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ソフトパワーで他国の理解を深めましょう

2024年6月7日

ページ番号:554668

今回のテーマは「多文化共生について」です。

李 洙任さん(龍谷大学名誉教授)

 皆さんは「ソフトパワー」という言葉を聞いたことがありますか?ソフトパワーとは、ハーバード大学のジョセフ・S.ナイ教授が提唱された概念で、その国が持つ価値観や文化の魅力で他国を魅了することによって理解や支持、そして共感を得る力を指します。「ソフト」に対する言葉は「ハード」ですが、ハードパワーとは、軍事力や経済力を指し、国力はどうしてもその2つの指標で計られがちです。しかし、ソーシャルメディアの普及により、市民力を強める意味でもソフトパワーの重要性は増しています。

 平和な時代には市民交流が活発になり、他国の文化に直接触れることができるので、文化力に魅了され、その国に対してポジティブな印象を持つことができます。コロナ禍前は、韓国や中国から年間約1500万人もの市民が日本を訪問していました。日本のビザ発給が緩和されたのも理由の一つですが、多くの人が日本を訪れたことから、隣国の人たちは日本を全面否定しているのではないことがわかります。歴史観の対立という現実の壁にぶつかり、今なおその思想にとどまりがちな東アジア地域ですが、市民は活発に往来していたのです。そのような市民の力がソフトパワーとなって、国境を越境した、人々のつながりを可能にし、外交力だけではなかなかできない平和活動となっています。残念ながらコロナ禍の影響でこの活発な往来は途絶えています。ところがコロナ禍であってもソフトパワーは弱まりませんでした。

 お隣の国である韓国の文化的な存在感は世界を席巻するようになりました。今やK-POPは世界的にも認知され、また、映画「パラサイト 半地下の家族」は第92回アカデミー賞で4冠に輝きました。この映画は、韓国の経済格差という深刻な社会問題をテーマにした作品です。ポン・ジュノ監督は、今村昌平監督、木下惠介監督ら日本の優れた映画監督たちの大ファンですので、若き頃に、日本映画から刺激を受け、社会問題に鋭い目を向ける力を養ったことが想像できます。それもソフトパワーなのです。

 冷戦構造がなくなり、世界は新秩序に入ったといわれます。特に中国の台頭で東アジア地域の力関係が大きく変化しつつあります。しかし、軍事力や経済力で国家間の競争をあおるのではなく、互いのソフトパワーによりその国を理解することで平和を維持できるかもしれません。文化大革命の後、中国で最初に公開された外国映画である『君よ憤怒の河を渉れ』は約10億人の中国人が鑑賞し、主演の高倉健さんは中国で大変尊敬される日本人の一人になりました。高倉健さんが亡くなった時、中国の人たちはその死を悼み、中国政府からも弔意が送られました。東アジア地域の緊張度は高まる一方ですが、このように映画から歴史を多元的に理解することで、自分ながらの歴史観を持つこともできると思います。

 最後に、アメリカでは日本食ブームが高まり、今や「えだまめ」や「すし」は知らない人がいないくらいになりました。「ラーメン」は大人気で、徐々に「うどん」の人気も高まっています。その理由は、日本人の寿命が世界でトップレベルであることから、日本食イコール健康食と理解されているからです。

 皆さんも映画や音楽、料理など、身近なところから、その国のソフトパワーを通して、他国への理解を深めてみませんか。そしてお友達やご家族の共通の話題の一つに加えると東アジア地域を含めた世界中の平和の維持に貢献できるかもしれません。

 

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