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【第25号】「子どもの睡眠の重要性」たなか睡眠クリニック院長 田中 俊彦

2022年10月30日

ページ番号:203712

現在の睡眠に大きな変化が


 ヒトは眠らないと生きていけない生物であり、ヒトから眠りをとると死んでしまいます。
頭と体を休息させるなどとても大切な働きがあり、眠りは人生の1/3をも占めるものです。
 しかしながら、おきている時間に比べ睡眠は軽視されがちです。またそれだけでなく、特に今、日本では大きな変化があるのはなかなか知られていません。
 同じ日本であっても50年前の日本と比べてどうでしょうか?
約1時間も睡眠時間が短くなっています。50年前では夜の10時に寝ている方が6割以上で多数派ですが、今や2割強と少数派です。現代に生きている私たちはこれが普通と思っていても、人類の歴史のなかでこれほどの大きな変化はあまりありません。
 また世界的に見ても日本は、睡眠時間の最も少ない国のひとつです。24時間社会が到来した現代社会、便利な世の中ですが、今、日本の睡眠に大きな変化が来ています。

子どもの眠りがあぶない


 今の日本は世界的にも最も睡眠時間が短い国の一つですが、それは大人社会に限ったことではありません。
 今や日本の3歳児は、夜10時を過ぎても起きているのは50%を超えているのをご存知ですか?(2000年日本小児保健協会調査)
 日本の子どもは韓国とともに世界一夜更かしです。1-2歳の日本や韓国の子どもは、夜10時頃寝つくのが多く、一方同じ先進国のアメリカでは8時頃が一番多いのです。アメリカでは睡眠時間も11時間と長いです。
 子どもの親である大人のライフスタイルが子どもの生活スタイルに大きく影響を与えているというのは間違いないでしょう。

 皆さんも身近に思いあたることがありませんか?
 たとえば、夜になって子どもを連れてコンビニやレンタルビデオ屋にいくことはありませんか?
 お父さん、お母さんと一緒に遅くまでテレビをみてませんか?
 お父さんの帰ってくるのが遅いので子どもの寝る時間が遅くなってませんか?
 子どもは自分で生活リズムを作り、食事や睡眠環境を整えることはできません。

大人と子どもの睡眠は違う


 子どもと大人では睡眠の構造や時間が違うことは分かっています。しかし、構造や時間が違うこと以上に大切なことがあります。
 何より大切なのは、時期の問題です。つまり、子どもの脳はまだ未発達であり、そして睡眠も未完成ということです。これから成熟した睡眠システムを育てていかなければいけない時期なのです。大人のようにすでにできてしまった睡眠システムではありません
 その期間に不規則な睡眠環境、慢性的な睡眠不足があると、いったいどのような睡眠をとる大人になるのでしょうか?適切な睡眠をとる能力のある大人になれるでしょうか?大人になってからでは治せないと思いませんか?
 ただでさえ、24時間社会と急激な環境変化、増幅するストレス社会に対応することができるでしょうか?


 また、睡眠中のホルモンも大人と子どもでは違いがあります。子どもに多く分泌されるホルモンがあります。
 一つはメラトニンです。メラトニンは、夜になると分泌され体温を下げて眠りをいざなうホルモンですが、1~5歳にはメラトニンシャワーといわれるぐらい、一生でいちばん分泌される時期なのです。また、性的な成長にも大きな働きがあるホルモンでもあります。
 もう一つは成長ホルモンが分泌されます。寝る子は育つというのは、この成長ホルモンがよく出るからなのです。睡眠時無呼吸症候群など、睡眠に障がいがあると、成長ホルモンの分泌も少なくなります。
 このように、子どもの成長にかかわるホルモンが睡眠に影響を受けるのです。

これからどうすれば・・・


 何度もキレる、いきなり友達に手をだす、自分の思い通りにいかないとすぐ泣きわめく、イライラしやすい、いつもぼぉーとしてるなど、少し気になる子どもが増えてきました。その中には、睡眠に問題がある子どもがいます。
 これからどうすれば、いい睡眠がとれるようになるのでしょうか?
 睡眠は、疲れたら寝る、時間が来たら寝る(体内時計)といったことで制御されています。
 こういったことと仲良く付き合っていくためには、1光、2食事、3温度・体温に気をつけるといいでしょう。


 具体的なことを少しあげてみましょう。
 1つはカーテンをあけて朝日をあびてみることです。朝強い光を浴びることで、体内時計をリセットし、夜にはメラトニンを出してくれてよく眠れることは知られています。
認知症で夜間徘徊する人でも午前中に太陽など強い光をあびることで、夜間の徘徊・せん妄も少なくなり寝てくれるようになります。
 逆に夜間では弱い光でも目に入れていると眠れなくなります。遅くまで、パソコン、テレビ、ゲーム、携帯電話などしていると夜はなかなか眠れません。特にコンビニなんかはかなり明るいですね。
 しかし、テレビなども見る距離を倍とると、光の量もかなり減り負担は軽減します。
 また、学校によく遅刻するお子さんなんかは、窓際で光がよくあたる席だと遅刻が少なくなる可能性もありますね。
 このたびは紙面の関係もあり、これ以上具体的な話はできませんが、医学的に効果があるとわかっている1光、2食事、3温度・体温に気をつけて工夫するといい睡眠がとれるようになるでしょう!

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