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再発見!すみよし文化レポート その13

2015年1月31日

ページ番号:294749

再発見!すみよし文化レポートその13 住吉大社のかかしプロジェクト 岡 康史(おか やすし)さん

住吉区で文化的・歴史的活動をされている個人や団体に活動内容や住吉の魅力についてお話を聞いていきます。

 

結束し、集まり、さらに大きな力を生む 住吉大社のかかしプロジェクト 岡 康史さん

 昨年の秋、住吉大社の御田では、個性豊かな10体のかかしが稲穂を見守っていました。胸には小学校や幼稚園の名が誇らしげに貼られています。神様に捧げるお米を作る御田では、稲を植える御田植祭から稲を刈る御田刈祭まで、年間を通して神事が行われます。昨年から住吉大社では、神事とは別に「住吉かかしプロジェクト」に取り組んでいます。かかしや稲がアフリカに渡ったり、アフリカの音楽家が住吉大社でコンサートを行ったり、活動の場は今や海外にも広がっています。1800年の歴史を持ち、住吉の文化資源のひとつである住吉大社が、地域の人々や海外の人々とのつながりの中から取り組もうとしていること、これからの住吉の文化や歴史に思うことなど、かかしプロジェクトの担当者でもある住吉大社権禰宜(ごんねぎ)岡康史(おか やすし)さんにお伺いします

御田に立つかかし、住吉かかしプロジェクトとは?


墨江幼稚園の児童がつくったかかし


ブルキナファソの元気な子どもたちです

―昨年の秋ごろ、住吉大社の御田にかかしが立っている姿を見かけました。あのかかしは毎年御田に立っているのでしょうか?

 あのかかしは、昨年度(平成25年度)から始めた「住吉かかしプロジェクト」のかかしです。もともとは、住吉大社の高井宮司が「日本の良さ、原風景を住吉に取り戻したい」との考えに基づき、御田にかかしを立てようと始めました。水が輝く田んぼに蛙が鳴き、川にはホタルが飛んで、秋にはかかしが立つ、といった昔ながらの日本の風景を取り戻したいという思いからです。今は、どんどん都会化が進んでいますが、それでもまだ、住吉には昔ながらの風景が残っています。住吉さん(住吉大社の愛称)だけでも、そんな風景を保っていたいと思って始めました。

 

―かかしはどなたが作られているのでしょうか?

 近隣の小学校や幼稚園の子どもたちによって作られています。昨年度は7体、本年度は10体のかかしを作っていただきました。

 

―小学校や幼稚園の子どもたちがかかしを作るようになったきっかけはあったのでしょうか?

 もともと地元の幼稚園さんとは交流がありました。御田ではアイガモ農法を取り入れているのですが、以前は業者さんにお願いしていたのを、数年前から地元の幼稚園児さんに放鳥をお願いしています。みなさん大騒ぎで楽しんでいただいています。また、住吉大社の御田の稲は余分に作りますので、近隣の幼稚園さんや保育園さんにお配りしていました。ある時ふと「この配った稲は、どんな風に育てられているのかな」と気になったのです。どんな子どもたちがどんなふうに稲を育てているのか、知りたくなりました。せっかくだから稲を配るだけでなく「もっと、地域のみなさんとつながりがほしい」と思いました。まずは、稲をお配りしている幼稚園さんにお声掛けして、徐々に参加される幼稚園や小学校さんが増えました。小学校5年生の授業で稲について学ぶそうですので、その一環として参加されている学校もあります。ある幼稚園さんでは、みんなでアイデアを出して、コンテストをして、名前を付けて、ととても盛り上がって、本当は1体作っていただくようお願いしていたのですが、二つのアイデアが人気を二分して、なかなか決められず、結局2体作られた、ということもあります(笑い)

 

―名前も付けるとなると愛着が湧きますものね。

 はい。かかしは御田刈祭が終わった後は一度それぞれにお返ししたのですが、どのかかしもきちんと保管されていました。ある学校では職員室に飾られて、大事にしていただいていました。

 

―みなさん、楽しんで作られたのですね。岡さんは、かかし作りをされた子どもたちたちにはどんな事を感じ取ってほしいですか?

 子どもたちには日本の稲作文化について知ってほしいと思います。私は米どころの新潟出身ですが、私自身お米を作ったことは今までありませんでした。一度、自宅で籾種を蒔いて稲を育ててみたのですよ。住吉大社ではヒノヒカリというお米を育てているのですが、他のお米よりも発芽に時間がかかる品種らしく、なかなか芽が出ず諦めかけていたら、いつの間にか発芽していました。とても嬉しかったです。子どもたちにもそんな経験をしてほしいと思います。普段食べているご飯がどう作られているのか、知ってほしいです。かかしは『古事記』に登場する知恵の神さまですし、ぜひ、かかしを通して日本の稲作文化を知ってほしいですね。

かかし、アフリカに渡る


「住吉かかしプロジェクト」から贈られたかかしを田んぼに運ぶ、ブルキナファソの子どもたち


田んぼにかかしを立てるブルキナファソの子どもたち


ブルキナファソの田んぼに立つかかしと子ども

―かかしがきっかけになればいいですよね。ところで、子どもたちが作ったかかしはアフリカにも渡っているとお伺いしました。これにはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

 アフリカのブルキナファソという国で女性の就労支援をされている、森重裕子さんという方から、「住吉大社の稲を分けていただけないか」とお声掛けいただいたのがきっかけです。ブルキナファソでは、お米作りは女性の仕事なのだそうです。その話をお伺いして、「お米を作るなら、かかしが要るだろう!」と考えました(笑い)。そこで、アフリカに子どもたちが作ったかかしを送ろうと思いました。

 

―なるほど。ブルキナファソの女性の就労支援がきっかけで、かかしが海を渡ったのですね。その話を聞かれた幼稚園や小学校のみなさんは驚かれたのではないでしょうか。

 はい。驚かれていました。かかしが出発する前にはお祓いをして、渡航安全祈願祭を行いました。住吉さんは遣唐使もお参りした渡航安全の神さまですから。祈願の様子は新聞にも載りましたよ。自分たちが作ったかかしが、遠いブルキナファソに行ったのだという思い出を持っていただきたいですね。私自身もかかしプロジェクトを通して今まで知ることもなかったブルキナファソという国を知り、親近感を持つようになりました。

 

―ブルキナファソの子どもたちの反応はいかがですか?

 (ブルキナファソの田んぼで、現地の子どもたちがかかしを立てている写真を見ながら)写真を見る限り、とても楽しそうにしていますよね。前回、かかしを送ったときに、一緒に画用紙と色鉛筆を送ったのですが、その画用紙と色鉛筆を使って、とても上手にかかしの絵を描いて送ってくれました。ブルキナファソにもかかしはあるそうですが、もっとシンプルなものらしいので、いろんな衣装を着ていろんな表情をした日本の子どもたちが作ったかかしを見て、驚いたかもしれませんね。感想を聞いてみたいですね。今度は、春ごろにブルキナファソの子どもたちが作ったかかしを日本に送ってもらう企画を検討中です。


かかしの絵を描くブルキナファソの子どもたち


一生懸命に描いています

新しいものを取り入れつつ、ずっと生活の中にある住吉さん


昨年5月に開催された「レンゲdeすみ博」の様子です

―楽しみですね。ところで、1800年の歴史を持つ住吉大社の御田では御田植祭や御田刈祭などの神事が行われています。その一方で、「住吉かかしプロジェクト」のように新しい活動も出てきています。神社にとっての御田は神聖なものだと思うのですが、このように画期的な活動をするにあたって障害はないのでしょうか?

 私が住吉大社に赴任して、とても驚いたのが5月に開催される「レンゲdeすみ博」という地域イベントです。御田を一般の方に解放するなんて、神職の立場から見ると衝撃的なことです。おっしゃるように御田は、神さまのお供えを作る為の田んぼです。神事の際に立ち入る農家の方以外は、通常は一般の方は入れませんでした。でも今は、これも大切な事かなと思っています。レンゲを摘む体験なんて、今の子どもたちはなかなかできません。「レンゲdeすみ博」をきっかけに近隣の幼稚園さんも御田に来られるようになりました。住吉さんでのいい思い出を、たくさん作ってほしいと思っています。それに、そもそも神道は新しいものに対して柔軟です。たとえば京都の祇園祭の鉾を飾るのはペルシャなどの外国の織物を輸入したものです。神事は同じ日同じ時に同じ事を行います。そういった変わらず踏襲するものもありますが、神さまによろこんでもらう為、新しいものを取り入れることに神道は寛容です。

 

―住吉さんは「住吉さん」の愛称のとおり、歴史の重みのある神社でありながら普段の生活に溶け込んだ存在ですね。

 はい。初詣には今年(平成27年)には283万人の方が参拝に来られました。「混んでいるなあ」とおっしゃりながらも「正月はやっぱり住吉さんや」と、毎年お越しくださいます1800年前というと、今私たちが言う日本文化が成立する前です。その時から在る住吉さんは、ずっとみなさんの生活の一部になっています。古代から引き継がれたものに対して、みなさん落ち着かれるのではないでしょうか。もちろん神社ですので信仰は大事なのですが、信仰というよりも生活と一体になっているところがあります。

 

―それは、生活のどのような場面で、でしょうか?

 例えばお正月です。お正月は歳神さまをお迎えして家族そろってお祝いします。ところが近年は時代の流れとともに商業や流通が盛んになり、お正月がどんどん短くなって形骸化してしまっていると思います。昔のように地面に杭を打てないなど、仕方ないところもあるのですが、門松を飾らない家がほとんどです。鏡餅、締め飾り、門松を揃えて歳神さまをお迎えするのですが、その意味が家庭で伝えられていないからでしょう。私が神職であるということもありますが、自分の家では子どもたちと一緒に鏡餅を作り、お正月の意味を教えています。一般の家庭でも、鏡餅や締め飾りや門松を飾る意味を知ってほしいと思います。どんどん省力されていくのは意義が継承されていないからです。みなさん節分に恵方巻きを召しあがりますが、恵方とは何かをご存じない方もおられるのではないでしょうか。親自身が知らないと子どもにも教えられません。日本の心を親以外が教える、教えてもらう機会も必要だと思います。

 

―なるほど。古いことやずっと続いていることには大切な意味がある。それを伝えたり教えたりする機会が少なくなっているのですね。

 そうですね。家庭以外の縦社会で教わることはたくさんあります。例えば青年団や子ども会などで年令の違う人たち同士が集って、長老から教わることはたくさんあります。今回、かかし作りに、ある子ども会さんが参加していただきました。その時ひとつだけお願いしたのは、「子どもたちだけでなく大人の方も年配の方も一緒に作ってください」ということです。年配の方は解けにくい縄の締め方など良くご存じです。そういう知恵を子どもたちに教えていただいたりして、地域が結束していっていただきたいですね。

御田刈祭の様子その1です。


御田刈祭の様子その2です。


御田刈祭の様子その3です

結束して 生まれるものとは


子どもも大人も一緒にかかしを作ります。

―地域のいろんな人が集まる場から、地域の結束が生まれるのでしょうか。地域の結束という点で「住吉さん」の役割は何だと思われますか?

 「祭り」がカギになると思っています。住吉さんで言えば夏祭りです。普段から地域のみなさんが結束していないと地域で「祭り」に参加しようとはならないと思います。それぞれ結束した地域のみなさんがお祭りでさらに集って、他の地域の方々と交流して、より大きな力が出せる。大人だけでも、子どもだけでも、年配の方だけでもだめです。統率する人がいて、実働する人がいないと、結束とは言わないと思います。人が集うイコール烏合の衆ではいけないと思います。住吉大社の先代宮司である真弓常忠名誉宮司さんから「天の時、地の利、人の和」という言葉を教えていただきました。人が集まり結束することはとても大事なのです。真弓宮司さんは住吉大社で神輿渡御を復活させた方です。いろんな地域の人が集まって、「住吉さんの神輿を堺に運ぶのだ!」という意気ごみで神輿を担ぎます。祭りの復興は地域復興でもあります。大人も子どもも結束することで、古いものも新しいものも継承されていくと思います。住吉さんがその結束の場になれればと思います。

 

―結束し、集まり、さらに大きな力を生むということですね。住吉さんから見て、これからの住吉はどうなってほしいと思いますか?

 はい。住吉は戦火を免れた土地が多く、古い町会が今も残っています。古くからのものが温められています。新しい住民の方もおられるでしょうし、去られる方もおられるとは思いますが、地域が結束して、固まることで大きな力を持ってほしいと思います。もっとも何もないところから何かを生むことはできません。

 

―かかしプロジェクトは何かを生むでしょうか?

 もっといろんな地域が「住吉かかしプロジェクト」に加わっていただきたいです。今後も継続していくことで、子どもたちにとってこのプロジェクトを通して、住吉さんや住吉という街での、いい思い出を重ねていってほしいです。20年後大人になったその子どもたちは、必ず住吉に帰ってくると思います。その時がこのプロジェクトの「成功」なのだと思います。それでいいと思います。

岡 康史 (おか やすし)

住吉大社 権禰宜 

昭和45年(1970)生 新潟県出身

平成5年 皇學館大学卒業後、京都の祇園 八坂神社奉職

平成19年9月 住吉大社 転任

現在 庶務課長を務める。

平成25年度より住吉かかしプロジェクトを担当

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