糖尿病について
2021年10月22日
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糖尿病とは
糖尿病とは、「インスリン」というホルモンの働きが不足するためにブドウ糖が有効に使われず、長い間血糖値が高くなっている状態を言います。糖尿病を適切に治療せず放置すると、様々な合併症を生じます。
平成29年患者調査(厚生労働省)によると、糖尿病の患者数は328万9000人で過去最高になりました。
血糖値とは?
血液中のブドウ糖のことを「血糖」といいます。血液の中にどのくらいブドウ糖が溶けているかを表わしたものが「血糖値」です。ブドウ糖は、私たちが生きていくためのエネルギーとして大切なものですが、多すぎると血管が傷つきやすくなり、様々な病気を引き起こします。
インスリンとは?
「インスリン」は、すい臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を、主に肝臓や骨格筋、脂肪組織などの細胞の中に取り入れる働きをします。このインスリンの量が不足したり、働きが悪くなったりすると、糖が細胞に取り込まれず、血糖値が上がったままになってしまいます。
糖尿病の診断基準
糖尿病は、血液検査で「血糖値」や「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」を調べることにより診断します。
次の1.~4.のいずれかが確認されると、『糖尿病型』(糖尿病が非常に疑わしい)と判定されます。
早朝空腹時血糖値 126mg/dl以上
75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間血糖値 200mg/dl以上
随時血糖値 200mg/dl以上
HbA1c 6.5%以上
さらに、下記を満たせば【糖尿病】と診断されます。
・血糖値が上記1.~3.のいずれかでHbA1cが4.のとき
・別の日に行った検査でも、血糖値が上記1.~3.のとき(4.の反復検査による診断は不可)
・血糖値が上記1.~3.のいずれかで、「糖尿病の典型的症状(口渇・多飲・多尿・体重減少など)」または、「確実な糖尿病網膜症(糖尿病に典型的な眼の合併症)」があるとき
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは?
過去1~2か月間の血糖値の平均をあらわす値です。血糖値は1日のなかでも食事や運動などによって大きく変動するため、長期間の血糖値の状態を示すHbA1cを血糖コントロール(血糖値を適切な範囲に維持すること)の指標として使います。
なぜ血糖値の平均がわかるの?
血糖値が高くなると血液中の赤血球にあるヘモグロビンにブドウ糖が結合する割合が高くなります。この割合を表したものがHbA1cです。一度結合したブドウ糖は、赤血球が寿命を迎えるまで離れないので、HbA1cを調べることで、過去の血糖値の状態がわかるのです。
75g経口ブドウ糖負荷試験とは?
75gのブドウ糖を含むブドウ糖液を飲み、30分おきに2時間後まで計4~5回血糖値を測定します。結果によって「正常型」「境界型」「糖尿病型」に分類されます。
糖尿病の原因と種類
糖尿病・糖代謝異常は原因により4つのタイプに分類されます。
1型糖尿病
2型糖尿病
糖尿病になりやすい体質(遺伝的要因)に、食べすぎや運動不足、肥満、ストレス、喫煙といった生活習慣(環境的要因)が重なって、発症すると考えられています。
日本人の糖尿病患者の約95%を占め、加齢とともに増加し、中高年での発症が多いですが、子どもや若年での発症が近年増えています。
血縁者に糖尿病の方がいる場合は、将来糖尿病になるリスクが高いので、特に生活習慣を見直すことが重要です。
その他の原因による糖尿病
妊娠糖尿病
妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常です。 (「妊娠糖尿病」参照)
妊娠糖尿病
妊娠中にはじめて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常のことです(妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠を含みません)。
妊娠すると胎盤などから出されるホルモンによって、血糖値を下げるインスリンの効きが悪くなります。一定の基準を超えて血糖値が上がると、妊娠糖尿病と診断されます。
妊娠・出産に影響がある?
お母さん(母体)の血糖が高いと、胎盤を通じて赤ちゃんの血糖も高くなり、母体だけでなく赤ちゃんに影響する可能性があります。血糖値を正常値に近づけることで、危険性を下げられます。
【母体への影響】 妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、(肩甲)難産、流産、早産など
【赤ちゃんへの影響】 形態異常(先天奇形)、巨大児、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、呼吸窮迫症候群、肥大型心筋症、胎児発育不全、胎児死亡など
どうやって診断される?
診断には75g経口ブドウ糖負荷検査を行います。空腹時血糖≧92mg/dl、1時間値≧180mg/dl、2時間値≧153mg/dl、いずれかひとつを満たすと妊娠糖尿病と診断されます。
妊娠中に気を付けることは?治療は?
食事療法、薬物療法(インスリン)により、血糖値をできるだけ正常値に近づけるようにします。主治医の指示の下で行う運動療法も効果があります。また、適切な体重管理も重要です。
産後に気を付けることは?
出産後は胎盤からのホルモンの影響を受けなくなるため、一旦は血糖値が下がることが多いです。
しかし、「妊娠糖尿病」と診断されたことがある方は、『約7.4~10倍糖尿病になりやすい(参考文献1,2)』との報告や、『産後5年で約20%、10年で約30%が糖尿病を発症する(参考文献3)』との報告があります。糖尿病になっていると気づかないまま妊娠すると、次に生まれてくる赤ちゃんへ影響する可能性が高くなり、お母さん自身に糖尿病の合併症が生じる危険性もあります。
そのため、出産後は血糖値が正常となっても、引き続き将来の糖尿病発症予防と早期発見に注意が必要です。予防には『食事療法』『運動療法』『適切な体重管理』、早期発見には『定期的な検査(血糖値・HbA1c・糖負荷検査)』が大切です。
【参考文献】
1) Bellamy L, et
al. Lancet. 2009 May 23; 373(9677): 1773-9.
2) Vounzoulaki
E,et al.BMJ. 2020 May 13; 369:
m1361.
3)和栗雅子ら H23年度厚生労働科学研究費補助金研究報告書
また、妊娠糖尿病のお母さんから生まれた赤ちゃんは、将来肥満や糖尿病になりやすいとも言われています。親子で食生活改善、運動に取り組むことでお子さんの発症リスクも下がります。
大阪市では妊娠糖尿病既往のある方へ、啓発リーフレットや健康チェックの案内等のお知らせをすることがあります。健康チェックの結果、医療機関受診が必要となった場合は、必ず受診し、かかりつけ医師等へご相談ください。
放っておくと・・・―合併症の話―
高血糖が長い期間続くと、全身に様々な合併症が起こる可能性が高くなります。
細い血管の合併症
糖尿病に特徴的なもので、眼(網膜症)、腎臓(腎症)、神経(神経障害)があり、三大合併症と呼ばれています。これらの合併症は、血糖コントロールが悪いほど、また、糖尿病発症後長期になればなるほど、起こりやすいとされています。
・糖尿病網膜症により失明する人は国内で年間約3,000人以上となっています。
・糖尿病腎症により腎不全に至ると腎移植や人工透析が必要になります。
・糖尿病神経障害には起立性低血圧などの「自律神経障害」と、手足の感覚や運動の障害である「末梢神経障害」があり、後者が進行すると傷に気が付きにくくなり、足壊疽(えそ)などにつながる可能性があります。
太い血管の合併症
動脈硬化(血管の老化)による脳卒中、心筋梗塞、足病変は、糖尿病になる前の「境界型」と呼ばれる段階から進行すると言われています。高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、加齢などがあると、動脈硬化は早く進行するため、血糖以外の生活習慣(病)の改善も重要です。
そのほかの合併症
高血糖が続くと感染症にかかりやすく、また治りにくくなります。特に近年、歯周病と糖尿病は関係が深いことがわかっており、糖尿病の方は定期的な歯科受診も必要です。また、糖尿病があると、認知症になりやすく早く進みやすいとされています。
糖尿病の治療と目標
糖尿病の治療の基本は、食事療法・運動療法です。食事療法・運動療法で血糖コントロールが不十分な場合は、経口薬や注射薬による治療を行います(インスリンがほとんど分泌されない1型糖尿病の薬物治療はインスリン注射が原則です)。
食事療法
食べる量とバランス、食べ方が重要です。
【食べる量(エネルギー摂取量)やバランス(栄養素の配分)】
糖尿病患者さん本人の年齢、糖尿病や合併症の状況なども考慮しなければなりませんので、主治医や管理栄養士へ相談しましょう。
【食べ方】
食物繊維が豊富な野菜を食事の最初に食べ、最後に炭水化物(ご飯など)を食べることで、食後の血糖上昇が抑えられます。そのほか、ゆっくりよく噛む、朝食を抜かない、夕食を早い時間帯に食べるなども有効です。
近年、炭水化物を極端に制限する食事が注目されていますが、日本糖尿病学会は「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して体重の減量を図ることは、長期的な食事療法の安全性などがはっきりしていないことから現時点では勧められない」としています。
運動療法
運動には、血糖を下げる以外にも、脂質異常の改善や体重と血圧の低下など動脈硬化のリスクを減らし、ストレスの解消、骨粗しょう症の予防と改善など多くの効果があります。ただし、血糖コントロールが非常に悪い場合や、合併症の進行がある場合は運動療法が勧められない場合がありますので、主治医に相談の上、運動を行うことが重要です。
【どんな強さで?】
「楽である」~「ややきつい」と感じる、軽く息がはずむくらいの運動が効果的です。
【どんな運動がよい?】
糖尿病には「有酸素運動」と「レジスタンス運動」の組み合わせが有効です。
・有酸素運動
体で酸素を使い、糖や脂肪を燃焼させる全身運動(ジョギング、ウォーキング、水泳、自転車、体操など)
・レジスタンス運動
筋肉に負荷をかける動作を繰り返し、筋力アップを図る運動(ダンベル、スクワット、腕立て伏せ、腹筋運動など)
【どのくらい?】
有酸素運動の時間は1回20~60分、回数はできれば毎日、少なくとも週3~5回、週に合計150分以上行うことが勧められています。しかし、最近、例えば5分間のような短い運動であっても効果があることがわかっています。運動時間にこだわらず、座っている時間が長くならないよう、合間にこまめに身体を動かすことを心がけることが望ましいです。また、日常生活の中では、こまめに動く習慣を意識しましょう。犬の散歩、洗濯、床掃除、洗車、子供と遊ぶ、階段昇り降りなど。30分~1時間に1回、立ち上がったり、短時間歩いたりするだけでも、健康リスクの低減に効果があることがわかっています。
薬物療法
1型糖尿病では原則インスリン注射が必要ですが、2型糖尿病ではその病態により経口血糖降下薬(飲み薬)や注射薬(インスリン、GLP-1受容体作動薬)が選択されます。
糖尿病治療の目標
糖尿病治療の目標は、高血糖に起因する代謝異常を改善することに加え、糖尿病に特徴的な合併症、および糖尿病に起こりやすい併発症の発症、増悪を防ぐことで、「健康な人と変わらない生活の質(QOL)を保ち、健康な人と変わらない寿命を全うすることにある」とされています。
糖尿病の血糖コントロール目標としては、血糖正常化を目指す際の目標としてHbA1c 6.0%未満、合併症を予防するための目標としてHbA1c 7.0%未満、治療強化が困難な際の目標としてHbA1c 8.0%未満を目指すことが掲げられています。しかし、その方の年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などにより目標は個別に設定されます。特に、高齢の方では状態や治療薬の種類によって目標値が個別に設定されるため、主治医と相談の上、目標とするHbA1cを設定することになります。
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標についてより詳しく知りたい方は、一般社団法人日本糖尿病学会 のホームページ「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」を参照ください。
糖尿病の予防のために
食事や運動などの生活習慣を積極的に改善することにより、2型糖尿病の発症を予防できることが、日本人を対象とした研究を含め、多くの研究からわかっています。
食生活
総エネルギー摂取量を適切に設定することに加え、食べる順番に気を付けること(ベジタブルファースト)、1日3食規則正しく食べること、お菓子や清涼飲料水などを避ける、など、今日からでもできることにまず取り組むことがお勧めです。
運動
有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせが非常に効果的なことがわかっています。その一方で、座っている時間が長いほど糖尿病の発症リスクが高くなるとされていますので、日常生活の中でわずかでも身体活動量を増やすことが重要です。
体重管理
日本人やアジア人はBMI(Body Mass Index)25程度の「小太り」でも糖尿病になりやすいことがわかっており、体重管理は糖尿病予防に重要です。毎日体重を測り、記録するだけも体重は増えにくくなります。
減量の目標として目標体重(身長(m)×身長(m)×22)まで減らさなくても、2~3㎏の減量が糖尿病の発症を予防することが研究でわかっています。
睡眠
睡眠時間は、長すぎても短すぎても2型糖尿病発症を増やすと言われています。適切な睡眠時間と、睡眠の質を確保することが糖尿病発症予防につながります。
ストレスをためない
ストレスを感じると交感神経が活発になり、ストレスホルモンの分泌が増加します。ストレスホルモンはインスリンの効きを悪くし、血糖値を上昇させます。ストレス対処能力を高めるためには、十分な休養をとることが重要です。自分に合った気分転換方法を見つけましょう。
禁煙
適正飲酒
※アルコール度数は商品によって異なりますので、上記の量は参考としてお考えください。
定期的な健診
関連リンク
糖尿病についてもっとよく知りたいときは、厚生労働省や関連団体等のホームページをご覧ください。
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