よどじん(平成27年3月)
2017年2月1日
ページ番号:298740

「交通安全を育む」

始業のベルがなると赤と青のスタリッシュな車がにわかに動き出す。敷地内のコースには、信号機に標識、S字カーブにクランク。
そう、ここは自動車教習所。笑顔で指導にあたるのは、この道35年のベテラン指導員。
今月のよどじんは、
「交通安全の使者」
松本 恒幸(まつもと つねゆき)さん
性に合わん、やめた

4月からの新たなスタートを控え、教習所には自動車免許取得をめざす若い教習生の姿が目立つ。コース上では、黄色いジャケットを着た指導員が身振り手振りを加えながら、熱心に指導している。その中で、ひときわにこやかに教習生に接する松本さんの姿を見つけた。
大学卒業後に大阪を離れ、一旦東京で服飾関係の職に就くも「性に合わん、やめた」とあっという間に大阪に戻ってきてしまう。「あんたこれからどうするの?」と諭す母親に対し、思案の日々を過ごす。

そんな中、生まれ育った塚本の町にあり、自らも卒業した自動車教習所にふと目が留まる。小さい頃から車好きの父親が運転する助手席に座るのが大好きだった。
あっ、ここ良いかも_。
臆することなく飛び込んでみた。
ダメもとで叩いた扉だったが、運の良いことに、たまたま欠員が生じており、昭和54年に見事採用となった。
若いときは苦しかった

職場では穏和な人柄から「つねさん、つねさん」と慕われる松本さん。指導力にも定評があり、受け持った教習生からの評判も常に上位ランキングされる。教習所には、年間を通じて18歳から60歳ぐらいまでの様々な年齢の教習生が集う。そして皆それぞれに個性があり、教科書通りの一様な指導方法ではなかなか事が運ばない。
「若い時は苦しかったです。生徒を自分の型にはめようと必死だったから。でも失敗と成功を何度も繰り返していくうちに、色々な指導の“ワザ”を身につけることができました」
先生、免許取れたよー!

教習で一番肝心なのは教習生の「気持ち」をどう高めていくか、と話す松本さん。限られた教習期間での焦り、前回の失敗からの萎縮、日常生活での悩みに至るまで、皆それぞれに不安の種を抱えている。松本さんは開始早々に教習生の顔色、視線、仕草を観察し、その不安を見抜く。「始まって5分が勝負です。どうやってこの教習に気持ちを向かせるか。そこで決まります」

免許取得という目標に向け、生徒とともに悩み、成功を喜び、長いようで短い同じ時間を過ごす。この仕事をしていて何より嬉しいのは、教習所を巣立っていった生徒たちが忘れた頃にふらっとやってきて「先生、免許取れたよー!」と、はにかみながら報告してくれること。
車いじりと山あるき

根っからの車好きで、名車として知られる昭和48年式のホンダライフを愛車とし、42年経った現在も自らのメンテナンスで乗り続けている。山歩きも大好きで、毎年欠かすことのできない一人旅がある。経済性を重視した90㏄のスクーターにまたがり、めざすは富士山。8泊9日の自由気ままな旅の予定は、すでに愛用の手帳に太字で記されている。
「何か月も前から計画を立てて、その日のために出来ることを入念に済ませておく。車の運転も同じです。ここを進むとこんなことが起こるかもしれないという予測と事前対処です。もう体に染みついているんでしょうね(笑)」
交通安全を育む

公共交通網が整備され、若者の生活や趣味も様変わりする中、ひと昔前に比べると、今は自動車の免許を取得する人が減ってきているという。しかし、今もなお多くの方が不幸な事故に直面している。実は松本さんも雨の日に自転車の不慮の事故により、父親を亡くしている。
「家族を失うという悲しみや、あの時こうしていればという後悔。悔やんでも悔やみきれません。事故は絶対に未然に防ぐことができる。そのための交通安全指導です。そして、ただ安全運転の要領だけを教えるのではなく『事故を起こしたくない。安全運転したい』と心の底から感じさせる。私達指導員にはその使命があると思っています」
静かに見守る大先輩

35年という長きに渡り培われた経験とその熱い想いで、今日も教習生を見守る松本さん。まわりを見渡すと歳の離れた後輩ばかりだが、実はずっと見守ってくれている大先輩がいる。それは、コースにそびえ立つ幾本ものフェニックスの木。
「この教習所の名物ですね。初代の教習生が苗を植えてくれたそうで、今まで大切に育てています。これが無かったら車がもっと置けるのにと思うこともありますが(笑)」

事故の無い世の中を切に願い、それを実現するため、今日もまた黄色いジャケットに袖を通し、35年間走り続けるコースで交通安全の種を育む。
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