3D都市モデルを活用した大阪市内のCO2削減シミュレーションを実施しました
2025年3月31日
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大阪市では、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする脱炭素社会「ゼロカーボンおおさか」の実現を長期目標に掲げ、2030年度までに温室効果ガス排出量を50%削減(2013年度比)することをめざし、取組みを進めています。本市はわが国有数の業務集積地であり、温室効果ガスの排出量は他地域に比べて業務部門の割合が大きく、とりわけオフィスビルのCO2削減が目標達成に向けて必要不可欠になります。
そこで、「3D都市モデル」によるデジタルツイン技術を活用し、オフィスビルの建替・大幅改修時期に応じた省エネ機器の導入や再エネの利用等によるCO2排出量等の将来推移について、複数のシナリオにおけるシミュレーションを行いました。なお、3D都市モデルは、国土交通省が整備しているPLATEAU VIEWで閲覧できます。
- 3D都市モデルとは
3D都市モデルとは、現実の都市空間をデータ上で再現した3Dの「デジタル地図」です。家屋やビルなどの「建築物」、都市のインフラである「道路」や「橋梁」などが、構造物の高さ、屋根形状といった情報に応じて3Dで構築されています。

1.CO2削減モデルの検討
オフィスビルを含む業務部門では2030年度に2013年度比で61%削減、2050年のゼロカーボンに向けた取組が必要です。そこで、省エネや再エネ設備導入推進など上記目標達成に必要な取組を具体的に検討するツールとしてのCO2削減モデルを検討しました。

(1)CO2削減モデルの検討プロセス
2050年までに実施する建替や屋上・壁面の大幅改修、各種設備更新などを想定したうえで、トップランナー製品導入や運用時の制御高度化などによる省エネ効果、屋根設置型・ペロブスカイト太陽光発電及び地中熱利用の再エネ効果を反映したモデルを構築しました。

CO2削減モデルの検討プロセス

(2)将来のエネルギー消費量、CO2排出量推計のためのシナリオ設定
将来のエネルギー消費量とCO2排出量を推計するにあたって、BAU(現状趨勢)シナリオと目標達成シナリオを設定しました。

【シナリオの考え方】
BAUシナリオ
- 建築物省エネ法に従い建物建替時に省エネ効果を反映する
- 建替を伴わない設備更新等の場合は、経年劣化したものの原状復旧にとどめる
- 再エネの導入は考慮しない
- エネルギー供給側の努力は考慮しない(電力排出係数等は現状から変化なし)
- 省エネや再エネ設備導入促進等、建替えおよび設備更新において最大限努力する
- 省エネ効果として、空調、照明等へのトップランナー製品導入、空調AI制御導入及び建物間熱融通効果を反映する
- 再エネ効果として、屋根設置型・ペロブスカイト(壁面設置型)太陽光発電、地中熱利用による効果を反映する
- エネルギー供給側の努力を考慮する(各種エネルギーのCO2排出係数は段階的に削減される)

(3)太陽光発電ポテンシャルの推計

屋根設置型太陽光発電導入ポテンシャルの推計
市域を代表する業務集積地の一例として、都市再生緊急整備地域(大阪駅周辺・中之島・御堂筋周辺地域)のオフィスビルを対象として、屋根置き太陽光パネルがどれだけ設置されているか実態を調査しました。
この調査結果を基に、オフィスビルに屋根置き太陽光パネルを最大限設置した場合の年間発電量(kWh)を推計しました。
【推計結果】都市再生緊急整備地域内(左図)で49GWh、市全域(右図)で1,062GWhの導入ポテンシャルが見込まれると推計できました。

屋根設置型太陽光発電導入ポテンシャル


ペロブスカイト太陽電池(壁面設置型太陽光発電)導入ポテンシャルの推計
ペロブスカイト太陽電池とは、薄くて、軽く、柔軟性などの特性を有する太陽光電池です。従来の太陽光パネルより軽く曲がられるため、ビルの外壁などにも設置ができます。国内では、2025年の商用化を目標として、実証事業などの技術開発が進んでいます。
3D都市モデルを用いたシミュレーションにより、ペロブスカイト太陽電池が壁面に設置された場合の年間予測発電量(導入ポテンシャル)を推計しました。

3D都市モデルを用いたシミュレーション例
【推計結果】 都市再生緊急整備地域内(左図)で360.7GWh、 市全域(右図)で3,092GWhの導入ポテンシャルが見込めると推計できました。

ペロブスカイト太陽電池導入ポテンシャル


(4)目標達成シナリオの各種パラメータの設定
以下のとおり、各種パラメータを設定しました。

建物建替・大幅改修・設備更新スケジュール
建物建替:竣工年後60年
大幅改修周期:15年
設備更新周期:空調 20年、照明 15年、その他(換気 20年、給湯 15年、昇降機 30年、コンセント他 10年)
- BELCA、建築物のライフサイクルマネジメント用データ集改訂版(令和2年)及びヒアリング調査等から設定

目標達成シナリオにおけるトップランナー製品や再エネ設備等の導入率の推移
目標達成シナリオ |
2025 |
2030 |
2035 |
2040 |
2045 |
2050 |
---|---|---|---|---|---|---|
トップランナー製品(建替時) |
60% |
70% |
80% |
100% |
100% |
100% |
空調AI制御 |
20% |
50% |
60% |
70% |
80% |
90% |
屋根設置型太陽光 |
100% |
100% |
100% |
100% |
100% |
100% |
ペロブスカイト |
0% |
30% |
40% |
50% |
60% |
70% |
地中熱 |
10% |
20% |
30% |
40% |
45% |
50% |
建物間熱融通 |
建物建替時等に設置可能な箇所に導入 |
- 省エネ・再エネ設備導入によるエネルギー消費量削減効果は、各種文献調査、ヒアリング調査により設定

エネルギー消費量からCO2排出量への換算
排出係数(kg-CO2/kWh) |
2025 |
2030 |
2035 |
2040 |
2045 |
2050 |
---|---|---|---|---|---|---|
全電源平均 |
0.3 |
0.25 |
0.145 |
0.04 |
0.04 |
0.04 |
火力平均 |
0.63 |
0.6 |
0.4 |
0.2 |
0.2 |
0.2 |
- 「省エネ」、「再エネ」によるCO2削減効果をエネルギー消費削減量から算定するにあたり、それぞれ、全電源平均、火力平均の排出係数を活用
- 都市ガス、石油類の排出係数も火力平均と同様の傾向で下がると仮定
- 全電源平均では、関西電力2020年度排出係数と2030年度の国目標(0.25kg-CO2/kWh)から、火力平均では現状値と2030年度国目標(0.6kg-CO2/kWh)から2025年度値を推計
- 2040年度値を「資源エネルギー庁 2040年度におけるエネルギー需給見通し(令和7年1月)」に基づき設定

2.シミュレーション結果

(1)大阪市全域を対象とした推計結果
本モデルにおける2013年度の業務部門のエネルギー消費量は120,717千GJ/年、CO2排出量は6,286千t-CO2/年となります。
※BAUシナリオ、目標達成シナリオにおける削減量、削減率は2013年度比

BAU(現状趨勢)シナリオ
BAUシナリオによる年間CO2排出量は、2030年度が4,936千t-CO2、2050年度が4,208千t-CO2と推計されました。CO2排出削減率は、2013年度(基準年)比で2030年度が21%、2050年度が33%にとどまります。

2030年度BAUシナリオ
- CO2排出量:4,961千t-CO2
- CO2削減量:1,350千t-CO2
- 削減率:21%

2050年度BAUシナリオ
- CO2排出量:4,208千t-CO2
- CO2削減量:2,078千t-CO2
- 削減率:33%

2030年度 CO2排出量

2050年度 CO2排出量

BAUシナリオにおける建物用途別のCO2排出量推計結果

目標達成シナリオ
目標達成シナリオでは、省エネ、再エネ効果、各種エネルギーのCO2排出係数削減効果などが反映され、2030年度では、CO2排出量が2,506千t-CO2、CO2削減量が3,780千t-CO2、CO2削減率が約60%(2013年度比)、2050年度では、CO2排出量が66千t-CO2、CO2削減量が6,220千t-CO2、CO2削減率が99%(2013年度比)と推計されました。
本市の目標である業務部門で2030年度61%削減、2050年度カーボンニュートラルの達成には、オフサイトPPAによる市域外からの再エネ調達等の更なる対策が必要になります。
項目 | 2030年度 | 2050年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
CO2排出量 | CO2削減量 | 削減率 | CO2排出量 | CO2削減量 | 削減率 | |
市内取組効果計 | 2,506千t-CO2 | 3,780千t-CO2 | 60.1% | 66千t-CO2 | 6,220千t-CO2 | 99.0% |
設備高効率化 (トップランナー) |
- | 3,297千t-CO2 | 52.6% | - | 5,730千t-CO2 | 91.2% |
空調AI制御 | - | 162千t-CO2 | 2.5% | - | 213千t-CO2 | 3.4% |
屋根設置型太陽光 | - | 197千t-CO2 | 3.1% | - | 98千t-CO2 | 1.6% |
ペロブスカイト | - | 33千t-CO2 | 0.5% | - | 99千t-CO2 | 1.6% |
地中熱 | - | 52千t-CO2 | 0.8% | - | 66千t-CO2 | 1.0% |
建物間熱融通 ※ | - | 39千t-CO2 | 0.6% | - | 15千t-CO2 | 0.2% |
設備高効率化による省エネ効果では、エネルギー供給側の排出係数削減による効果を含む
※火力平均の排出係数が2030年0.6kg-CO2/kWh、2050年0.2kg-CO2/kWhになるため、屋根置型太陽光の再エネによるエネルギー消費量削減効果は2030年度に比べて大きくなるがCO2削減効果は係数の関係で小さくなる
※全電源平均の排出係数が2030年0.25kg-CO2/kWh、2050年0.04kg-CO2/kWhになるため、建物間熱融通の省エネによるエネルギー消費削減効果は2030年度に比べて大きくなるがCO2削減効果は係数の関係で小さくなる

2030年度 CO2排出量

2050年度 CO2排出量

目標達成シナリオにおける建物用途別のCO2排出量推計結果

(2)都市再生緊急整備地域(大阪駅、中之島、御堂筋周辺)を対象とした推計結果
本モデルにおける2013年度業務部門のエネルギー消費量、CO2排出量は、それぞれ25,153千GJ/年、1,313千t-CO2/年となります。
※BAUシナリオ、目標達成シナリオにおける削減量、削減率は2013年度比

BAU(現状趨勢)シナリオ

2030年度BAUシナリオ
- CO2排出量:974千t-CO2
- CO2削減量:339千t-CO2
- 削減率:26%

2050年度BAUシナリオ
- CO2排出量:821千t-CO2
- CO2削減量:492千t-CO2
- 削減率:37%

2030年度 CO2排出量

2050年度 CO2排出量

BAUシナリオにおける建物用途別のCO2排出量推計結果

目標達成シナリオ
目標達成シナリオでは、省エネ、再エネ効果、各種エネルギーのCO2排出係数削減効果などにより、2030年度では、CO2排出量が504千t-CO2、CO2削減量が809千t-CO2、CO2削減率が約62%(2013年度比)、2050年度では、CO2排出量が23千t-CO2、CO2削減量が1,290千t-CO2、CO2削減率が約98%(2013年度比)と推計されました。
2030年度は緊急整備地域のみでの取組により削減目標を達成できる可能性はありますが、2050年度のカーボンニュートラル目標達成に向けては、域外からのオフサイトPPA等の対策が必要になります。
項目 | 2030年度 | 2050年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
CO2排出量 | CO2削減量 | 削減率 | CO2排出量 | CO2削減量 | 削減率 | |
市内取組効果計 | 504千t-CO2 | 809千t-CO2 | 61.6% | 23千t-CO2 | 1,290千t-CO2 | 98.3% |
設備高効率化 (トップランナー) |
- | 737千t-CO2 | 56.1% | - | 1,211千t-CO2 | 92.2% |
空調AI制御 | - | 31千t-CO2 | 2.3% | - | 40千t-CO2 | 3.1% |
屋根設置型太陽光 | - | 18千t-CO2 | 1.4% | - | 9千t-CO2 | 0.7% |
ペロブスカイト | - | 8千t-CO2 | 0.6% | - | 22千t-CO2 | 1.7% |
地中熱 | - | 5千t-CO2 | 0.4% | - | 4千t-CO2 | 0.3% |
建物間熱融通 ※ | - | 10千t-CO2 | 0.8% | - | 4千t-CO2 | 0.3% |
設備高効率化による省エネ効果では、エネルギー供給側の排出係数削減による効果を含む
※全電源平均の排出係数が2030年0.25kg-CO2/kWh、2050年0.04kg-CO2/kWhになるため、建物間熱融通の省エネによるエネルギー消費削減効果は2030年度に比べて大きくなるがCO2削減効果は係数の関係で小さくなる

2030年度 CO2排出量

2050年度 CO2排出量

目標達成シナリオにおける建物用途別のCO2排出量推計結果

3.市内のオフィスビルでみられるCO2削減に向けた取組事例
CO2削減モデルでは省エネや再エネ設備導入等に積極的に取り組むことで、本市のCO2削減目標達成する様子が可視化されました。
この目標の達成のためには、個々の建物における脱炭素に向けた取組の積み上げが必要となります。ここでは、省エネや再エネ設備の具体的な導入方法、制御方法、並びに導入効果などの参考情報として、市内の取組事例を紹介します。
※公表にあたっては、各ビル等の承諾を得ています。

取組事例(2025年3月時点)
- アーバンネット御堂筋ビル
- 大阪梅田ツインタワーズ
- オービック御堂筋ビル
- 近畿産業信用組合新本店
- グラングリーン大阪
- 日建ビル1号館
- ヒラカワ本社ビル
- (仮称)本町4丁目プロジェクト
- YANMAR FLYING-Y BUILDING
- YODOYABASHI Station One(淀屋橋ステーションワン)

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