【第125号】乳幼児期からの性教育 その2 ふくち助産院 福地理子
2024年11月22日
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性教育は人権教育
性教育は人権教育と聞いて、皆さんピンときますか?「人権」や「権利」という言葉はあまり普段使わない言葉ですよね。でも、性教育は子どもの人権を大切にすることでもあります。
普段、私が助産師として赤ちゃんに接する際心がけていることは、赤ちゃんを「1人の人」として接すること。「こんにちは、初めまして。」と必ず挨拶することから始め、「体重測らせてくださいね。」と、何かするときは声をかけます。赤ちゃんにも当たり前ですが人権があり、それを大切にすることそのものが性教育なのです。
そして人はもともと「より快適に安心して生きたい!」という自尊心の高い状態で生まれてきます。性教育は知識を伝えていくことも大切ですが、そもそも子どもが本来持っている自尊心を大人が奪わないこと。それが、人が生まれながらにして持っている「人権」を尊重することでもあるのです。
「同意をとる」を親子間でも習慣に
子どもの頬やお尻をプニプニ触りたくなる、こちょこちょして笑わせたくなる。そう話す保護者の方がいます。
しかし、小学校の授業に行った際、「お父さんにチューされるのが嫌。だけど嫌って言ったらかわいそうだから言えない」と言う子どもの声を聞いたことがあります。
保護者が愛情表現と思っていても、子どもは「嫌だ」と思っていることもあります。それを表現できる子もいれば、保護者を傷つけまいと我慢している子もいるのです。自分がされて嫌だと感じることに「やめて」と言えることは、自分の体や心を守ることにつながります。
そこで提案です。親子間であっても「同意をとる」ことを家庭の中の習慣にしてみませんか?
「ハグしていい?」「こちょこちょしていい?」そう聞いてからにしてみましょう。
ちょっと難しい言葉ですが「性的同意」という言葉があります。これは「性的な行為をする際は必ず相手が同意しているか確認しなければいけない」ということです。2023年に刑法が改定され、「同意のない性的行為は処罰される」と明確化されました。性的な場面で同意をとることが大切なのはイメージしやすいと思います。しかし、それは大人になって一朝一夕でできるようになることではありません。幼い頃から身近な大人と「同意をとる」コミュニケーションを積み重ねることで身についていくスキルです。「自分と他者がしたいことは違うことがある」ということを前提に、お互いを大切にするために必要なことです。そしてそれは性的な関係に関わらず、あらゆる人間関係が安心安全であるために必要なことなのです。家庭という場が「同意をとる」練習の場になること、そして安心して「いいよ」「嫌だ」が表現できる場になるといいですね。
うちの子性器をよく触ってるけど、大丈夫?
排泄が自律していく幼児期は、性器や排泄物を身近に感じる時期です。「おしり!」「うんち!」と言って面白がっていることがあります。これらは子どもの成長に伴う自然な姿なので、「やめさせないと!」と躍起になる必要はありません。むしろ、からだの学習を始めるベストタイミングです。
からだの名前を覚えたり、排泄の仕方について伝えたりしていきましょう。その際に、絵本があると大人も話しやすいと思います。
また、幼児さんの行動でよく相談があるのが「性器タッチ」です。「なんとかやめさせないと!」「将来どうなっちゃうの?」と心配される方も多いかもしれません。しかし子どもが性器を触る行動は、リラックスや心地良さを求めて行なっている場合がほとんどです。二次性徴を迎える前の子どもに性的な欲求や興奮は起こりません。まずは、生理的に性器に皮膚炎などのトラブルがないかを確認し、なければ性器を触るのは「1人の時に、優しくね」というルールを伝えていくといいでしょう。子どもが性器を触っている様子にモヤモヤする方も多いと思いますが、自分の体ですので、本来触ってはいけない場所などありません。でも、一緒に暮らす周りの人の安心を守るためにもルールを伝えてあげると良いでしょう。
「男の子らしく」「女の子らしく」ではなく「自分らしく」
トランスジェンダーの方々に調査したアンケートで、自分の体に性別違和を抱く時期が小学校以前(就学前)だったと回答した人は56.9%、という結果があります。(1167人トランスジェンダー調査岡山大学大学院中塚研究室データ)。
小学校入学前に、性別違和を抱いている子どもたちがいるということです。
しかし普段の生活を振り返ると「男の子だから泣かない!」「女の子だから足閉じて!」など、「男の子らしく」「女の子らしく」を無意識に押し付けていることがないでしょうか。「男の子らしく」「女の子らしく」ではなく「自分らしく」を保護者としては応援したいところです。
とはいえ、ジェンダー平等が大切とは頭でわかっていても、我が子となると葛藤もあるかもしれません。我が子とはいえ別の人間ですので、子どもの感覚が理解できないことだってあるでしょう。それでも保護者としてできることは「どんな時も味方だよ」というメッセージを送ることではないでしょうか。
いかがだったでしょうか。
性や体について話せるオープンな雰囲気が家庭の中にあることは、何か困ったことがあった時に大人に相談しようと思えることにつながります。「相談できる人=教えてくれる人」です。子どもにとって、安心して相談できる大人でありたいですね。
そしてもちろん大人自身も困ったことや「どうしたらいいかわからない!」ということがあれば、専門家に相談してもいいのです。
以下相談先です。
・おおさか性と健康の相談センター caran-coronカランコロン
・性暴力救援センター 大阪SACHIKO
これならできるかも!と思えるヒントが少しでもあったら嬉しいです。
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