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再発見!すみよし文化レポート その20

2024年3月19日

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再発見!すみよし文化レポート その20 白髪(はくはつ)になってからが人生オモシロイ NPO法人WhiteNet(ホワイトネット) 白木裕之(しらきひろゆき)さん

住吉区で文化的・歴史的活動をされている個人や団体に活動内容や住吉の魅力についてお話を聞いていきます。

 

チャレンジできるまちで挑む、貧困高齢者問題


「きものcafe」に集まったみなさん。後列右が白木さん。

 南海電鉄高野線沢ノ町駅降りてすぐの、沢ノ町駅前商店会コミュニティセンターにて毎月第1金曜日に開催される、「きものcafe(カフェ)」や「ツナガリPhoto(フォト)写真展」など、高齢者の社会的孤立を防ぐ事を理念として活動するNPO法人WhiteNet代表理事の白木裕之さんに、活動を始めたきっかけ、普段の活動を通して感じること、住吉への思いなどをお伺いしました。

「きものcafe」は平成28年3月に終了いたしました。再開される場合はこちらでお知らせいたします。

目的は「つながる」こと

―まずは、「きものcafe」を開催する目的を教えてください。

  「きものcafe」は地域にどうしても入っていけない方の、新たな集いの場として運営しています。着物の着付け体験ができたり、着物地で小物が作れたり、いろんなチラシを置いています。各地域には、「ふれあい喫茶」(注意1)という、子どもから大人まで誰でも行ける場所づくりの活動が盛んですが、そこには行けない方もおられます。

 

―「ふれあい喫茶」に行けない方ってどんな方でしょうか。

    そこに住んでいる年数が大きく関係すると思います。30年、40年と長く住んでいても、そこで生まれていなければ、「私はこの土地の人間でない」という意識を持つ方もおられます。特に住吉は古いまちです。ケアマネージャーの仕事を通して出会う方の中には、50年近く今の住所に住み続けている90歳近いおばあさんが、「私は生まれがここじゃないから、ここの人間じゃないのよ。」とおっしゃったりもします。「ふれあい喫茶」は古くからその地域に住む方中心に支えられて運営されています。中には行きにくいと感じる方もいるようです。また、自分が弱っている姿を知り合いに見られたくない、という理由で行かない方もおられます。高齢者が引きこもる理由はいろいろですね。

 

注意1 各地域の福祉会館や公民館で、子どもから高齢者までがコーヒーやジュースなどを飲みながら、自由に語れる場所作り活動。主に各地の地域活動協議会等が行っている。

 

―「きものcafe」では、どんな方でも気軽に入れる工夫があるんでしょうか。

    着物の着付け体験が出来たり、小物が作れたり、いろんなチラシが置いてあるのが特徴だと思います。ただ、「しゃべりに来たよ!」では入って行きにくいですよね。「さ、何かしゃべって!」と言われてもしゃべれないですし。(笑い)何か目的があったり、何かしゃべるきっかけになるツールがある方が、入りやすいと思います。

 

―なるほど。着付けや小物づくりがツールになるんですね。先ほど言われたような、ふだんは引きこもりがちな高齢者の方が多く来られるんでしょうか。

  高齢者はもちろんですが、意外にも、引っ越してきたばかりの若いお母さんや、親子連れなど、いろんな方が来られます。親子連れの方は、「きものcafe」を散歩コースに入れてくれているようで、「他に行くところないから」と言って毎回寄ってくださいます。みんなどこか、つながる場所が欲しいんだと思います。そこに住んでいる人とつながりたい、でも、公的な施設はハードルが高い。ここだと、入りやすいんでしょうね。その若いお母さんは、チラシを貰おうと思って入ってこられたようでした。

 

―「きものcafe」の目指しているものは何でしょうか。

   チラシは行政が発行しているものからボランティア団体、大学生サークル等、なかなか手に入りにくい情報も置いています。「きものcafe」が目指しているのは、居心地の良い空間であることと、情報や人がここにたまって、情報を伝えて、ここからスタートしていろんな人たちがつながることです。

 

―つながることを目指しているんですね。白木さんは「つながる」というフレーズを良く使われますが、「つながる」ことを意識したきっかけはあるんでしょうか。

  以前からボランティア活動はしていたんですが、NPO法人化したのは2011年の3月8日です。丁度、東日本大震災の3日前です。ボランティア活動をしていて、ボランティアと当事者との間に立つコーディネーターの役割が必要だと教えられました。NPO法人化した後に起った震災の被災地にもすぐに行きましたが、究極の状態にあるまちでもさらに、間に立つ人の重要性、コーディネートの必要性、を感じました。そのことは、「きものcafe」の目的にもつながります。行政とまちの人をつなぐ場所が必要だと思います。


「きものcafe」には、いろんな作品が並びます。


テーブルに飾られた折り紙作品です。


楽しいおしゃべりがはずみます。

幸せには「つながり」が必要

―NPO法人化したのはどんな理由があるんでしょうか。

 以前の職場は「ブランチ」と言って身近な地域の総合相談窓口でした。ただ担当地域があり、他地域に課題が見えても動きにくというジレンマもありました。もっと全体的に課題を捉えたい、解決したいと考え、NPO法人をつくって独立することで、自分で地域を関係なく動けると思いました。表現が難しいですが、ケアマネージャーとして勤めて働くということは、担当する相手個人のためにがんばるということです。もっと、社会全体で困っていることに対して何かできないか、と思いました。僕個人単位でできないこともありましたし、NPO法人化することで、大きな問題にも取り組めると考えたからです。

 

―NPO法人化する前と後で違いはありますか?

 NPO法人になる前は、個人の専門職として動いていました。NPO法人化した後は、デザイナー、飲食店経営者、美容師、大学生といった他業者の方たちと出会って、つながって、視野が広がりました。みなさん、根本は同じというか、表現方法が違うだけで考えていることは同じですね。「人に楽しんでもらいたい」「人のためになるにはどうしたらいいか?」と考えています。目指すところは一緒です。だからこそ、どんな業種の人ともつながることができます。

 

―福祉や地域について広く深く考えられているんですね。考えるようになったきっかけは何かありますか?

 その当時の住吉区社会福祉協議会の職員さんの影響が大きいです。その方に「福祉ってなんやと思う?」と聞かれて、その時の僕は答えられなかったんです。以前に、ターミナルケア病院で働いていたことがあります。入院患者さんが「家に帰りたい」とおっしゃるのを聞いて、病院は医療機器もそろっていて万全の対応ができるのに、何故だろう、この患者さんは家に帰ったら幸せになるんだろうか、と思っていました。その後、在宅介護の仕事をしていると、家にいてもみんなが幸せではないんじゃないか、幸せってなんやろう、と考えはじめて、幸せには「つながり」が必要なんじゃないかと思うようになりました。ちなみに、さっきの質問の答えは、「福祉とは幸福の追求」です。今は答えられます。(笑い)また、独立したことも大きく影響していると思います。独立したことで、より深く考えるようになりました。どこかに勤めていたら、どこか他人事というか、どんなニュースを見ていても他人事だと受け取っていたままだったと思います。

 

―他人事、というのはどういう意味ですか?

 僕は独立するまで、「うちの会社は給料が少ない、休みが少ない」と言うことがあったのですが、ある企業の社長さんに、「白木くん、『うちの会社』って言うけど、『うちの会社』って言っていいのは、その会社の社長だけだよ。」と言われました。僕はそれまで人の傘の中でしか働いていなかったことを気づかされました。傘を持っているのは社長で、僕は雨に濡れず守られていたんです。そのくせ、文句を言うのはおかしいですよね。傘はぐらぐらと揺れるし、しっかり持っているのは大変なことですから。そんな風に、出会った方々から教えていただくことが、たくさんあります。だからこそ、今まで勤め先には感謝しかありません。今は他人事ではなくて、自分の事として考えるようになったと思います。

 

―いろんな出会いで考えが広まったり深まったりしているんですね。では、「ツナガリPhoto写真展」のことを教えてください。

 「ツナガリPhoto写真展」は65歳以上の方を主役に、社会とのつながりを感じあえる写真展を目指しています。写真はデータ化できるので、外出が難しい方であっても、インターネットを利用する事で、写真展に関わることができます。自分では外に出られない人が、写真という形で社会とつながります。写真を撮って、できた写真を送って、写真展にも招待します。ある方は、写真展の開催に合わせて体調を合せて、来場してくださいました。出かける場所が、近くの区民センターや区役所であっても、その方にとってはうれしいことです。また、希望される方はホームページにも掲載します。「ツナガリPhoto写真展」では、いろんな方にご協力いただいています。リトアニアからも写真提供があり、写真を通しての国際交流にも発展しました。リトアニア大使館の方からはお礼を言っていただきました。

 

―「ツナガリPhoto写真展」の写真の特徴は何でしょうか。

 写真を撮る時に、手を広げたポーズ(注意2)の写真も撮らせていただき、その写真をつなげる事で、みんなが手をつないでいるように演出しています。写真展に登場した方たちが、「一人じゃないよ!」って感じていただければ嬉しいです。

「WhiteNet」のWhiteは白髪の白でもあります。黒人、白人、黄色人、と人種が違えば、目の色、肌の色が違うこともありますが、髪の色は年をとればみんな白髪になります。年をとることは悲観的なことではなく、ステージがひとつあがることです。生まれた国、生まれた地域に関係なく、みんな白髪になる。白髪は、みんながつながっている象徴でもあります。


注意2NPO法人WhiteNetのトレードマーク


「ツナガリPhoto写真展」の様子を話す白木さん。


「ツナガリPhoto写真展」で展示された作品です。

チャレンジできるまちで挑む、貧困高齢者問題


「ツナガリPhoto写真展」の様子です。

―まさに、WhiteNetのキャッチフレーズ「白髪になってからが人生オモシロイ」どおりですね。白木さんは、これからの住吉はどんなまちになって欲しいと思いますか?

  住吉から新しいものを作っていきたいです。僕が生まれ育ったところですし。住吉は歴史があるまちだからこそ、新しい歴史を作れるパワーがあると思います。そこが住吉の魅力だと思います。チャレンジして失敗しても、「また次がんばったらええやん」って言ってくれるまちであってほしいです。歴史を作っていくまちは、失敗を許してくれるまち、チャレンジしやすいまち、だと思います。誰かがチャレンジしないといけないですよね。チャレンジする人がいっぱい出てきたら後に続くと思います。もっと若い人にもおもしろそう、住んでみたい、と思われたいですね。

 

―白木さんご自身は、これからはどんなことにチャレンジしていきたいですか?

  貧困高齢者問題にチャレンジしたいです。「オールド・プロデュース」という、その人の持っている強みをプロデュースして商品化する企画を考えています。商品はインターネットを利用して海外に向けて発信します。福祉の仕事をしていると、「散髪代ないねん」とか、「お金がないからデイサービス行かれへんねん」という声を聞きます。あと2,000円、3,000円あれば、その人の生活が潤うんです。「きものcafé」は住吉大社に近いこともあってか、常連さんの中にも着物好きな方がおられて、古い着物をよくいただきます。高齢者の方が、リハビリも兼ねて、着物のはぎれで小物を作って、それが少しでもお金に替えられて、その人の生活が潤えば、と思います。先ほど、幸せってなんやろう、と考えたことがあると言いましたが、今の僕は、極論かも知れませんが、人の幸せって社会貢献なんだと思っています。何で生まれて来たか、と考えると、人のために生れて来たんだと思います。人のためになることが幸せです。社会貢献といっても大げさなものではなくて、コンビニでジュースを買ってお金を使うことも、社会貢献のひとつです。今の僕は「自分のやっていることが人のためになること」が幸せの意味だと考えています。Have Fan 人のためになるおもしろい事をしよう!

 

白木さん、ありがとうございました。

白木裕之(しらきひろゆき)
療養型医療施設勤務を経て在宅ケア相談業務、専門学校で非常勤講師として人材育成にも力を注ぎ、20年以上介護福祉に携わる。2011年NPO法人WhiteNetを立ち上げる。
NPO法人WhiteNet代表理事
主任介護支援専門員 
介護福祉士
介護予防運動指導員

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