な生徒の増加
外国籍の子どもは減った時期もあったが、日本語指導が必要な子どもは一貫して増えている。
国籍だけではニーズは分からない。
日本語指導の必要な中学校3年生の高校進学率
日本語指導の必要な子どもの進学率は一般生徒に比べると低い。
5.高校【状況7】
外国にルーツをもつ子どもが将来、日本で幸せに生きるために必要なこと
- 学校や社会が子どもにロールモデルの提示
- 自分の将来の姿や目標を描きやすいようにロールモデルと出会う機会を設ける
- 母語教育が子どもの自尊感情を高める
- 日本語力を高めることと同様に母語力を維持、高める教育を受ける機会を設ける。
※令和元年度文部科学省中央教育審議会の諮問項目に「母語指導」が入る
- 日本語力を高めることと同様に母語力を維持、高める教育を受ける機会を設ける。
- マジョリティである日本の一般の人々の意識改革、および日本社会の
「内なる国際化」が必要- 将来、移住者も日本社会を支えることの認識が必要
- コミュニケーション方法の改善(やさしい日本語使用、無料通訳アプリもあります)
5.高校【取組】
日本語指導が必要な生徒への大阪府の施策(大阪府教育庁高等学校課)
大阪府日本語教育学校支援事業(府立高校対象)
府立高校に在籍する帰国・渡日した生徒に専門的な立場から支援をしています。
※NPO法人おおさかこども多文化センター受託
1.教育サポーターの派遣
★ 生徒への学習・学校生活支援として
a.授業での学習通訳
b.母語での教科指導のサポート
c.母語や、その国の文化を教える
d.日本語学習のサポート
e.進学に向けた学習のサポート
f.学校生活の相談のサポート
★ 日本語を十分理解できない保護者に対して
懇談会、説明会、手続き時の通訳を派遣
5.高校【取組】
2.高校生活オリエンテーションの実施
★府立高校への入学が決まった帰国・渡日新入生及び保護者を対象に、
高校生活に必要な情報(学校のルールや支援制度、学費、進路等)を提供
3.相談窓口の設置
★専門性のある支援員による相談対応
★日本語教育の教材紹介・指導法のアドバイス
★日本語指導や通訳のできる人材の紹介
★WEBページによる情報提供(http://pianihongo.org/)
4.教育サポーター交流会の実施
★サポーター同士の情報交換、課題についての討議を通じて、
サポーターのスキルアップをはかる。
このほか、教育庁事務局では
①加配・非常勤講師(日本語指導)の配置 ②特別非常勤講師(母語指導)の配置
③多言語学生支援員の派遣、交流会の実施 ④教職員対象研修の実施
⑤多言語進路説明会の開催
を行っている。
若者
この社会の中で
一人の人として
自分のままで生きる
(公益財団法人とよなか国際交流協会若者事業コーディネーター)
6.若者【取組事例】
外国にルーツ・つながりをもつ若者が置かれている状況
「外国にルーツ・つながりをもつ若者」と言っても様々な背景をもつ若者がいます。日本で生まれ育ち、教育も日本で受けている若者もいれば、途中で来日した若者もいます。さらに海外で義務教育を修了してから来日する若者もいます。義務教育を終えているので、高校入学・編入を目指すにしてもハードルが高く、仕事も簡単に見つからず、どこにも所属先がない若者も少なくありません。
15歳以上の義務教育対象年齢を超えた外国にルーツ・つながりを持つ若者たちは、所属や社会背景も異なり、ニーズも多様です。
学校など連携が取りやすい環境とは異なり、必要な日本語支援やキャリア支援につなぐことが難しく、また、自分の想いを表現したり、互いに聞き合ったりする場も限られているのが現状です。
6.若者【取組事例】
●わかもののたまりば
対 象:外国にルーツを持つ若者(高校生以上~39歳ごろまで)
日 時:日曜日 17:00 ~ 20:00
場 所:とよなか国際交流センター
参加費:1回200円
- 外国にルーツを持つ15歳以上の若者のための居場所づくりを様々な角度から行っています。
- 集まった人で一緒にご飯をつくったり、やりたいことをみんなと見つけたりチャレンジしたり、みんなが楽しむ居場所づくりが「たまりば」です。
※参加者について、「たくさん来たらいいよな」と思うけど、参加者が多ければ居場所になるわけではない。必ずしも数にこだわる必要はないかもしれません。
6.若者【取組事例】 ※わかもののたまりば
わかもののたまりばでしていること
料理、卓球、ビリヤード、カード/ボードゲーム、映画鑑賞、地域のおまつりへの出店、おでかけ、ラップ、テーマ型学習会(奨学金、労働問題、デートDVなど…)
※若者の支援について、「何か教えてあげる」とか「助けてあげる」ではなく、
「目の前の若者」が抱えている課題と背景を意識しながら…そこから見ている/見えているものを大事にすることが必要ではないでしょうか。
子どもの権利条約第12条…自由に自己の意見を表明する権利
⇒「子どもの意見」の英語は「view」。
つまり、ある位置から見える風景のこと。
⇒「スタート/ゴールとして学校/仕事」が多様化している
現代社会では、何を見ているか、何が見えるかが大事。
⇒何かを一緒にする、見る、考える、話す…
6.若者【取組事例】 ※わかもののたまりば
※居場所について、「あなたの居場所」って言うと、
押し付けっぽくなってしまう。
ただ、「家でも、学校/職場でもない」場だということが大事かもしれない。そこでは何かを一緒にやったり、時には教える側に回ったり、発表する側だったり、いろいろな役割がたくさん作られて、だれが何をするかが他の人から押し付けられないこと。
さらに知識や情報を蓄える「銀行貯金型」の活動ではなく、たまり場での活動が対話として存在していることが大事。
一人一人がどういうライフコースをたどりたいか、そんな簡単に説明できないし、見つからないかもしれないけど、それを一緒に探していく手伝いが大事。
国際交流に限らず、ささやかだけど、何かの経験ができるつながりであること。
そのつながりの中で「自己責任」を強いられている課題を社会化できること。
大阪市の現状
大阪市には、政令指定都市の中で最も多い、人口の約5.2%、約14万人の外国籍住民が暮らしており、従来から主に人権や民族性の尊重といった観点から多文化共生について先駆的な取り組みが行われてきました。しかし、外国籍住民の文化的・歴史的背景、抱える課題やニーズが多様化している中、教育や行政サービスをはじめ、各種制度にかかる国籍要件や社会参加の問題など、国の施策上の問題も含め、なお多くの課題が残されています。それらを的確に把握し、市民・NPO/NGO・企業と行政が協働して、多文化共生社会の実現に向けて取り組むことが必要になってきています。
これからにむけて
これからの社会を「だれもが人間として尊重され、だれもがいきいきと暮らし、だれもが楽しく学ぶ社会」としていくために、何が必要かを、私たち一人ひとりが日々考え行動していくことが大切です。
本資料をとおして、多様な文化を尊重し、活力ある共生社会の実現ということに関心を持ち、私たちが何を心がけていくべきかを考える機会となれば幸いです。
リンク集
◆ 多文化共生(大阪市ホームページより)
大阪市で行っている多文化共生取組み、相談窓口等のホームページです。
https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/category/3054-1-2-21-3-0-0-0-0-0.html
◆ 子どもの夢応援ネットワークFacebook
https://ja-jp.facebook.com/kodomonoyume.ouen.nw/
◆ 公益財団法人大阪国際交流センター