東成まちかどツアー 資料室 2.名人紹介

   (大今里南3丁目)
・今回の探訪は、三味線の三絃加工の仕事をされている大今里南3丁目の岡本晴之さん(51歳)をお訪ねしました。
・岡本さんは、三味線の三絃加工をされて35年のベテラン仕込み職人です。三味線は、昔、中国から琉球(沖縄)を経て日本に伝来した蛇皮線が改造されたもので、棹(さお)と胴からなっています。岡本さんの仕事は、棹のつぎ手を保護する合木を作って棹につなぎ、胴の糸ばりの高さに合わせ胴に穴を開けて、上棹と天神を合わせ金具を打ち、にかわで引っ付け、石で磨きをかけ、漆を塗るまでの作業です。1日がかりで1つ出来たらよいというほど手間な作業で、胡弓(こきゅう)から津軽、民謡までの種類の三味線を扱っておられます。
・父親が三味線の棹を作っていましたが、私が中学生のときに父親が病気になった関係で友達に弟子入りしました。作るときの問題点、自然の木のため、割れたりしないかどうかです。岡本さんは作ることが専門で三味線は弾かないそうですが、思い通りの作品が出来あがった時にやりがいと満足感に浸るそうです。皆さんも一度、三味線の音色を楽しまれてはいかがでしょう。
(『ひがしなりだより』H10年5月)
   (東今里2丁目)
・今年の5月、国の文化財保護審議会で平成11年度に新たに設けられた鋳物製作部門の「選定保存技術保持者」に認定されました大谷相撲掾鋳造所(おおたにさがみのじょうちゅうぞうしょ)の大谷秀一さん(65歳)をおたずねしました。
・大谷秀一さんは、江戸初期に創業し代々大谷相模掾を襲名した鋳物師、大谷家の長男として生まれ、高校在学中の15歳の頃から家業を手伝い始め、祖父・故隆義さん、父・寅男さん(92歳)の指導のもと、国宝、重要文化財の寺社仏閣の復元補修を数多く手がけてこられ、今も長男の哲秀(38歳)と弟の晴英さん(61歳)と一緒に現役を続けられています。これまで手がけてこられたもののうち、代表的なものをお聞きし表すと以下のとおりで、スケールの大きさ、多彩な種類に改めて驚嘆するものばかり。
・城の復元工事では、昭和33年の尾張名古屋城の有名な金の鯱(しゃちほこ)の製作。この時は24歳で祖父・故隆義さんを中心に大谷家総力上げての完成。福島県の会津若松城(鶴ヶ城)、静岡県の掛川城、岐阜県の豊臣秀吉由来の墨俣(すのまた)城の各々天守閣の鯱(しゃちほこ)の復元制作。社寺仏閣では、奈良の法隆寺大修理に参加。有名な百済観音(くだらかんのん)像が安置されている大宝蔵殿の棟飾り制作。また、東大寺の大仏殿の大修理や、最近では奈良・平城宮の朱雀門(すざくもん)復元・建築で金物一式受け持ち、長男と弟さんと一緒に制作。さらに、日本三景で知られる広島県安芸の宮島の厳島神社の燈ろうが今年9月の台風で倒壊し、その修復作業も10月14日から手がけられています。
・区内では深江稲荷神社の改築工事で金物一式を制作されています。
・砂や粘土などで作った鋳型に溶かした鉄や青銅(銅と錫の合金)を流し込んで作る鍵物。鋳型を割ってみないと成功か失敗かがわからないというもので、豊富な経験と根気が必要とのこと。「鋳物作りの分業化が進む中で、細かい図柄の作成時に使う蝋(ろう)型など伝統技術をいかに後世に伝えるか責任を感じる。」そして、「仕事とは死ぬ気で勉強と思う」としみじみ語られる大谷さん。取材の最後に「鋳物を流した後のビールの一杯が実においしい」と優しい笑顔で話されていたのがとても印象的でした
(『ひがしなりだより』H11年11月)
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