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作曲家・指揮者に転身

2014年6月20日

ページ番号:17399

作曲家・指揮者に転身

ヒトラーと音楽情勢

 康一が作曲家・指揮者に転身しつつある頃、ベルリンでは1932(昭和7)年にナチスが第1党となり、1934(昭和9)年にヒトラーがドイツ国総統に就任し独裁体制を固めました。そのため音楽家たちは相次いでベルリンを離れ、当時の様子を次のように記しています。
 ヒトラーが台頭する2、3年前までは、ベルリンは欧州の中でも最も国際的な音楽都市で、W.フルトヴェングラー、B.ワルター、O.クレンペラー、E.クライバーなどの指揮者が活躍し、音楽会も毎日4つ5つあり、どの演奏会に出かけるか迷うほどだった。しかし、世界の不況により音楽界も打撃を受け経済難に陥り、演奏会の数も減ってしまった。
 そのような状況のなかで、フルトヴェングラーは1931(昭和6)年にバイロイト音楽祭音楽監督に、1934(昭和9)年にはベルリン国立歌劇場音楽総監督に就任するなど、ドイツ楽壇の中心人物となっていきました。

転身の動機

 演奏活動から作曲に心を傾けた動機と、自分が日本人であることの誇りを次のように語っています。
 「タマシイが最も難しい問題なんです。(中略)魂の違う、また人種の違う日本人が、いくらドイツ魂の生んだベートーヴェンの曲を練習したってものになるはずがありません」
 「すべてがかりものだ、かりものをまたひとにかりものとして紹介して喜んで居るのだ。どうして自分自身を生みだせないのか、たといそれが未熟な不完全なものにしても…こういう不満から僕は作曲に入らざるを得なかった。そして意識的か無意識的かそれには何か我々の人種の血が通って居た。東洋の香が曲にもうつらざるを得なかった。それを私はどんなに喜んだことだったろう」
 「いたずらに西洋音楽を模倣する事を止めて、表現手段は向こうのものを借りても内容は日本的雰囲気の濃いものを創造しなくてはなりません」

映画、作曲、指揮を披露した「日本のタベ」

「日本のタベ」のプログラム

 1934(昭和9)年3月、康一は映画上映を兼ねた作品発表演奏会「日本のタベ」を、ドイツの映画会社ウーファの劇場で催しました。
 「日本のタベ」では康一が制作をてがけた映画「鏡」と「春」を上映し、日本の文化や芸術について紹介しました。その後、彼が作曲した交響組曲「日本組曲」、歌曲8曲とヴァイオリン協奏曲を、いずれも自らが指揮し、ウーファ交響楽団の演奏により発表しました。この催しは新聞各紙にとりあげられ「古き日本が、文化に於いても芸術に於いても、ヨーロッパに意識的に接近しつつある新しい日本となった」と評しています。

ベルリンフィル八-モニー管弦楽団を指揮

ベルリンフィルを指揮する康一

 1934(昭和9)年11月、25歳の時、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して自ら作曲した交響曲「仏陀」と交響組曲「日本スケッチ」、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、R.シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を演奏しました。演奏会はベルリンの新聞に「日本人貴志康一氏は伯林(ベルリン)フィルハーモニー・オーケストラを指揮し、特にその際、音色に対し驚嘆に値する指揮振りを示した」と評されました。大阪毎日新聞に「貴志氏独逸楽壇で/指揮棒を揮ふ/郷土大阪へ贈る快報」という見出しで報じられました。

楽譜の出版

 1934(昭和9)年、『KOICHI KISHI Composition for Violin and Piano』という題でヴァイオリン曲6曲を、また歌曲7曲もベルリンのR.ビルンバッハ社から出版しました。ドイツ語とローマ字の歌詞が付けられた歌曲集の巻頭に、康一はドイツ語で「これらの歌曲は、日本の詩と音楽を、ヨーロッパの感情に向かって説明するものである。古い日本の芸術と現代の音楽文化との間に、一つの統合を発見しようとする試みである。それらは民族的感情に深く根ざしており、そこに東方の音楽の特別の感情を表そうとする試みである」と記しています。

レコーディング

 1935(昭和10)年3月、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、交響組曲「日本組曲」「日本スケッチ」とソプラノ歌手M.バスカ、同管弦楽団によって歌曲13曲を録音しており、康一は、このことを人生にまたとない喜びだと書き残しています。その音楽は現在CD「貴志康一 ベルリン・フィル幻の自作自演集」で楽しむことができます。

日本文化の紹介

 17歳から留学生活を送った康一は、日本の文化をヨーロッパの人に伝えたいと考えていました。例えば、留学に際しては紋付きの着物や角帯を持参して、折にふれ和装を紹介していましたし、1931(昭和6)年にはドイツ雑誌『DIE DAME』に「私の家族」という題で家族や華道、宗教、三月・五月の節句、七夕、お盆などの模様を紹介し、それは家族の集合写真とともに大きく掲載されました。

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