特別支援学校における不正な超過勤務(第22-01-129・23-01-120号)
2024年3月18日
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大阪市公正職務審査委員会からの勧告(平成24年2月3日)
大阪市公正職務審査委員会から、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例第9条第1項及び第2項の規定に基づき、大阪市教育長に対して勧告を行いました。
1 通報概要
大阪市立の一部の特別支援学校では、4~6年前ごろ、超勤実態がないにもかかわらず学校事務職員に対して超過勤務手当を支払うというヤミ超勤が行われていた。この不正の事実については当然管理職も知っており、その主導の下で行われていた。ある特別支援学校では、そのことに関して内部告発があったにもかかわらず、不正の事実が隠ぺいされてしまったと聞いている。また、その内容は、大阪市教育委員会の指導部にも伝えられていると聞くが、未だに何の調査も行われていない。現場の教職員にはコンプライアンスを求めながら、大阪市教育委員会や学校管理職がこのようなことでは、やる気がなくなる。
2 調査経過
本件については、概ね次のような調査を実施した。
(1) 平成22年11~12月、複数の特別支援学校の教頭及び教頭経験者に対してヒアリングを実施。
(2) 平成23年2~4月、(1)でヒアリングを行った者のうちの1名に対して、再度のヒアリングに応じるよう4度にわたって要請。
(3) 平成23年5月、(2)で要請した職員に対して、ヒアリングを実施。
(4) 平成23年6~8月、①結果的には(3)にあるようにヒアリングに応じたものの、(2)で要請した職員が、4度にわたるヒアリング要請に対して応答しなかったことについて何らかの措置を取る必要があるか、②本件通報に関する客観的な資料の入手方法、③同年7月に実施通知を行った「平成23年度定期監察(共通課題監察)」(超過勤務に関する適正な手続きについて)と本件公益通報に関する調査との関係等を検討。
(5) 平成23年9~10月、教育委員会事務局に対して、抽出した学校に関して出退勤の状況が分かる資料の提出を要請。
(6) 平成23年11~12月、教育委員会事務局に対して、「全高等学校及び特別支援学校の平成23年3月分の超過勤務の状況」(申請内容と出退勤の状況が分かるもの)について、資料提出を要請し、同年12月中に提出を受けた。同時に、抽出した高等学校・特別支援学校に対して、ヒアリングを実施するとともに、追加資料の提出を要請。
生野特別支援学校について、提出された書類に不整合部分が見られたため、学校事務職員(過去に勤務していた者を含む。)に対し、ヒアリングを6回にわたって実施。
(1)における調査の過程などにおいて、生野特別支援学校の件について、教育委員会事務局指導部(当時)に報告が行われていたのではないかという証言があったため、同局の担当職員(当時)に対して、ヒアリングを実施。
(7) 平成24年1月、生野特別支援学校の学校事務職員の証言内容に基づき、当時の教頭に対して、ヒアリングを実施。(6)の教育委員会事務局指導部の担当職員(当時)に対して、再度ヒアリングを実施。
3 調査結果
(1) 生野特別支援学校 学校事務職員の超過勤務の状況について
ア 出退勤の電子管理システム導入前の超過勤務の状況について
出退勤の電子管理システム導入前の超過勤務の状況(平成19~21年の6~8月分)について、抽出して調査を行った結果、当時在籍していた5名の学校事務職員のうち4名(A・B・C・D)について、出退勤に関する資料と学校事務職員が作成し、学校長が承認した「時間外勤務等命令簿」との間に齟齬が生じていることが認められた。
齟齬が生じていた学校事務職員のうち、現在大阪市に職員として在籍している者(A・B・C)及び調査資料においては齟齬が見られなかった者(E)を対象にヒアリングを行ったところ、概ね次のような証言があり、意図的であるか結果的であるかという認識には異なりがあるものの、職員A・B・Cは実勤務が伴わない部分についても超過勤務手当の申請をしていたことを認めている。なお、職員Aの「教頭から機械警備をセットするので早く帰るように言われて、事前申請していた時間より早く帰らされた」という主張については、当時の教頭(F・G・H)のうち、複数の者がそのようなことはなかったと否定しており、1名についてはそのような事もあったものの1~2回程度であったと話している。
(ア) 職員A
実勤務がない超勤申請はしていないが、昼休憩(45分)や(8時間を超える勤務の時に生じる)15分の休憩が取れなかったときに、その分を超過勤務として申請したことはある。それが悪いことであるという認識はなかった。他にも、教頭から機械警備をセットするので早く帰るように言われて、事前申請していた時刻より早く帰らされたこともある。そのような場合に、自分のミスで管理職に申し出て実時間に修正するのを忘れていた。
(出退勤の電子管理システムが導入された)平成22年度からはこのようなことはしていない。
(イ) 職員B
平成19年度当時は、早朝に出勤して仕事をした分や昼休憩などが取れなかった分を超過勤務という形で申請していたことはあるが、少なくとも(出退勤の電子管理システムが導入された)平成22年度からはそのようなことはしていない。生野特別支援学校に赴任してきた際に、このような形で超過勤務の申請の仕方をするように当時の同僚職員から言われたのは覚えているが、具体的に誰から言われたかについては覚えていない。
(ウ) 職員C
自分の(記載)ミスによって、実際に勤務した時間よりも遅い時刻まで超過勤務をしていたという内容で書いてしまったことがあるが、その程度・頻度・時期等については覚えていない。平成23年度現在についても、そのようなずれがないかと問われると自信はない。
出退勤に関する資料と申請した超過勤務の実績時間とに齟齬があるのであれば、その部分については、結果的に超過勤務の上乗せになってしまっているのだと思う。
全くのカラ残業という形での超勤申請はしていない。昼休憩(45分)や(8時間を超える勤務の時に生じる)15分の休憩が取れなかったときに、その分を超過勤務として申請することはいけないことであるということは、学校事務職員は皆知っているはずであり、やっていない。
(エ) 職員E
実勤務がないのに超過勤務手当を申請したことは記憶にある限りではないが、数年前のことではあるし、勘違いや記憶違い、記載ミスによって、多少実時間と申請時間がずれてしまったことがなかったとは言えない。他の人の超過勤務の内容や超過勤務の申請時間等がどのような状態であったかは把握していないが、少なくとも自分に関して言えば、実際の超過勤務の実績に基づいて、超過勤務手当の申請を行っていた。早くに出勤してくることが多いので、勤務時間前に保護者等からの問い合わせの電話をとったり、昼の一斉休憩時に、休憩を取らずに仕事をしたりということは過去に何度もあったが、そういう時間も超過勤務としては申請していない。
また、学校事務職員らに対する数回にわたるヒアリングにおいて、「当時の学校長から平成21年の夏ごろ『超過勤務について、内部告発が行われたため、今後はちゃんとした方が良い』といった指示がなされた」との発言や、「古くから在籍していた事務職員(A・B・C・D)については、お互いに超過勤務の水増しをやっていることを認識していたが、平成21年度に事務職員の中で話し合ってそのような手法を止めることにした」、「最近になって赴任してきた学校事務職員については、そのような水増しが行われてきたこと自体知らないと思う」といった発言もあった。
イ 出退勤の電子管理システム導入後の超過勤務の状況について
平成23年12月に資料提出を受けた時点では修正が行われていたものの、平成23年3月分の超過勤務についても、当初命令簿が作成された時点では、複数の日について、職員A・Cの退勤打刻と超過勤務実績時間との間に不整合が見られた。
(2) 生野特別支援学校 学校事務職員の無許可早退について
職員Cはヒアリングにおいて、勤務終了時刻になるまでに手続をとらず早退してしまったことについて、「日付までは覚えていないが、否定しきれない」等と一部自認することを窺わせる発言があった。
(3) 生野特別支援学校 出張に関する手続の懈怠について
職員Aはヒアリングにおいて、郵便局に入金や郵便物の投函に行く場合には出張申請等の手続をとっていないことを認めている。また、そのヒアリングに同席していた学校長についても、そのことを容認する旨の発言があった。
(4) 生野特別支援学校 学校事務職員の自動車通勤について
後述する教育委員会事務局職員(当時)に対するヒアリング等において、生野特別支援学校の学校事務職員Cが許可を得ず自動車通勤を行っていた旨の告発があった等の発言もあったため、当該職員については、自動車通勤に関するヒアリングも併せて実施した。
そのヒアリングにおいて職員Cは、生野特別支援学校に赴任してからは、自動車通勤は行っていないものの、前任校に勤務していた際には、許可を得ずに自動車通勤をしていたことがあることを認めた。
(5) 教育委員会事務局の対応について
生野特別支援学校における学校事務職員の超過勤務について調査を行っていく過程において、当時、教育委員会事務局指導部に対して、勤務する学校における学校事務職員の超過勤務に不正な実態があるという報告が行われていたのではないかという証言等もあったため、当時の教頭(F・G・H)及び教育委員会事務局指導部(当時)の職員(I・J・K)に対してヒアリングを行った。
当時の教頭(F・G・H)に対するヒアリングにおいて、複数の者が「何らかの形で、超過勤務に関して不正が行われていることが教育委員会事務局指導部に対して報告されていた」旨を証言しているものの、職員I・J・Kに対するヒアリングにおいては、「超過勤務の命令・認定について疑問を呈せられたことがあったため、直接の管理責任者である校長に伝えた」こと等はあったものの、「不正があるという具体性を持った告発を受けた記憶はない」としており、主張に隔たりがみられた。具体的な物証等もない現状において、調査の範囲では、当時の教育委員会事務局の職員らが内部告発を放置したとまでの認定はできなかった。
(6) 生野特別支援学校以外の学校の状況について
生野特別支援学校以外の特別支援学校及び高等学校の過去の超過勤務の状況については、現在もなお調査を継続しているが、平成23年3月分について泉尾工業高等学校で1名(当該職員は、平成23年6月8日に、別件の横領事件によって懲戒免職となっている。)の超過勤務について問題があった他には、事務処理上の誤りや誤解に基づくと思われるものは散見されるものの、現時点で大きな問題は見受けられなかった。
(7) その他
生野特別支援学校の教頭(現職)から、「学校(生野特別支援学校)として、できることやるべきことがあるならば、教えてほしい。対応していきたい。」等の申し出が再三にわたって監察部に寄せられるなど、問題点が把握された後について自主的に改善を図ろうという動きも見られている。
4 判 断
以上の調査結果をもとに、検討を行ったところ、次のとおり判断するに至った。
(1) いわゆる「まとめづけ」について
職員A・Bの証言にあるような「昼休憩(45分)や(8時間を超える勤務の時に生じる)15分の休憩が取れなかったときに、その分を超過勤務として申請する」ことについては、大阪市において過去に幾度も問題となっており、互助連合会給付金等調査委員会からの平成17年8月26日付けの報告書においても「超過勤務の『集中日』を正当化する説明に、主として窓口業務を抱える職場においては恒常的な短時間の超過勤務が存在しており、それを合計すると1~2時間になるというものがある」が、短時間超過勤務の「積み上げ」については有効性を否定されており、「このような短時間超過勤務の存在は、長く言われておりながら実証されたことがない。根拠とされるのは当該職員の供述のみである。ヤミ手当訴訟においても、10分あるいは15分の超過勤務の積み重ねが月4~5時間に達するとの主張があったが、それへの疑問は大阪地裁の判決も述べているところであり、信用し難い。」旨が述べられているものであり、明らかに不適正であって、容認することはできない。また、複数の学校事務職員らが「まとめづけ」を行っていたことを認める証言をしていることからも、少なくとも生野特別支援学校については、現在判明しているもの以外にも、超過勤務に関して不正な請求が行われていたものと思われる。「まとめづけ」のような行為が、いまだに行われていたことからすると、生野特別支援学校については、超過勤務命令に関するチェック体制が機能していない状態にあったものと言わざるを得ない。
なお、超過勤務において「まとめづけ」のような不適正な処理が行われていた要因としては、当時は出退勤の電子管理システムが導入されていなかったことや、超過勤務の申請について、電子管理システムとの連携等による出勤・退勤時刻の裏付けが必要とされていなかったこと等も挙げられるものと考える。
(2) 超過勤務の不正への組織的関与の疑いについて
当時在籍していた5名の学校事務職員のうち少なくとも3名の職員が、不適正な超過勤務の申請を行っていたという状況や、職員の証言等からも、学校事務職員間で超過勤務において不正を働くことについて、共謀又は少なくとも相互に容認していた可能性は排除できない。また、学校長は命令権者であることから、超過勤務の認定に当たっては、その内容を精査することが求められているところであり、このような実態が少なくとも数年に渡って放置されてきたことについては重大な責任がある。
さらに、本件事案においては、複数の立場の異なる職員らの証言等からも、学校長自身が学校事務職員の超過勤務において不正が行われていたことを知りながら、黙認又は助長していた可能性も排除できない。
(3) 教育委員会事務局の対応について
先にも述べたように、具体的な物証等もない現状において、当時の教育委員会事務局指導部の職員らが内部告発を放置したとまでの認定はできなかった。
しかし、教育委員会事務局指導部が、具体性はないまでも、学校における超過勤務について、命令や認定が不適当だという指摘を受けている中で、超過勤務命令等の命令権者・認定権者である学校長に対して、その内容を直接伝えたのであれば、調査・指導のあり方としては不適切な処置であったと考える。
(4) その他
具体的にどの程度の頻度で、どの時期に行われていたのかという証言までは得られなかったものの、一部の学校事務職員が無許可早退を行っていたことや出張に関する手続を恒常的に行っていないと思われる発言があったことについても、問題であると考える。
5 勧 告
以上の判断に基づき、次のとおり勧告する。
(1) 生野特別支援学校を含む、全ての大阪市立の高等学校及び特別支援学校について、資料の残存している限り過去に遡って、「まとめづけ」が行われていなかったかどうかも含め、超過勤務の内容等について再度精査すること。
なお、その際に「まとめづけ」が行われていた学校については、超過勤務の実態の認定に当たって疎明資料を求めるなど、必要な措置をとること。
(2) (1)の調査において、不正が判明した場合については、命令権者である学校長が当該超過勤務命令の命令・認定について必要な注意を払っていたかどうか等についても検証し、関係者から超過勤務手当を返還させる等、必要な措置を講じること。
(3) 全ての大阪市立の高等学校及び特別支援学校において、無許可早退が行われていなかったか否かについて調査を実施し、無許可早退が明らかになった際には、必要な措置をとること。
(4) 出張命令について、定められた手続に則って適正に処理が行われるよう管理者も含めて周知徹底を図ること。
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終結宣言(平成24年12月20日)
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