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【第10号】「薬物の危険 ~親として気をつけたいこと」                                      大阪市健康福祉局健康推進部 こころの健康センター 所長 以倉 康充

2022年10月30日

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 薬物の害を学校も警察も警告しています。「廃人になる」「脳が壊れる」など、危険をわかってもらおうと、ポスターやパンフレットでくり返し伝えています。
それでも、薬物を使用してしまう人の数は減りません。なぜでしょうか?
 思春期の子どもたちの薬物乱用も、昔から大人を悩ませている問題です。いろいろな原因が考えられています。どんなことがわかっているか、順番に見ていきましょう。

どのようにして子どもの手に入るのか

 思春期の子どもたちにとって、薬物の入り口はほとんどが「友人・先輩」などの身近な人間関係です。人の一生のうちこの時代は、親に全面的に保護されていた時代から、同世代ときずなを深めていく時期です。

 しかし、きずなを大事にするあまり、おかしな誘いやまちがった誘いを断れなくなることも起こります。「悪いことかもしれないけど、友だちを裏切れない…」「先輩の言うことには逆らえない…」というふうに考えてしまうのです。

 薬物を売ろうとする側は、このような思春期の心理をよくわかっています。だから、同世代に影響力のありそうな子にまず薬物の味を教え、そこから友人や後輩に広めていけば、手間が省けて売り上げも増える、というわけです。

親として、気をつけておきたいこと(子どものこんな様子に注意しましょう)


・目を合わすのを避けるようになる。家族と会話しなくなる。
・食欲がなくなる。目に見えてやせる。
・帰宅が遅くなる。行き先を告げずに外泊する。
・酒、タバコのにおいがする。

 このようなときに、親はあせってむやみに問い詰めたり、怒鳴ったりしがちです。それがすべて悪いとは言いませんが、親が自分の不安を子にぶつけているだけの場合、子はそのような親を軽蔑し、反発して、さらに関係が悪くなります。
 逆に、子の反応を恐れて放任したり、当たりさわりのない言葉しかかけられないと、子はますます親から離れて、悪い道へ進んでしまいます。
 「こうすればよい」という正解はありませんが、子を思い、守ろうとする気持ちと、子の心を想像し思いやる気持ちを、どう伝えるかがポイントになるでしょう。

麻薬や覚せい剤の危険性

 麻薬や覚せい剤はなぜやめられないのでしょうか?現在わかっているところをお話しましょう。

 人が何かをしたいと思い、そのために努力して、結果が得られたとき、喜びを感じます。快感と言ってもよいでしょう。練習して短距離走のタイムを縮めることができたとき、勉強して成績が伸びたとき、何日もかかってゲームをクリアできたとき、などが例としてあげられます。

 このとき感じる気持ちよさは、ある種の物質(ドパミン)が脳の中で放出されるからと考えられています。努力に対して、人間の脳はほうびを与えるようにできているのです(脳内報酬系)。ただ、その量はわずかです。

 薬物は、この物質を、自然にはありえない多量に放出させます。その快感はすさまじいものだそうです。一度そういうことが起こると、脳は快感を忘れることができず、くり返し求めるようになります。これが薬物の怖さであり、いくらやめたいと思っても、身体が求めるのでやめられないのです。

 つまり、薬物は人間の脳を改造して、快感をひたすら求めるだけの存在につくり変えてしまうのです。

事例紹介

 K子さん(16歳)は、両親と兄の4人暮らしでした。両親はまじめで、兄は成績がよく、K子さんは自分が遊び好きで成績が悪いことに、ずっと引け目を感じていました。家族は優しく、K子さんを責めるようなことはなかったのですが、K子さんの中では、それがかえって物足りず、自分は大事にされてない、と感じるようになりました。

 中学生から夜遊びを始めても、両親はさすがに注意するものの、K子さんから見ると、どこか遠慮しているようで、本気で心配しているようには見えませんでした。

 高校生になり、友だちとカラオケボックスに行ったとき、知らない男の子のグループと意気投合し、別のクラブへ行き、酒をすすめられて飲むうちに記憶がなくなり、目が覚めたときには、奥の部屋へ連れ込まれ、レイプされた後でした。

 解放されて翌朝家に帰ったとき、待っていた両親から初めて本気で怒られ、問い詰められましたが、K子さんは自分の身に起こったことを言えませんでした。あまりにも恥ずかしく、信じられないことで、どのように言っていいかわからなかったのです。

 それから、両親は打って変ったように口うるさくなりました。K子さんはそれがうっとおしく、どうして自分がレイプされたことを察してくれないのか、自分の苦しみを理解してくれないのか、と両親を恨むようになりました。

 今までの友だちと付き合うのもつらくなり、距離を置くようになると、それまで避けていた“不良”グループの子が声をかけてくれ、話してみると、その子は家族の問題でずっと苦しんでいることを知り、理解し合えたと思いました。

 そして、その子のグループと付き合ううちに、シンナーを吸うことを覚え、何回かやっているうちに、グループまとめて警察に逮捕されました。少年鑑別所にいる間、両親が自分のために涙を流して「悪かった」と言ってくれ、自分のわだかまりがとけていくのを感じました…


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執筆者:大阪市健康福祉局健康推進部 こころの健康センター所長 以倉 康充

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