インターネット上の投稿サイトを利用して行われるヘイトスピーチへの対策強化に向けた法改正等を求める意見書
2023年9月28日
ページ番号:431431
平成30年3月27日可決
衆議院議長 参議院議長
内閣総理大臣 総務大臣
法務大臣 各あて
近年、わが国では、特定の人種・民族・国籍の外国人を排斥し、差別を助長する趣旨のヘイトスピーチが行われるなど、外国人等をめぐる人権問題について憂慮すべき状況が生じている。
この間、平成28年1月に本市にて「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」、平成28年6月に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」(別称:ヘイトスピーチ対策法)が制定され、社会一般の意識醸成や対策が一定進んできたところである。
しかしながら、地方公共団体がヘイトスピーチ解消に向けた取り組みを進めるにあたり、特にインターネット上の投稿サイトを利用して行われるヘイトスピーチに関しては、電気通信事業法及びプロバイダ責任制限法などの現行の法制度の下では、地方公共団体がヘイトスピーチを行ったものの氏名等の情報提供を求めても、投稿サイト運営者など(いわゆる「プロバイダ等」)の任意に委ねられることなどから当該情報の提供を受けることができず十分な対策ができないことや、ヘイトスピーチの拡散を防止するためにプロバイダ等に削除を要請しても応じてもらえないことなど課題も存在する。
また、ヘイトスピーチにより被害を受けた市民自らが、現行の法制度の下で情報の提供をプロバイダ等に求めることは可能であるが、その手続きを進めるには多大な負担を強いられ、断念してしまう状況もあるため、負担の軽減を図ることが必要である。
よって国におかれては、このような状況を踏まえて市民の人権を擁護する観点から、具体に以下の観点から法改正及び対応を進めるよう要望する。
1 プロバイダ等から地方公共団体への投稿者情報の提供促進のための電気通信事業法の特例の創設
サイト投稿によるヘイトスピーチについて、地方公共団体において、プロバイダ責任制限法第4条第1項各号に掲げる要件を具備すると認める被害者の権利回復のための行動を支援する目的で、同項各号に掲げる要件を被害者が具備していることを認定するための法律又は法律による委任を受けた条例所定の適正な手続きを履践した上で、プロバイダ等に対して投稿者情報の提供を求める場合に、プロバイダ等に対する投稿者情報の提供の義務付け又は情報提供をしたことについてのプロバイダ等の投稿者に対する責任の免除など、プロバイダ等から地方公共団体への投稿者情報の提供が着実に行われるようにするため、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第4条の規定の特例を設けること
2 プロバイダ等による投稿者情報の廃棄の防止
サイト投稿によるヘイトスピーチについて、地方公共団体においてヘイトスピーチの認定及びプロバイダ責任制限法第4条第1項各号に掲げる要件を被害者が具備していることの認定が行われるまでの間に、プロバイダ等により投稿者情報が廃棄されることがないよう、地方公共団体から要請があった場合にプロバイダ等に投稿者情報の保存を義務付けること
3 プロバイダ責任制限法第4条の規定による投稿者情報の開示請求に係る裁判の申し立てにおける被害者の負担軽減等
サイト投稿によるヘイトスピーチの被害者が、プロバイダ責任制限法第4条の規定による投稿者情報の開示請求に係る裁判の申し立てを行う場合には、被害者の負担を軽減するため、被害者の住所地を管轄する裁判所を管轄裁判所に追加するとともに、プロバイダ等により投稿者情報が廃棄されることを防止するため、被害者から裁判の申し立てがあった場合にプロバイダ等に当該情報に係る通信記録の保存を義務付けること
4 ヘイトスピーチの認定にあたってのプロバイダ等からの投稿者情報の提供の促進
地方公共団体がヘイトスピーチの解消に向けた取り組みを実施する場合、インターネット上の投稿サイトを利用して行われる表現活動のヘイトスピーチ該当性を判断する際に投稿者からの意見聴取を行うためには、プロバイダ等からの投稿者情報の提供が必要となることに鑑み、かかる場合に情報提供をしたことについてのプロバイダ等の投稿者に対する責任を免除するなど、プロバイダ等から地方公共団体への投稿者情報の提供が促進されるようにするための措置を講じること
5 ヘイトスピーチと認定された投稿コンテンツのプロバイダ等による削除の促進
地方公共団体のヘイトスピーチの解消に向けた取り組みとして、条例所定の適正な手続きを履践した上で、ヘイトスピーチと認定された投稿コンテンツの拡散防止のために同コンテンツの削除をプロバイダ等に要請した場合には、削除したことについてのプロバイダ等の投稿者に対する責任を免除するなど、プロバイダ等による削除が促進されるようにするための措置を講じること
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。