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「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の解説及び審査の実例(9条)

2024年4月9日

ページ番号:444611

解説及び審査の実例(条例第9条)

本条の趣旨

 大阪市ヘイトスピーチ審査会(以下「審査会」といいます。)が市長から独立した第三者機関として公正・公平かつ的確な判断を行うことができるようにするため、調査審議を進める上で必要な審査会の調査権限を本市から付与することを定めるとともに、関係人に、弁明、反論及び自己に有利な証拠の提出の機会を保障するために必要な事項を定めたものです。

各項の趣旨・解説

第1項の解説

   審査会において十分な調査審議が行われるようにするため、審査会に、諮問者である市長に意見書や資料の提出を求めるだけでなく、自らが、調査審議の対象となっている表現活動に関し、申出人に意見書又は資料の提出を求めること、当該表現活動に係る特定人等や当該表現活動を現認した者など適当と認める者にその知っている事実を述べさせることその他必要な調査をすることができる権限を本市から付与しています。

 なお、これらの者に、審査会からの調査に応じる義務を課すものではありません。

 審査会が条例第9条第1項の規定による調査をする場合であって、申出人又は適当と認める者に協力を求めるときは、大阪市ヘイトスピーチ審査会規則(以下「審査会規則」といいます。)第1号様式による調査書をこれら者に送付するものとしています(審査会規則第9条)。

第2項の趣旨

 審査会では客観的で公正・公平な調査審議ができるように、関係人双方に弁明、反論及び自己に有利な証拠の提出の機会(以下「意見等提出の機会」といいます。)を保障するとともに、関係人の弁明や反論等の意見については客観的な記録となるよう書面の提出により行うことを基本とすることとしています。

第2項の解説

  審査会が条例第9条第2項の規定による意見等提出の機会を付与する場合は、審査会規則第2号様式による機会付与通知書を関係人に送付します(審査会規則第10条第2項)。

  意見書の様式は自由ですが、意見書を提出しようとする関係人は、意見書に、事案の内容についての意見のほか、その氏名及び住所又は居所(法人その他の団体にあっては、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名)並びに案件番号を記載しなければなりません(審査会規則第10条第3項)。

【「関係人の所在が判明しないときは、当該関係人については、この限りでない」について】

 関係人の所在が判明しないときは、当該関係人については、条例第9条第2項の規定に基づく意見等提出の機会の付与をしないこととしています。 

 関係人の所在が判明しない際に公示による送達の手続をとってしまうと、申出人又は当該表現活動を行ったものの氏名又は名称を公示することになり、結果として申出人が人種若しくは民族に係る特定の属性を有していること又は当該表現活動を行ったものの氏名若しくは名称を公表するのと同様の効果をもたらすことになるので、公示による送達の手続はとることができません。

【「相当の期間」について】

  関係人が書面や証拠を準備し提出するため社会通念上必要と認められる期間をいい、案件の内容を踏まえて審査会が定めます。審査会が定めた相当の期間内に関係人が意見を述べ又は有利な証拠を提出しないときは、審査会は、これらの機会を与えたものとみなすことができます。

第3項の趣旨

  審査会の調査審議は、関係人の弁明や反論等の意見については客観的な記録となるよう書面の提出により行わせることを基本とすることとしていますが、関係人の権利利益を保護するため、その申立てに基づき、口頭で意見を述べる機会を原則として与えることとしたものです。

第3項の解説

   口頭で意見を述べる機会の付与の申立てをしようとする関係人は、審査会規則第3号様式による口頭で意見を述べる機会の付与申立書を審査会に提出しなければなりません(審査会規則第11条)。

  審査会は、関係人に条例第9条第3項本文の規定による口頭で意見を述べる機会を付与する場合は、その日時までに相当な期間をおいて、当該関係人に対して、審査会規則第4号様式による口頭で意見を述べる機会の付与通知書を送付します(審査会規則第12条第2項)。

【「相当の期間」について】

 関係人が審査会の期日に出頭するため社会通念上必要と認められる期間をいい、案件の内容を踏まえて審査会が判断します。

 関係人は、調査審議の著しい遅延を招くことのないように、病気その他特段の理由がない限り、口頭意見陳述に指定された期日を遵守しなければならず、関係人が正当な理由なく当該期日に出頭しないときは、審査会は、口頭で意見を述べる機会を与えたものみなすことができます。

第4項の解説

  関係人は、口頭で意見を述べる際に、審査会の許可を得て、補佐人とともに出頭することができることを定めています。補佐人の出頭は許可制になっており、関係人は、当該補佐人を出頭させようとする前日までに、審査会規則第5号様式による補佐人の出頭許可申請書を審査会に提出しなければなりません(審査会規則第13条第1項)。

   なお、大阪市ヘイトスピーチ審査会の運営等に関する規程(以下「運営規定」といいます。)第2条第2号により、審査会に出頭し陳述することができる者は、1件につき4人以内とされています。

第5項の趣旨

  審査会が調査審議を行うに当たり、案件の実情に即した効率的な審理を実施するため、その指名する委員に審査会が行う調査手続の一部を行わせることができる旨を定めたものです。

第5項の解説

  表現活動には様々な態様があり、表現活動を行ったものが遠隔地に居住していたり、表現活動が遠隔地で行われそれを現認した者も遠隔地に居住しているといったことも想定され、これらの者が口頭意見陳述のために来阪することが困難なことや、大阪市内居住者であっても、身体の支障等の事情により、審査会に出席することが困難であるということも想定されます。また、緊急に調査手続を実施する必要が生じた場合に、多忙な審査会の委員の日程の調整が困難なこともあり得るほか、案件の内容やその時点までの調査審議の蓄積などに照らし、少人数の委員により口頭意見陳述に対応する方が審査会全体の効率性・効果性の観点から有効と考えられる場合なども想定されます。

 これらの場合を考慮し、審査会の指名する委員に、審査会が行う調査手続の一部を行わせることができることとしたものです。

 指名する委員に行わせることのできる事項は、条例第9条第1項に規定する調査、同条第3項本文に規定する関係人からの意見陳述を聴くこと、及び条例第6条第2項に規定されている市長からの報告を受けることです。

第6項の趣旨

   審査会の会議の公開に関し、条例の施行に関する重要な事項の調査審議の手続については、原則として公開で行い、ヘイトスピーチに係る措置に関する調査審議の手続については、公開しないことを定めたものです。

第6項の解説

 ヘイトスピーチに係る措置に関する調査審議の手続においては、大阪市情報公開条例第7条各号に規定する非公開情報、特に個人情報やセンシティブな人権侵害事象を取り扱います。審査会を公開で開催することによって、それらの情報を広く一般に知らせることとなり、個人情報の流出だけでなく、市民の差別意識を助長するなど、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれがあります。このため、ヘイトスピーチ該当性等やヘイトスピーチの措置及び認識等の公表に係る個別案件の調査審議手続は公開しないこととしています。

 一方、制度のあり方に関する検討など条例の施行に関する重要な事項の調査審議の手続については、上述したような支障はなく、むしろ、行政運営の透明性の向上という要請から公開することの必要性が高いといえます。そこで、本条例の施行に関する重要な事項の調査審議の手続については、特段の支障がない限り、公開して行うものとすることとしています。

  審査会の議事録については、条例第9条第6項の規定により調査審議の手続が公開で行われている場合を除き、委員の発言内容を逐一記録した会議録は作成せず、会議要旨を作成することとしています(運営規程第3条第1項)。さらに、審査会における調査審議の手続の透明性を確保するため、会議要旨を基に情報の適切な取扱に留意した上で会長の承認を得て作成した議事要旨を作成し、市ホームページで公表することとしています(運営規程第3条第3項)。過去の議事要旨についてはこちらのページからご確認いただけます。

 

審査の実例

※個別具体の案件に対する審査の実例であり、類似した案件であっても、その表現活動全体の特徴によっては、過去の実例とは異なる判断がなされる場合も考えられますので、予めお含みおきください。

実例(具体例)

条例第9条第1項に基づく調査

表現活動を行ったものがインターネット上の動画投稿サイトの動画掲載者であった事案において、当該動画掲載者のアカウント名以外の情報が不明であった。そこで、条例第9条第2項に基づく意見提出等の機会を付与するために、同条第1項に基づく調査として、当該動画投稿サイトの運営者を通じて上記アカウント名保有者に対し、住所、氏名等の連絡を求めた。

条例第9条第1項に基づく調査

インターネット上の動画投稿サイトへの動画掲載が調査審議の対象となっている事案において、当該動画の内容となっている街宣活動は条例の全部施行日(平成28年7月1日)以前に行われたものであったため、条例第5条の規定の適用対象外であった。しかし、当該事案のヘイトスピーチ該当性の判断にあたっては、当該街宣活動のヘイトスピーチ該当性が前提となるため、当該街宣活動は調査審議の直接の対象ではないが、ヘイトスピーチ該当性の検討の参考とするため、条例第9条第1項に基づき当該街宣活動の主催団体に対して当該街宣活動を開催した目的について照会を行った。

表現活動を行ったものに対して、条例第9条第2項に基づく意見等提出の機会を付与しないとした案件

・条例第5条第1項各号に掲げる表現活動のいずれにも該当しないと考えられる表現活動

・条例第2条第1項各号該当性についての詳細な検討をするまでもなく、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団に関する表現活動ではないと判断できる表現活動

(理由)

当該表現活動を行ったものについては、意見等提出の機会を付与しないことによってその権利・利益に影響を及ぼすとは考えられず、このような場合にまでそうした機会を付与することは、かえって、当該表現活動を行ったものに対して、当該機会付与に応じるべきかどうかの判断を強いるとともに、仮に、当該表現活動を行ったものが応じざるを得ないと判断する場合には、意見書の作成や証拠の収集整理を行うための負担を強いることとなるため。

申出人に対して、条例第9条第3項ただし書に基づき、口頭で意見を述べる機会の付与する必要がないと認めた案件

条例第5条の規定は適用されないと考えられる表現活動

(理由)

審査会における調査審議を効率的に進める必要がある中で申出人に口頭での意見陳述の機会を設けることになるとそのための調査審議の期間等が必要となることを総合的に考慮した結果、申出人の権利・利益を保護する観点からの手続保障としては、まずは条例上必須とされている条例第9条第2項の規定に基づき意見書等を提出する機会を付与し、申出人から提出される意見書等の内容を踏まえた上で、申出人に同条第3項の規定に基づく口頭で意見を述べる機会を付与する必要性があるかどうかを改めて判断することとし、結果として、申出人から同項の規定に基づく申立てはされなかったため。

条例第9条第6項ただし書に基づいて審査会を公開で行った事例

インターネット上の投稿サイトを利用して行われるヘイトスピーチを行ったものの氏名又は名称に関する情報を当該投稿サイトの運営者から取得するために本市としてとりうる方策に関する調査審議

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