契約手続の透明性確保(第19-31-2号)
2023年7月31日
ページ番号:187779
大阪市公正職務審査委員会からの意見書(平成21年8月19日)
大阪市公正職務審査委員会から、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例第24条第1項の規定に基づき、大阪市水道局長に対して次のとおり意見を述べました。
平成18 年10 月20 日入札執行の「豊野浄水場粒状活性炭買入」競争入札に係る公益通報の中で問題とされている大阪市水道局の契約の遂行に関する業務の手続について、現時点での本委員会の見解を表明します。
なお、本件通報内容に関連したことで、現在、落札者A社と大阪市との間で裁判が行われています。
裁判所と比較して当委員会の調査及び審査には証拠収集の限界があり、事実関係を含めて違法・適法の判断は最終的には裁判所によるべきものと考えますが、本件通報は裁判となる前に申し立てられていることから、今後の業務遂行の改善のために提言を行うものです。
1 通報概要
平成18 年10 月20 日入札執行の「豊野浄水場粒状活性炭買入」競争入札において、A社と競合した他社が、A社の納入予定物品の品質・取引先等の情報を事前に知っていた。また、競合した他社が、当事者であるA社よりも先にサンプル検査結果を知っていた等、大阪市側から情報が漏洩していると思われる。
入札を競落した後、納品を行っていく過程において、検査手法・手続が、不公正な方法で行われた。
競合した他社の関係者が、A社と大阪市水道局との契約締結に不当な圧力を加えた。
2 事実経過
| 大阪市水道局の主張 | A社の主張 |
平成18年9月1日 | 物品納入業者募集を公示「豊野浄水場粒状活性炭買入」 納期:平成19年3月31日 | |
平成18年10月20日 | 入札執行 A社が落札 (契約金額214,725,000円)(税込) | |
平成18年11月7日 | サンプル①の提出 | |
平成18年12月1日 | サンプル①が検査で不合格(強熱残分)と判明。A社と連絡をとった。 | 不合格であったことは否認。大阪市水道局へ提出した分析結果報告書で明らかなようにサンプルは仕様書第4条の基準をすべて満たしている。また結果通知については平成19年1月16日に口頭で伝達を受けた。 |
平成18年12月8日 | 2日間に分けて、合計264立方メートルの粒状活性炭が仮搬入された。 | 2日間に分けて合計260立方メートルの粒状活性炭を搬入し、仕様書に基づく「仮置き」をした。 |
平成19年1月5日 | サンプル②の提出 | |
平成19年2月13日 | サンプル②の均等係数が不合格であることが判明 A社に連絡をとった。 | ― |
平成19年2月19日 | 均等係数が不合格の旨を伝えた。 | 均等係数が不合格であったと口頭で伝達された。ただし、不合格であることは否認 |
平成19年2月26日 | サンプル③の提出 | |
平成19年3月5日 | サンプル③の「ヨウ素吸着性能」が不合格であることが判明した。 | 不合格であることは否認 |
平成19年3月6日 | サンプル③の不合格を伝えた。 | 不合格の通知が口頭であったことは認める。 |
平成19年3月22日 | サンプル④の提出 | |
平成19年3月29日 | サンプル④の検査合格、電話連絡 | |
平成19年4月5日 4月6日 4月10日 | 粒状活性炭搬入 4月6日と10日に試料を抽出(サンプル⑤) | ― |
平成19年4月18日 | サンプル⑤の「ヨウ素吸着性能」が不合格 | 不合格を否認する。3月22日提出のサンプルと同一品を納入していると主張 |
平成19年4月25日 | サンプル⑤の不合格を通知した。 | 通知があったことは認めるが、「口頭」であった。解除については期限内に履行が可能であったので争う。 |
平成19年9月21日 | 豊野浄水場粒状活性炭の再入札公告 | |
平成19年11月9日 | 入札でB社が落札(契約金額243,318,870円)(税込) | |
平成20年9月24日 | 大阪市がA社に対し約795万円の違約金等支払請求訴訟を提起 | |
平成20年12月4日 | A社が大阪市に対し、約1億円の売買代金支払請求の反訴を提起 |
基準数値 | サンプル | サンプル | サンプル | サンプル | サンプル | |
強熱残分 | 10%以下 | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
均等係数 | 1.5以上 1.9以下 | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
ヨウ素吸着性能 | 1,000 mg/g 以上 | ○ | ○ | × | ○ | × |
上記以外の | ― | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
3 調査結果
(1) 水道局豊野浄水場で粒状活性炭買入を担当するある職員がA社との契約締結後(平成18年10月26日)にA社が扱う粒状活性炭の製造元、生産国、品質に関することをA社の競合他社に問い合わせていた事実が確認された。
(2) 検査結果の通知について、調査の範囲では口頭によるものが見られた。
(3) サンプル検査については、購入仕様書第7条第2号で、「詳細については別途本市係員の指示に従うこと」と記載されており、検査の方法や内容等については明確な記載はない。
(4) 水道局の行った5回のサンプル検査では4回が不合格となっており、このうち3回では異なる項目で不合格の数値が検出されているが、検査資料の残留分は廃棄されている。また、複数の検体の検査データを平均化する等の誤差を吸収する措置がサンプル①から③までの検査では講じられていなかった。
(5) 大阪市の職員が検査結果を競合他社に漏らした疑いがあるとの指摘については、調査の範囲では証拠収集の限界もあり、検査結果を漏らした職員の存在の有無は確認できなかった。
(6) 競合した他社の関係者が、A社と大阪市の契約に不当な圧力を加えてきたとの指摘については、調査の範囲では、大阪市職員の関与は確認できなかった。
4 提言
大阪市水道局においてより一層公正で透明性の高い契約手続を確保するため、下記の事項を提言します。
(1) 入札参加業者、製造業者の担当者等と職員が個人的に連絡を取り情報交換を行うことを禁止し、業務上必要な照会等は、組織として行うこと。
(2) 検査結果については、口頭ではなく文書による通知を徹底すること。
(3) 業者間の自由な競争や業務の効率的執行のために、納品・検査の手続や方法を契約書、購入仕様書等に明確化するよう努めること。
(4) 検査については、検査試料の残留物を保存するほか、複数検体の検査を行うなど、検査結果の信頼性を担保できる方法とすること。
(5) 検査結果に疑義が生じた場合に、落札業者の立会による再検査や第三者の検査機関に対して再検査を依頼するなど、検査結果を事後に検証できる手続を整備すること。
(6) 検査結果の信頼性をさらに高めるため、日本水道協会規格に基づく試験が実施できる他の検査機関の活用を検討されたい。
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