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報道発表資料 住民監査請求(市立高等学校等の財産無償譲渡差止)の結果について

2021年9月24日

ページ番号:544911

問合せ先:行政委員会事務局 監査部 監査課 特別監査担当(06-6208-8573)

令和3年9月24日 14時発表

 大阪市監査委員は、次のとおり、令和3年7月30日(金曜日)に提出された住民監査請求について、令和3年9月24日(金曜日)に請求人に監査結果を通知しました。(棄却、結果は同年9月22日決定)

1 請求の要旨

(1)大阪市の所有する大阪市立桜宮高等学校ほか18校の不動産が、大阪府に対し、違法に無償で譲渡されようとしているので、大阪市長による上記不動産の無償譲渡及び所有権登記の移転手続等の差止めその他の必要な措置を講ずることを求める。

(2)上記無償譲渡等の停止の勧告を求める。

2 監査の結果(棄却)

 本件請求について次のように判断した。

(1)地方財政法第28条の2違反について
ア 地方財政法第28条の2が禁止する行為について

 地方財政法第28条の2は、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について、他の地方公共団体に対し、当該事務の処理に要する経費の負担を転嫁し、その他地方公共団体相互の間における経費の負担区分をみだすようなことを禁じる旨規定している。

 本件譲与は、高等学校等の設置に関するものであり、その経費の負担区分について、個別の法令の規定がないことから、前提として、本条項が本件譲与に適用があるものかが問題となるが、地方財政法第9条は、地方公共団体の事務を行うために要する経費については、当該地方公共団体が全額これを負担する旨定めており、これは府立の高等学校等の設置についても適用されるものと考えられるため、本件譲与についても、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務に含まれるものとして、本条項の適用があるものと認められる。

 本条項は、「経費の負担区分をみだすようなこと」を禁じるものであるが、評価的概念を用いていることから、法令の規定と異なる地方公共団体が経費を負担する行為をすべて一律に禁じている訳ではないと解される。

 そして、本条項が設けられた趣旨が、地方公共団体相互間の経費負担区分をみだすことが行われれば、地方公共団体の財政相互間に混乱をもたらし、総体としての地方財政の健全化にとって大きな支障となることから、これらを防ぎ、もって健全財政を確立するというところにあると認められることに鑑み、本条項は、法令と異なる地方公共団体が経費を負担する結果となるような行為は、原則として負担区分をみだすものとして禁じるが、実質的に財政の健全性を害するおそれのない行為は例外的に許容していると解する。

イ 本件譲与が地方財政法第28条の2に違反するかについて

 本件譲与が、実質的に財政の健全性を害するおそれのない行為に当たるか否かを検討すると、確かに本件譲与により大阪府へ譲渡される財産は極めて巨額なものであるが、他方、現在高等学校等として使用している施設を大阪府に移管し、引き続き大阪府立の高等学校等として使用するという、施設移管、ひいては高等学校等の事業の譲渡という性質を有していることから、その点を踏まえて実質的に財政の健全性を害するおそれの有無を検討すべきである。

 この点、本件譲与は、市立の高等学校等を大阪府へ移管するに伴い、その資産を大阪府へ無償で譲渡するものであるが、これを有償譲渡等により実施することは、今後の高等学校等の運営者である大阪府に新たな費用負担を生じさせ、高等学校等のサービスの低下や、ひいては高等学校等の維持を困難にする事態を招くおそれがあるため現実的ではない。また、無償貸与により実施することは、時々の教育上の要請等により大規模な修繕や改修が必要となったときに、迅速な対応を困難にするおそれがあり、また事故等が生じたときに、責任の所在が運営者と所有者のいずれにあるのか直ちには明らかにならない事態を招くおそれもある。したがって、高等学校等の移管に当たり、資産の無償譲渡という手法によることには合理性が認められる。

 他方で、本件譲与に当たっては、資産とともに、負債等も大阪府に移管される。具体的には、令和2年度末の見込み額で約131億円の起債償還費が大阪府に承継される。また高校運営経費については、基準財政需要額を除く市税等で負担していた年17億円相当について、今後同程度の教育内容を大阪府において実施することが合意されており、また今後の改修等の費用は、1年当たり23.4億円と見込まれているところ、これも大阪府の負担で実施されることになる。本市から譲渡される財産と完全な等価性や対価性が確保されているわけではないが、本市としては、高等学校等の事業を引き続き実施するならば将来的に負担することになったこれらの負担が軽減されることになる。

 また、既に高等学校等として用いられているものを移管し、今後とも継続的に高等学校等として使用されるはずであった財産について、引き続き高等学校等として使用を継続することを前提とした譲渡であることから、本件譲与は、本市に新たな支出などの財政負担が生じるものでもなく、また直ちに資産売却収入の減少などの影響を与えるものでもない。

 加えて、本件譲与については、大阪府が一方的に本市にその高等学校等の設置に要する経費の負担を転嫁するといったものではなく、双方で設置したプロジェクトチームにおける対等な協議、検討の結果を受けて意思決定されたものであると認められる。

 なお、地方財政法第27条は、高等学校の施設の建設事業について、市町村に経費の一部を負担させることのできる事業から除くことを明示しており、ここにいう建設事業に要する経費には、敷地の取得等も含まれると解されているが、本条の趣旨は、特定の市町村が経費を負担する等の理由により高等学校の配置が左右されるべきではないという点と、一般に都道府県よりも財政の弾力性において弱い市町村に高等学校の設置経費を負担させるべきではないという点にあるとされ、高等学校として供用されている施設を移管することは、この趣旨に反するものではない。

 以上の点を総合的に考慮すると、本件譲与については、実質的に財政の健全性を害するおそれのない行為に当たるものと認められる。

 よって、本件譲与は、地方財政法第28条の2に違反するものではない。

(2)普通地方公共団体の譲与に関する法の規定及び大阪市財産条例第16条違反について
ア 大阪市財産条例第16条について

 法第96条第1項第6号及び法第237条第2項は、いずれも普通地方公共団体の財産を適正な対価なくして譲渡するには、条例又は議会の議決によらなければならないことを規定している。そして、大阪市財産条例第16条は、この規定に基づき、公用又は公共用に供するため特に無償とする必要がある場合に限り、国又は公法人に普通財産を譲与できる旨規定している。

 本件譲与について、大阪市財産条例第16条を適用して、市長の判断により行うことができるかについては、当該法の規定の趣旨に遡って検討すべきところ、当該法規定の趣旨は、定型的、類型的な財産の譲与等については、一般的基準を定めた場合には改めて個々の行為について個別の議決を得ることなく、市長の判断で実施することができるとするものであると認められ、一般的基準を設定しがたい特異なものについては、個々に議会の議決を必要とするものであると考える。

 また、財産の譲与については必要最小限度のものにとどめなければならないところ、条例の規定は一般的、抽象的なものになりやすく、必ずしも条例により譲与が許される限界を明確に画することが困難な場合がある。したがって、前例のないもの、定型的でないものについては、個々に議決を経ることを必要としているものと解する。

 特に、大阪市財産条例第16条は、施設移管に伴う極めて大規模な財産の譲与などについて、条例制定時において想定されていたとは到底考えられず、市長の判断で譲与を行うことは、同条項の適用が予定されている範囲を超えるものと解さざるを得ない。

 そして、本件譲与については、その規模からもおよそ前例のない異例に属するものであることは明らかであるから、大阪市財産条例第16条による市長の判断での譲与は許されず、議会の議決が必要であると考える。

イ 法第96条第1項第6号及び法第237条第2項の議決について

 上記のとおり、本件譲与について、法第96条第1項第6号及び法237条第2項に規定する議会の議決が必要であると解するところ、本件譲与に関連して令和2年12月9日の市会定例会で可決されたのは、市立学校設置条例の一部を改正する条例案であり、財産の無償譲渡の議案が提出、可決されてはいない。

 当該条項にいう議会の議決が何を指しているものであるのかについて検討すると、確かに、財産の無償譲渡の議案の議決を必要とすると解することが、文理に即しており、明確である。

 しかし、関連議案と一体的に審議することが合理的な場合では、財産の無償譲渡だけを個別的に審議することが馴染まないことがあると考えられるところ、その場合には関連議案と一体的に説明され、審議を経ることが合理的であり、その上で関連議案の議決を得たときには、実質的に無償譲渡の議決があったものと評価できる場合もあると考えられる。このような場合には、当該関連議案の議決をもって財産の無償譲渡について議決を得たものとして、別途財産の無償譲渡の議案の議決を得る必要はないものと解する。

ウ 本件譲与に係る議決について

 本件譲与について財産の無償譲渡についての議決を得たといえるか、関連する市立学校設置条例の一部を改正する条例案の可決に至る経過を検討すると、譲与される土地の地番や数量など、財産処分の議決を得る場合には当然示されるべき財産の詳細が議会に示されていないなど、実質的に無償譲渡の議決があったものと評価しがたい事情も確かに存する。

 しかしながら、廃止される学校名は当該条例改正の議案に示されており、それを構成する財産がどのようなものであるかについてはおおよそ明らかであること、また南高等学校及び西高等学校は除かれるなどの事情も説明されていること、議会に対して移管計画(案)と譲渡財産の取扱いの基本的な考え方(案)が示され、土地、建物、工作物及び備品等の財産を無償で譲渡するものであることが説明された上で、一体のものとして判断されたい旨の説明がなされていること、これらの説明を受けて、譲渡財産の簿価、無償譲渡の必要性などについて質疑や討論がなされていること、そして、譲渡財産の取扱いの基本的な考え方(案)に基づいた附帯決議が付されて当該条例案が可決されていることなどが認められることから、法第96条第1項第6号及び法第237条第2項の議決を得たものといえる。

 よって、本件譲与は、法第96条第1項第6号及び法第237条第2項に違反するものではない。

(3)法第232条の2違反について
ア 法第232条の2に規定する公益性等について

 法第232条の2は、地方公共団体は、その公益上必要がある場合において寄附をすることができる旨規定している。ただし、公益上の必要があれば際限なく寄附が可能と解するのは適切ではなく、条文上明示されてはいないが、寄附される財産の総額が、当該地方公共団体の財政規模に比して適切なものでなければならないと解される。

 そして、公益性の必要の有無、また寄附財産の額の妥当性の判断については、その性質上当該地方公共団体の長に裁量の余地があるものと解され、長の裁量権の逸脱濫用があると認められる場合に、当該寄附行為は違法と評価されることがあると解される。

イ 本件譲与の公益性等について

 本件譲与は、市立の高等学校等を大阪府へ移管するのに伴って行われるものであるが、この移管は、市立高校及び府立高校ともに大阪市内・市外の生徒が混在している現状において、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律により、大阪府域内の高等学校の配置及び規模の適正化の義務を負う大阪府に府内の公立高等学校の管理、運営を一元化し、少子化傾向の中で、府域全体で適切な公立高等学校教育を提供する目的で行われるものと認められ、上記で検討したとおり、高等学校等の移管に当たって財産の無償譲渡という手法によることに合理性があると認められることから、公益上の必要性があると認められる。

 他方で、無償譲渡される財産は、帳簿価格で約1,500億円と極めて高額である。本件譲与が、既存の資産の譲渡であることに着目するならば、財政規模として、本市が有する公有財産の総額との比較が合理的と考えられるところ、本市が保有する公有財産は、公営、準公営企業会計分を含めて約13兆5千億円となっており、本件譲与により譲渡される財産は、その約1パーセント程度に過ぎないともいえる。

 そして、本件譲与が、単なる金銭や物品の寄附ではなく、施設の移管に伴うものであり、上記で検討した性質を有していることも総合的に考慮すれば、本件譲与について、長の裁量権の逸脱濫用があるとは認められない。

 よって、本件譲与は、法第232条の2に違反するものではない。

 以上のとおり、本件譲与について請求人が違法であると摘示する点については、いずれも理由がないため、本件譲与について、財務会計法規上、違法な点は認められない。

 以上の判断により、高等学校等の財産の無償譲渡についての本件請求には理由がない。

住民監査請求結果

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