公益通報関連情報の違法な取扱い(第23-01-3号)
2024年3月18日
ページ番号:187938
大阪市公正職務審査委員会からの勧告(平成23年7月26日)
1 通報概要
市民局のある課長(以下「当該課長」という。)は、大阪市公正職務審査委員会(以下「委員会」という。)による平成22年9月3日付け「公益通報(第21-01-163号)の対応について(勧告)」(以下「当該勧告」という。)に関して、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例(以下「条例」という。)第17条に明白に違反した文書(以下「本件文書」という。)を、本件の通報者に対して平成23年3月17日付けで交付した。
また、本件文書において、当該勧告に対する調査報告がまとまり次第、通報者に対して情報提供するとしており、公益通報に係る情報について、事件の処理が終了する前の公開を禁じた条例の規定を大幅に逸脱している。
さらに、本件の通報者は、平成23年3月25日付けで、不存在による非公開決定に対する異議申立書(以下「当該異議申立書」という。)を提出した際に、当該課長が条例第17条に明白に違反している旨も記載しており、これを受理した情報公開室監察部公正職務担当(以下「公正職務担当」という。)の職員(以下「当該職員」という。)は、当該課長の条例違反に気付けるはずである。それにもかかわらず、漫然と見過ごしているのであれば、当該職員についても問題である。
2 調査結果
(1)大阪市の公益通報制度の概要、改正の経緯について
大阪市の公益通報制度は、平成18年2月に策定された「市政改革基本方針」の3つの柱のひとつである「コンプライアンス改革」の取組みとして、平成18年4月1日に条例が施行され発足した。制度の運用に当たっては、通報者や調査協力者及び関係者の利益の保護を重視するとともに、外部からのあらゆる圧力等が排除された環境を用意し、その環境下で、外部委員3名で構成され独立性が確保された委員会が、何人からも介入されずに、公平・公正な審議を行うことにより審議結果の客観性を担保している。
公益通報に関する情報の取扱いについては、制度運用当初は、委員会が是正措置等の勧告を行った場合でも、それは、大阪市の機関が勧告で求められた是正等の対応に着手した段階であって、事件の処理が終了したことを意味しないので、条例第17条により公開できないことになっていた。
しかし、勧告内容等を積極的に公表することにより、類似事例の是正や再発防止を図る効果が見込めるものもあることから、委員会が必要と認めるものについては、処理が終了する前においても勧告内容を公表することができる旨の条例改正が平成19年2月に行われ、同年4月に施行された。
また、平成20年4月からは、公益通報制度の所管部署を、総務局(法務監察室)から情報公開室(監察部)に移管する組織改正がなされたが、その組織改正を審議した同年2月の市会においても独立性の確保が重視されており、その組織改正に関する条例(大阪市事務分掌条例の一部を改正する条例)案に関して、「委員会が市長とは独立した立場で不正をチェックする重要な外部監視機関であることに十分留意し、情報公開室の運営に当たっては、事務局の移管により、こうした委員会の独立性や機能がいささかも損なわれることのないよう万全を期すとともに、現体制よりさらなる機能の向上を図るべき」との附帯決議が付されている。
(2)当該勧告について
当該勧告は、区長が地域団体との旅行に公務出張で参加していた件について、各区長が参加した旅行に係る出張命令について違法な部分を確定し、当該出張命令部分に係る区長の給与(出張旅費及び日当が支給されている場合はこれらを含む。)を算定のうえ、旅行に参加した区長から自主的に大阪市に返還するよう求めること、地域団体との旅行のあり方を見直し、区長その他区役所職員の公務員倫理及び服務規律の確保を図ることを、平成22年9月3日付けで市長(市民局等)に対して勧告したものである。また、この勧告に対する措置(自主返還)については、6か月以内に委員会に対して報告するよう市長に対して勧告している。
ちなみに、勧告に対する措置報告の期限については、勧告時に委員会が設定する場合があるが、それに対して、大阪市の機関が、①その期限を順守し措置状況を報告するケース、②正当な理由なく期限内に対応しないケース、③適切に対応していても、事案複雑、措置件数の多さ等から、結果的に期限が守れないケースなどが考えられる。期限を順守することは当然のことであるが、もし①期限内に大阪市の機関から措置状況の報告書が提出されたとしても、委員会での審議は、その提出後にも行われることになるし、また審議の結果、その内容が不十分であるとして追加の措置を求める場合もあるため、期限内に事件の処理が終了することが当然に予定されているものではない。
また、②、③のケースについては、期限内に措置状況の報告書が提出されず、いずれも勧告に従わない状況が生じているところ、条例第9条第4項は、「市長は、本市の機関が正当な理由なく第1項又は第2項の規定による勧告に従わないときは、委員会の申出に基づき、その旨を公表するものとする。」と規定している。
その場合、②のケースについては当然であるが、③のケースについても委員会がそのことに正当な理由がないと認める場合は、委員会の裁量により、当該公表の申出を行うこととしている。
いずれにしても、勧告内容を公表することにより委員会の審議は終了するものではなく、その後の大阪市の機関の対応及びこれに対する委員会の対応には様々なケースが想定され、委員会が事件の処理が終了したことを宣言するまでは、委員会の独立性を確保し、審議結果の客観性を担保する必要性は依然として存在している。
(3)本件文書について
本件文書は、平成23年3月2日にあった本件の通報者からの電話による問い合わせに対する回答として、市民局の担当課が、同月17日付けで当該課長名で作成し、本件の通報者に対して交付したものである。
その問い合わせの内容とは、当該勧告に係る措置の進捗状況及び措置の内容に関するものであり、具体的には、①調査報告が勧告にある6か月以内にできていない理由、②調査報告ができる目途、③調査報告の内容について情報の提供を受けるにあたり公開請求の手続きが必要かどうか、の3点である。
本件文書の回答内容には、本件の通報者の指摘にあるように、①調査対象件数が540件と多く、行程等についても多岐にわたっていることなど、調査の進捗状況や勧告を受けて行っている調査の内容を一部記述しているとともに、②調査期間を2か月程度延長したいと考えていること、③調査報告がまとまり次第、情報提供する旨の記述も見受けられる。
(4)当該異議申立書について
本件の通報者は、上記電話による問い合わせ後、市長に対して、「公正職務担当で保有する、当該勧告に対する市民局からの報告書の公開を求める」旨の公開請求を平成23年3月7日付けで行っている。
この請求に対し、公正職務担当は、「公正職務担当が、請求日現在、現に当該報告書を取得していたか否かについて相手方に表明することは、当該勧告文から当然伺い知れることであるため」との考えから、当該報告書を取得しておらず存在しない旨の理由を付して、市長名で、不存在による非公開決定通知書を同月18日付けで通報者に対して発出している。
この不存在による非公開決定に対して、本件の通報者から同月25日付けで当該異議申立書が提出され、大阪市は、同日に収受しており、その中で、本件文書の内容が条例第17条に違反している旨の指摘があった。
(5)公正職務担当の対応について
公正職務担当では、当該異議申立書を収受し、当該異議申立への対応を優先させつつ、当該異議申立書の指摘により、本件文書が条例第17条に違反するかどうかについても、条例所管部署として検討を行っていた最中の平成23年4月5日に、本件の通報者から、「当該文書が条例第17条違反であり、当該職員がこれを知りながら適切な処置もせず漫然と見過ごしているのであれば問題である」とした本件公益通報がなされた。
なお、公正職務担当は、従来から、条例及び事務取扱要領等により、公益通報に関する情報の取扱いについて、大阪市の各所属に対して、注意喚起を行っている。
3 判断
以上の調査結果をもとに、検討を行ったところ、次のとおり判断するに至った。
(1)本件文書について
ア 公益通報に係る情報の取扱い
条例第17条第1項は、公益通報に係る情報の取扱いについて、事件の処理が終了するまでは、当該公益通報の有無及び内容等に関する情報は、同項ただし書に該当する場合を除き、公開してはならないとしている。
この理由は前述したように、①公益通報に係る処理が終了する前にその内容等を公開すれば、外部からの圧力等により、委員会での審議の公平性・公正性が損なわれるおそれがあるため、審議の公平性・公正性の確保を図ること、また、②通報者や調査協力者が特定されたり、事実に基づかない内容である場合には、通報者、調査協力者及びその他の関係者に不利益が生じるおそれがあるため、通報者、調査協力者及び関係者を保護する必要があることの2点である。
しかしながら、公益通報への対応として、委員会が是正措置等の勧告を行う場合、事件の処理が終了していないものの、勧告の元となる調査は終了し、事実関係については一定確認しているため、勧告内容等を積極的に公表することで、類似事例の是正や再発防止を図る効果が見込めるものもあることから、例外的に、委員会が必要と認めるものについては、処理が終了する前においても、市長に申し出て勧告内容を公表することができることとなっている。
しかし、勧告が公表された場合であっても、それは、大阪市の機関が勧告で求められた是正等の対応に着手した段階にすぎず、事件の処理が終了したことを意味しないことも前述のとおりである。大阪市の機関がその勧告で必要とされた措置を終了し、委員会がその勧告の元となった公益通報の処理が終了した旨大阪市の機関に通知するまでは、当該公益通報のうち、その勧告によって公表された情報以外の情報については、依然として条例第17条第1項の適用を受けることとなることは文理上明らかである。
なお、公益通報に係る処理の終了の前後に関わらず、通報者を含めた関係者の正当な権利利益を不当に侵害することのないようにすることは、当然である(条例第17条第3項等)。
すでに「2 調査結果」でも述べたとおり、大阪市の公益通報制度は、外部からのあらゆる圧力等が排除された環境を用意し、その環境下で、外部委員により構成され独立性が確保された委員会が、何人からも介入されずに、公平・公正な審議を行うことを重視し、その中で、審議結果の客観性を担保している。
その趣旨からすると、公益通報に係る事件の処理が終了するまでの間、公益通報の内容等は原則非公開とし、その例外については条例で認められた範囲に厳しく制限されるべきものである。
つまり、勧告の公表について言えば、類似事例の是正や再発防止を図る効果が認められるという限定された目的の下でのみ公表されるもの(条例第9条第6項)であり、勧告後の措置状況、審議の進捗に関する情報は、条例で公表することができるものと認められた範囲にあてはまらず、審議の公平性・公正性の確保の観点から、依然として非公開となるのは当然である。
イ 本件文書に対する判断
本件文書については、その中に、市民局が実施している調査対象件数や調査期間の延長についての記述がある。これらは、通報処理における調査の内容や進捗状況に関する情報を明らかにするものであって、条例第17条第1項に違反しており、容認できないものである。
また、条例上、勧告を受けた大阪市の機関の判断で勧告の内容である調査期間を延長することができる旨の規定はない。大阪市の機関が調査措置期間も含めて正当な理由なく勧告に従っていないかどうかは条例第9条第4項による申出の前提として本委員会に判断が委ねられていると思料される。
(2)公正職務担当の対応について
当該職員は、通報者からの当該異議申立書を収受して以降、①当該異議申立の対応を優先させつつ、本件文書の内容が条例第17条違反かどうか等を検討していたことが認められ、②文書受領から本件公益通報を受け付けた平成23年4月5日までは10日間程度しかないこと等に照らすと、本件通報者が指摘するように、公正職務担当が適切な処置もせず、漫然と見過ごしていたとまでは認定できない。
しかしながら、本件事案が発生したことから考えても、条例第17条の解釈や勧告の期限順守について、各所属において十分に理解が浸透していないものと思われる現状からすると、条例所管部署である公正職務担当としては、条例第17条の解釈や勧告の期限順守について、再度各所属に周知し徹底させる必要がある。
なお、本件通報に関し、公正職務担当は、「不存在による非公開決定通知書の処分理由において、措置状況報告書を取得していたか否かについて表明したことは、当該勧告文から当然伺い知れることであるため」と主張しているが、同表明は、委員会での審議の状況に関する情報を示していることにほかならず、上記(1)イと同様に、条例第17条第1項に違反していると言わざるを得ない。
(3)その他
これまで述べたとおり、現行の条例では、大阪市の機関が勧告で求められた対応を終了し、委員会が勧告の元となる公益通報の処理の終了を大阪市の機関に通知するまでの間は、当該公益通報に関し、その勧告によって公表された情報以外の情報については、一切公表することはできないと解するのが相当である。
そのため、勧告後の措置の進捗状況等についての市民等からの問い合わせに対して、「調査の進捗状況」や「措置状況報告書の有無」等を答えることは、公益通報に係る処理の進捗状況・調査内容を公表することになり、「公益通報に係る事件の処理が終了するまでは」「公益通報の・・・内容・・・に関する情報」の公開を禁じた条例第17条第1項に違反することになるため許されない。
また、当該公益通報の処理が終了するまでの間に、このような情報の公開請求があった場合は、大阪市情報公開条例第9条の規定に基づく公開請求拒否決定を行うほかないと考える。
そして、これまで述べてきた条例第17条第1項の趣旨に照らせば、公開請求の対象となる文書の存否が知れるだけでも、調査の進捗状況については推認できると考えられるのであるから、例えば、公開請求された調査資料や報告資料の中に、他の公開決定などにより既に公開又は公表されている部分が含まれていたとしても、その存否を明らかにすることにより調査の進捗状況を推認させることになるから、それらを部分的に公開決定できるというものでもないことを念のため付け加える。
4 勧告
上記判断に基づき、次のとおり勧告を行う。なお、この勧告の日から3か月以内に必要な措置を完了し、本委員会へ措置状況を報告すること。
(1)市民局長は、本件事案に関する再発防止措置を策定し、実施すること。
(2)情報公開室長は、条例所管部署として、条例第17条の解釈及び公益通報に係る情報の取扱い(通報案件に関して情報公開請求された場合の対応を含む。)について、全所属に対する周知を再度徹底すること。
(3)各局・室・区の長は、所属する全職員に対して、本件事案を踏まえた公益通報制度(特に条例第17条の解釈等)に関する説明及び周知を行うこと。
(付 記)
先にも述べたように、「2 調査結果(2)当該勧告について③」の中には適切に対応していても結果的に期限を順守できないことに正当な理由があると考えられるケースも想定でき、このような場合については、勧告に対する措置の進捗状況に関心を寄せている市民に対する説明責任の観点から、勧告をした案件のその後の経過等については、審議結果の客観性を担保できることを最優先としつつ、一定の配慮のもとに、説明責任を果たす効果が見込める範囲の必要な情報については公表することができるように、条例改正をすることも今後の課題として検討されたい。
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