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【第21号】「ライフステージに応じた支援~発達障がいのある子どもたちとその家族とともに~」神戸大学大学院保健学研究科教授 高田 哲

2019年3月20日

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あじさいキャンプ(自然体験型プログラム)~日帰りのプレキャンプ~


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「ぼくが一番」と乗り物の大好きなSが大急ぎでカヌーに走っていく。「足、お尻、足」と大きな声をあげて、教えられた動作を確認しながら一人用カヌーに乗り込む。朝の雨模様がまるで嘘のように真青な空が広がっている。暑い夏の日差しが降り注ぐ中、パドルが水しぶきをあげる。

 あじさいキャンプは、神戸大学、兵庫教育大学、関西国際大学の3大学と親の会、神戸市体育協会、及び神戸市発達障害者支援センターの連携の下、2年前に始まった。摩耶山にある“自然の家”を利用した発達障がいの子どもと家族のための野外活動プログラムで、日帰りのプレキャンプと1泊2日のチャレンジキャンプからなっている。

小学3年生から中学生までの子どもが対象で、今年は18組の申し込みがあった。穂高湖に浮かんでいるのは、子どもたちが大学生のボランティアと一緒に艇庫から運んできた20艘以上の一人用、二人用のカヌーだ。コンゴ―レッド、マリーンブルーなど色とりどりの救命胴衣を付けた子どもたちが次々とカヌーに乗り込んでいく。

昨年も参加した小学5-6年の子どもは一人用のカヌーに、初参加や1人で乗るのがまだ怖い子どもたちはボランティアや家族と一緒に二人乗りのカヌーへと乗り込む。20数人の大学生は、野外活動リーダーとして、キャンプファイアー、飯盒炊さん、カヌー、アーチェリーなどの研修を受講し、さらに、発達障がいについての基礎と対応法を学んできた。連続してキャンプに関わってきた学生も多く、子どもたちにとっては頼りになるお兄さん、お姉さんだ。

今年、参加した子どもたちは、例年にもまして男の子が多い。紅一点のYはお父さんと一緒に二人乗りのカヌーに泣きそうになりながら座っている。湖上を吹きぬける風がやさしく彼女の髪の毛を揺らす。少しずつ表情がほぐれ笑顔が戻る。湖の上で一時間、すっかりパドルさばきも上手になった子どもたちが順番に岸へと上がって来る。

子どもたちは、そのまま大学生たちと体育館に集合。

保護者同士の情報交換と気持ちの共有~日帰りのプレキャンプで話し合ったこと~


 保護者は、別室で自己紹介とともに、夏休みをどう過ごしたかについて話し合う。「電車が大好きな小学6年生の長男に一人旅をさせました。博多までの往復切符を渡したところ、1人で新幹線に乗り博多駅で30分下車して帰ってきました。お土産まで買ってきました。」との話に思わず歓声。「夏休み、我が家だけで通用する紙幣を発行しました。単位は億です。時間どおりに朝起きて、予定どおりに宿題をしていたら1億ご褒美という具合です。子どもも、“1週間で3億貯まった”と大喜びでした。こちらもとても気が大きくなりました」とサンプル紙幣を示しながら話す別のお母さん。

話題が学校のことになるとがぜん勢いが強くなる。「今の先生、最悪です。一年耐えるしかないと思っています。」とあるお母さん。「うちの先生も最初、何もわかってなかったのです。親の育て方が悪いといわんばかりの態度でした。しかし、一年間、Mと一緒に付き合っているうちに変わりました。今では、親の気のつかない点まで配慮してくれます。」と別のお母さん。「きっと、お母さんが上手にほめてくれたから教師も育ったのでしょう。教師も子どもと一緒。“先生のおかげで変わりました”などとほめられると嬉しいのです。」と教育委員会から来たベテランの先生。


 次は、10月のチャレンジキャンプ。去年は子どもたちがぐっすり寝静まった後、午前2時頃まで保護者の話し合いは続いた。「皆で、学校の先生と行政担当者の勉強不足について話していたら盛り上がって。」と眠そうな顔のお父さん。ボランティアで参加した市の係長さんが、「私はほんとに居場所がなくって少し早めの12時に寝ました。」と言って皆で大笑いをする。「年に一回、キャンプで同じような悩みを持つ人や立場の違う人と一緒に話をする。一年間の元気をもらうような気がします。」と3年連続で参加しているお母さん。「私の子どもが小さい時は、一人だけで悩みました。でも、子どもと過ごす中で本当に多くのことを学びました。成人になった彼は、元気に働きに行っています」と親の会を主宰するお母さんからのメッセージ。

子ども達と家族をコミュニティ全体で支える


 発達障害は、(1)自閉症スペクトラム障害(自閉症、アスペルガー障害、その他の広汎性発達障害)(2)学習障害(LD)、(3)注意欠陥・多動性障害(ADHD)など先天的な脳の機能の障害と定義されている。原因は多様でいくつかの症状が併存することも多い。子ども達の状況も一人ずつ異なっており、子どもの特性にあった指導が重要である。子どもたちは、対人関係が不器用で集団行動が苦手であるが、一人ひとりを見ると年とともに確実に発達している。家族や支援者にとって必要なのは、現在の発達状況を正しく評価し、適切な課題を設定することである。

  私はいつも外来で「定型発達の子どもたちは自ら育っていき、それに対応しているうちに“親”になります。しかし、発達障がいの子どもの場合は、発達についての十分な知識を持った上での対応が必要です。つまり“知識を持った子育て”が要求されるのです」と話している。


 課題はライフステージによって変化する。幼児期ならば、“子どもが理解しやすい環境づくり(構造化)”が中心だが、年齢が進むにつれて、“ルールを守る、友達と気持ちを共有する、自分で決定する、自分自身に誇りを持つ、”などが重要となる。同時に、家族、支援者が各々の立場で理解を深めていくことが大切である。

 大学生のボランティアリーダーは、「この子たちと触れ合うまで、“変わった子ども”という印象を持っていましたが、どの子も純粋で本当に素敵です。チャレンジキャンプはもちろん、来年、大学を卒業してもボランティアに来ます。」と言う。保護者は、子ども自身の問題より周囲の人々の無理解に苦しむことが多い。保護者同士で様々な情報を交換し、自分の気持ちを言葉に出して語る時、心の中に自分自身を冷静に見つめるもう一人の自分が誕生する。余裕とユーモアこそが子育てを楽しくする。家族を支える人は専門家だけでは足りない。自分と異なった生き方も受け入れるという社会全体の意識改革が必要である。

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