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【第128号】「子どもたちを事故から守るために」大阪大学大学院 人間科学研究科 特任研究員 岡 真裕美

2025年3月25日

ページ番号:649118

夫の救助死を経験して

「事故はゼロにはならないが、減らすことはできる」「知っていれば防げる事故がある」と、

私はいつも思っています。


私の夫は、2012年4月、府内の川で小中学生が溺れているところを目撃し、助けに入ったところ、2メートルの深みにはまって1人の中学生とともに亡くなってしまいました。
34歳、健康で水泳やダイビングの経験もある人でした。

住宅街を流れる市民の憩いの場である河川敷で起こった出来事に、多くの方が「この川がそんなに深いと思わなかった」と驚き、現場を見た同世代の夫の友人たちは「自分も同じ状況だったら助けに行っていただろう」と言いました。それくらい穏やかで浅く見える川でした。


もしあの時、現場の川に地上からは見えない深みがあることが周知されていたら、子どもたちも遊ばなかったかもしれない。
川に入る前に誰かが止めてくれたかもしれない…色々考えても、亡くなった命は帰ってきません。

その事故をきっかけに、周りを見渡せば、私たちの周りには防げる事故が数多くあることに気づきました。

特に子どもが関わる事故は、正しい知識を持って子どもが理解できるように教え、危険な行動をする子どもを見かければ注意するなどで予防できるものが多いのです。


“気を付けて”は通じていない⁈

私たちは毎日口癖のように子どもに「気を付けてね」と言っていますよね。

さて、子どもはそれを分かっているでしょうか?

(私はこの「気を付けて」は“I Love You”の変化形のようなものだと思っていて、出かける子どもにとりあえず言わないと気が済まない言葉じゃないかと思っています。)



私たち大人は、これまで経験したヒヤッとしたりハッとした(ヒヤリハット)ことや、ニュースなどで見聞きした情報から危険を予知して安全な行動をとることができます。
しかし、子どもは人生経験が浅く、大人に守られた世界で生きてきてヒヤリハット経験もあまりないため「状況を考えて危険を予知する」「“気を付けて”の意味を想像する」ことが苦手です。

小学校低学年ごろまでの子どもは「今が全て、自分が中心」の世界で生きています。

なんでもやってみたい、今すぐしたい、という衝動性も抑えることが難しい!

怖いものなしの大胆な行動に、周囲が肝を冷やすのも無理はありません。


また、5~6歳くらいまでの子どもの視野は左右・上下ともに大人の7割程度と言われています。
身長も違うので、大人には当たり前に見えている車やバイク、障害物なども、子どもの視界には入っていないこともあります。横断歩道の信号も、かなり上を向かないと目に入っていません。

子どもにとって見えないものは「無い」のと同じです。無い物には気を付けようがありませんよね。


魔の7歳


その現れでもあるのですが、日本の歩行中の交通事故の死傷者数(死者、ケガをした人両方の合計)は、6歳、7歳、8歳が全年齢の中で飛びぬけて多いです。
魔の7歳、と言われることもあります。
これまでは大人が常に一緒にいたのに、急に子どもだけの行動が増える小学校入学あたりで事故が起きています(4年生頃からは歩行中よりも自転車の事故が多くなります)。

小学校入学までに、通学路を一緒に歩いたり、危ない場所や交通ルールをぜひ教えてあげてください。もちろん入学後でもOKです。私も、我が子が小学3年生になろうかという時、「ママ、あの車が右に行くってなんで分かったん?」と聞かれびっくり!「今まで知らずに生きてたんだ!知ってて当たり前だと思って教えてなかった!」と気づき、急いで方向指示器について教えたことがあります。


私たちがよく言う「気を付けて」「注意しなさい」「よく見て」といった言葉は漠然としていて伝わっていないと思っていた方が良いでしょう。
「しっかりして」「ちゃんとして」は最たるもの。
「返事はいいけど言ったそばから危険なことをする」は子育てあるあるですよね。(さらにくわしくお知りになりたいときは拙著『子どもを全力で守る本』(いそっぶ社)をぜひご参考になさってください。)


私たちがお手本になる

では、大人は何を言っても無駄なのかと思うかもしれませんが、そうではありません。

でも、根気が大切です。子どもが今は理解できていなくても、いつか分かってくれると信じて、具体的に「この」場所で「何に」「どう」気を付けるか、安全な行動を教えてほしいのです。


例えば道路横断時に子どもに「よく見て渡りなさい」と言っていると思いますが、「どこ」まで見て、「どう」だったら渡っていいかということを日常の行動範囲を一緒に歩きながら教えるのが良いでしょう。
また、飛び出しをしてしまう子どもには、飛び出しをやめてほしいその場所で「ここで絶対に止まる!」と教えて、何があってもその場所で一旦止まることを習慣付けるのが効果的です。

危険予知して行動するのが苦手な年ごろの間は、安全の「型」の「習慣化」を目指しましょう!

と偉そうに言っている私も、自分の子育て中にできたかというと…ですが。

子どもの健やかな成長を願うのは皆同じです。

効果的な声掛けや、時間のある時に生活圏を一緒に歩いてみること、信号を守る、子どもは必ずチャイルドシートに乗せる、といったルールを大人が守っているお手本をぜひ見せてあげてください。



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