監察部による報道発表の内容(第25-01-142・145号)
2023年7月31日
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大阪市公正職務審査委員会からの意見(平成25年6月19日)
本日、大阪市公正職務審査委員会から、職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例第24条第1項の規定に基づき、大阪市総務局監察部長に対して意見が出されましたので、お知らせします。意見書の内容は以下のとおりです。
平成25年5月31日に総務局監察部が公表した「平成24年度における職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例の運用状況」(以下「条例の運用状況」という。)に記載された内容に関して公益通報が寄せられたため、当該通報に係る調査及び審議を実施しました。その結果に基づき、次のとおり意見を表明します。
1 審議結果の概要
(1) 通報概要
条例の運用状況の中で公表された「教員が勤務先である学校内にソファ、冷蔵庫、テレビ等を持ち込み、ほとんど毎週末、生徒と麻雀をするとともに、月に数回程度宿泊していたことが確認されたため、当該教員に対して厳重に注意し、即刻やめるよう指導した。」という内容(以下「公表内容」という。)は、総務局監察部が事実無根の内容を報道発表したものであり、調査を行った総務局監察部の職員が虚偽の報告を作成したものである。
(2) 本委員会における調査結果
本委員会において、平成25年6月12日及び同月14日に、公表内容に係る通報の調査(以下「前回調査」という。)を行った総務局監察部の職員(以下「監察部職員」という。)3名及び条例の運用状況の公表に関与した監察部職員1名並びに当該学校の校長(以下「学校長」という。)及び当該教員に対するヒアリング調査を行った。
公表内容は、以下の4つの事実から構成されている。
・教員が勤務先である学校内にソファ、冷蔵庫、テレビ等を持ち込んだ(事実①)
・(当該教員が)ほとんど毎週末、生徒と麻雀をしていた(事実②)
・(当該教員が当該学校に)月に数回程度宿泊していた(事実③)
・当該教員に対して厳重に注意し、即刻やめるよう指導した(事実④)
これらの事実について次のとおり事実認定を行った。
ア 事実①について
学校には、ソファ、冷蔵庫、テレビ等が置いてあることが認められるが、ソファ、冷蔵庫及びテレビについては備品としての登録はなされておらず、所有者が明確ではないものの、少なくとも当該教員が持ち込んだものとは認められない。
前回調査結果においては、冷蔵庫やテレビ、DVD再生機などを確認した、大きなソファが1台設置されていたと報告されており、当該教員が持ち込んだとの事実の記載はなかった。
イ 事実②について
前回調査結果では、当該教員が麻雀をしていた相手は「教え子」とされており、「生徒」と麻雀をしていたとの事実は認められなかった。
また、今回の調査の範囲では、当該教諭が校内で教え子と麻雀を行った事実は認められなかった。
前回調査に係る通報で指摘された事実の1点は、当該教員が学校で宿泊をしていることであったところ、「ほとんど毎週末、教え子と麻雀をする」という事実は、通報内容とはなっていないことから、監察部職員が知り得る事実ではなく、学校長が監察部職員に対し、当該教員が学校での宿泊を外部の者から疑われる事項の一つとして、他の事例と並列的に進んで話したものと認められる。
この点、学校長が監察部職員に対し、当該教員が麻雀を行っていた場所について「校内である」旨を明言した事実も、「校外である」旨を明言した事実も認められないが、監察部職員が学校長に対し、通報対象事実である学校での宿泊が事実かどうか確認したときに、学校長が匿名の投書を受け、すぐに当該教員にヒアリングを実施し、当該教員が校内で宿泊している事実を認めたと説明したため、監察部職員がさらに校内で宿泊していたと思われるような怪しいことはないかと質問した際、学校長が当該教員から聞いた内容として校内で宿泊していたと疑われる行動をたくさん挙示する中の一つの行動として「校内で」教え子と遅くまで麻雀をしていたと受け取られるような説明をしたものと認められる。また、頻度についても学校長が進んで述べなければ監察部職員には知りえない事実であり、そのように説明したものと認められる。ただし、「教え子」がどのような年代の者かの明言はなかった。
ウ 事実③について
当該教員が、校内に月数回程度宿泊していた事実及び宿泊していると外部の者から疑われるような事実があったと認められる。
エ 事実④について
学校長が、前回調査に係る通報とは別のFAXによる投書を受けた翌2月6日、当該教員に対して、FAXの内容について確認し、校内に宿泊していること及び宿泊していると外部の者から疑われるような行為について注意し、それらを即刻やめるように強く指導したという事実は認められる。
なお、前回調査結果においても、学校長が当該教員に指導した旨報告されている。
2 本委員会における判断
(1) 公表内容の記載について
公表内容については、以下のとおりその一部に不正確な表現や、調査結果の表現と齟齬する内容が見受けられるため、公表内容の訂正が必要である。
ア 事実①について
当該教員が学校内にソファ、冷蔵庫、テレビを「持ち込んだ」という事実は認められず、不正確な表現である。
イ 事実②について
「生徒」という表現は「教え子」の誤りであるが、この点については既に平成25年6月5日に訂 正されている。
なお、事実②は、調査結果報告書では、当該教員の学校での宿泊を外部の人から疑われるであろう事項の一つとして学校長により挙示されたものにすぎなかった。
ウ 事実③について
事実であり、公表内容に不適正な点は見られない。
エ 事実④について
注意指導を行った主語が明確に記載されていないが、これまでの条例の運用状況における記載等と比して不十分であるとまでは言えない。
(2) 調査結果報告書の記載について
前回調査は、①教員が学校に宿泊している、②その他の通報に基づいて行われたものである。
前回調査の結果、学校内にソファ、冷蔵庫、テレビ等があった事実、当該教員が月に数回程度宿泊していた事実、学校長が当該教員に対して即刻やめるよう指導した旨の事実はいずれも認定されており、麻雀の話は、前回調査において、監察部職員が学校長に対し、教員が学校に宿泊している事実についての聞き取りの際に、学校長が、当該教員の学校での宿泊を外部の人から疑われるであろう事項の一つとして「ほとんど毎週末、教え子と遅くまで麻雀していた」ことを挙げていたものである。
かかる状況からすると、学校での宿泊について調査を行った監察部職員が学校長の説明を「校内で」教え子と遅くまで麻雀をしていたと受け取ることは不自然なことではなく、その旨の調査結果報告書の記載内容が学校長からヒアリングした結果の報告として虚偽であるとまでは言えない。そもそも、前回調査において監察部職員が虚偽の報告を行う理由も認められない。
(3) 通報対象者である当該教員に対する聞き取りについて
公益通報に係る調査において、通報対象者本人への聞き取りは、当該本人に弁明の機会を与えるという意味においても、原則として行うことが望ましい。
しかし、通報内容によっては、通報対象者本人への聞き取りが当該本人に極度の精神的負担をかける場合や事実の隠蔽の動機を与える場合等、弁明の機会の付与というメリットを考量してもなおデメリットが上回るような場合や、他の調査から既に本人が通報に係る事実を認めていることを明らかに確認でき、重ねて弁明の機会を付与するまでもないような場合には、通報対象者本人への聞き取りを行わないことも認められる。
また、公益通報制度は、大阪市の職員の違法不適正な職務の執行を通報を通じて是正することが目的で設置された制度であり、調査の際、通報等を契機に対象者が真摯に反省して、関係者を含めて改善に取り組んでいる方向性が現実に認められるような場合には、あえて通報対象者への聞き取りを行わなくても調査が不十分とは言えない。
この点、当該教員に対し聞き取りを行わなかった理由について、前回調査を行った監察部職員は、次のように供述している。
① 当初少なくとも学校長及び当該教員の2名について聞き取り調査を行う方針で学校に出向き、まず、学校長に調査の趣旨を説明したところ、学校長が学校に寄せられていたFAXによる投書を監察部職員に示し、当該FAXに基づき、既に当該教員に対して学校での宿泊について事実確認をするとともに、宿泊やそうと疑われる行為は即刻やめるようにと強く注意指導してやめさせた旨の説明を聞いた上で、寝泊りしていたとされる場所を訪れて、宿泊している痕跡が現実に認められず、当該教員がその場において清掃作業に従事するなど改善の途上にあることを確認したため
② 現場を確認した際、学校長になお不適正な点を2~3指摘し、学校長に指導を行うよう指示したため
③ その他の件に関しては、上記FAXによる投書に基づいて、既に学校長が対処していたことが確認できたため(なお、調査結果報告書の備考欄にはその他の件について当該教員に聞き取りを行う予定であったが、学校側からの要請で3月8日には実施しなかった旨記載されている。当該教員も、本委員会の調査に対し、監察部職員が帰った後、学校長との会話の中で、学校長からその他の件については、学校長が対処しているということで話は終わらせたと言われた旨供述している。)
上記供述によると、監察部職員は、少なくとも学校長及び当該教員の2名について聞き取りを行う方針で、抜き打ちでの実地調査に臨んだところ、学校において、管理監督者である学校長の説明と現場調査から、通報指摘の事実内容の確認ができたことに加えて、当該教員がその事実を認めており、学校長の指導の下に既にその改善が図られている途上にあることが確認できたということであり、かかる状況を鑑みると、当該教員への聴取を行わなかった監察部職員の判断は、前記公益通報制度の趣旨に照らし、十分に合理的なものであると言える。
したがって、前回調査において当該教員に対して、通報対象外であった麻雀の具体的な状況について聞き取りを行わなかった事について、特段の問題はなく、前回調査が調査不十分であったとは評価できない。
(4) 改善措置及び再発防止措置について
本委員会による調査の中で、総務局監察部は、本委員会の判断結果を踏まえて、公表内容の再度の一部訂正と関係者への謝罪を行うなど必要な措置をとる旨を明言しており、改善措置がとられているものと認められる。
また、本委員会による調査の中で、総務局監察部から、通報案件に係る調査に当たっては、今後、事案に応じて適切に通報指摘事実の存否の確認に不可欠な関係者(通報対象者及びその管理監督者、通報指摘の事実により被害を受けていると認められる方等)からの聞き取り調査を実施し、原則として聞き取り内容をその場で本人に確認するようにすること、調査結果報告書の作成経緯が分かる客観的な調査記録(調書)の作成及び保管を徹底するとともに、調査対象者に調査結果の内容を確認したかどうかの記録をとるよう所定の様式を定めること、報道発表に当たっては関係資料の確認を徹底する旨の報告を受けており、再発防止措置がとられていると認められる。
(5) 結論
よって、公表内容の記載の一部について不適正な事実が認められたものの、既に必要な措置がとられているため、勧告は行わないが、以下のとおり意見を述べることとした。
3 意見
前回調査において事実無根の内容に基づく虚偽の報告がなされたとする事実は認められないが、条例の運用状況を公表する際の表現の一部について、調査結果報告書の表現との齟齬がみられる点は問題があったと言わざるを得ない。
すなわち、今回、ソファ等について、それらが校内に置かれている事実は調査結果報告書に明記されているものの、それらがいつ、どのような経緯で校内に置かれることになったのかは明らかでないにもかかわらず、ソファ等を「持ち込み」と断定記載している点や、すでに訂正を行っているが、調査結果報告書にある「教え子」という表現を「生徒」と変更した点など、調査結果報告書に記載されている以外の表現を用いる際には、慎重な検討と確認を行うべきであったが、その点が不十分であったように思慮する。
また「教員が学校に宿泊している」という通報であったにもかかわらず、宿泊を疑わせる行動の一例としてあげられていた「教え子と麻雀をしていた」という部分を含めて公表した点についても、教員・関係者に対する配慮が不足していたと考える。
今後、条例の運用状況において公表を行う際には、その表現方法や記載する事項の選定について、十分な注意を払うように努められたい。
4 附記
公表内容自体には、当該学校を特定できる情報は含まれていなかったにもかかわらず、それ以外の情報が別途提供されたことにより、対象の学校が相当程度特定できることとなってしまったことについては、情報提供のあり方に問題があったと言わざるを得ず、極めて遺憾である。
また今回の委員会での調査過程において、去る6月11日に調査対象者に関する情報が事前に公となったことについては、公益通報制度を運用するに当たっての情報管理のあり方として極めて問題があることを、特に附記しておく。
条例の運用状況については、公益通報の受理件数、処理件数等とともに、前年度に行った勧告、意見書の概要、さらに不適正な事実が確認されたが、是正措置等がなされたものの事例の中から数例をピックアップして公表されているが、今回、調査結果と公表内容との間に齟齬が生じたことに鑑み、本委員会としても、今後公表に際しては再度調査結果と公表内容案を照合し、公表が適切になされるよう細心の注意を払っていく所存である。
(参考)
大阪市公正職務審査委員会(コンプライアンス委員会)
委員長 播磨 政明(はりま まさあき・弁護士)
委員長代理 大西 寛文(おおにし ひろふみ・公認会計士)
委員 大砂 裕幸(おおすな ひろゆき・弁護士)
委員 小寺 史郎(こてら しろう・弁護士)
委員 重松 孝司(しげまつ たかし・公認会計士)
委員 赤津 加奈美(あかつ かなみ・弁護士)
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