2021年12月号
2021年12月1日
ページ番号:571856
名作映画が表現した人権の尊さ ~『砂の器』で描かれた切なる想い~
今月初旬から人権週間が始まります。私は前職場の東京都庁において「人権研修講師養成コース」の受講を修了し、資格を持っていたので、人権研修の講師を何度か務めました。講義の最後に、研修生に関心を持ってもらおうと映画の話をしていました。
区民の皆さまもご存じだと思いますが、松本清張の小説が原作の『砂の器』です。1974年に映画化され、ドラマでリメイクもされた名作ですね。
本作はミステリーでありながら、根底に流れるのはハンセン病に対する差別の実態と患者や家族の苦悩という大きなテーマでした。小説の舞台となった時代、「らい予防法」なる法律がまだ生きており、ハンセン病患者の方を家族から無理やり引きはがし、隔離するような政策が取られていました。
映画の主人公は、そうした差別のなかで幼年期を生きたのち、過去を捨て、気鋭の音楽家として成功を収めます。その病に侵され引き離された父親への想いを「宿命」という新曲のタイトルに込め、渾身のピアノ演奏を披露する主人公。これに重ね、故郷を捨てて父と二人、放浪の旅を続けた思い出を走馬灯のように表現したラストシーンでは、父親役と子役の方の名演技に何度観ても涙してしまいます。
本作から47年経った現在も、ハンセン病回復者や家族への偏見や差別は、完全には消え去っていません。私たちはこれからも不断の人権啓発を行い、映画が表現した悲しい世界が二度と舞い戻ってこないよう、心して生きたいと思います。
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