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報道発表資料 住民監査請求(大阪市廃止・特別区設置住民投票等)の結果について(概要)

2021年7月1日

ページ番号:537554

問合せ先:行政委員会事務局 監査部 監査課 特別監査担当(06-6208-8573)

令和3年7月1日 14時発表

 大阪市監査委員は、次のとおり、令和3年5月11日(火曜日)に提出された住民監査請求について、令和3年7月1日(木曜日)に請求人に監査結果を通知しました。(棄却、同年6月30日決定)

1 請求の要旨

 大都市法違反の状態で住民投票を実施し、公金を支出したことは違法不当であり、令和2年9月から令和3年3月までに大阪市廃止と特別区設置の住民投票等に係る経費として執行された543,215,098円が違法不当な公金支出に当たる。監査委員は市長に対し、次の措置を講ずるよう勧告することを求める。

(1)市長に対して、大阪市廃止と特別区設置の住民投票に係る経費を公金から支出した543,215,098円の返還を要求すること。

(2)説明パンフレットが、改ざん、隠蔽、捏造(ねつぞう)が行われたことは明らかであり、公平性に欠けるどころか、正に市長が自らの政策である大阪都構想を実現するという私利私欲のために、住民投票で賛成票を獲得するために作成された私的な文書としかいえず、説明パンフレットの作成に当り、改ざん、隠蔽、捏造が行われた経緯の解明を行うために、大阪市議会に対して外部の第三者機関を設けることと、百条委員会を設置すること。

(3)準公営企業の港湾事業の決算書は、粉飾決算であり、粉飾決算が行われたことにより市民の財産を隠蔽したことは、市民に損害を与えたことになり、解明を行うために大阪市議会に準公営企業の港営事業に対して監査を行うための外部の第三者機関を設置すること。

2 監査の結果(棄却)

  本件請求において請求人が対象としている財務会計行為は、主に、住民投票の実施及び啓発、並びに説明パンフレット等協定書の広報資料の作成及び住民説明会の実施に係る経費であるところ、請求人が違法又は不当と摘示している事由は、協定書の内容や、その「分かりやすい説明」として作成、実施された説明パンフレットや住民説明会の内容に係るものであり、これは対象としている財務会計行為に先行するものである。

 そこで、まずこれら財務会計行為に先行する行為について、摘示されている違法又は不当な点があるかを検討し、違法性等が認められた場合に、その違法性等が財務会計行為に承継等されるか、という順序で検討を行うこととした。

(1)協定書の内容の違法又は不当について

  協定書を作成すべき事項については、大都市法第5条第1項各号に列挙されているが、それぞれの事項について、大都市法等関係法令に作成基準や様式等は定められておらず、それぞれの事項について協定書を具体的にどのように作成するかについては、作成者の裁量に委ねられていると解される。

 そこで、協定書に当該事項について全く作成されていないか、その内容について全く事実の基礎を欠くとき、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等によりその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められる場合には裁量権の逸脱濫用となり、協定書が違法又は不当となるものと解する。

ア 協定書で特別土地保有税を財源としているという点について

 特別土地保有税は課税停止されているが、他方、地方自治法第282条第2項は、特別区財政調整交付金について、特別土地保有税等の都の収入額に所定の割合を乗じて得た額を都が交付するものと規定しており、協定書はその規定に従ったものと認められる。

 よって、当該事項に係る協定書の内容は法令に従ったものであって、裁量権の逸脱濫用があるとは認められない。

イ 財産の処分に準公営・公営企業会計が含まれていないという点について

  協定書は、本文において準公営企業・公営企業会計に属する財産は大阪府が一括して承継する旨記載しており、協定書は、同財産の財産処分についても作成されている。

 確かに、別表第2-4には、財産処分の表題の下に、一般会計・政令等特別会計について集計された表が記載されているが、その旨は明示されており、本表の存在をもって財産処分から準公営企業・公営企業会計に属する財産が除外されているとは認められない。

 そして、協定書にどの様な別表を作成するかは作成者の裁量に委ねられているところ、このような表を作成することについて、協定書に裁量権の逸脱濫用があるとは認められない。

ウ 特別区が実質的に負担する債務の金額を記載していないという点について

 協定書本文において、既発債は母子父子寡婦福祉貸付資金会計に属するものについてのみ特別区が、それ以外は大阪府が承継すると記載されており、これに従って、別表第2-4において、地方債の承継先について、一般会計、政令等特別会計の既発債2兆7,836億円については大阪府、23億円については特別区とされている。

 他方、一般会計及び政令等特別会計(母子父子寡婦福祉貸付資金会計を除く)に属する既発債の償還の大阪府と特別区の負担割合については、協定書本文において、特別区の設置の日が属する年度の前々年度の既発債の残高に基づいて定めるとされ、平成28年度の既発債残高の場合の負担割合が、特別区等72パーセント、大阪府28パーセントであることが示されている。

 既発債残高は継続的に変動するため、承継される既発債の正確な額や負担割合は協定書作成時点では確定できず、現時点ならどうなるかという、参考となる金額を求めることしかできないところ、その金額を容易に算出できる程度の情報が記載されていると認められる。よって、その金額が明示されていないとしても、裁量権を逸脱濫用したものとは認められない。

エ 債務の財源に財政調整財源を充てているという点について

 協定書は、「既発債の償還に必要な経費(特定財源を充当するものは除く。)として、特別区が負担する額は、特別区財政調整交付金の交付を通じて財源保障を行う」として、既発債の償還財源について作成されている。

 令和2年6月19日に開催された第35回の協議会に提出された特別区制度(案)(以下「特別区制度案」という。)は、協定書の内容を敷衍(ふえん)したものと認められるが、その「6.財政調整」の財政-14及び同-26に、平成28年度決算をベースに、特別区と大阪府に配分した事務に係る所要一般財源と、それに充てる財源として、特別区の自主財源、大阪府への移転財源及び財政調整財源の特別区と大阪府への配分を試算し、説明する図がある。これによると、歳出として、特別区の2,505事務に係る所要一般財源が6,571億円、大阪府の427事務に係る所要一般財源が2,031億円に対して、歳入として、各特別区の自主財源と目的税交付金2,938億円、地方財政制度により大阪府に移転する一般財源等(目的税を含む)1,000億円、大阪府が徴収、収入して特別区及び大阪府に配分する4,664億円(ただし不足額149億円を含む)となっているところ、この6,571億円、2,031億円の歳出には、それぞれ公債費1,776億円、690億円が含まれていることが明示されている。したがって、地方債償還の財源は財政調整に組み込まれていることが認められる。

 また、請求人が指摘する特別区98億円、大阪府34億円(正確には51億円)の財源不足は、この試算の基となった平成28年度決算において149億円の一般財源不足が生じていたことに起因するものに過ぎない。

 以上のとおり、債務の財源に財政調整財源を充てることは、裁量権の逸脱濫用とは認められない。

オ 地方債の利払いの財源が記載されていないという点について

  前記エのとおり、協定書の財政調整、具体的には特別区制度案の財政調整には公債費が組み込まれており、公債費には元本の償還とともに利払い分が当然に含まれているため、利払いの財源が確保されていないとの指摘は当たらず、この点について協定書に大都市法第5条第1項第6号の違反はない。

カ 協定書違反があるという点について

 協定書は、六 特別区の設置に伴う財産処分において、行政財産については当該財産に関連する事務の分担に応じて、特別区又は大阪府が承継するとしている。

 そして、消防事務は、消防組織法第27条等関係法令により都が処理すると定められているところ、協定書において、大阪府は、別表第1-1から別表第1-4により特別区が処理することとなる事務を除き、都が処理することとされている事務を処理するとされており、そこには、消防事務は含まれていないことから、消防事務は大阪府が処理することとなる。

 また、道路のアンダーパスなどに排水設備としてポンプ施設が設置されることがあるところ、それらポンプ施設は、道路の附属物であると認められ、また、協定書別表第1-6によると、道路に関する事務は、大阪府が大型幹線道路に係る事務を分担し、特別区が大型幹線道路以外の道路に係る事務を分担することとなる。

 したがって、協定書が消防署や大型幹線道路に附属するポンプ場について大阪府に、それ以外の道路に附属するポンプ場について特別区に承継するとしているのは、事務の分担に応じて財産を承継させるものであり、協定書の財産処分の考え方に従ったものと認められる。

 なお、特別区の設置の日の前日まで財産の得喪は継続的に行われるため、同日において保有する財産について協定書を作成するのは当然といえる。

 よって、請求人の指摘する点について、裁量権の逸脱濫用は認められない。

キ すべての財産が処分されていないという点について

(ア)土地の総面積及び建物の総延床面積の差異に関する主張

 どのような財産目録を作成すべきかについては、法令に特段の規定はなく、作成者の裁量に委ねられていると解されるところ、特別区と大阪府に振り分けて承継される一般会計、政令等特別会計に属する財産については平成31年3月31日時点の市公有財産台帳管理システムデータを基に財産名称ごとに目録が作成され、大阪府に一括して承継される公営、準公営企業会計に属する財産については、平成30年度の決算書添付資料を基に会計ごと一括で作成されている。これはそれぞれ承継先について、個別に決める必要があるか一括で決めてよいかといった違いに起因するものと認められ、財産目録の元データの採り方や記載方法について裁量権の逸脱濫用は認められない。

 請求人は、公有財産一覧表の土地建物の面積と、財産目録に現れた土地建物の面積を比較し、後者が小さいことをもって処分されていない財産があると主張するが、後記(ウ)のとおり、公有財産一覧表のもととなった市公有財産台帳管理システムに登載されていない財産があり、他方財産目録では、港営事業の土地造成勘定に属する土地について決算書添付資料の金額しか記載されていないなど、同日時点の公有財産一覧表の土地建物の面積と、財産目録に現れた土地建物の面積は、その成り立ちを全く異にしており、比較することに意味はなく、後者が小さいことは、処分されていない財産があることを意味するものではなく、処分されていない財産があるとの主張を認める証拠とは認められない。

(イ)公有財産一覧表と財産目録の財産名称等の不整合等に関する主張

 財産目録は、公営、準公営企業会計に属する財産についてはそもそも市公有財産台帳管理システムに準拠しておらず、平成30年度決算書添付資料に拠っているため、公有財産一覧表とは整合しない。また、一般会計、政令等特別会計については、財産目録は公有財産一覧表と同じ市公有財産台帳管理システムに準拠しているが、財産目録は平成31年4月以降、令和元年11月までに処分された結果を反映させており、元のデータの時点が異なっている。また、データ抽出後の加工の手順なども異なっており、施設単位(財産名称)ごとに集約された双方の資料の面積、金額などの数値等が突合しないことも不合理なこととは限らない。

 公有財産一覧表と財産目録は、異なる手順で複数(筆)の土地等を施設単位(財産名称)ごとに集約した資料であって、そもそも完全に突合できるとは限らない資料であり、また、請求人が突合できないため処分されていないと摘示するものの大部分については凡そ説明のつくものと認められる。財産処分は、一般会計及び政令等特別会計について、5,324ヘクタール、5兆8,939億円の土地、1,327ヘクタール、1兆4,739億円の建物を対象にするものであり、これに比してごくわずかに突合できない財産があるとしても、財産処分について違法又は不当との評価は当たらない。

(ウ)港営事業会計の決算が粉飾されたものであるとする主張

 港営事業会計における土地造成勘定に属する土地は、全て販売用の財産であり、その決算については、地方公営企業法施行規則第8条第3項第3号のたな卸資産に関する規定が適用される。地方公営企業法施行規則は、原則取得原価又は出資した金額を帳簿価格をとする旨規定しているが、同条項は、たな卸資産の価額について、時価が帳簿価格より下回る場合には当該時価とするという、低価法の適用を定めている。そして、433,553,087,147円という金額は、その資料の表題が示すとおり土地造成勘定に属する土地の時価を示すものであり、低価法適用のために試算したものと認められる。そしてこれが帳簿価格である189,483,834,125円を上回っているため、決算書には189,483,834,125円が記載されたものであり、これは地方公営企業法施行規則に従った処理であることから、港営事業会計の決算書に粉飾があるとは認められない。

 また、土地造成勘定に計上されていると説明されている建物は、南港ポートタウンのノーカーゾーンに付帯する駐車場や、舞洲のスポーツ施設であり、これらは販売用土地の価値等を高めるための、販売に付帯する施設であると認められることから、その整備費用について、土地造成勘定に属する土地の取得原価に含まれるものとして経理処理をしているものと認められ、経理処理に不合理な点はない。

 したがって、港営事業会計の決算書に粉飾等は認められず、港営事業に係る財産目録を港営事業会計の決算書を基に作成することについて、裁量権の逸脱濫用は認められない。

 よって、協定書の財産処分に係り請求人がすべての財産が処分されていないと主張する点について、違法又は不当な点は認められない。

 以上のとおり、協定書の内容に係り請求人が違法又は不当と摘示した点について、裁量権の逸脱濫用と認められるものはなく、協定書の内容について違法又は不当との主張には理由がない。

(2)説明パンフレットの内容の違法又は不当について

 大都市法第7条第2項は、特別区の設置について選挙人の投票に際し、関係市町村の長は、「選挙人の理解を促進するよう、特別区設置協定書の内容について分かりやすい説明をしなければならない」ことを規定している。

 選挙人の投票は協定書を対象とするところ、同条項によれば「分かりやすい説明」をすべき対象は「特別区設置協定書の内容」に関するものであって、基準日から投票日までの限られた期間における選挙人に対する責務を規定したものとして、その内容について、長に広範な裁量を認めていると解される。そして、その広範な裁量権が与えられた趣旨に鑑み、同条項の「分かりやすい説明」のために、説明パンフレットのような広報資料等を作成する場合には、その記載が全く事実の基礎を欠くものと認められる場合、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等によりその記載が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められる場合に裁量権の逸脱濫用となり、当該広報資料の作成が違法又は不当となるものと解する。

ア 説明パンフレットの28ページが改ざんされたものであるという点について

 請求人が、副首都推進局が作成したと言及する資料は、特別区制度案の一部であり、説明パンフレットの当該記載は、特別区制度案を基に数字の概数化などを行って作成されたものと認められる。その作成の際に、特別区制度案の記載から、特別区の所要財源について6,571億円を切り捨てて6,500億円に、また財源措置において3,535億円を切り上げて3,600億円にするなどの処理を行った結果、特別区制度案にある98億円の要対応額(財源不足)が、説明パンフレット上では表現されていない。これは、単なる数値の概数化の範囲を超えた処理であるといわざるを得ない。

 しかしながら、この説明パンフレット上表現されていない98億円の財源不足は、前記(1)エのとおり、財政調整のイメージ試算の基になった平成28年度の本市決算(一般財源)における149億円の補てん処理に起因するものであって、この数値の存在は、特別区制度の財政調整において本質的なものではない。

 したがって、この処理は、市民が理解しやすいよう、情報を整理することの範囲内のものと認められる。

 また、令和2年4月に、出前協議会用の資料として、協議会名義で作成された「特別区制度(いわゆる「大阪都構想」)(案)」という資料において、説明パンフレットと同じ数値を用いた説明が掲載されていることから、当該記載は、同資料を参考に作成したものと認められ、市長が職権を用いて数値を改ざんした、といった指摘は当たらない。

 なお、請求人は、特別土地保有税を財源としていることについても不当と主張するが、前記(1)アのとおり、そもそも関係法令に従った取扱いを説明パンフレットに記載したに過ぎず、説明パンフレットの記載を不当とする理由にならない。

 以上のとおり、請求人が主張する点について、説明パンフレットの28ページの記載に、市長の裁量権の逸脱濫用は認められない。

イ 財産の承継を一般会計のみとしているという点について

 説明パンフレットの29ページの財産の承継イメージには、大阪市の財産として11兆4,960億円と記載され、これは一般会計と政令等特別会計に属するもののみとなっている。

 しかしながら、協議会において、大阪市民の税金によって形成された財産が、大阪府に承継され、事業終了後の処分益が府民全体に還元されることについて議論が行われた経過に照らし、市民の関心がもっぱら市民の税金によって形成された財産である一般会計等にあるとの認識は、事実の基礎を欠くものとはいえない。したがって、その認識に立って、説明パンフレットにおいて一般会計・政令等特別会計に焦点をあてた記載を行ったものと認められる。よって、この記載について、裁量権の逸脱濫用であるとは認められない。

 なお、請求人は、協定書において処分されていない土地や建物の財産が存在することも摘示しているが、前記(1)キのとおり、請求人がすべての財産が処分されていないと主張する点について違法又は不当な点は認められないため、説明パンフレットの記載が不適切とする理由とはならない。

 以上のとおり、請求人が主張する点について、説明パンフレットの29ページの記載に、市長の裁量権の逸脱濫用は認められない。

ウ 特別区が負担する市債の金額を明示していないという点について

 説明パンフレット29ページに、「発行済み大阪市債は、大阪府に一元化して承継し、償還することを基本とする(償還費用は特別区と大阪府が財政調整財源等で負担する)」旨の記載がある。この記載は、特別区も市債償還の負担を負うことを市民に推知させる手がかりとなる記載であり、最低限の記載はあるものと認められる。

 したがって、説明パンフレットの発行済み大阪市債の償還に係る特別区の負担についての記載に、市長に裁量権の逸脱濫用は認められない。

エ 財政シミュレーションが捏造されたものであるという点について

 説明パンフレットの33ページの特別区の財政シミュレーションの記載は、令和2年8月11日に副首都推進局作成「(参考資料)特別区設置における財政シミュレーション(一般財源べース)」を基にしたものであり、その財シ-6には、説明パンフレットに記載された特別区全体の収支見通しのグラフと同じグラフの下に、財政収支推計から改革効果額などを差引きした内訳表が記載されている。基の記載のどの部分を説明パンフレットに記載するかの取捨選択については裁量の余地があるところ、収支不足が生じていないことを示す目的で説明パンフレットにグラフを記載したと認められ、そのためには内訳表が必須であるとは認められないので、摘示された内訳表を記載しないことについて裁量権の逸脱濫用は認められない。

 財政シミュレーションは、大阪市「今後の財政収支の概算(粗い試算)」(令和2年3月版)(以下「粗い試算」という。)を精査した大阪市の財政に関する将来推計を基に、そこに反映されていない改革効果額(未反映分)等を加味するなどの前提をおいて算出されたものと認められる。また、粗い試算は特定財源を含んだ総額ベース、財政シミュレーションは特定財源を除く一般財源ベースという点で 大きく異なっていることが認められる。

 請求人は、特に、財政シミュレーションの人件費と公債費の支出が、粗い試算に比べ過小に算出されていることを摘示するが、粗い試算には、人件費における小中学校教員の人件費にかかる国庫支出分、公債費における市営住宅の使用料など、特定財源からの支出額が含まれており、これらを含まない財政シミュレーションにおける人件費、公債費の支出額が粗い試算より小さくなるのは当然といえ、これをもって財政シミュレーションが捏造されたものとの指摘は当たらない。

 なお、請求人は、財政シミュレーションにおいて、公債費・財務リスクとしてほぼ毎年約1,000億円以上を計上している点につき、特別区が承継する2,505の事務を行うために必要な財源6,500億円を確保できなくなり、特別区の財政は破綻しているとも主張するが、前記(1)エのとおり、公債費は特別区が承継する2,505の事務を行うために必要な財源6,500億円に予め組み込まれており、財政シミュレーションが不適切 であるとする理由とはならない。

 以上のとおり、請求人が主張する点に係り、説明パンフレットの33ページの特別区の財政シミュレーションについての記載に、市長の裁量権の逸脱濫用は認められない。

オ 広域一元化と二重行政の解消は実現できていないという点について

 事務分担案は、総括表と、実際の事務を記載した本表からなり、総括表は、本表の見出しに相当する「事務区分」を表示しており、そのレベルでは一見同じ事務について特別区と大阪府の両方が分担する事務があるかのような表となっている。しかしながら、本表では、各事務区分に含まれる個別の事務が記載され、個別の事務はその性質に応じて広域か特別区に割振られた事務分担案が示されていて、重複はない。

 北方領土返還運動や国際交流が特別区が担う「事務区分」に入っているという点については、その事務の具体的な内容は地域レベル・市民レベルでの啓発や交流に関するものであり、特別区が分担すると定められたものと認められる。

 また、大阪府警が使用する土地を特別区が承継しているという点については、財産処分における、当該財産に関連する事務の分担に応じて承継先を定めるという原則からは例外的なものだと認められるが、大阪市警察であった過去の経過を受け、大阪府警が警察庁舎として使用する限り無償使用を認めるというものであり、過去の経過を踏まえた対応であると認められる。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

 したがって、請求人が摘示する点について、「広域機能一元化で二重行政の解消」との記載を行うことが市長の裁量権の逸脱濫用となることを示す明確な理由はなく、市長の裁量権の逸脱濫用は認められない。

 以上のとおり、説明パンフレットの内容に係り請求人が違法又は不当と摘示した点について、裁量権の逸脱濫用と認められるものはなく、説明パンフレットの内容について違法又は不当との主張には理由がない。

(3)住民説明会の違法又は不当について

 住民説明会は、大都市法第7条第2項の「分かりやすい説明」として実施されたものと認められるところ、前記(2)と同様に、その内容や方法について、長に広範な裁量を認めていると解される。そして、その広範な裁量権が与えられた趣旨に鑑み、同条項の「分かりやすい説明」のために、説明会を実施する場合には、その説明内容や実施方法の選択が全く事実の基礎を欠くものと認められる場合、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等によりそれらが社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであるものと認められる場合に裁量権の逸脱濫用となり、当該説明会の実施が違法又は不当となるものと解する。

 請求人は、市長が大阪市民に対して行った住民説明会は、大都市法第7条第2項を満たしたとはいえないと主張するが、その最大の理由は、その説明の基となる説明パンフレットに、金額の改ざん、債務の金額の隠蔽、財政シミュレーションの捏造等があるという点にある。

 しかしながら、前記(2)のとおり、説明パンフレットに、請求人が摘示する金額の改ざん、債務の金額の隠蔽、財政シミュレーションの捏造などは認められず、これらの点について、説明パンフレットは「分かりやすい説明」として不適切なものとは認められない。

 したがって、住民説明会の実施に当たり、これらの点について説明パンフレットに基づいて説明を行ったことに、裁量権の逸脱濫用は認められない。

 以上のとおり、財務会計行為に先行する行為について請求人が違法又は不当であると摘示する点については、いずれも理由がないため、その違法性等の財務会計行為への承継等を検討するまでもなく、請求人の摘示する点について、財務会計行為に違法又は不当な点は認められない。

 以上の判断により、住民投票等に係る公金の支出についての本件請求には理由がない。

住民監査請求結果

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