再発見!すみよし文化レポート その28
2016年4月30日
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再発見!すみよし文化レポート その28 山之内元町長屋リノベーション
コミュニティーを感じる長屋
古くは荘園地や農村として、現在は主に住宅地として多くのひとの生活の場として存在してきた住吉区山之内エリア。山之内元町にある平屋の二軒長屋が、大阪市立大学生活科学研究科小池志保子准教授らの手によって、新たなくらしの空間へと生まれ変わっています。
今回は長屋のリノベーションについて、大家の小林弘幸さん、小林晶子(せいこ)さん、設計・監理するウズラボ竹内正明さん、基本計画を行う小池志保子さん、大阪市立大学生活科学部4回生山本奈月さん、入居者募集を担う丸順不動産小山隆輝(たかてる)さんにお話をお伺いしました。
リノベーションに関わる皆さん。
左からウズラボの真砂さん、竹内さん、大工の大東さん、大家の小林晶子さん、弘幸さん、大工棟梁の延原さん、大阪市立大学の小池さん、学生の山本さん
不便だけれども楽しいまち
-古い建物であれば、壊して新しいビルやマンションを建てるという選択もあると思いますが、長屋をリノベーションしようと思ったきっかけを教えてください
弘幸さん この長屋は昭和5年の建物です。雨漏りがしていたし、土台も傷んできていたので家族でどうしようか、と丁度話していたんです。
晶子さん 長屋はもともと5軒ありました。ここはそのうちのひとつです。結婚してこちらに来たころは、この辺りは畑が続いていて苅田まで見渡せました。カボチャ、トマト、ナス、葉野菜の供給地でした。天王寺や阿倍野へ売りに行くんです。きゅうりの栽培法で著名なきゅうり博士と呼ばれる方もいらっしゃいました。今は畑は減り、古い建物も減っています。
弘幸さん 最初から、つぶすという選択肢はありませんでした。つぶすのにもお金がかかしますし。オープンナガヤというイベントで小池先生と出会い、学生さんたちと一緒にこの長屋について考えてくれるようになりました。
小池先生 私が長屋のリノベーションを最初に始めたのは北区にある豊崎長屋です。他にもいくつか長屋のリノベーションをてがけています。長屋は魅力的な建物です。しかし、耐震補強をされた長屋はなかなか増えません。もっと増やしていきたいと考えています。まずは、大家さんに情報提供をして、興味を持っていただけたらリノベーションについて説明し、関わらせていただいています。
-小池さんは、この山之内元町という場所をどう思われていますか?
小池先生 杉本町にある大阪市立大学とも近く、市大の学生にもなじみがある場所です。大学から近く通いやすいので、学生が実習に取り組む場所としても最適です。学生たちが「杉本迷路」と呼ぶこの場所は、路地が入り組んでいて迷路のようです。歩いていて、「あれ、こんなところに出てきた!」といった感じです。私はいまだに杉本町では迷うこともあります。(笑い)不便にも思えますが、逆に考えると楽しいまちですよね。学生にとっては発見があるのが楽しいようです。
山本さん 地図を見ていてもどこにいるのかよくわからないこともあります(笑い)。
弘幸さん 土地勘がないひとにとっては、本当に迷路のようでしょうね。
背中を押すきっかけになる長屋
-確かに不便でもありますが、魅力でもありますね。入居者を募集している小山さん(丸順不動産)はどのように考えておられますか?
小山さん 私は、入居希望の方にこの長屋をご紹介する立場で関わっています。山之内という地名自体は決してメジャーではありません。ほとんどの方が「山之内ってどこ?」というところから始まりますから、ここがどんな場所か伝える必要があります。山之内は、交通の便も良く、歴史があって、静かなまちだということを、きちんと伝える活動が必要です。
小池先生 この辺りは、鋳物師の石碑があったり、歴史が深いまちですね。
小山さん 市立大学出身の知人が、杉本町あたりは楽しくないまちになってしまっていて、悲しいと言っていました。どうにかしたいですね。誰かが旗を振ったら手伝いますよ。山之内元町長屋が、背中を押すようなきっかけになるといいですね。
長屋を生かす意味
-古い長屋をうまく生かして活用することに、どんな意味があると思いますか。小池先生は研究者としてどう考えておられますか?
小池先生 大阪には長屋文化があるのですが、最近は戦前長屋が1万件を切っています。そうすると、長屋の価値は高まっていきます。将来的に長屋の価値はすごくあがるかもしれませんね。この長屋は小林さん個人のものですが、まちのものでもあります。古い建物の場合は、壊して整地してビルなどを建てることも多いです。新築の家や建物が建って行くことは、それはそれで良いと思います。でも、この辺りは古い建物が残っています。活かして使う事例が一つできたら、それがモデルとなって家主さんが古い建物を壊さず活かすことを選ばれるようになると思います。
-弘幸さんは、大家さんの立場として、どう考えておられますか?
弘幸さん もしこの場所が駅に近かったら、かえってこの長屋は残っていなかったと思います。残せるのなら残した方がいいかな、と思っています。
-どんな方が住んだらいいと思いますか。
弘幸さん 古い建物が好きで、興味を持っている人がいいですね。
小池さん 普通に暮らすのもいいですが、クリエイティブな人の方が人を呼んで来たりして、長屋暮らしを楽しんでくれますね。ひとつの長屋に住みながら、もうひとつをアトリエにするとか。何らかの活動をしてくれるような、創造性がある人がいいと思います。
晶子さん 楽しみですね。空き家のままよりずっといいですものね。どなたかが住んでくれて風通しが良くなるといいですし、若い人に住んでいただけるのもいいですね。昔、市立大学の学生さんが住んでいたことがありました。ダンスのレッスン場として使われたこともあります。全面鏡を貼って、床は板張りにして。30年前くらいでしょうか。その影響で私はダンスを始めました。
山本さん ダンスをされているから、背筋が伸びているんですね。私は、学生が住むといいと思います。学生が住んでいると友達が集まってきて、情報も集まります。大学の周りのことはこの辺りのことをよく知っている下宿生に聞きますし。
竹内さん 長屋の魅力を感じながら愛着を持って住んでほしいですね。長屋の場合、不動産物件としては古くて、あまり家賃を高く設定できない、というのが一般的な認識ですが、それは違うと思います。古い建物で家賃が安いから仕方なく住むというのは残念な考え方です。古い建物が持つ新しくは造れない価値というものがあるはずです。
小池さん 耐震補強している長屋はあまりないですし、貴重です。
山之内が、住吉が、どんなまちになったらいいと思いますか?
弘幸さん 人口はある程度減らない方がいいと思います。人が多くいるからお店も閉店せずに営業できます。人が減るからお店も減ります。人口をキープすることで、住みやすい地域にもなると思います。
晶子さん お店はいくつか閉店してしまったりして人通りも減っていますが、最近はパン屋さんなどもできてちょっと通りが元気になってきました。
山本さん 学生は駅と学校の間を行き来する人がほとんどです。このまちを歩く機会がほしいですね。
みなさん、ありがとうございました。
キッチンや土間タタキは、DIYにて製作。DIYにはオーナーの小林さんも参加されました。
天井には小窓も
お話もはずみます。
学生の学びの場としても。写真右は大阪市立大学の卒業生でウズラボの真砂(まさご)さん
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