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認知症当事者との対話から考えるまちづくり

2024年4月8日

ページ番号:624328

 港区長として3年目の春を迎えました。今年から力を入れたいことの一つに「認知症対策」があります。

  港区には「高齢化の進行が速い」という課題があります。日本どころか世界でこれから迎える高齢化のまちの最先端として、「人生100年時代を安心して過ごせるまち」にするためには、今までに無い発想で考えなければなりません。

  港区の認知症初期集中支援チームの「みなとオレンジチーム」さんが主になり、毎年、一般向けと専門家向けの講演を開催して学びを深めています。

 そのご縁で、専門職向けの講演会に「認知症未来共創ハブ」の堀田聰子先生が港区にお越しくださったとのことで、みなとオレンジチームの方につないでいただき懇談する機会を得ました。

みなとオレンジチームや堀田聰子先生と写真撮影

 私もたまたま生野区長時代から『認知症世界の歩き方』(筧裕介&+/ライツ社)をいろんな人に勧めており、その執筆に関わった堀田先生とお話ができて勉強になりました。つないでくださったみなとオレンジチームのみなさん、ありがとうございます!

 その際に、堀田先生から「認知症当事者との対話」を勧められ、先日実現しました。

  港区で40年暮らしているTさんは、自分の父親が認知症だったことから、医師に自分が認知症だと言われた時「父親を見ていたので、すっと入った」とのことで、早期に自覚され、自らの想いを語れる方でした。

港区で暮らすTさんからお話を聞きました

 今も自分のお店(美容室)に毎日いて、認知症と察したお客はいなくなったけれどもたまに常連さんが来ることもあり、店にいると落ち着くと話されていました。

  • 「自分は(認知症だと)ひがんでいるから『見に来たったで』という空気を感じるとイヤになってしまう」
  • 「『前通ったから覗いてみた』みたいな、気安い感じで来てくれる方が嬉しい」
  • 「今はまだ自覚があるから『人に迷惑かけたらどうしよう』と気を遣ってしまう。そのうち(認知症が進んだら)ポーンと忘れてなんでもやってしまうかもしれないけれど……」
  •  映画が好きで、時間さえあれば観に行っていたのが「帰りに『家がわからなくなった』と周りの人を困らせるのが申し訳ないし、道を聴いて嫌な態度をされたら腹が立つから、行かなくなった」

 と、Tさんの言葉にはたくさんの「啓発や施策の種」が詰まっていました。

 意思表示できないけれど、同じように思っている認知症や足腰の弱った高齢の方がいるのではないかと感じます。

  • 「自分には自分のやり方がある。世話をしてあげる、この通りやれ、と言われるとイヤ。自分らしく生きるのを支えていただけるならいいけれど」

 多少アレンジしていますが、このような話をされていて、認知症に限らず誰もが同じで、教育や仕事にも通じる気持ちだなと思いました。

  当事者の声を施策やまちづくりに活かす。

 区政会議もやってはいますが、本当に困難を抱えている当事者の声を聴く機会は少なく、勝手な偏見で施策を進めてしまうケースもあります。

今回の1時間ほどの対話にも、たくさんの気づきがありました。

  •  途中で出てもいい、帰りはわからなくなったら送っていく映画の上映会を近くで開催しては?
  •  映画館に「赤ちゃんOK」の上映回があるように、映画を観るのに心配がある人だけの上映時間帯があってもいいのでは?
  •  「道案内サポーター」を育て、外国人にも認知症の方にも対応できる「ちょこボラ(ちょこっとボランティア)」がいっぱいいる港区にすれば?

私たちもいずれ、高齢者となります。

認知症になるリスクは、誰にでもあります。  

その時に「自分らしさ」を尊重してもらえる社会や地域をつくるには、今からみんなで学び、できる変化を起こしていかなければと思いました。

 その具体例として『認知症世界の歩き方・実践編』別ウィンドウで開く(筧裕介&issue+design/英知出版)のワークから、一例ご紹介します。

 『認知症世界の歩き方』別ウィンドウで開くはサイトの作りも面白く、NHKでの放映もされていました。

 堀田先生からのご縁で著者の筧裕介さんともつながり、港区役所で懇談の機会もありました。今後のまちづくりに活かします。

筧裕介さんと懇談の機会がありました

 今回は「実践編」として、より具体的な当事者の声と解決策を考えるワーク形式になっています。

 たとえば「スーパーで買い物ができない」時、それは認知機能障害が複数重なったせいです。単純に「認知症だからできない」と決めつけず、一人ひとりの「できないこと」を丁寧に聞き取ることで解決策が見えてきます。

  • 短期記憶のトラブルで、払うべき金額を忘れてしまう
  • 館内放送や周りの音が気になって、混乱してしまう
  • 財布の中から小銭を見分け、つまみ出すことができない
  • 後ろの人が気になり、会計を諦めてしまう

 当事者の声の後に、問いが出されます。

 「あなたが認知症のある方ご本人、家族、行政や施設などの支援者、介護スタッフだったとして、どのようにこの状況を解決するでしょうか。あなたのアイデアを自由にお書きください」

 みなさんも考えてみてください!

   ↓

   ↓

   ↓

  • 「支援者が一緒にお店を訪れ、なじみの客になっておく」
  • 「高齢者に配慮した店舗、空いている時間帯を調べ、利用する」
  • 「電子マネーなどの買い物手段を一緒に検討し、試してみる」

 いろんな解決策が見えてきます。この本には注意すべき対策も書かれていて、「買い物には、家族や支援者が同行するようにする」は必ずしも解決ではないケースもある、周囲がサポートし過ぎてしまうことは本人の尊厳を損ないかねない、とあります。

 先ほどの認知症当事者、Tさんの声に通じます。

 ご家族の介護をされている方は、そんな工夫の余地もない必死の日々かもしれません。その心情にも思いをかけながら、それでも受け止める側の人や社会を変えることに、チャレンジしてみたいと思っています。

 行政として努力もしますが、区民のみなさん一人ひとりが「やがて自分も認知症になる未来」に対しての準備として、関心を持って「認知症サポーター」になっていただけると嬉しいです!

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