給与報告・勧告に関する語句説明
2024年10月2日
ページ番号:184841
「職員の給与に関する報告及び勧告」などで使われている、専門用語等についてわかりやすく説明します。
ラスパイレス比較
導入:ラスパイレスとは
人事院や人事委員会の給与報告・勧告の中で、官民給与の比較方法として、いわゆるラスパイレス方式が採用されているという説明を読まれた方もいらっしゃると思いますが、この「ラスパイレス方式」とはどういう比較方法なのかご存じでしょうか?
時々聞く言葉だけれど、内容までは理解していないという方も多いのではないかと思います。そもそも“ラスパイレス”とは一体何なのでしょうか。
みなさんが日頃から疑問に思われていることについて、できるだけわかりやすくご説明していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
Q.ラスパイレス指数の“ラスパイレス”ってどういう意味でしょう?
A.
・ ラスパイレス指数というのは、ドイツのラスパイレスという人が提唱した、加重平均によって算出される指数のことで、統計や経済の分野では、物価指数の計算式の一つとして用いられています。
(※なお、物価指数の計算方法には、ラスパイレス方式以外にパーシェ方式やフィッシャー方式などがありますが、わが国の現行の消費者物価指数では、ラスパイレス方式が用いられています。)
・ このラスパイレス指数が、公務員の給与に関わって使われる場合として、次の2通りのケースがあげられます。
・ 一つ目は、公務員の給与額と民間従業員の給与額とを比較する場合、すなわち官民給与の比較を行う場合であり、もう一つは国家公務員と地方公務員の給与額を比較する場合です。
官民給与の比較
それでは、公務員の給与額と民間従業員の給与額とを比較する場合、すなわち官民給与の比較を行う場合について見ていきましょう。
一般的に、給与決定に重要な影響を与えていると考えられているのは、職種をはじめ、役職段階、学歴、年齢(又は勤続年数)といった要素ですが、地方自治体と民間企業とではこれらの給与決定要素ごとに見た場合の人員構成が異なります。
このため、単純な平均値による比較では、このような人員構成の違いによる影響を大きく受けてしまい、適切な比較が行えないことになります。そこで、国家公務員や地方公務員の給与と民間の給与との比較においては、お互い同職種(事務・技術関係職種)の常勤職員について、役職段階、学歴、年齢を同じくする者同士の4月分給与を対比させて(そのために、毎年、国の人事院と全国の人事委員会が共同して、4月分の民間の給与等を調査する民間給与実態調査を実施)、公務員側の人員構成で加重平均する、いわゆるラスパイレス方式を採用しているのです。
以上の説明だけでは、具体的なイメージがわきにくいと思うので、具体的な例をもとに、考えてみたいと思います。
A社とB社という二つの会社について、それぞれの平均給与(月額)を見ると、A社は39万円、B社は43万円でした。この情報だけを聞くと、B社の方が給与が良い会社のように思えませんか?B社の方が額で4万円、率にして10%程度平均給与が高いのですから、そのように思っても不思議ではありませんね。
では、A社とB社の年齢別の平均給与を示す表1を見てみましょう。この表を見て、あなたはどのように思われましたか?
年齢階層 | A社 | B社 | ||
---|---|---|---|---|
平均給与月額 | 人員 | 平均給与月額 | 人員 | |
20歳台 | 250,000円 | 30人 | 230,000円 | 10人 |
30歳台 | 350,000円 | 10人 | 330,000円 | 30人 |
40歳台 | 450,000円 | 50人 | 430,000円 | 10人 |
50歳台 | 550,000円 | 10人 | 530,000円 | 50人 |
計 | 390,000円 | 100人 | 430,000円 | 100人 |
同表に掲げているすべての年齢でA社の方がB社よりも2万円も給与が高いのです。なぜ、平均給与が逆転してしまったのか?それは、年齢別の人員構成の違いによるものなのです。
さらにもう一つ条件を加えてみます。A社には、表1にある正規のフルタイム従業員100人のほかに、アルバイトのパートタイム従業員(時給900円、1日4時間、月8日勤務)が50人在籍していたとします。これらの従業員を含めたA社の平均給与は約27万円になります。この数字と、正規のフルタイム従業員だけで構成されているB社の平均給与の43万円とを比較しても、あまり有益なこととは思えません。しかし、実際の場面では、このように異なる集団間の属性の違い(ここでは年齢構成の違いや、フルタイム労働者とパートタイム労働者の人員構成の違い)が、それぞれの平均値に大きな影響を与えていることについて意識されることなく、単純な平均値によって比較がなされることも少なくありません。
このように、異なる集団間での給与比較を行う場合には、単純な平均による比較では、人員構成の違いによる影響を受けてしまうのだということを、まず念頭においておく必要があります。
そういう人員構成の違いによる影響を除去して比較するための一つの方法としては、比較する複数の集団における給与決定要素(職種や年齢など)ごとの人員構成が全く同じだったとしたならば、それぞれの平均給与はいくらになるのかで比較する方法があげられます。それが、いわゆるラスパイレス方式と言われるものなのです。
それがどのようなやり方なのかについて、先ほどの表1の例をもとに考えてみます。
具体的な作業は、基準となる会社(ここでは、とりあえずB社を基準とします)の年齢構成に、もう一方の会社(A社)の年齢構成を合わせて平均給与を算出します。年齢ごとの給与額は、それぞれの会社の給与額をそのまま用います。(表2参照)
これにより算出されるA社の平均給与月額は45万円となります。この額をB社の平均給与月額43万円と比較すると、A社の方が2万円高いという結果になります。これは、表1のところで既に述べているように、すべての年齢でA社の方がB社よりも2万円も給与が高いという状況説明と合致しています。[A社を基準としても、A社の方が2万円高いという結果に変わりはありません。(B社の平均給与月額は37万円となります。)]
ここまで述べてきたことは、単純平均における人員構成の影響について、再認識していただきたかったからです。
今、具体例にあげた年齢以外にも、職種や、学齢、役職段階なども給与決定に重要な影響を与える要素なので、人事委員会の給与報告・勧告における官民給与の比較では、これらの要素を同じくする者同士の給与額を対比させ、公務員側の人員構成で加重平均して比較しています。
もう少し詳しく述べると、本市の行政職給料表適用者(事務・技術関係職種)と、民間企業における事務・技術関係の職に従事する正社員の方を対象として、各給与決定要素(役職段階、学歴、年齢)から一区分ずつを選んだ組合せ(例えば、役職段階が課長、学歴が大学卒、年齢が50歳)を作り、全く同じ組合せに属する本市職員と民間企業従業員について、それぞれの平均給与額を算出していき、その組合せごとに同一の人員構成で(本市職員の人員構成を基準として)累計して総額を算出し、両者の水準を比較しています。
【以上の説明の多くの部分については、人事院月報No.756の「リレー解説 公務員制度」を参考にさせていただきました。】
国家公務員と地方公務員の給与水準について
ラスパイレス指数は、国家公務員と地方公務員の給料水準を比較する際の指数としても使われています。
地方公務員の学歴・経験年数別の人員構成を、国家公務員と同一と仮定し、国家公務員を100として算出する統計上の数字です。
具体的には、学歴別、経験年数別の地方公務員(たとえば大阪市職員)の一般行政職の平均給料と、これと条件を同じくする国家公務員(行政職俸給表(一)適用者)の平均給料のそれぞれに、国家公務員数を乗じた総額を算出し、両者の水準を比較しています。
総務省は、毎年、地方公務員給与実態調査結果として、都道府県や政令指定都市のラスパイレス指数の状況を公表しています。
都市名 | 令和5年4月1日 | 令和4年4月1日 |
---|---|---|
横浜市 | 100.0 | 100.1 |
名古屋市 | 98.8 | 98.9 |
京都市 | 101.4 | 99.0 |
大阪市 | 98.8 | 97.1 |
堺市 | 100.3 | 100.1 |
神戸市 | 100.1 | 100.3 |
大阪府 | 100.8 | 100.7 |
「給与」と「給料」
給与は、給料と諸手当(扶養手当や住居手当など)から構成されています。
人事委員会の給与報告・勧告において、民間事業所との給与水準を比較する際に対象としている本市職員の給与科目は、給料(給料の調整額を除く)、扶養手当、住居手当、管理職手当、地域手当、単身赴任手当、初任給調整手当で、「比較給与」と呼ばれています。また、給料は、基本給や本給とも呼ばれ、給料月額は、超過勤務手当額や退職手当額を算定するためにも用いられています。
なお、国家公務員と地方公務員の給料水準を比較するためのラスパイレス指数を算定する際には、給料で算定しており、扶養手当や住居手当、管理職手当等は含まれていません。
月例給と特別給
月例とは、毎月定期的に行われることを意味し、月例給とは、毎月定期的に支払われる給与、すなわち月給をいいます。
また特別給とは、特別に支払われる給与、いわゆるボーナス(賞与とも呼ばれる)のことをいい、公務員の場合には、期末・勤勉手当と呼ばれています。なお、期末手当は、民間のボーナスにおける一律支給分に、また勤勉手当は、成績査定分(成績率により変動)に相当するとされています。
一般職と特別職
一般職 | 特別職 |
---|---|
特別職に属する職以外の一切の職 ・一般の行政事務に従事する職員、教職員、消防職員、警察職員(都道府県の場合)、単純労務職員、企業職員 など | 大阪市における代表例 ・市長、市会議員、副市長、人事委員会の委員、教育委員会の委員、地方公営企業の管理者(水道局長)、審議会や審査会などの委員、臨時又は非常勤の顧問、参与 など |
地方公務員は、「地方公務員法」という法律で、一般職の地方公務員と特別職の地方公務員に分けられています。このように二つを区別しているのは、一般職の地方公務員には、原則として地方公務員法が適用されますが、特別職の地方公務員には、特別の規定がない限り、地方公務員法は適用されないからです。
※ 主として一般職に適用される規定の代表例
- 成績主義(メリットシステム):地方公務員法第15条
- 公務員の政治的中立性の確保:同法第36条
- 営利企業への従事等の制限:同法第38条 など
特別職の地方公務員
地方公務員法の第3条第3項では「特別職は、次に掲げる職とする」として「就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職」などが列挙されていますが、これらは、以下のように三つに分類して考えていただくと、わかりやすいのではないかと思います。
三つに分類した職 | 大阪市における代表例 |
---|---|
住民またはその代表の信任によって就任する政治職 | 市長、市会議員、副市長、監査委員、選挙管理委員会の委員、人事委員会の委員、教育委員会の委員 など |
任命権者が自由に選任することができる自由任用職 | 地方公営企業の管理者(水道局長) など |
特定の場合に、一定の学識、知識、経験などに基づき、随時、参画する者の職(非専務職) | 審議会や審査会などの委員、臨時又は非常勤の顧問、参与 など |
特別職の地方公務員の特徴
- 上司の命令に従って職務を遂行するのではなく、自らの判断と責任で職務を遂行することが期待されていること
- 一定の任期が定められていること
- 他の職務を有することも妨げられないこと
- 必ずしも政治的な中立性が要求されるわけではないこと
という特徴を有している場合が多いといえます。
一般職の地方公務員
一般職(の地方公務員)は、「特別職に属する職以外の一切の職」とされており、一般の行政事務に従事する職員をはじめ、教職員、消防職員、警察職員(都道府県の場合)、単純労務職員(技能労務職員)、企業職員など、職種の別を問いません。
なお、一般職の地方公務員には、原則として地方公務員法が適用されますが、同法第57条で、「教職員」、「単純な労務に雇用される者」、「その職務と責任の特殊性に基づいてこの法律に対する特例を必要とするもの」については、別に法律で定めることとしています。
(参考:特例法の例示)
教職員:「教育公務員特例法」、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」
単純労務職員:「地方公営企業等の労働関係に関する法律」及び“「地方公営企業法」第37条から第39条までの規定”を準用
企業職員:「地方公営企業法」、「地方公営企業等の労働関係に関する法律」
消防職員:「消防組織法」
警察職員:「警察法」
単純労務職員と企業職員
一般職の地方公務員は、「特別職に属する職以外の一切の職」とされており、単純労務職員(技能労務職員)と企業職員も、一般職の地方公務員です。
単純な労務に雇用される職員とは
単純な労務に雇用される職員とは、一般職に属する地方公務員で、清掃職員、学校給食調理員、学校管理作業員等の労務を行う者のうち、技術者及び監督者以外の者をいいます。
なお、法令上の用語は「単純な労務に雇用される職員」(地方公務員法第57条)となっていますが、法制定時からの沿革によるもので、その後の時代の変遷により、業務の実態とは合致しない部分もある点には留意が必要です。適用される給料表の名称(技能労務職給料表)から技能労務職員と言われることもあります。
企業職員とは
企業職員とは、地方公営企業法第15条で、「(地方公営企業の業務を執行する)管理者の権限に属する事務の執行を補助する職員」だと定義されていますが、わかりやすく言えば、地方公営企業に勤務する職員のことです。
地方公営企業とは、地方公共団体が住民の福祉の増進を目的として設置し経営する企業で、交通、水道、病院、ガス、電気等の事業を行っています。本市の企業職員は、水道局に勤務する職員をいいます。
単純な労務に雇用される職員及び企業職員の労使関係について
単純な労務に雇用される職員及び企業職員は、その職務内容が民間の同種の事業に類似しており、公務員としての基本的な服務(公務員が職務遂行上又は公務員としての身分に伴って守るべき義務ないし規律。たとえば、営利企業等の従事制限など)以外、特にその労働関係は、できる限り民間の労働者と同様の取扱いとすることが適当と考えられたことから、地方公務員法とは異なる取扱いをすることが認められています。
そして、労働基本権に関しては、争議権は否定されているものの、その給与、勤務時間その他の勤務条件については、管理運営事項に属する事項を除き、団体交渉の対象とし、労働協約を締結できることから、人事委員会勧告の対象外とされています。
賃金構造基本統計調査
賃金構造基本統計調査(いわゆる「賃金センサス」)は、わが国における雇用や賃金等をめぐる諸施策を所管している厚生労働省が実施している調査です。
賃金構造基本統計調査の目的
主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態(月例給や賞与等)を、労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数及び経験年数別に明らかにすること、とされています。
賃金構造基本統計調査について
この目的にそって、基本的に常用労働者10人以上を雇用している事業所を対象に、雇用形態や就労形態にかかわらず調査しています。具体的には、雇用形態では「正社員・正職員」以外の労働者についても、また就労形態ではパートタイム労働者を含め幅広く調査を実施しています。
このような手法は、各種産業における、さまざまな雇用形態等とリンクさせた賃金状況を把握するという目的に適ったものと言えます。
しかしながら、賃金センサスのデータを給与水準の比較に用いる場合には、基本的には、さまざまな雇用形態や就労形態を含めたものであること(雇用形態別に集計したデータはありますが)や、役職段階の把握については限定的であること(役職段階が、部長級、課長級、係長級、非役職者の4段階で、次長、課長代理等の中間的役職を調査していないこと)等に留意しておく必要があります。常用労働者
常用労働者とは、次の各号のいずれかに該当する労働者をいいます。
- 期間を定めずに雇われている労働者
- 1か月を超える期間を定めて雇われている労働者
調査をする労働者
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