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就学前児童健全育成が求められる背景と課題

2014年12月11日

ページ番号:38247

就学前児童の健全育成を進めるにあたり、今日のこどもたちを取り巻く次のふたつの背景が注目されます。

こどもを取り巻く環境の変化

 ひとつは、少子化、核家族化、地域環境の変化をはじめとする社会環境の変化と、それに伴う家庭や地域の子育て力・教育力の低下の中でのこどもたちの育ちをめぐる課題です。

 核家族化などの家庭環境の変化は、かつては世代間で伝えられてきた子育てのスキルや知恵が十分に受け継がれにくくなっていることによる育児不安や、大人を中心とした生活スタイルにこどもを必要以上に巻き込むなどこどもの育ちにとって適切とは言えないかかわり方が増えてきた一因となっています。少子高齢化のもとでの地域社会の変化は、こどもたちが地域で異年齢の友達や多様な人とかかわる機会を少なくしています。身近なオープンスペースや自然とふれあう機会の減少や直接体験が減って仮想体験が増えてきたことなど都市環境や情報環境の変化も、こどもの成長にとって必ずしも好ましく作用しているとは言いがたい状況にあります。

 これらの環境の変化から、こどもたちのすこやかな育ちの上でのさまざまな課題が生じており、この点について国においても「危惧されるこどもの育ちの変化」として次の6点を指摘しています。

 ・基本的な生活習慣の欠如  ・コミュニケーション能力の不足

 ・自制心や規範意識の不足  ・運動能力の低下

 ・小学校生活への不適応   ・学びに対する意欲・関心の低下

 (中央教育審議会答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」 平成17年1月)

 もちろん、今日のこどもたちは、一律にこうした否定的な側面ばかりではなく、一人一人のこどもたちは、素直であったり、発想がユニークであったり、元気でけなげな面をもつなど多様な個性をもっていることは言うまでもありません。しかし、育ちの上での全体的な傾向として上記の指摘がなされていることに対する対応は喫緊の課題です。

社会の新たな変化への対応

 もうひとつの背景は、これからの社会では、グローバル化の一層の進展や、これまで以上に知識が社会・経済の発展基盤となっていくとされる中で、自分の思いをしっかりと主張しながら多様な他者と共存する力や、多様な体験を自分なりに意味付けて自ら学び、柔軟な応用力をもって行動していく力など、社会の新たな変化に主体的に対応していくために必要な力の基礎づくりがますます大切になりつつあることです。

 これらのふたつの背景への対応は、前者がかつては保たれていた養育機能の再生にかかわるものであり、後者がこれからの社会への積極的な適応にかかわる側面をもっていますが、両者は決して切り離れているのではなく、一体的に取り組んでいくことが必要です。また、ともに就学前期だけで解決する課題でないことは言うまでもありませんが、生涯にわたる人間形成の基礎づくりの時期として、就学前期からこれらの課題を視野に入れて、こどもの発達過程に応じた取り組みを進めていくことが重要かつ効果的です。

就学前期のこどもの育成への注目の高まり

 以上の背景のもとで、近年、全国レベルでも就学前期のこどもの育成への注目が高まっています。先にも引用した平成17年の中央教育審議会答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」では、保育所を含めた「幼稚園等施設」という表現を用いて、全ての幼児に対する幼児教育の機会の提供、発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実、幼稚園等施設による家庭や地域社会の教育力の再生・向上などを提案していました。平成18年の文部科学省「幼児教育振興アクションプログラム」では、目標の第1を「幼稚園と保育所の連携を一層促進するとともに、幼稚園と保育所とで区別なく、小学校就学前の子どもの育ちを支える体制を整備する」としています。

 同じく平成18年に改正された教育基本法では、(幼児期の教育)という条文が新設され、「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものである」と規定されました。同法の改正を受けた学校教育法の一部改正においても、幼稚園に関する条項が重視され、幼稚園が義務教育およびその後の教育の基礎を培うものとして明確に位置付けられました。

 平成20年3月に告示され、21年度から施行、適用される新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針においては、ともに地域における子育て支援の一層の充実が求められているとともに、前者の幼稚園教育要領では、幼小の接続と連携の重視、食育を通した望ましい食習慣の形成、協同的な経験やコミュニケーションにかかわる力をはぐくむことの重視など、保育内容面での加筆・強調と、預かり保育の適切な位置付けなどを織り込んでいます。

 一方の保育所保育指針では、従来の通知から厚生労働大臣告示とされたことをはじめ、発達過程の把握による保育の実施、養護と教育の一体的な実施、健康と安全のための体制の充実、小学校との連携、保護者支援、保育の質の向上に向けた取り組みの強調など大幅な改訂が行われています。

 さらに、平成20年12月に策定された「青少年育成施策大綱」においても、乳幼児期に「人間への基本的信頼と愛情を育てていく基礎となる親や特定少数の人との強い情愛的絆を形成するとともに、複数の人々との多様なかかわりを通じて認知や情緒を発達させ、人格を形成していくこと」が重要であるとし、子育て支援の充実と、多様な体験機会の提供などの幼児保育・教育の充実などを掲げています。

就学前児童健全育成の今日的な主要課題の解決に向けて

 以上の背景と動向を念頭に置くとき、就学前児童健全育成の今日的な主要課題の焦点として次の3点が浮かびあがります。

  (1)    就学前にはぐくみたい「生きる力の基礎」の育成

  (2)    発達と学びの連続性を踏まえた学齢期への円滑な接続

  (3)    家庭の子育て力、教育力の向上に向けた支援

 本プログラムでは、(1)に関しては、「生きる力の基礎」として何をめざすのかについて、5つの切り口に沿ってそれぞれ乳児期、幼児前期、幼児後期の成長期ごとに「こどもの姿」「こどもへのかかわり」「(かかわりの)具体例」を示すとともに、(2)にかかわっては、どのような力を身に付けて学齢期を迎えることをめざすのかについて、「就学直前にめざす姿」を合わせて提示しています。(3)については、「保護者の方に伝えたいメッセージ」として、保育所、幼稚園、在宅子育て支援関係機関が就学前児童を育てている保護者を支援する際に留意してほしい視点を提示しています。(2章)

 また、これらの視点を踏まえた具体的な取り組みについて、機関や家庭で活用していただける「具体的プログラム」を掲載しています。(3章)

 今後、各現場での創意工夫を生かした活用を通して、実践から得られる知見などをフィードバックし、プログラムのより効果的な活用に向けた改善や、新たな知見などを加えた充実を図っていきます。

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