咲くやこの花芸術祭2010 開催レポート
2010年10月22日[金]−24日[日]
会場=大阪市中央公会堂
開催概要
大阪市の顕彰事業である「咲くやこの花賞」は、将来の大阪文化を担うべき概ね40歳以下の若手芸術家に対して、昭和58年から贈呈しています。 この賞も、今年で28年目を迎え、これまでに「音楽」「演劇・舞踊」「大衆芸能」「文芸その他」の5部門の受賞者は135組を数え、多くの方が日本はもとより海外で活躍されています。
「咲くやこの花芸術祭」は、大阪市の財産である咲くやこの花賞受賞者の方々にご協力いただき、市民の皆様に、質の高い芸術文化を気軽に鑑賞する機会や体験する機会を設けることを主な目的として初めて開催しました。
クラシック音楽やジャズ、美術作品の展示、落語と講談の寄席、作家の対談など盛りだくさんのプログラムを、大阪が誇る近代建築である中央公会堂を全館使用して展開するとともに、出演者と身近に触れ合えるワークショップなどの体験型企画や「咲くやこの花賞」ならではのコラボレーション企画なども用意し、多彩なプログラムを来場者が自由に組み合わせ、大阪を代表する歴史的建築物である大阪市中央公会堂を周遊しながら、じっくりと芸術文化に触れることができる3日間となりました。
10月22日(金)
アルプホルン
【内容】
中央公会堂の正面入り口前で開場直前にアルプホルンの演奏をおこない、芸術祭の開会を告げ、演奏終了とともに入場を開始しました。
開館を告げるアルプホルン
ウェルカムコンサート
【内容】
開場とともにロビーでチェンバロのフリーコンサートを開催。来場者の皆さんには開演前の時間を優雅に楽しんでいただきました。
【出演】
河野まり子(大阪チェンバーオーケストラ) 音楽部門[室内合奏] 昭和63年度受賞
【演奏曲目】
J.S.バッハ インヴェンションより4曲 半音階的幻想曲とフーガより、幻想曲
ゴールドベルク変奏曲より、アリア
F.クープラン クラヴサン曲集より「恋のうぐいす」「修道女モニク」
D.スカルラッティ ソナタ二短調
オープニング
【内容】
咲くやこの花賞第一回受賞者、小倉直子さん桂文珍さんによる「咲くやこの花芸術祭」の開会宣言。平松邦夫大阪市長とともにこれからも芸術祭を続けると力強く宣言しました。
【開会宣言】
小倉 直子 音楽部門[ピアノ] 昭和58年度受賞
桂 文珍 大衆芸能部門[落語] 昭和58年度受賞
咲くやこの花オーケストラ
【内容】
大阪チェンバーオーケストラとチェロの斎藤寛建さんの素晴らしい演奏。バリトンの晴雅彦さんのコミカルな歌や小倉直子さんのピアノ演奏とゲスト出演した吉田一輔さんの文楽人形とのコラボレーションも大好評でした。
【出演】
斎藤 建寛 音楽部門[チェロ] 昭和60年度受賞
晴 雅彦 音楽部門[バリトン] 平成17年度受賞
大阪チェンバーオーケストラ 音楽部門[室内合奏] 昭和63年度受賞
【曲目】
エルガー「愛の挨拶」チェロとピアノ
滝 廉太郎「荒城の月」チェロとピアノ
ポッパー「ハンガリア狂詩曲」チェロとピアノ
ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」ピアノソロ
ドビュッシー「ミンストレルズ」ピアノソロ
モーツァルト歌劇「魔笛」より「おいらは鳥刺し」「恋人か女房があれば」
晴 雅彦/大阪チェンバーオーケストラ
ドヴォルザーク「 セレナーデ ニ短調 作品44」大阪チェンバーオーケストラ
10月23日(土)
咲くや花形寄席 ~南海・かい枝二人会~
【内容】
英語落語で世界をめぐる桂かい枝さんの「堪忍袋」、旭堂南海さんがこの日のためにつくった新作講談「岩本栄之助物語 中央公会堂をつくった男」を披露しました。
【出演】
桂 かい枝 大衆芸能部門[落語] 平成15年度受賞
旭堂 南海 大衆芸能部門[講談] 平成9年度受賞
【演目】
桂かい枝(落語)「堪忍袋」
旭堂南海(講談)「岩本栄之助物語 中央公会堂をつくった男」(新作)
下座囃子:内海英華 ほか
落楽 ~rakuraku~
【内容】
文楽人形と落語がタッグを組み、新しい舞台作品に挑戦。「咲くやこの花」や「中央公会堂」の話を織り交ぜ、文楽人形の美しさ、落語の面白さを楽しんでいただきました。
【出演】
吉田 一輔 演劇・舞踊部門[文楽人形遣い] 平成21年度受賞
桂 かい枝 大衆芸能部門[落語] 平成15年度受賞
小佐田 定雄 文芸その他部門[落語台本]平成元年度受賞
くまざわ あかね 文芸その他部門[落語台本]平成14年度受賞
高橋 晃子 文芸その他部門[文楽人形・鬘床山]平成8年度受賞
〈文楽人形遣い〉吉田一輔
桐竹紋臣、吉田蓑紫郎、吉田玉翔、吉田玉誉、桐竹勘次郎
〈落語〉桂かい枝
作:小佐田定雄/くまざわあかね
文楽人形・鬘床山:高橋晃子
下座囃子:内海英華 ほか
大谷玲子ヴァイオリンコンサート
【内容】
評判の高い超絶なテクニックと多彩な音色・情感豊かな演奏で観客を圧倒。その実力をいかんなく発揮した素晴らしいコンサートでした。
【出演】
大谷 玲子 音楽部門 [ヴァイオリン] 平成14年度受賞
岡本 麻子(ピアノ)
【曲目】
ヴィエニャフスキ 「華麗なるポロネーズ ニ長調 Op.4」
貴志康一 「竹取物語」
シマノフスキ 「神話 Op.30」Ⅰ.アレトゥーサの泉、Ⅱ.ナルシス、Ⅲ.ドリ4.アデスと牧神
ヴィエニャフスキ 「創作主題による変奏曲 Op.15」
咲くやこの花JAZZ 松永貴志デュオ
【内容】
ドラムの外山明さんとの自由で形式にとらわれない多様な素晴らしいデュオに会場は大興奮。松永貴志さん自身も大満足のライブになりました。
【出演】
松永 貴志 音楽部門 [ジャズピアノ] 平成15年度受賞
外山 明(ドラム)
【曲目】
「オープンマインド」ほか
10月24日(日)
こどもも おとなも 楽しいおんがく
【内容】
日本の大作曲家と大詩人がつくった、なつかしくも心豊かな歌を親子で楽しむ音楽会。なつかしい足踏みオルガンやノコギリの音色も年代を超え楽しんでいただきました。
【出演】
畑 儀文 音楽部門[声楽] 昭和61年度受賞
サキタハヂメ 大衆芸能部門[のこぎり音楽] 平成16年度受賞
安田 哲也 (足踏みオルガン)
城村 奈都子 (ピアノ)
【曲目】
山田耕筰「赤とんぼ」
中田喜直「小さい秋みつけた」
久石 譲 となりのトトロより 「さんぽ」「崖の上のポニョ」
サキタハヂメ「愛するすべての人たちへ」「アニーローリー」「ロンドンデリーのうた」
斎藤建寛チェロコンサート
【内容】
ピアノとの息のあった素晴らしい演奏でタンゴの深い喜びや悲しみを柔らかなチェロの調べに乗せて楽しませてくれました。
【出演】
斎藤 建寛 音楽部門 [チェロ] 昭和60年度受賞
細見理恵(ピアノ)
【曲目】
アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」
J.ハイドン「ディヴェルティメント」
D.ポッパー「アルバムの一葉」
S.ラフマニノフ「ヴォカリーズ」
藤井 修「夕映え」
A.ピアソラ(野田雅巳:編) 「ルンファルド」「悪魔のロマンス」「天使の死」
咲くやこの花対談 万城目学×旭堂南左衛門
【内容】
来年、映画公開が決まった万城目学さんの話題作と上方講談「難波戦記」の共通点を探りながら旭堂南左衛門さんの巧みな進行で万城目学の素顔も垣間見る対談と好評でした。
【出演】
万城目 学 文芸その他部門 [作家] 平成21年度受賞
旭堂 南左衛門 大衆芸能部門[講談] 平成2年度受賞
「プリンセス・トヨトミ」と「難波戦記」の秘密
サキタハヂメのこぎりコンサート
【内容】
ノコギリの伸びやかで柔らかい調べを堪能。サキタ・ハヂメさんの独特の語り口に和やかな空気が会場全体に広がり、ゆったりとした時間の流れの中で山村若隼紀さんの美しい舞もノコギリ音楽とマッチしたコンサートでした。
【出演】
サキタハヂメ 大衆芸能部門 [のこぎり音楽] 平成16年度受賞
山村 若隼紀 演劇・舞踊部門[舞踊] 平成19年度受賞
石川 まぎ(ピアノ)
【曲目】
サキタハヂメ「光のさす方へ」
ハチャトゥリアン「剣の舞」
プッチーニ「誰も寝てはならぬ」ほか
咲くやこの花寄席
【内容】
豊竹咲太夫さんと桂文珍さんの芸達者なお二人の対談が客席を沸かせ、各受賞者の本芸もさすがに聴き応えのある寄席となりました。
【出演】
豊竹 咲太夫 演劇・舞踊部門[文楽] 昭和58年度受賞
桂 文珍 大衆芸能部門[落語] 昭和58年度受賞
旭堂南左衛門 大衆芸能部門[講談] 平成2年度受賞
内海英華 大衆芸能部門[寄席三味線] 平成5年度受賞
桂ちょうば 大衆芸能部門[落語] 平成21年度受賞
桂ちょうば『落語』
旭堂南左衛門『講談』
桂 文珍×豊竹咲太夫『対談』
中入
内海英華『女道楽』
桂 文珍『落語』
下座囃子:内海 英華、桂そうば ほか
ワークショップ / 交流サロン
10月23日(土)
ワークショップ 美のツボ探索ツアー「公会堂 五十三次」
【内容】
10時に大ホールロビーに集合。一階、大ホールから三階に上がり、小ホール、中ホール、特別室を、中央公会堂の職員の説明に講談師・旭堂南海の質問と戸雑談を交えながら参加者のみなさんと一緒に巡るシアターツアーを開催しました。
【ガイド】
旭堂 南海 大衆芸能部門[講談] 平成9年度受賞
ワークショップ「I ❤ラブ ゴミTシャツ!」
【内容】
淀川から持ち寄った淀川のゴミをTシャツホットボンドで張り付けて好みのデザインに仕上げていきました。ゴミの色、形、組み合わせで自由な模様を作ることができ、ゴミがゴミでなくなる瞬間を味わっていただきました。
【講師】
淀川テクニック 柴田英昭・松永和也 美術部門[現代美術] 平成21年度受賞
落語ワークショップ
【内容】
[落語入門講座]
「落語のなりたち」[落語とは?]「仕草」「小噺」を実演を交えながら解説しました。また、参加者の中から代表して高座に上がっていただき、実演の体験もおこないました。
【講師】
桂ちょうば 大衆芸能部門[落語] 平成21年度受賞
チェンバロワークショップ
【内容】
[チェンバロの解き明かし講座]
実演、映像を交えながら「チェンバロの大きさ」「撥弦の仕組み」「鍵盤について(鍵盤は白黒反対)」「チェンバロの歴史」を解説しました。また、河野まり子氏によるチェンバロの演奏もおこなわれました。
【講師】
河野まり子(大阪チェンバーオーケストラ) 音楽部門[室内合奏] 昭和63年度受賞
文楽サロン
【内容】
[文楽入門講座]
「人形の構造」「人形の遣い方」など文楽人形について、実演を交えながら解説しました。参加者の中から代表者の方には、実際に文楽人形の体験をしていただきました。
【講師】
吉田一輔 演劇・舞踊部門[文楽人形遣い]平成21年度受賞
10月24日(日)
講談ワークショップ
【内容】
[上方講談入門講座]
「講談の歴史」「講談の読み物(演目)の紹介」「上方講談と東京講談の違いと現況」など講談についての解説をおこないました。また、参加者の中から代表者の方には、講釈師の必須アイティム・振り扇や小拍子などを使い、講談の原点となる[修羅場読み]を体験していただきました。
【講師】
旭堂 南左衛門 大衆芸能部門[講談] 平成2年度受賞
上方舞ワークショップ
【内容】
「舞は礼に始まる」ということから、「ご挨拶の仕方」「上方舞独特の体型を美しく見せる立ち方」「歩き方」「扇の使い方」等を実演を交えながら解説しました。参加者のみなさんには、日本的な所作、着物を着て生活していた江戸時代~明治・大正の日本人の身体の使い方を、舞を通して体験していただきました。
[課題曲]
小唄「重ね扇(かさねおおぎ)」三世菊五郎と大阪の芸妓との恋の物語
【講師】
山村 若隼紀 演劇・舞踊部門[舞踊] 平成19年度受賞
声楽ワークショップ
【内容】
発声の基礎を実演を交えながら解説しました。仕上げに、参加者のみなさんと小林秀雄作曲「落葉松(からまつ)」を一緒に歌いました。
【講師】
畑 儀文 音楽部門[声楽] 昭和61年度受賞
咲くやこの花美術館
咲くやこの花美術館:淀川テクニック
【展示紹介】
作品名「メンチヌ」
10月13日(水)~大阪市役所の玄関ホールでアートボランティアと一緒に雌雄一対のチヌを作成。
(主催:芸術創造活動支援事業実行委員会)
そのうちの一つを中央公会堂の中ホールへ移動させて展示しました。
材料は骨組みも含めて全て淀川で見つけてきたもので、メインの素材であるウチワは淀川花火大会、反射板は河川敷に何故か段ボールに入れられて大量に捨てられていたものを鱗に使用しました。
淀川テクニック 美術部門[現代美術] 平成21年度受賞
咲くやこの花美術館:中西 學ギャラリー「星雲のサーキット」
【展示紹介】
天井画や壁画が復元された特別室の空間を生かして、「深淵なる宇宙の姿は、生けるもの全ての原風景」をテーマに作品を展示しました。
中西 學 美術部門[現代美術] 平成元年度受賞
【トークセッション】
「未来をかさねて」
中西 學(現代美術作家)×渡部義弥(大阪市立科学館・主任学芸員)
咲くやこの花美術館:後藤英之ギャラリー「天空の庭」
【展示紹介】
ギャラリーに実在しないバーチャルな「天空の庭」が出現するような作品を展示しました。
後藤 英之 美術部門[現代美術] 平成7年度受賞
【トークセッション】
・10月23日(土) 14:00~15:00 「作品制作における着想(アイディア)と表現について」
後藤英之(現代美術作家)×坂上義太郎(BBプラザ美術館顧問・前伊丹市立美術館長)
・10月24日(日) 13:00~14:00
「公共空間(パブリックスペース)におけるアートとデザインの交わり」
後藤英之(現代美術作家)×小野道也(株式会社イリア関西事務所デザイナー・プランナー)