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木造十一面観音菩薩立像(専念寺) 1躯

2019年1月9日

ページ番号:8969

木造十一面観音菩薩立像

もくぞうじゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう

分野/部門

有形文化財/美術工芸品〔彫刻〕

所有者

宗教法人 専念寺

所在地

大阪市東淀川区小松3

紹介

木造十一面観音菩薩立像 写真

 専念寺に伝来する3躯の古仏のうちのひとつで、脇堂に安置されている。3躯のうちでは最も制作年代がさかのぼる仏像で、同じく脇堂に安置される木造大日如来坐像とともに、このあたりにあった大寺院である三宝寺の旧仏と伝えている。

 両腕を除いた髻頂から両足先までの本体のほとんどすべてと、両足先に挟まれた台座の一部を檜の一材から彫成した一木造の彫眼像である。像を厨子から出して調査することができなかったため背面の観察が不十分ではあるが、背刳りはないものと思われる。また、干割れの様子から、木心は像の中心の後ろよりに籠めているものと推定される。頭部前面部を中心に上半身部分に朽損が特にみられる。頭部前面部では、朽損の大きな部分は埋木によって、表面の荒れたところは木屎漆によって修理をしている。全身に干割れと虫損及び風食がみられ、彩色は剥落して、現状では素地を呈する。上半身に比べ、下半身の保存状態は良好である。

 技法的には、本体のほとんどすべてと台座の一部を一材からつくるという点に特色がある。この構造は、奈良時代の一木造の作例にみられるもので、古様である。また、両脛にみられる翻波式衣文は、平安前期の特色の一つである。他方で、抑揚を控えた静的な表現が面相部や衣文にみられることは、和様化が進んでいることを示している。

 専念寺像の肉身表現に近い基準作例としては、寛弘3年(1006)造立の京都市同聚院の木造不動明王坐像や、寛弘9年(1012)造立の京都市広隆寺の千手観音菩薩坐像があげられる。総じて豊満な姿をとりながら抑揚を控え、ゆったりとした質感が特色である。専念寺像との類似性を指摘できる。広隆寺像は顎が小さく、やや小顔であるのに対して、専念寺像の頬は充実してより定朝様に近いことを勘案すれば、専念寺像の制作時期は11世紀前半から中頃と推定することができる。古様を残す一木造の像で、市内に残る平安彫刻の中では特に古く、代表的な作例といえる。

用語解説

彫眼像(ちょうがんぞう) 彫像の眼に水晶などの別材をはめこまず、彫刻のみで眼をあらわすもの

参考文献

『専念寺の仏像について』大阪市文化財総合調査報告書 21(大阪市教育委員会 2000年)

 

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