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虐待は子どもの脳を傷つける!

2024年6月7日

ページ番号:455357

今回のテーマは「人権全般、身近な人権に関すること」です。

中川 喜代子 さん (奈良教育大学 名誉教授)

 喜怒哀楽といった感情はもちろん、ものの見方や考え方、周囲の人たちや社会とのかかわり方、思いがけないことや困難なことに出会ったときの対処の仕方など、私たちの毎日の思考や行動を支配しているのは、頭のなかにある臓器、「脳」です。脳は過度なストレスによって“物理的に”傷つきます。福井大学の友田明美教授は、小児精神科医として30年近い臨床研究・リサーチから、おとなの不適切なかかわりによって、子どもの脳が変形することを明かにされました。人間の脳はゆっくりと成長し、時間をかけて生きるすべを習得していきますが、その発達過程において、外部からの影響を受けやすい非常に大切な時期―胎児期、乳幼児期、思春期など人生の初期段階に、親や養育者など身近な存在から適切なケアと愛情を受けることが、脳の健全な発達には不可欠なのです。この時期に極度のストレスを感じると、子どものデリケートな脳は、その苦しみに何とか適応しよう(生き延びるための防衛反応)として、自ら変形してしまいます。その結果、脳の機能にも影響がおよび、正常な発達が損なわれ、1.衝動性が高く、キレやすくなって乱暴、非行に走ったり、2.喜びや達成感を味わう機能が弱くなるせいで、より刺激の強い快楽を求め、アルコールや薬物に依存するようになったり、3.愛され、褒められる経験が少なかったため、「自分はつまらない人間だ」と自己肯定感が低く、抑うつ状態になって自傷行為を繰り返すなど、子ども時代に安心と安全が確保された場所で過ごしていた人ならば、決して味わうことのない苦痛に満ちた人生を送らざるを得なくなるのです。

 友田教授がアメリカの大学で、幼いころに体罰を受けた経験がある学生グループと、そうでない学生グループとを被験者にして、MRIによって脳の発達状況などを比較検査した実験結果から、ごく一部をご紹介しましょう。まず、幼い時に厳格な体罰を経験したグループでは、学びや記憶に関わっている「前頭前野」の容積や、集中力や意思決定、共感などに関係する「右前帯状回」が減少していました。これらの部分が損なわれると、うつ病の1種である気分障害や、非行を繰り返す素行障害につながるのです。また、性的被害を受けたグループでは、「視覚野」のなかでも顔の認知にかかわる「紡錘状回」とくに「一次視覚野」の容積減少が目立ちました。性的に不適切な扱いを受けた被害者は、苦痛を伴う記憶を脳内にとどめておかないようにしているのではないか、と考えられます。さらに、食事・風呂、着替えなど子どもが毎日健やかに成長するために欠かせない身体的なニーズが満たされなかった<身体的ネグレクト>や、親子のスキンシップ(触れ合い)があまりにも少ない<精神的ネグレクト>など、いわゆる「愛着障害」も、子どものこころや脳の発達に大きく影響を与えています。子どもは親の腕に抱かれ、親と見つめあい、微笑みあうことで、安心感、信頼感を身体で覚えていき、「愛着」の感覚が健やかに育つことで、成長と共に少しずつ外の世界へと踏み出していくことができます。親に愛されているという自信と安心感さえあれば、健全にこころの成長を遂げていくのです。小児精神科の研究では、愛着障害があると、子どものこころが不安定になるばかりか、脳神経の一部においても正常な発達が阻害されてしまうことがわかっています。その結果、成人してからも健全な人間関係を結べない、達成感への喜びが低く、やる気や意欲も起きないなど、さまざまな問題をかかえてしまうことになります。子どもに対してスマホ育児をしないために、お父さんやお母さんは眠りにつく前、今日は子どもに何回触れたか、どんな声かけをしたかを振り返る習慣をつけてくださるよう願っています。

 最後に、子どもの脳に大きなダメージを与える言葉のDV=暴言についてふれておきます。両親間の暴力・暴言を見聞きする面前DVも精神的虐待と認識されるようになり、2017年度に全国の児童相談所が対応した子どもの虐待133,778件の54%を占める「心理的虐待」のうち、約半数が面前DVとなっています。面前DVを目撃して育った人は、脳の後頭部にある「視覚野」の左半球一部の容積が増加するとか、単語の認知や夢を見ることに関係している「舌状回」という部分の容積が、正常な脳と比べ小さくなっているなど、暴言の程度が深刻かつ頻繁であるほど、脳への影響が大きくなっています。脳の研究以前にも、夫婦間のDVを目撃した経験がある子どもは、知能や語彙の理解力に影響を受けることが知られていましたが、トラウマ反応が最も重篤なのは「DV目撃と暴言による虐待」の組み合わせなのです。子どもの人格を否定する言葉は「しつけ」ではありません。子どもは親からの評価があってこそ健やかに育ちます。子どもの面前では激しい夫婦喧嘩は控えましょう。

〈参考文献〉友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』NHK出版新書 2017年

 

 

 

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