工事における不適正な契約手続(第20-01-109号)
2023年7月31日
ページ番号:188780

大阪市公正職務審査委員会からの勧告(平成21年2月10日)
1 通報概要
環境局のある職員が、まだ着工すらしていない「環境事業センター駐輪場設置工事」を完成したことにして「検査調書」を作成し、上司の担当係長に無断で決裁印を押印した上で、担当課長代理と担当課長には「工事が完成して検査もした」という虚偽の報告をして決裁を受け、業者に支払を行っていた。
2 調査結果
本件の調査によって、当該職員の担当する平成20年度の工事において、下記のような3件の不適正な取扱いが行われていたことが確認できた。
(1) 火災による焼損を復旧する工事を依頼した業者に、契約手続を経ることなく別の改修工事を併せて発注し、3月に実施した。その結果、入札が必要とされる金額を上回ってしまったため、契約を分割し、それぞれ工事終了後の5月2日及び5月12日に随意契約を締結した。その後、5月21日に完成したとする虚偽の事業請負検査調書を作成した上で、支払手続に入り、5月27日及び6月2日に支出命令書が発行された。
(2) 実際には、平成20年5月30日頃から6月9日頃にかけて実施した工事において、着工すらしていない5月21日に工事が完成したとする虚偽の事業請負検査調書を作成の上、支払手続に入り、6月2日に支出命令書が発行された。
(3) 実際には、平成20年7月7日頃から7月21日頃にかけて実施した工事において、着工すらしていない5月27日に工事が完成したとする虚偽の事業請負検査調書を作成の上、支払手続に入り、6月20日に支出命令書が発行された。3 判断
(1) 当該職員がこのような行為を企図し、行うに至るまでの事情には、考慮すべきものが無い訳ではないが、行為そのものは手続違反にとどまらず、法令に反するおそれの強いものであり、容認できるものではない。
また、当該担当者が業者に要請して、代表者印は押印されているが日付欄が空白となっている請求書や未完成の工事に関する工事完成通知書を提出させ、それを支出決議書等に添付していることが確認された。結果として、当該工事が実施され、大阪市に損害は生じていないものの、このような不適正な契約手続が行われたことは、極めて遺憾である。
(2) 本件の調査においては、無断で決裁印を押印するなどの行為は確認できなかったものの、本件通報によって明らかになるまで、このような事態が全く認識されていなかったという事実や、支出に必要な書類が形式上整っていたため決裁を承認したといった証言から判断すれば、決裁行為が形骸化し、チェック機能を果たせていなかったものと考えざるを得ない。4 勧告
上記判断に基づき、次のとおり改善されるよう勧告を行う。
(1) 環境局においては、決裁権限を有する上司が、担当者が作成した虚偽の検査調書及びその関連資料の内容を十分に確認せずに承認し、契約の分割や着工すらしていない工事代金の支出の承認を行ったという事実を真摯に受け止め、二度とこの様なことが発生しないよう、所属職員への徹底した指導や、契約から支出に至る業務執行の手続の厳正な取扱いを実施するよう強く求める。
(2) 工事請負契約等については、環境局のみならず、全市で行われているものであり、事実と異なる検査調書による契約代金の支出等がなされないよう、他の職員によるチェックや工事完了後の写真添付の義務付けなど、工事等の履行確認に関する契約規則の運用マニュアルを策定するとともに、その運用を厳格に行われたい。ダウンロードファイル
勧告文(平成21年2月10日付け)(pdf, 150.15KB)
勧告文を掲載しています。
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大阪市公正職務審査委員会による勧告(平成21年3月30日)<再勧告>
大阪市公正職務審査委員会から、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例第9条第1項の規定に基づき、大阪市長に対して勧告を行いました。
1 概要
その勧告についての記者会見の際、環境局は「簡易入札を行っていた」「同一の工事を分割したのではなく、そもそも性質の異なる別々の工事である」等々の、本委員会の認識と異なる見解を主張していた。
そのため、本委員会では今回問題となった工事について、直接検証を行う必要があると考え、調査を行った。2 調査結果
今回の調査において、一般競争入札に付す必要のある工事が、事務手続を簡便に行うため等の理由から、架空工事又は意図的な分割等の不適正な契約形態をとって、一般競争入札を回避し、随意契約とされていた事実が確認できた。
詳細については、下記のとおりである。
(1) 環境局に対して、平成19・20年度の工事関係書類の提出を依頼し、提出された資料の精査を行った上で、東北環境事業センターについては平成21年3月3日に、西南・南部環境事業センターについては平成21年3月4日に、委員会事務局による実地調査を実施し、それぞれの環境事業センターの職員からヒアリングを行った結果、以下の事実が確認された。
ア 東北環境事業センターにおいては、同一業者(A社)と契約された下記5点の工事の施工実態が無い可能性が高いこと。
(ア) 側溝修繕
契約日 平成20年6月4日 契約金額 346,500円
(イ) 構内通路舗装修繕
契約日 平成20年5月29日 契約金額 378,000円
(ウ) 駐輪場樋外修繕
契約日 平成20年6月10日 契約金額 289,905円
(エ) 構内車止め修繕
契約日 平成20年5月29日 契約金額 372,750円
(オ) 構内歩道修繕
契約日 平成20年6月4日 契約金額 357,000円
イ 西南環境事業センターにおいては、同一業者(A社)と契約された下記3点の工事の施工実態が無い可能性が高いこと。
(ア) 駐輪場樋外修繕
契約日 平成20年5月29日 契約金額 397,950円
(イ) 構内通路舗装修繕
契約日 平成20年6月10日 契約金額 399,000円
(ウ) 駐車場区画線修繕
契約日 平成20年5月21日 契約金額 396,900円
ウ 南部環境事業センターにおいて、同一業者(B社)と契約された下記4点の工事について、決裁・見積書及び契約書の工事名称・施工場所と実際の施工場所とに齟齬が生じていること。
(ア) 事務所棟各所修繕
契約日 平成20年5月29日 契約金額 386,400円
(イ) 倉庫外各所修繕
契約日 平成20年5月19日 契約金額 388,395円
(ウ) 事務室ガラス修繕
契約日 平成20年5月20日 契約金額 309,750円
(エ) 事務室パーテーション修繕
契約日 平成20年5月21日 契約金額 397,950円
(2) 本件につき、環境局から詳細な報告を求めたところ、(1)ア・イに掲げた全ての工事の実態が無かったこと及び(1)ウに掲げた全ての工事が、実際は火災復旧工事であったこと。
また、上記に加えて下記4点の事実が確認された。
ア 東北環境事業センターにおける「自転車置場改修工事」について、契約書に基づかない工事(工事明細書では、自転車置場の6棟9台新設とされているが、実際には、自転車置場7棟10台が設置されており、1棟1台が追加されていた。また、工事明細書にはない固定式バリカーが、6か所設置されていた。)が施工されていること。
契約日 平成20年5月16日 契約金額 995,400円
イ 西南環境事業センターにおける「自転車置場改修工事」について、契約書に基づかない工事(工事明細書では、自転車置場の1棟8台新設とされているが、実際には、自転車置場3棟19台が設置されており、2棟11台が追加されていた。)が施工されていること。
契約日 平成20年4月30日 契約金額 997,500円
ウ 南部環境事業センターにおいて、契約と施工実態に齟齬が生じていること。
(ア) 「機械置場フェンス外修繕」工事について、ネットフェンスが明細書では10mとされているが、実物は3m程度であること。
契約日 平成20年5月16日 契約金額 399,000円
(イ) 「車庫棟壁塗装外修繕」工事についても、火災復旧工事の一部であったこと。
契約日 平成20年5月19日 契約金額 399,000円
エ 西南環境事業センター自転車置場改修工事分の不足分を補うために、中部環境事業センター出張所において、下記の2点について、実際の価額を上回る金額で、契約を締結していたこと。
(ア) 雑排水用会所修繕
契約日 平成20年5月21日 契約金額 396,900円 *1
(イ) 落下防止庇安全ネット修繕
契約日 平成20年5月21日 契約金額 394,800円 *2
業務請負申込書の明細欄において、「別紙のとおり」と記載されているものについて、別紙が添付されていないものがあること。また、明細書が付いているものについても、「単価」・「金額」の記入が無く、申込金額を裏付ける積算となっておらず明細書としての体裁をなしていないこと。
(注)
*1 実際の工事は、37,800円程度の防臭弁1個の取替えであるにも関わらず、見積書を超えた396,900円で、A社と契約が結ばれている。
*2 実際の工事は、197,400円程度の安全ネット8枚の修繕工事である。
3 判断
以上のような事実により、次のとおり判断するに至った。
(1) 地方自治法によれば、基本的には予定価格が250万円を超える場合には、一般競争入札に付すことが求められており(地方自治法第234条第2項、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号及び大阪市契約規則第17条)、大阪市契約規則では、予定価格が200万円を超える場合には(大阪市契約規則第3条第2項及び別表第1)、大阪市契約規則第4条の規定により、契約管財局長に対して契約の締結を請求しなければならないとされている。更に環境局の内規でも、予定価格が100万円を超えるものについては、入札することが求められている。
しかし、今回明らかになった契約については、契約金額の総額が、東北環境事業センター約274万円、西南環境事業センター約275万円、南部環境事業センター約428万円であり、いずれの契約においても工事に特殊性が認められない以上は、一般競争入札に付す必要があったことは明らかであり、事務手続を簡便に行うため等の理由から、入札を回避するために、このような不適正な契約手続が行われていたものであると思われる。
(2) 平成20年12月24日付の環境局からの報告において、当該職員は、「継続して不適切な事務処理をしていたのでは決してなく、事情が重なってこの4件(*3)のみ不適切な事務処理をするに至った」とされているが、今回の調査によって明らかになった事実によれば、少なくとも8件の架空工事や、決裁・見積書及び契約書の工事名称・施工場所と実際の施工場所等とに齟齬が生じている契約が少なくとも4件、2件の水増し契約等の不適正な契約手続が行われており、調査の結果、4件のみが不適切であったという環境局の報告は、事実と明らかに異なるものであった。
これらの事実からすると、環境局が十分な調査を行った上でその報告を行ったものであるとは考えられない。公益通報制度においては、各所属の果たす役割は極めて大きく、安易な調査が行われていたのでは、制度全体に支障をきたすおそれがある。本委員会は、一連の調査結果から、環境局におけるコンプライアンス意識の改革は未だに徹底されていないと判断するほか無く、所属員に対してコンプライアンス意識の浸透を図る必要があると考える。特に契約事務などで公金を取り扱う者やその管理監督者には、公正な職務の執行が強く求められるにも関わらず、あまりにも安直に架空・分割契約が行われ、ほぼノーチェックで決裁が通っており、環境局の内部統制体制に問題があったといわざるを得ない。
(3) 今回明らかになった不適正な契約は、40万円以下の工事であれば、工事の履行を確認する検査調書の作成を省略できる制度を、意図的に利用したものであると思われる。これら検査調書の作成を省略できる契約についても、適正な執行が行われるよう、努める必要がある。
(4) 今回判明した事案以外にも、明細書の添付が為されていない若しくは明細書の記載が不十分である等の不適切な業務請負申込書が添付された決裁文書が複数存在しており、契約金額についても本件と同様に90万円台や30万円台である契約が多々見られるなど、他にも不適正な契約が存在しているという疑念が拭いされない。
(5) 東北環境事業センター、西南環境事業センター、南部環境事業センターにおいてはいずれも250万円を超える工事を意図的に分割して、A社又はB社と随意契約を行っている。これは明らかに入札逃れである。もし、一般競争入札が行われていたならば、大阪市における平成20年度の建築工事請負契約の平均落札率が85%程度であることを鑑みれば、コストが削減できていた可能性があり、実際に行われた工事の設計金額が正当なものであったのかという検討とともに、環境局が過去に行った契約の検証を行う必要がある。
(6) また、環境局の行った随意契約については、A社又はB社が相手方となっているものが突出して多く、両社の合計が平成19年度の建築関係の契約件数については、38.1%、金額ベースでは37.3%であり、平成20年度においても、契約件数で46.3%、金額ベースでは26.2%と寡占状態になっており、工事を意図的に分割して、A社又はB社と随意契約を行っている可能性が高い。
(7) さらに調査によれば、業務企画担当(*4)においても、担当者がこのような事態を十分に把握した上で、入札回避のためにあえて、施設管理担当に対して契約の分割を示唆又は黙認していた可能性があり、架空工事や意図的な分割等の不適正な契約の慣行が、環境局において過去から組織的に継続して行われていた疑いが拭いされない。
(注)
*3 平成21年2月10日付勧告の4件(別紙のⅠ~Ⅳ)。
*4 環境局事業部の下部組織で、課に相当する部署であり、環境事業センターとの連絡調整等を担当している。
4 勧告
上記の判断に基づき、次のとおり改善されるよう勧告を行う。
(1) 環境局における平成20年度の建築関係契約において、同一業者に対して少なくとも8件の架空工事による支出が確認されたことや、決裁・見積書及び契約書の工事名称・施工場所と実際の施工場所等とに齟齬が生じている契約が少なくとも4件確認されたこと及び実際の工事金額を遥かに上回る金額での契約が2件確認されたことは極めて遺憾であり、他にも見積書の明細に「単価」・「金額」が記載されていないなど、架空工事又は意図的な分割等の不適正な契約である疑いの強い決裁文書が存在することから、環境局において、保存年限内の契約関係書類については全件調査し、その実態及び原因を可能な限り究明すること。
(2) (1)により確認された架空工事又は意図的な分割等の不適正な契約によって、大阪市に損害が生じているのであれば、関係者から損失を補填させること。
(3) 今回の架空工事又は意図的な分割等の不適正な契約の決裁文書では、工事の履行確認を行う検査調書の省略が可能な40万円以下の契約や、環境局の内規で入札を行わず随意契約が可能な100万円以下の契約が意図的に利用されていることから、先の勧告においても求めたように、環境局において、このような工事契約の設計価格の確認、適正な見積もり比較、現地確認・写真添付とともに複数の者による履行確認など、再発防止策を徹底すること。
(4) 上記の調査の経過については、本委員会に適宜報告を行うとともに、損失補填や再発防止策の策定と再発防止策のルール化についても、報告されたい。
(5) 条例第6条第3項及び第7条第1項に基づいて、大阪市の機関が行う通報対象事実の調査及び報告は、本委員会における審議の基礎事実となるものであり、本委員会としては、大阪市の内部統制体制を信頼して、この調査を依頼しているものである。したがって、今回のように環境局長からの調査報告が不十分であったり、結果として虚偽のものであったりすれば、公益通報制度の信頼性そのものに大きな影響を与えることから、今後は事実と異なる報告がなされることのないよう、真摯に調査に取り組まれることを強く求める。
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