ページの先頭です

木造十一面観音菩薩立像(天龍院) 1躯

2019年1月9日

ページ番号:8872

木造十一面観音菩薩立像

もくぞうじゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう

分野/部門

有形文化財/美術工芸品〔彫刻〕

所有者

宗教法人 天龍院

所在地

大阪市天王寺区城南寺町

紹介

木造十一面観音菩薩立像 写真

 天龍院は天正14年(1586)に創建された浄土宗の寺院である。
 
 本像は境内の観音堂に安置される等身大の像である。
 
 宝髻を結う。天冠台は列弁帯によって構成され、漆箔で覆われる。宝冠を着す。地髪部は平彫で、正面のみ毛束を非常にまばらに彫出する。群青で彩色される。鬢髪が一条耳朶にかかる。耳朶は不環である。宝髻の上に頂上仏を、地髪部の正面に阿弥陀如来の化仏を、宝髻の縁に頭上面を三面、その左右に三面ずつ六面、さらに地髪部の背面の中央に一面を配する。頂上仏、化仏、頭上面は金泥と群青で彩色される。
 
 白毫相は水晶を嵌入する。彫眼像であり、眉、眼の稜線、口髭は墨によって表す。目尻はやや上がり、鼻筋は鋭く通る。頬は張りがあるが少し扁平である。下顎が楕円状に突き出ている。鼻孔は彫出される。頚部には三道相があらわされる。条帛、天衣、腰布、裙と瓔珞を着す。腰をごくわずかに左に振り、体を少し右側にひねって、両足を揃えて蓮台上に立つ。
 
 肉身部はすべて漆箔で覆われ、衣部は現状では素地を呈する。宝髻から両足首まで頭体を通して一木から彫出し、材は節の多い檜を用いている。木心を体内にこめ、内刳はない。頂上仏、化仏、頭上面、右手首先、右肩から膝上に垂下する天衣の遊離部分、両腕から体側に垂下している天衣、両足先は別材による。面相部は耳前から別材を補っている。左肩先は本来は根幹材と共木であるが、現状では割矧いでいる。左臂先と、左肩後方から上腕部にかけては別材による。右肩先も根幹材と共木だが、左肩先と同様に割矧ぐ。
 
 形式的には通規の十一面観音像で、当初は彩色像であったと思われるが、彩色の痕跡は全く残らない。面相部の前面をはじめ後補部分が多く、素地を呈する下半身も摩耗が著しいが、一木造による彫像特有の豊かな量感を示す、堂々とした像である。両肩先まで根幹材と共木で彫出している点が特徴的で、像全体を一本の木から彫出しようというこだわりが感じられる。おそらく神木など、特別な木を用いて造立されたのではないだろうか。
 
 内刳を施さないという構造は古様を示している。他方で、摩耗の影響はあるが、脚部の衣文の彫りは浅く、穏やかである。また、厚く量感のある胸部や臀部に対して、腰をかなり大胆に絞って、さらにわずかに左に振る動きのある表現をとる。以上のことを勘案すると、制作年代は11世紀代から12世紀前半と思われる。
 
 この像の制作年代は本院の創建、天正14年(1586)よりはるかに遡り、伝来の過程は不明である。境内に別に堂を設けてまつっていることから、周辺にあった古堂にまつられていた像を、客仏としてまつってきたのかもしれない。
 
 市内に残る平安彫刻の中でも古様を残す事例である。

参考文献

『大阪市内所在の仏像・仏画 天龍院十一面観音菩薩立像について』(大阪市教育委員会2001年)

 

⇒「大阪市指定文化財(平成14年度)」にもどる

探している情報が見つからない