再発見!すみよし文化レポート その18
2016年4月30日
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再発見!すみよし文化レポート その18 八房流南京玉すだれ住吉御気楽家 八房乃ノ香(やつふさののか)さん
住吉区で文化的・歴史的活動をされている個人や団体に活動内容や住吉の魅力についてお話を聞いていきます。
みんなに楽しんでほしい!見る、出会う、伝承する大道芸 八房流南京玉すだれ住吉御気楽家 八房乃ノ香さん
色とりどりの鮮やかな衣装に身を包んで披露される南京玉すだれや皿回し。くるくると回る皿や、南京すだれ1本から橋や鯛など様々な形が次々とつくられる様子に、子どもも大人もついつい見入ってしまいます。明るい掛け声や笑顔に、手拍子もさらに弾みます。八房流南京玉すだれ住吉御気楽家(すみよしおきらくや)は、住吉区内を中心にイベントや施設などで活躍する大道芸伝承グループです。大道芸を始めたきっかけ、大道芸を通して知ったこと、住吉のまちへの思いなどを主宰の八房乃ノ香(やつふさののか)さんにお伺いしました。
平成26年度レンゲdeすみ博での様子です。外国人の方も子どもたちも一緒に楽しんでいます。
手も足もついつい動く「さてさてさてさて」
―まずは、大道芸を始めたきっかけを教えてください。
私は、平成20年まで住吉区内の病院で保育士として、院内託児所や小児病棟の病児保育に関わってきました。院内学級から帰ってきた小学生や中学生はプレイルームで小さい子どもたちと一緒にお絵かきしたり遊んだりしています。「小さい子から中学生まで、みんなで一緒に遊べるツールは何かないかな」と思っていました。病院には、ホスピタルクラウンやいろんな方が来られ、子どもたちと一緒に遊んでくれます。自分も何かできないかと思っていたときに、ある保育士仲間から、保育士向けの大道芸教室の案内をもらいました。
―保育士さん向けの大道芸の教室があったんですね。
はい。私が所属する八房流のお家元は、次の世代に伝統芸能としての大道芸を伝承することを大切にしていましたので、「子どもたちに伝えてほしい」という気持ちで、保育士向けの教室を開いていました。その教室は夜間に開講し、お家元は神戸から教えにこられていました。
―実際に大道芸を習われてみていかがでしたか?
もう、楽しくなってしまって。仕事をしていても病院でついつい、口上をくちずさんでしまったりしました(笑い)。それを聞いた子どもたちの反応がすごいんです。「さてさてさてさて」というフレーズを聞いて、普段はリハビリを嫌がる子どもが、手や足を動かそうとするのを見て、「これはええことや!」と思って、本格的に始めました。平成12年に八房流に正式に入門して、平成16年には名取審査に合格して「八房乃ノ香」の名前をもらいました。
―ついつい手も足も動く。子どもたちも楽しい気持ちになったんでしょうね。その後、病院では大道芸を披露されたんでしょうか
院内で開くクリスマス会やお正月などに披露しました。お陰さまでみなさんに好評で、私自身も楽しかったです。入院されていた方が退院されるときに「大道芸、楽しかったよ。」と声をかけてくださるのが嬉しかったです。病院は平成20年の3月に退職したのですが、5月には、「八房流南京玉すだれ住吉御気楽家」を立ち上げていました。神戸まつりに出演した時の様子その1
神戸まつりに出演した時の様子その2
玉すだれでは、いろいろな形が作られます。写真は鯛を模した様子。ご当地バージョンの口上をつくるときには、現地に出かけて実際に見て、口上に入れるフレーズを考えるとのこと。
喜ばれると、うれしい
子どもたちが描いた作文を前に笑顔の乃ノ香さん。
―退職して、たった2ヶ月で立ち上げるなんて、すごい行動力ですね。
退職しても、子どもたちに関わっていたいな、と思ったんです。立ち上げ前に、教室の仲間に誘われて、堺のある施設で芸を披露しました。みなさん初めは怪訝な顔をされていたんですが、芸が終わって帰る時には、「また来てね!」とおっしゃっていただきました。みなさんに喜んでいただくってうれしいですよね。励みになりました。初めたころは5人で活動していました。ほとんどが昔の保育士仲間で、声をかけたら「やりたい!」と言ってくれて。それから教室を始めましたので、今は生徒さんを中心に10人になりました。
―乃ノ香さんは、教室もされているんですね。
住吉区内で2か所、堺市内で1か所、教室を持っています。ある程度の技を習得しないとみなさんにお見せできませんし、前後の出演者同士でぶつかりそうになったり、玉すだれを長く垂らして持つ時に他の人に踏まれそうになったり、意外に危険なシーンも多いんです。しっかり練習します。
―練習は大事なんですね。普段は教室で教えられたり、イベントで披露したり、施設に訪問されたりしているんですか。
小学校で教えたこともあります。10月から1カ月間、小学校の総合学習の時間に、皿回しや玉すだれを各クラスで教えて、11月に発表会を開くという授業でした。発表会のときには先生が感激して泣かれていました。皿回しのクラスでは、うまく回せなかった子どもさんがいた場合に、私は黒子として代りに回して、その子どもさんに渡す役割をしようと思っていたんですが、その先生は自分で技を習得して、先生自身で黒子役をされました。子どもたちが皿を回せたときはとても感動されていました。
―先生にとっても、良い経験になったんでしょうね。
そうかもしれませんね。子どもたちも発表会を見たご家族に、褒めてもらってうれしかったようです。家庭で皿回しや玉すだれをきっかけに親子が会話できているのは良いことですね。小学校や保育所にも行きます。これは、子どもたちが描いてくれた作文です。(作文を広げながら)時々この作文を読んで励みにしています。訪問した保育所の保育士さんが転勤して、転勤先からまた声をかけていただくこともあります。うれしいですね。
―それはとてもうれしいですね。他に、活動していて印象に残っていることはありますか?
東北大震災の被災地にある仮設住宅にお邪魔したことがあります。立派な集会所が出来たけれど、集まる機会が無いという話を聞きましたので、私たち御気楽家の芸を見ていただこうと思って行った訳です。私たちは日ごろから、訪問先のご当地の名所が出てくる、ご当地バージョンの玉すだれをしていたのですが、被災地の場合、今は無くなってしまった場所や建物を盛り込んだご当地バージョンは、地元の方はどう感じるだろうか、他のバージョンを演じた方がいいんじゃないか、と訪問先へ向かうバスの中で話し合っていました。その途中で、ある場所のお城の残骸を見たんです。その時に「やはりご当地バージョンでやろう!」と思いました。実際にやってみたら、地元の方は「そうそう、その神社の鳥居があったんだよ!」と喜んでくれました。そして、励ましに行っているつもりの私たちに「大阪に何かあったら、その時は私たちが行くからね。」と励ましていただきました。帰り際に枝豆を湯がいてくださったりしました。以前に、被災地にボランティアで行かれた方が、被災地の方々に会うと癒されるとおっしゃっていたんですが、正直に言うと、「本当にそんなことあるのかな?」と思っていました。でも、実際に被災地の方々に親切な言葉をかけられたりすると、自分が癒されたり励まされたりしたので、今では「その通りだな。」と思っています。
―大事な経験ですね。いろんなところでいろんな方々と関わって来られた乃ノ香さんですが、今後はどのような活動をして行きたいと考えておられますか?
私たちは、伝承することを大切にしています。山形の花笠音頭のように、住吉に住んでいる人なら誰でも大道芸、特に玉すだれができるようになったら楽しいなと思います。みんなに楽しんでほしいです。
―みんなが大道芸ができるまち。楽しそうですね。それでは、住吉というまちは、今後どうなったら良いと思いますか?
住吉は歴史があるまちです。他のまちにも呼んでいただくことが多いですが、歴史や文化については、住吉は他のまちよりも、深いものがあると思っています。そういう歴史や文化を大切にしていけたらと思います。玉すだれの口上には住吉の名所や旧跡やイベントが登場します。玉すだれの軽妙なリズムでどんどん発信できたらと思います。
―最後にこれだけは言っておきたい!ということはありますか。
「次世代への伝承」です。玉すだれは、私の人生のかけがえのないものになりました。私がこれだけ楽しんでやれています。一度みなさんにも、玉すだれに出会ってほしいです。
乃ノ香さん、ありがとうございました。
真剣な練習風景です。
表情に気をつけて練習します。
立ち位置にも気をつけて練習します。
衣装は色が重複しないよう気を配り、お花畑のように華やかになるようにしているとのこと。
八房流南京玉すだれ住吉御気楽家
八房 乃ノ香(やつふさ ののか)
平成20年5月から、大道芸伝承グループ「八房流南京玉すだれ住吉御気楽家(略称:住吉らくや)」を主宰し、住吉区内を中心に、各種施設への訪問、各種行事への出演、講座の開催などの活動を行っている。施設への訪問、行事出演の際には、単に観ていただくだけではなく、演技の前後に、ご覧の方々に体験していただくなど、南京玉すだれ、皿回しなど大道芸の伝承に努めている。
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