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連合地域振興町会等の補助金等の返還(第20-01-284号)

2023年7月31日

ページ番号:187960

大阪市公正職務審査委員会からの勧告(平成22年9月3日)

 大阪市公正職務審査委員会から、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例第9条第1項の規定に基づき、大阪市長に対して勧告を行いました。

1 通報概要

 以下の補助金又は委託料の支出について、精算報告書に架空の領収書又は補助対象外支出、業務委託契約違反の備品購入等が判明しながら、市長(専決権を有する所管局・区の補助職員)は、補助金又は委託料の交付決定の取消し及び返還請求を違法に怠り、大阪市に損害を与えたので、その是正を求める。

 ① 住之江区住吉川連合地域振興町会(以下「住吉川連合」という。)は、平成19年度の地域振興活動補助事業実績報告書に補助対象事業として計上したお茶購入費11,600円について、実在しない会社名義の領収書を作成し、添付した。住之江区長は住民監査請求に係る調査でこの事実が明らかになったにもかかわらず、黙認し、補助金の返還請求等必要な措置を取っていない。

 ② 住之江区住吉川地域社会福祉協議会(以下「住吉川地域社協」という。)は、平成19年度の地域福祉活動推進事業報告書に補助対象事業として計上したお茶購入費28,960円について、実在しない会社名義の領収書を作成し、添付した。健康福祉局長はこの事実が明らかになったにもかかわらず、黙認し、補助金の返還請求等必要な措置を取っていない。

 ③ 住之江区住吉川社会福祉会館老人憩の家(以下「西部老人憩の家」という。)運営委員会が提出した平成19年度老人憩の家運営補助金実績報告書に記載・添付された障子代117,991円は、住之江区住吉川東部社会福祉会館老人憩の家(以下「東部老人憩の家」という。)に併設された地域集会所部分の障子の購入費用であることが、住民監査請求に係る調査で判明したにもかかわらず、健康福祉局長はこれを黙認し、西部老人憩の家運営委員会に交付された同年度の運営補助金438,000円の返還請求等必要な措置を取っていない。

 ④ 住之江区住吉川小学校区教育協議会(以下「住吉川はぐくみネット」という。)は、「小学校区教育協議会―はぐくみネット―」事業委託契約書等で禁止されていた委託料での備品購入(ノートパソコン84,800円、たい焼き機39,500円)を平成19年度に行っていた事実が住民監査請求に係る調査で判明したが、住之江区長はこれを黙認し、委託料の返還請求等必要な措置を取っていない。

2 調査結果

(1) 住吉川連合の平成19年度の地域振興活動補助事業実績報告書について

 地域振興活動補助金は、平成19年6月12日に施行された大阪市地域振興活動補助金交付要綱に基づき交付されている。
 住吉川連合は、大阪市立住吉川小学校区内の地域振興町会(概ね町(丁目)の区域をもって構成)の連合体である。
 平成19年度に住吉川連合に交付された地域振興活動補助金の実績は、583,200円である。
 通報のあったお茶購入費(補助対象事業として認定されていた)は、「阪南PR社」が平成19年9月23日にお茶代として領収した旨の11,600円の領収書を根拠とするものであったが、住民監査請求に係る調査において、実在しない会社からの領収書(以下「架空領収書」という。)の写しとして提出を受けていたことが判明した。
 実際には、住吉川連合女性部長経営の果物店が購入したものを大型冷蔵庫で保管し、地域振興活動に提供したものであった。

 

(2) 住吉川地域社協の平成19年度の地域福祉活動推進事業報告書について

 地域福祉活動推進事業補助金は、平成19年3月20日に施行された大阪市地域福祉活動推進事業補助金交付要綱に基づき交付されている。
 住吉川地域社協は、概ね大阪市立住吉川小学校区内を単位とする地域社会福祉協議会である。
 平成19年度に住吉川地域社協に交付された地域福祉活動推進事業補助金の実績は、218,000円である。
 この平成19年度地域福祉活動推進事業補助金収支精算報告書、歳出明細書及び添付された領収書を確認したところ、同事業の補助対象事業として支出されていたのは、「ふれあいサンデーポスター印刷代」と「ふれあい喫茶会館使用料」のみであり、通報のあったお茶購入費は含まれていなかった。
 平成19年度から地域福祉活動推進事業に統合された旧の地域ネットワーク委員会活動補助金の収支精算報告書等を確認した結果も同様であった。
 したがって、通報のあったお茶購入費(「阪南PR社」が平成19年4月2日にさくらカーニバルお茶代として領収した旨の28,960円)は、大阪市の補助事業の対象外(住吉川地域社協の独自財源による自主事業)であったと考えられる。

 

(3) 西部老人憩の家運営委員会の平成19年度老人憩の家運営補助金実績報告書について

 老人憩の家運営補助金は、平成19年4月1日に施行された大阪市老人憩の家運営補助金交付要綱に基づき交付されている。
 西部老人憩の家の運営主体は、西部老人憩の家運営委員会である。
 平成19年度に西部老人憩の家運営委員会に交付された老人憩の家運営補助金は、438,000円である。
 通報のあった障子代(補助対象事業として認定されていた)は、東部老人憩の家に併設された地域集会所部分の障子購入代金を、当該地域集会所部分のものであることを失念していた点とさらに別会計である東部老人憩の家と西部老人憩の家の会計間の誤りが重なったものであったと健康福祉局は判断している。

 

(4) 住吉川はぐくみネットの委託料で購入した備品の処理について

 「小学校区教育協議会―はぐくみネット―」事業は、平成18年度までは教育委員会が実施していたが、平成19年度からは、各区長に権限が移管された。
 平成19年4月1日付けで、住之江区長と住吉川はぐくみネット委員長との間で、「小学校区教育協議会―はぐくみネット―」事業委託契約書(以下「本件委託契約書」という。)が締結されており、住之江区長から住吉川はぐくみネット委員長に委託料200,000円が支出されている。
 当該委託事業においては、委託料による2万円以上の備品購入は不可と文書で明示していたが、平成20年3月27日付けで住吉川はぐくみネット委員長から住之江区長に提出された委託経費精算報告書により、ノートパソコン(本委員会で確認したところ、デスクトップ型パソコンであったので、以下「デスクトップ型パソコン」と表記する。)84,800円、たい焼き機39,500円が購入されていたことが判明した。
 住之江区長は、備品という性質上その所有を明確にする必要があると考え、これらの所有権を大阪市に帰属させて、大阪市の財産として備品登録の手続を行った。

3 判断

(1) 住吉川連合の平成19年度の地域振興活動補助事業実績報告書について

 売買代金の領収書は、「権利、義務又は事実証明に関する文書」であるから、住吉川連合の役員が経営する果物店が、その名義人を偽って領収書を作成し、代金を受領することは、私文書偽造・同行使罪にも該当しかねない悪質な行為である。
 また、住吉川連合が、架空領収書を添付した事業実績報告書を住之江区長に提出した行為も悪質といわざるを得ない。
 公金を支出している以上、地域団体であったとしても、例外ではない。
 架空領収書を添付した事業実績報告書については虚偽報告であるから、市長の権限を専決処分する住之江区長は、要綱第10条第1項に基づき、平成19年度に住吉川連合に交付された地域振興活動補助金583,200円の全部について、補助金交付決定を取り消し、返還請求を行う必要がある。
 なお、架空領収書に係るお茶購入費を除いても補助対象総額が補助対象額の上限を超えているので大阪市に損害が生じていないとする損害論は、申請や精算行為の瑕疵が単なる手続的なミスや思い違いによるミスなど軽微な違反に留まる場合に適用される理論であり、本件のような重大かつ悪質な違法行為により、全体が違法性を帯びる場合には適用されない。
 また、市民感情からしても、架空領収書まで作成しながら、補助限度額を超える支出があったから返還を求めず、これを追認するということは、到底容認できるものではない。大阪市がこのような対応を続けるならば、補助事業者の法令遵守意識を希薄にし、さらに不正な補助金等の交付申請、精算行為を助長するおそれがあり、厳正に対処すべきである。

 

(2) 住吉川地域社協の平成19年度の地域福祉活動推進事業報告書について

 2⑵で認定したとおり、通報のあったお茶購入費(「阪南PR社」が平成19年4月2日にさくらカーニバルお茶代として領収した旨の28,960円)は、大阪市の補助事業の対象外(住吉川地域社協の独自財源による自主事業)であったので、補助金交付決定の取消等の問題は生じない。

 

(3) 西部老人憩の家運営委員会の平成19年度老人憩の家運営補助金実績報告書について

 健康福祉局からの報告によれば、通報のあった障子代117,991円(補助対象事業として認定されていた)は、東部老人憩の家に併設された地域集会所部分の障子購入代金であったが、当該地域集会所部分のものであることを失念していた点と、さらに別会計である東部老人憩の家と西部老人憩の家の会計間の誤りが重なったものであったとされている。
 しかしながら、施設を日常的に使用している地元の運営委員会の構成員が、東部老人憩の家とは別の施設である地域集会所部分の障子を取り替える必要性を判断し、業者に発注し、納品を確認しているのであるから、平成20年4月15日付の西部老人憩の家の実績報告書の作成に際し、当該障子が東部老人憩の家に併設された地域集会所部分のものであることを失念していたとの弁解には疑問がある。仮に失念していたとしても、少くとも業者からは実際に納入した地域集会所部分としての正しい領収証が発行される筈であり、領収証と照合すれば間違いが起こることは通常ありえない。しかし、障子を納入した業者からも、今回の会計処理に沿う形で納入してもいない西部老人憩の家宛の領収証が提出されているのである。発注者と納入者が共に納入場所と発注者を間違うことは通常ありえない。しかも、東部老人憩の家と西部老人憩の家は、場所的・空間的に離れた別の施設であり、両会計を誤ることも現実的には考えにくい。これらの事実に照らすと本件会計処理を失念と単純な会計の誤りが重なったものと判断することは不可能である。
 本件の場合、証拠収集の限界もあり、西部老人憩の家運営委員会が健康福祉局長の審査を欺くために意図的に虚偽の事業実績報告書を提出したとまで認めることはできないが、一方で、事業実績報告書に添付された領収証の記載等からも市民局所管の地域集会所については運営補助金がないことから、西部老人憩の家運営補助金を流用して、東部老人憩の家に併設された地域集会所部分の障子新調を行った可能性も否定できない。
 いずれにしても、通報のあった障子代は、地域集会所部分のものであって、老人憩の家運営補助金の目的外使用であることは明白である。
 したがって、市長の権限を専決処分する健康福祉局長は、要綱第16条第1項第3号に基づき、平成19年度の西部老人憩の家運営補助金交付決定の一部を取り消し、目的外に使用された障子代相当額117,991円の返還請求をする必要がある。
 なお、健康福祉局長は、西部老人憩の家運営委員会に対し、当初記載のなかった光熱水費179,492円を事業実績報告書に記入の上再提出させた結果、補助対象総額が補助対象額の上限を超えているので、大阪市に損害が生じておらず、返還を求める必要がなかったとしている。しかし、補助金制度は申請主義を原則としており、補助金の使途をはじめその適正利用をチェックする立場にある健康福祉局長が事業実績報告書を補正させることにより事実上これを追完する取扱いは適切とはいえない。

 

(4) 住吉川はぐくみネットの委託料で購入した備品の処理について

 委託料により購入した物品の地方公共団体への帰属を定めた法律の規定は存在しないことから、住吉川はぐくみネットが売買契約によって取得したデスクトップ型パソコン及びたい焼き機については、贈与契約や寄附収受の手続を取らない限り、その所有権が大阪市に移転することは有り得ず、これらを大阪市の所有物として備品登録を行った住之江区長の処理は、法的に誤った処理といわざるを得ない。
 業務委託契約は、受託者が契約書に定められた業務を善良な管理者の注意義務をもって処理することを目的とする契約である(民法第656条(準委任))。
 したがって、受託者は、委託された業務を処理するのに必要と認められる費用以外は請求することができず、受託者の資産として受託者自身の事務に使用できるデスクトップ型パソコン等を購入することは受託業務の範囲外であって、その購入費用を委託料として大阪市に請求することはできない。
 本件の場合、証拠収集の限界もあり、住吉川はぐくみネットには、購入が禁止されたデスクトップ型パソコン及びたい焼き機を意図的に購入し、これを適正な委託料の使途であるように装って精算報告を行ったということは確認できないことから、精算行為全体が違法となるものではなく、デスクトップ型パソコン及びたい焼き機に係る購入代金相当額の返還を求めることで足りる。
 以上により、住之江区長は、デスクトップ型パソコン及びたい焼き機の備品登録を抹消し、これらの物品を住吉川はぐくみネットに返還するとともに、本件委託契約書第15条第3項に基づき平成19年度はぐくみネット事業委託料のうち、デスクトップ型パソコン及びたい焼き機の購入代金相当額計124,300円の返還請求をする必要がある。

4 勧告

 上記判断に基づき、次のとおり勧告を行う。なお、(1)、(2)及び⑶については、この勧告の日から3月以内に必要な措置を完了し、本委員会へ措置状況を報告すること

(1) 住之江区長は、平成19年度に住吉川連合に交付された地域振興活動補助金583,200円の全部について、補助金交付決定を取り消し、返還請求を行うこと

(2) 健康福祉局長は、平成19年度に西部老人憩の家運営委員会に交付された老人憩の家運営補助金のうち、目的外に使用された障子代相当額117,991円部分について、補助金交付決定の一部を取り消し、返還請求を行うこと

(3) 住之江区長は、デスクトップ型パソコン及びたい焼き機の備品登録を抹消し、これらの物品を住吉川はぐくみネットに返還するとともに、住吉川はぐくみネットに対し、平成19年度に交付したはぐくみネット事業委託料のうち、デスクトップ型パソコン及びたい焼き機の購入代金相当額計124,300円の返還請求を行うこと

(4) 各種地域団体に対する補助金、委託料等の交付、精算等の手続の適正さをより一層確保するよう努めること

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終結宣言(平成23年2月15日)

 上記勧告に対して措置がとられたことが確認できたので、本件公益通報についての処理を終了しております。

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