地域振興会等の会計処理(第21-01-63、21-90-1・5号)
2023年7月31日
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大阪市公正職務審査委員会からの勧告(平成22年3月31日)
大阪市公正職務審査委員会から、大阪市長に対して、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例第9条第1項の規定に基づき、勧告を行いました。
1 通報概要
通報は、長文多岐にわたるので、論点ごとに整理・要約すると、以下のようになる。
① 大阪市地域振興会・大阪市赤十字奉仕団及び日本赤十字社大阪市地区本部の不明朗会計の違法性
・ 日本赤十字社大阪市地区本部(以下「日赤市地区本部」という。)で雇用しているプロパー職員及び大阪市OB職員の給与・退職金に充てるため、日本赤十字社大阪府支部(以下「日赤府支部」という。)から日赤市地区本部に交付されている毎年900万円の運営助成金のほかに、大阪市からの補助金・交付金等を原資とする各区地域振興会事務局からの上納金及び大阪市地域振興会(以下「市地振」という。)・大阪市赤十字奉仕団(以下「市奉仕団」という。)事務局で剰余金をプールした積立金を分担金として日赤市地区本部へ支出しており、違法である。
② 大阪市地域振興会大会・大阪市赤十字奉仕団大会への補助金支出の違法性
・ 毎年7月ごろ開催される大阪市地域振興会大会・大阪市赤十字奉仕団大会(以下「市地振・奉仕団大会」という。)の開催経費約900万円のうち、約800万円を大阪市は補助金として交付しているが、内容は個人給付と娯楽であり、公益性が無く違法である。
③ 市地振・市奉仕団事務局及び日赤市地区本部事務局への大阪市本庁舎(4階市民局スペース)無償使用許可の違法性
・ 任意団体であるはずの市地振事務局と日赤市地区本部の職員が、大阪市本庁舎4階の市民局スペースに、事務机、事務機器等を置き、使用料だけでなく、電話料金、光熱水費も無償で使用しているのは、違法である。2 調査結果
(1) 各団体の組織・性格について
市奉仕団は、昭和22年の災害救助法制定に伴い、日本赤十字社が地域で災害救助を担う「赤十字奉仕団」の結成を全国に呼び掛けたことを契機として、大阪市では、昭和24年に当時の22区の赤十字奉仕団の連合体として「日本赤十字区奉仕団委員長連絡協議会」が発足したのが始まりで、昭和28年に「大阪市赤十字奉仕団組織要綱」を制定し、現在の市奉仕団が正式に発足した。
同要綱によれば、市奉仕団は、「博愛精神により日本赤十字社の行う各種事業に協力奉仕するとともに、地域社会の福祉を増進して、その向上発展を図るため篤志奉仕を行う」ことを目的としている。
その組織は、概ね20世帯をもって構成される「班」、概ね町(丁目)の区域で原則として150世帯以上で構成される「町赤十字奉仕団」、概ね小学校区内の奉仕団で構成される「連合赤十字奉仕団」、区を単位として区内の連合で構成される「区赤十字奉仕団」、市内の区赤十字奉仕団で構成される市奉仕団となっており、ピラミッド型に体系整備されている。
赤十字奉仕団の加入が市内の隅々まで及んだことから行政広報など行政協力活動が多くなり、また、戦後復興も終わり都市化に伴う新たなコミュニティづくりが求められることとなったことから、市奉仕団と役員、構成員を同じくする一体の組織として、昭和50年に「大阪市地域振興会組織要綱」を制定し、市地振が結成された。
同要綱によれば、市地振は、「地域の連帯感をたかめ、人間性豊かで潤いのある町づくりに努めるとともに、市区行政の円滑化並びに日本赤十字社の事業に協力し、もって地域社会の福祉の増進と、その向上を図る」ことを目的としている。
市地振と市奉仕団の関係について、市民局は、「両者は、地域、会員、役員を同じくする一体の組織であり、コミュニティ活動を中心にするときは「大阪市地域振興会」として、災害訓練などをするときは「大阪市赤十字奉仕団」として活動している」と説明している。
なお、市地振及び市奉仕団の組織要綱は存在するが、事務局に関する条項やその根拠となる設置規程は存在しない。
一方、日赤市地区本部は、日本赤十字社法(昭和27年法律第305号)に基づき、「赤十字に関する諸条約及び赤十字国際会議において決議された諸原則の精神にのつとり、赤十字の理想とする人道的任務を達成すること」を目的として設立された特殊法人である日本赤十字社の大阪府支部の下部組織である。
大阪市は、特殊法人としての日本赤十字社の公益性にかんがみ、副市長(市民局担当)を日赤市地区本部の本部長に、市民局長及び市民局市民部長を副本部長に、市民局市民部地域振興担当課長を幹事に、市民局市民部地域振興担当係長を事務委員に委嘱している。
したがって、少なくとも、市地振・市奉仕団と日赤市地区本部は目的、組織、役員、構成員を異にする別の団体である。
(2) 通報概要①について
ア 日赤市地区本部職員の給与及び退職金の支出について
日赤市地区本部では、平成21年9月末日まで、プロパー職員1名、大阪市OB職員1名の計2名を雇用していた。
その人件費(給料、賞与、各種手当、福利厚生費、雇用保険料・社会保険料の事業主負担等を含み、退職金は除く。以下同じ。)の支出総額は、平成17年度以後の日赤市地区本部の決算書によれば、次のとおりである。
なお、平成16年度以前は書類が廃棄されており不明である。また、平成17、18年度は、日赤府支部からの運営助成金900万円の部分の精算書しか残されておらず、全体の金額は不明である。さらに、すべての年度について、支出を立証する領収書等の証拠書類は添付されていなかった。年度 | 人件費の支出金額 | その財源 |
平成17年度 | 8,542,950円 プラスα | 府支部からの運営助成金900万円 (市地振からの分担金300万円)※ |
平成18年度 | 8,442,010円 プラスα | 府支部からの運営助成金900万円 (市地振からの分担金300万円)※ |
平成19年度 | 10,207,978円 | 府支部からの運営助成金900万円 市地振からの分担金200万円 |
平成20年度 | 9,415,121円 | 府支部からの運営助成金900万円 市地振からの分担金240万円 |
平成21年度 | 決算未確定 | 決算未確定 |
合計(平成21年度を除く。) | 36,608,059円 | 府支部からの運営助成金3,600万円 市地振からの分担金1,040万円 |
※市地振の決算書にはこの記載がある。
日赤市地区本部職員の退職金の支出については、次表のとおりである。
なお、平成17、18年度の退職金支出については、日赤市地区本部の決算書に記載がないが市民局の説明による。
年度 | 退職者 | 退職金の支出金額 | 主な財源 |
平成17年度 | 大阪市OB職員 1名 | 960,000円 | 日赤市地区本部から242,417円 市地振から2,000,000円 |
平成18年度 | プロパー職員 1名 | 13,054,642円 | 市地振から13,415,434円 |
平成20年度 | 大阪市OB職員 1名 | 982,800円 | 日赤市地区本部から360,300円 市地振から360,000円 |
合計 | 市OB 2名 プロパー1名 | 14,997,442円 | 日赤市地区本部から795,772円※ 市地振から15,775,434円 |
※平成19年度の日赤市地区本部から193,055円を含む。なお、当該年度には、支出は無かったとのことである。
イ 市地振と日赤市地区本部との業務委託契約の使途について
少なくとも、平成15年度以降平成21年度に廃止するまで、毎年度、市地振は、日赤市地区本部に対して、「地域振興会機関紙“わがまち”の発行、各区会長会の開催をはじめ地域振興会にかかわる業務」を委託し、その経費として委託料(200万円から500万円)を支払ってきた。
ところが、業務委託の終了の際に、日赤市地区本部長名で提出されている「精算報告書」では、毎年、
「収入の部 3,000,000円(消費税を含む。)
支出の部 3,000,000円(消費税を含む。)
差し引き 0円 」 (平成18年度の例)
とだけ記載され、ゼロ精算されていた。支出明細等が一切明記されず、かつ、印刷代等の領収書等の支出を立証する証拠書類も全く添付されていないものであった。
また、市地振の毎年度の決算書にも、業務委託契約に基づき支出したはずの委託料の費目の記載がなかった。
加えて、市地振の決算書を閲覧する限り、日赤市地区本部に委託したとされる地域振興会機関紙“わがまち”の発行に係る経費については、機関紙「わがまち」会計が設けられ、毎年度、編集印刷費として300万円から700万円、クイズ景品代8万円が市地振から別途支出されていた。
支出明細が記載されている平成20年度の日赤市地区本部決算書を確認すると、日赤府支部からの運営助成金900万円と市地振からの分担金240万円(平成20年度の業務委託契約の金額と同額)が収入として記載され、職員給料等8,269,059円、社会保険料(児童手当を含む。)1,035,360円、雇用保険料96,864円、福利厚生費13,838円、退職引当金360,300円、遺族見舞金積立金889,770円に充てられていた。
これらの事実やその他本委員会が収集した証拠資料を総合的に考慮すれば、日赤市地区本部が地域振興会機関紙“わがまち”の発行業務等を受託した実態はなく、現実には、「日赤市地区本部分担金」として市地振から日赤市地区本部へ支出し、日赤府支部からの運営助成金900万円だけではまかなえない日赤市地区本部職員2名の人件費、退職金積立てに充てられていたと推定される。
なお、平成21年4月に日赤府支部の調査が入り、同年6月8日付阪支振第212号調査結果(以下「府支部調査結果」という。)において、「貴地区本部と大阪市地域振興会との業務委託契約については、赤十字事業以外の事業を受託することは定款上において問題があるため、今年度から廃止するように改めること。」との指摘を受け、平成21年度から廃止されている。平成17年度から平成20年度までの業務委託契約の金額、使途等は、次表のとおりである。共通事項 | 契約名義人 発注者 大阪市地域振興会 会長 氏名・印 受注者 日本赤十字社大阪市地区本部 本部長 氏名・印 契約期間 4月1日から3月31日まで 契約内容 地域振興会機関紙“わがまち”の発行、各区会長会の開催をはじめ地域振興会にかかわる業務 | |
年 度 | 契約金額 (消費税込み) | 使 途 |
平成17年度 | 5,000,000円 | 日赤市地区本部分担金3,000,000円 日赤市地区本部退職手当積立金2,000,000円 |
平成18年度 | 3,000,000円 | 日赤市地区本部分担金3,000,000円 |
平成19年度 | 2,000,000円 | 日赤市地区本部分担金2,000,000円 (事務局会計から100万、わがまち会計から100万) |
平成20年度 | 2,400,000円 | 日赤市地区本部分担金2,400,000円 (事務局会計から140万、わがまち会計から100万) |
平成21年度 | 廃 止 |
|
合 計 | 12,400,000円 | 日赤市地区本部分担金10,400,000円 日赤市地区本部退職手当積立金2,000,000円 |
注 使途の日赤市地区本部分担金は、2(2)アにて述べたとおり、日赤市地区本部職員の給与、社会保険料等に費消されている。
ウ 退職手当積立金など積立金の会計処理について
一般的に、団体の収支差額により生じた剰余金を、退職金など将来必要となる特定の目的のための引当財産として積み立てる場合には、当該団体の正式な決定機関において正当に議決された機関決定に基づいて、目的、金額、率、積立年度、取り崩しの基準等を明記した積立金規程を設け、当該規程に基づき、適正に処理する必要があり、会計処理された金額は適正な科目区分により財務諸表に記載し、これを明示しておくとともに、毎年度適正な会計監査を受ける必要がある。
しかし、市地振及び日赤市地区本部の決算書上は、これが明確ではない。
平成17年度から平成19年度まで、市地振では、上記の根拠規程がないままに、事務局会計と機関紙「わがまち」会計から、それぞれ、収支差額により生じた剰余金を、「大阪市地域振興会基金」と称して積み立てていた。
平成20年度以後は「大阪市地域振興会災害対策積立金規程」を制定し、「大阪市地域振興会基金」の残金を引き継いだ。(ただし、19年度決算書と20年度決算書上の数値が不一致となっている。)
特に、問題と思われるのが、退職手当積立金である。
平成20年度の市地振の決算書で初めて「退職手当積立金会計」が設けられたが、それ以前の年度においては退職手当積立金の計上及び取崩しに関しては決算書上に全く記載が無く、当該決算書が総勘定元帳等の正規な会計記録を基に作成されているとの前提に立てば退職手当積立金については、簿外で処理されていたといわざるを得ない。
証拠書類等が整備されていないが、市民局の説明では、次表のような収支状況となっているとのことである。
退職手当積立金の処理の状況
年度 | 積立額 | 支出額 | 差引残高 | 内訳 |
平成17年度 | 15,415,434円 | 2,000,000円 | 13,415,434円 | 前年度からの繰越し15,415,434円 日赤市地区本部退職手当積立金へ2,000,000円 |
平成18年度 | 0円 | 13,415,434円 | 0円 | 日赤市地区本部退職手当積立金へ13,415,434円 |
平成19年度 | 360,000円 | 0円 | 360,000円 | 事務局会計から360,000円 |
平成20年度 | 0円 | 360,000円 | 0円 | 日赤市地区本部退職手当積立金へ360,000円 |
合計 | 15,775,434円 | 15,775,434円 | 0円 |
|
年度 | 積立額 | 支出額 | 差引残高 | 内訳 |
平成17年度 | 2,242,417円 | 960,000円 | 1,282,417円 | 市地振から2,000,000円 日赤市地区本部会計から242,417円 市OBへ退職金支払い960,000円 |
平成18年度 | 13,415,434円 | 13,054,642円 | 360,792円 | 市地振から13,415,434円 プロパー職員へ退職金支払い13,054,642円 |
平成19年度 | 195,133円 | 0円 | 195,133円 | 日赤市地区本部会計から193,055円 預金利息2,078円 |
平成20年度 | 722,208円 | 982,800円 | ▲260,592円 | 日赤市地区本部会計から360,300円 市地振退職手当積立金から360,000円 預金利息1,908円 市OBへ退職金支払い982,800円 |
合計 | 16,575,192円 | 14,997,442円 | 1,577,750円 |
|
(注)▲は、マイナスの意味である。
平成20年度から市地振と日赤市地区本部の会計を明確に区分し、市地振の退職手当積立金の残高を0とし、日赤市地区本部の退職手当積立金残高1,577,750円で対応することとし、平成21年度は新たな積立ては行っていないとのことである。
しかしながら、2、(1)で述べたように、全くの別組織である日赤市地区本部が雇用している職員の退職金を支出するため、市地振会計で積み立てた金額合計15,775,434円を日赤市地区本部に繰り入れていることは、特段の合理的事情が存在しない限り、会計法規上あり得ない処理である。
平成17年度当初に市地振における前年度会計から繰り越されたとする15,415,434円は上に述べた支払金額に近い額であるが、その原資、積立ての根拠等については、市民局では文書が廃棄されており、詳細は不明であるとしている。
エ 市地振の収入に大阪市の公金が含まれているかについて
市地振の決算書を閲覧する限り、平成17年度の収入合計11,432,274円の内訳は、前年度繰越金2,504,668円、コミュニティと防災に関連する大阪市からの事業委託料7,436,200円(公金)、各区会長会会費1,440,000円(6万円×24会長)、雑収入51,406円となっており、少なくとも7,436,200円の大阪市の公金が投入されている。
平成18年度からは、各区に対する補助金・交付金制度に改正されたため、大阪市から市地振への委託料はなくなり、代わりに各区役所から各区地域振興会に交付された補助金、交付金などを原資として、各区地域振興会から市地振に対して、各区分担金が納付されている。
平成20年度を例にとると、各区地域振興会から市地振に対する分担金総額は12,014,121円であり、その内訳は、「事務局会計」に「各区分担金」として5,551,129円、「わがまち会計」に「各区購読料」として5,022,992円、その他「各区区長会費」として1,440,000円となっている。
市地振への分担金にどの財源を充てるかは、各区地域振興会の判断に委ねられており、全額公金、一部公金、全額公金以外など様々である。
平成21年9月14日付の住民監査請求に係る監査結果によれば、平成20年度に関しては、各区地振からの分担金総額12,014,121円のうち、大阪市の公金である補助金・交付金の総額は最終的には、6,183,500円(約51%)、会費など公金以外の総額は5,830,621円(約49%)となっており、約半分が大阪市の公金であった。
他の年度については、資料が無いため明らかではないが、概ね平成20年度と同様の比率であることが推認されるため、平成18年度から平成20年度の分担金総額の半分程度は大阪市の公金が還流したものといえる。
(3) 通報概要②について
ア 市地振・奉仕団大会について
市地振・奉仕団大会は、毎年度7月ごろ、各区の町会長などの役員約2,000名を招待して開催されており、第一部の式典と第二部のアトラクションの二部構成となっている。
第一部は、市地振・奉仕団会長あいさつ、市長の激励の言葉、市会議長、知事等の来賓祝辞、永年勤続表彰、特別表彰、大会宣言となっており、公的な色彩が強い。
第二部は、役員の慰労をかねたアトラクションとなっており、毎年交互に、有名演歌歌手による歌謡ショーと有名お笑いタレントによるお笑いショーを開催しており、娯楽的色彩が強い。そのため、場所も、舞台興行に適したフェスティバルホールや厚生年金会館大ホールのような施設の整ったホールが使用されている。
イ 大会経費について
平成17年度から平成20年度に関しては、各年度とも大阪市から市地振へ補助金8,232,000円が交付されており、毎年度ゼロ精算されている。市地振負担金は50万円から80万円程度であり、永年勤続役員の表彰記念品、役員打ち合わせ、大会宣言者謝礼など、補助対象外経費に充てられている。
大阪市は、「大阪市地域振興会大会・大阪市赤十字奉仕団大会」事業補助金交付要綱を制定し、上記の表彰記念品などを除き、大会経費8,232,000円を全額(100%)補助している。
補助金の使途のうち、会場費及び第一部の式典費はともかくとして、第二部のアトラクションの費用を全額補助していることに問題があると思われる。
各年度ごとのアトラクションの内容及び補助金額は一覧にすると、次表のとおりである。年 度 | 第二部 アトラクションの内容 | 補助金額(すべて100%補助) |
平成17年度 | 「お笑いと歌で綴る浪花のヒーロー伝」 今いくよ・くるよ 他 フェスティバルホール | 3,336,664円 |
平成18年度 | 「中村美律子の大阪歌祭り」 中村美律子 他 フェスティバルホール | 3,336,664円 |
平成19年度 | 「歌って語って笑って貰いまショー」 横山たかし・ひろし他 フェスティバルホール | 3,354,351円 |
平成20年度 | 「八代亜紀の大阪すっきゃねん」 八代亜紀 他 フェスティバルホール | 3,351,908円 |
平成21年度 | 講演会「この世の中、しんどくてもおもしろう生きなあかんで」 笑福亭 仁鶴 厚生年金会館大ホール | 1,345,825円 |
合 計 |
| 14,725,412円 |
なお、平成17年度と平成18年度は出演者が異なるにもかかわらず、支出金額がいずれも3,336,664円であり、不自然であるが、市民局では詳細は不明とのことである。
(4) 通報概要③について
ア 市民局事務スペースの便宜供与について
市民局の説明によれば、日本赤十字社は、憲法第89条の「公の支配」に属する団体であるとの政府見解等をもとに、昭和24年以来、日赤市地区本部の執務スペースとして、市役所本庁舎の一部を無償で使用許可し、電話使用料・光熱水費も免除しているとのことである。
また、従来から、市地振事務局には使用許可をしておらず、日赤市地区本部職員が市地振からの業務委託を受けて市地振の業務を事実上行っていたとのことである。
しかし、平成21年度から、業務委託を廃止し、従来日赤市地区本部職員2名分のスペースを1名分に縮小し、市地振事務局は、(財)大阪市コミュニティ協会の入居している船場センタービルへ移転したとのことである。
現在の状況は、日赤市地区本部本部長からの申請を受けて、市民局長が行政財産の目的外使用許可を与えている。用途は、日赤市地区本部事務局の事務室としての使用に限り、使用面積は3㎡、使用物品は事務机、事務椅子、書架、更衣ロッカーであり、事務室使用料、電話使用料、光熱水費については、免除している。
(5) 市民局による改善措置について
市民局では、平成21年6月8日付の日赤府支部調査結果により、①運営助成金の出納について、市地振からの委託費が混在している部分があるため、会計処理の透明性に欠けていることから、日赤市地区本部と市地振の会計処理を明確に区分するよう改めること、②日赤市地区本部の業務と市地振の業務が混在している部分が見受けられるので、両者の業務分担を明確にするよう改め、事務員の雇用については1名とすること、③日赤市地区本部と市地振との業務委託契約については、赤十字事業以外の事業を受託することは定款上において問題があるため、今年度から廃止するよう改めることの3点の指導を受けた。さらに、同年9月14日付の住民監査請求に係る監査結果においても、いくつかの指摘を受けている。
これらを踏まえ、市民局では、平成21年10月に市地振、日赤市地区本部の補正予算を組み、当初予算で予定されていた市地振から日赤市地区本部への業務委託契約を取りやめ、その契約金額に相当する日赤市地区本部分担金2,000,000円を予算から削除し、市地振の退職手当積立金の当初予算361,000円の削除及び市地振の退職手当積立金会計の廃止(平成21年度限り)を行い、今後は日赤市地区本部の退職手当積立金会計で対応することとした(ただし、残金1,577,750円で当面対処可能なため、当初予算で予定していた361,000円の積み立ては取りやめ)。また、住民監査請求に係る監査結果で指摘されていた日赤市地区本部の遺族見舞金積立金会計については、当初予算で予定していた197,000円の積み立てを取りやめることにした。
さらに、平成21年10月1日から日赤市地区本部事務局職員を1名とするため、大阪市OBである事務局長は同年9月末日をもって雇用契約を解除した。
また、市地振・奉仕団大会への補助金交付についても、平成21年度は第二部のアトラクションを講演会に変更するなどの見直しを行うとともに、平成22年度については補助対象を第一部の式典部分に限り、第二部の経費は団体負担等の方向で協議していくとのことである。
しかしながら、本委員会が調査したところ、市民局の報告では大阪市OBである事務局長は同年9月末日をもって雇用契約を解除したとのことであるが、当該OB職員は、10月1日から市地振事務局職員として雇用されており、日赤市地区本部職員2名が日赤市地区本部1名・市地振1名になっただけで、実態は変わっていない。この大阪市OB職員の給与に充てるため、10月からの市地振補正予算では、新たに事務局運営費として230万円が新設されており、平成22年度予算案では、事務局運営費420万円が新設されている。各区分担金は新年度も約550万円で変更が無い。
また、市地振・奉仕団大会への補助金交付について、平成21年度は第二部のアトラクションを講演会に変更するなどの見直しを行ったというが、(3)イの一覧表で明らかにしたとおり、講演会の実態は、有名落語家・タレントによる芸能話であり、娯楽・慰安会的要素は何ら変わっていない。
3 判断
以上の調査結果をもとに、検討を行ったところ、次のとおり判断するに至った。
(1) 通報概要①について
ア 日赤市地区本部職員の給与・退職金への公金還流について
日赤市地区本部職員2名の給与を補てんするために、市地振から分担金等の名目で支出されていたが、平成21年10月からそのうち1名は市地振事務局に雇用されていることから推察すれば、証拠書類上は2名とも日赤市地区本部が雇用する形態を取っていたものの、実際には、2名のうち1名は市地振の業務に従事していたため、市地振の会計からその給与を負担していたものと思われる。
しかしながら、地方公共団体は、ノーワーク・ノーペイの原則から、当該地方公共団体の業務を行っていない他団体等の職員の給与・退職金を直接支払うことはできず、また、条例・規則等の根拠規定に基づき公益上必要があると認められる場合でない限り、補助金、委託料、交付金、分担金等により、実質的に他団体等の職員の給与・退職金に補てんすることができないことは当然である。
ところが、市民局は、2(2)ア、イで認定したとおり、少なくとも平成17年度から平成20年度までの間、市地振と日赤市地区本部との間で実態を伴わない業務委託契約を締結させ、その契約代金として、市地振から分担金名目で①合計10,400,000円を日赤市地区本部へ交付し、日赤市地区本部職員の給与に補てんしてきた。
また、2(2)ウで認定したとおり、不適切な会計処理により、退職手当積立金を簿外処理で積み立て、市地振会計から日赤市地区本部会計へ移すことにより、少なくとも、平成17年度から平成20年度までの間に②合計15,775,434円の金員を日赤市地区本部職員の退職金の支出に流用した。
2(2)エで認定したとおり、市地振から日赤市地区本部への分担金・退職手当積立金の原資については、平成17年度は大阪市からの事業委託料7,436,200円の直接投入、平成18年度から平成20年度までは、各区役所から各区地域振興会に交付された補助金、交付金を財源の一部とする各区地域振興会からの分担金が原資となっている。この分担金に占める大阪市の公金の割合は、平成20年度が約51%であったことから、他の年度もほぼ同様の比率で公金が還流していると推定できる。
したがって、日赤市地区本部職員の給与・退職金に補てんするため、市地振から日赤市地区本部へ支出された①と②の総額26,175,434円のうち、凡そその半分は大阪市の公金が原資として還流していると推定される。上記に加えて、日赤市地区本部の遺族見舞積立金についても、3(5)で後述するとおり、同様の可能性がある。
よって、市長(市民局)においては、市地振から日赤市地区本部へ支出された金額26,175,434円及び遺族見舞積立金がいかなる合理的理由により、それが為されたかの状況を調査する必要がある。各年度における大阪市の公金部分を精査した結果、大阪市の公金が日赤市地区本部職員の給与・退職金に不適正に支出されたと判断された場合には、その相当額については、相手先、関係者(これらの事実を認識しながら適切な改善措置を怠った本市職員を含む。)から自主的に返還させることを含め、市民の理解を得られるよう適切な措置を講ずる必要がある。
なお、返還させる場合における金額の負担割合は、相手先、個々の職員の職責、関与の度合い等に応じて、市長において適切に決定すべきである。
イ 災害対策積立基金(大阪市地域振興会基金)について
2(2)ウで指摘したとおり、市地振は、平成17年度から平成19年度まで根拠規程がないままに、「事務局会計」と「わがまち会計」から、それぞれ、収支差額により生じた剰余金を、「大阪市地域振興会基金」と称して積み立て、平成20年度になって「大阪市地域振興会災害対策積立金規程」を制定し、「大阪市地域振興会基金」の残金10,825,791円を引き継いだ。(ただし、19年度末の残高は、11,186,091円であり、残余の360,297円は、退職手当積立金会計へ引き継がれたと思われるが、詳細は不明である。)
平成20年度決算書においても、市地振の「事務局会計」の剰余金587,684円及び「わがまち会計」の剰余金533,415円の計1,121,099円を災害対策積立金に積み立てている。
市地振における会費等の独自財源を、区地域振興会が大規模の自然災害によって被害を被った際に、市地振から見舞金を支給する目的で規程を設けて積み立てることは何ら差し支えないが、もともと災害見舞金目的で交付されたものではない大阪市の補助金等の公金が剰余金の一部として、市地振に積み立てられているとすれば問題であり、一般市民からすれば、公金を不透明な手続でプールしていると見られても仕方がない状況である。
したがって、市長(市民局)において、各年度における大阪市の公金部分を精査の上、上記の不適正な会計処理により、災害対策積立基金にプールされた平成20年度末残高11,956,133円のうち、大阪市の公金部分を確定し、市地振から自主的に返還させることを含め、市民の理解を得られるよう適切な措置を講ずる必要がある。
(2) 通報概要②(市地振・奉仕団大会への補助金支出)について
地方公共団体は、公益上の必要のある場合に限り、補助金を支出できる。(地方自治法第232条の2)
「公益上の必要性」の有無は、第一義的には、地方公共団体の長らの裁量に委ねられているが、客観的に公益性が認められない事項についてまで補助金を交付することは、裁量権の逸脱又は濫用として、同条に違反し、違法である。
第二部のアトラクションについては、2(3)イの表のとおり、有名お笑いタレントと有名演歌歌手を交互に招いており、その内容もお笑いショー又は演歌ショーであり、博愛精神により日本赤十字社の各種事業に協力奉仕し、地域住民の福祉の増進を図るという同会の目的と関連性を有さず、専ら地域振興会役員等参加者の娯楽・慰安的な要素が強く、一般市民の健全な社会通念に照らして、客観的に公益性が認められない。
市民局は、平成21年度からアトラクションを「講演会」に変更するなどの見直し・改善を図ったと主張しているが、「講演会」の内容は、有名落語家・タレントによる芸能話しであり、実質的に参加者の娯楽・慰安であるという性質は変わっていない。
常日頃、地域振興会の役員の人達は、行政協力活動やコミュニティづくりのため、ボランティアとして積極的に取り組まれているところから、ある種の慰労を行うとの趣旨は理解できるものの、そのために社会的に許容された範囲を超えて公金を費消することは不適切と判断する。
したがって、補助金交付の決裁行為を行った大阪市職員(退職者を含む。以下この項において「関係市職員」という。)は、これらの事実を認識しながら、公益性の有無について慎重な判断をせず、漫然と補助金を支出することにより、大阪市に損害を与えた可能性が高い。
よって、市長は、5年の消滅時効外となる平成17年度から平成21年度までに市地振・奉仕団大会の第二部アトラクションに対して支出された補助金相当額計14,725,412円について、関係市職員に対し、大阪市に自主的に返還させることを含め、市民の理解を得られるよう適切な措置を講ずる必要がある。
なお、返還させる場合における金額の負担割合は、個々の職員の職責、関与の度合い等に応じて、市長において適切に決定すべきである。
(3) 通報概要③(市民局事務室の便宜供与)について
地方公共団体は、本庁舎など行政財産について、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。(地方自治法第238条の4第7項)
日赤市地区本部は、「公の支配」に属する特殊法人日本赤十字社の下部組織であり、日本赤十字社法及び日本赤十字社定款に定める事業の用に供する場合には、大阪市財産条例第7条第3項第1号の規定に基づき、行政財産の使用料を免除できるが、平成21年9月末までは、実質的には、日赤市地区本部事務局職員2名のうち、業務量として1名分は、日本赤十字社と関係のない市地振の業務を行っていたことが認められる。
市民局は、日赤市地区本部は市地振から機関紙わがまちの発行業務等の業務委託を受けており、受託者としての日赤市地区本部が事務スペースを使用していたと主張するが、当該業務委託契約は日赤市地区本部職員の給与等を補てんするための偽装契約であり、かつ、そもそも日赤府支部が指摘するように、日本赤十字社定款からしても、市地振の当該業務を日赤市地区本部は受託することができない性格のものであった。
したがって、平成21年9月末までは、日赤市地区本部が無償で使用していた3㎡のうち、1.5㎡部分は、使用許可の条件である日本赤十字社の業務に使用することという条件に違反して、「公の支配」に属さない任意団体である市地振の業務の用に供されていたというべきであるが、現在は改善されている。
(4) 市地振の決算書について
市地振が提出した平成17年度より平成20年度に至る決算書については、以下の理由により、正規の簿記の原則に従って適正に処理された会計記録により作成されたものか否かについては疑問が残る。
1)2(2)ウに述べたとおり、退職積立金の積立て及び取崩しが決算書に反映されていない。
2)2(3)イに述べたとおり、アトラクションの支出金額及びその他の支出にて決算書に表示された金額の正確性に疑問がある。
3)決算書自身が組織の責任者の承認を得たことを立証する証跡が見当たらない。決算書は、組織の最高意思決定機関にて承認されるべきものである。それを立証する客観的証拠が入手できなかった。3(1)イに述べたとおり、決算書自身の数値に不整合があり、そのことにより上に述べた疑念を排除できない。
4)決算書作成の前提である総勘定元帳を始め、関連する帳票及び証憑が提示されなかった。
(5) 遺族見舞積立金について
平成20年度の日赤市地区本部決算書によれば、前年度まで決算書上存在しなかった「遺族見舞積立金」が新設され、繰越金3,634,114円、20年度積立金889,770円、預金利息9,214円、合計4,533,098円が積み立てられている。
遺族見舞積立金は、住民監査請求に係る監査結果によれば、その根拠となる積立金規程が存在せず、これまでの執行実績もないとのことである。
平成20年度の日赤市地区本部の収入は、日赤府支部からの運営助成金9,000,000円と市地振からの業務委託契約による分担金2,400,000円、預金利息3,299円のみであるから、その原資が3(1)アに述べた退職手当積立金と同様に、大阪市からの公金が流入し、プールされている疑いを払拭しきれない。4 勧告
本委員会としても、市地振・奉仕団が戦災復興、災害救助、地域におけるコミュニティづくりをはじめとする地域振興の向上、行政広報をはじめとする様々な行政協力活動など、長い歴史的な経過から多大な貢献を行い、現在も公益性の高い活動を行っていることは理解するし、また敬意を払うものである。
しかしながら、近時の行財政運営においては、特に公金支出に係る手続面を含めた公正性、透明性が強く求められているのであり、この点において、実質的に市地振・奉仕団事務局及び日赤市地区本部事務局の運営に深く関わってきた市民局及びこれらの団体の事務局職員による会計処理は極めて不透明、不適切と評さざるをえない状態であった。今年度から、会計及び業務の分離などの改善措置に取り組んでいることは評価するが、いまだ十分とはいえない状況である。
今後、大阪市において市民協働を推進し、さらなる地域振興の発展に寄与するという観点から、次のとおり勧告を行う。
(1) 市長は、次表に掲げる事項について、各年度における大阪市の公金部分を精査の上、不当な支出がなされたと判断される場合には、相手先、関係者(これらの事実を認識しながら適切な改善措置を怠った本市職員を含む。)から自主的に返還させることを含め、市民の理解を得られるよう適切な措置を講ずること
なお、返還させる場合における金額の負担割合は、相手先及び個々の職員の職責、関与の度合い等に応じて、市長において適切に決定すべきである。調査対象 | 対象年度 | 不当と考えられる金額 |
日赤市地区本部職員の給与・退職金へ還流した大阪市の公金 | 平成17年度から平成20年度まで | 大阪市の公金と認められる金額のうち、不適正と認められる部分 |
災害対策積立基金及び遺族見舞積立基金にプールされた大阪市の公金部分 | 平成21年度残高 | |
市地振・奉仕団大会に対する補助金(アトラクション部分14,725,412円) | 平成17年度から平成21年度まで | 社会的に許容される金額を超える部分 |
(2) 市地振と日赤市地区本部の業務及び会計を明確に区別し、会計法規及び正規の簿記の原則に基づく透明な会計処理を行い、適正な決算書を作成し、権限のある機関における承認を得ること及び支払を立証する証拠書類の保存・管理を行う等の指導を行うともに、適宜、会計監査その他必要な調査、報告を求めるなど、適正な監督権限の行使に努めること
(3) 地域振興及び日本赤十字社活動に関する補助金、交付金、分担金等の整理・明確化を図り、公益性の審査、事業実績報告、精算報告の審査をより厳格にするなど、適正な公金の支出に努めること
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