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多文化社会共生の「鍵」は寛容性

2019年10月1日

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中川 喜代子さん  (奈良教育大学名誉教授/社会学者)

 昨2015年11月、パリで発生したテロによる劇場爆破事件でかけがえのない最愛の妻を奪われたフランスの男性が、イスラム過激派の容疑者を「君たち」と呼び、

 

「君たちを憎まない。君たちは素晴らしい人の命を奪った。かけがえのない人、私の最愛の人、息子の母親を君たちは奪った。君たちが誰か知らないし、知りたいとも思わない。君たちは死んだ魂だ。憎しみという贈り物を君たちにはあげない。怒りで応じてしまったら、君たちと同じ、まさに無知に屈することになる」

「息子と2人になった。もう君たちにかまっている暇はない。メルビルが昼寝から目を覚ますから一緒にいなければならない。まだ17か月。この子がずっと幸せで自由に生きていけば、君たちは恥を知ることになる。だから、君たちを憎むことはしない」

 

というメッセージをフェイスブックに投稿しました。「平和へのメッセージをありがとう」と大きな反響が起こり、18世紀フランスにおいて、カソリックと新教徒が激しく対立し、異端を許さない不寛容な社会に対して警告したヴォルテールの『寛容論』がベストセラーとして再び脚光を浴びています。ヴォルテールは「君の意見には反対だが、君が自分の意見を言う自由は命を懸けて守る」と宣言し、「寛容の敵」には「自分がしてほしくないことは他者にもしてはいけない」と価値の転換を求めたのです。

 異端を排斥する風潮は現代の私たちの社会にも、例えば、ヘイトスピーチや性的少数者への偏見など日常的に存在しています。自分たちとは違った民族やグループに対して、肌の色が/考え方が/生活習慣が自分たちと「違っていること」を理由にして、「その人たちの悪口を言う(誹謗)」から、「近づかない(回避)→仲間はずれにする(排除)」へ、さらに「暴力を加える(身体的攻撃)」から、「皆殺し(絶滅)」へとエスカレートしていきかねません。「違い」が差別を合理化する根拠になるのです。

 <寛容性>とは、「違っていること」に対してどれだけ心を開いて受け容れることができるかということなのです。そこで、人権の尊重と深くかかわっている「寛容性」について、フランスの子どもたちが学習している絵本『50億の顔』を紹介しながら、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

 

★地球上に住む私たち50億(当時)の人びとは、みんな違っている!

 「いま、この地球上にはたくさんの人びとが暮らしており、2000年には60億になっていることでしょう。この人びとが手をつなぐと赤道を160周する、それはまた、月と地球との距離の16倍の長さです。この世界にひとりとして同じ人はいません。私たちはみんな違った存在、それぞれユニークな存在なのです。」という叙述に始まり、それぞれ独自のシルエット、異なった肌の色、目の形、瞳の色を持ち、私たちが身にまとう衣服も、毎日口にする食べ物も、住む家もそれぞれの国によって異なっています。世界中の人びとは「ひとりとして同じ人間はいない」ことをごく当たり前の事実として受け止めることができれば、「肌が何色か」「金持ちであるか」「障がいがあるかどうか」といったいくつかの基準だけで、「優れている」とか「劣っている」といった評価をするのは、まったく愚かでバカげたことだと、子どもたちが気づくようになることを期待しているのです。

 

★みんな違った存在だが、人間としての“思い”は同じ

 世界中の人びとは、やりかたは違っても、「ゲーム(遊び)が大好きなこと」、それぞれのやり方で「お祭りを楽しむこと」、「文字や記号・身振りなどでお互いの意志を伝えあう(コミュニケーション)こと」、そして「尊敬する人のことを忘れず、銅像・切手にしたり、地名や橋・道路などに故人の名前を付けたりして(例:ケネディ空港)、面影をしのぶこと」は同じです。

 

★私たちは、限られた命を生きているのに、なぜ身分や階級にこだわるのでしょう

 私たちはみんな同じ地球という惑星に住み、同じ空気を吸い、同じ太陽の下でひなたぼっこをしているではありませんか。そしてみんないずれは死んでいくのに…と、違いにこだわる人間の愚かさを風刺しています。

 

★多様な文化や生き方を尊重すれば、私たちの生活は変化にとんだ豊かなものになる

 紙面の関係で、具体的な絵を示せなくて残念ですが、絵本は、「違っていること」を嫌えば、ビルの形も色も、電車やバスの色も、人びとの服装もみんな同じ、単調な社会が出来上がりますが、違いを認めてこれを受け入れられれば、私たちの社会はバラエティにとんだ活気のある社会になるでしょう、と結んでいます。

 

――「みんなちがってみんないい」(金子みすゞ)――

みなさん、オープンマインドで生きようではありませんか!

 

広報紙「にしなり我が町」平成28年12月号掲載

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