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市長との意見交換会(平成24年1月10日)

2022年9月1日

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市長との意見交換会(平成24年1月10日)

・平成24年1月10日(火曜日)10時~12時15分 於本庁舎5階大応接室

 橋下市長

 矢野委員長、長谷川委員、佐藤委員、勝井委員、高尾委員、永井教育長

 

 矢野:武庫川女子大学大学院に勤務。昨年の11月より教育委員長を務めている。市長の教育に対する思いを聞かせていただきたい。

 長谷川:エール学園で専門学校を経営している。

 佐藤:サントリー文化財団に勤務。現代の成熟社会で子どもたちがどのように生きていくか、新しい時代にどのような人を育てるかということを研究している。学校の先生方をいかに元気づけるかをとりあげたい。

 勝井:弁護士をしている。子どもの事件をやりたくて弁護士になった。教育をいいように変えていきたい。子どもたちが自信を持って成長できるようにしたい。

 高尾:みなさんと違う観点で述べる。選挙の出口調査で教育基本条例に賛成の人が20代~30代のうち6割いて、反対する人の倍であった。教育委員会としてこれまで何をしてきたのか。市民の声を聞けていたのか。教育委員会では実質的な討議がなされてきたのか。教育委員会会議は市民の傍聴者が少なく、教育委員会の形骸化ということが言われている。想像力と創造力が欠如しているからではないか。継続性と一貫性という理念が光を失っているのではないか。今は対立は終わった。あるのは子どもの教育のためにいいものを作っていくということ。プラトンは、健全な国家は、政治的な権力と哲学的な精神が一体化してはじめて成立すると言っている。今がそのときである。様々な英知を結集して進めていく。本日をいい出発点としたい。

 橋下:日々教育行政にご尽力いただいていることに感謝したい。政治家はそれまでの連続性・一貫性の中に問題があれば、舵を切っていくことが役割である。行政は一定の方向性に向かって一貫性を持ってすすめることが求められる。これまでは政治が方向性を示さなかったので、行政が一貫してやってきたことが正しいとされてきた。継続性や一貫性は、あらかじめあるべき姿、規範が設定されることによりはじめて価値が生まれる。これまでは政治家が方向性を示さないまま、行政の一貫性を至上のものとしてやってきた。教育基本条例はこれまでの教育行政の対極にある。ただ、中身はないので、これから府市統合本部で議論する。教育基本条例により、これまでの教育委員会の在り方について問うた。一貫性、継続性ということについて、これまでどおりということは許されない。細かい教育内容に政治は口出しすべきでないので、教育行政と政治はきちんと分離すべきである。府教育委員は教育の専門的知見をもって僕と議論すべきだったのに、府民へ直接働きかけたのは政治への関与である。政治は負けたら責任をとるべきである。これまで政治と行政が明確に区別されなかった。教育委員会であっても、当然民意に従うべき。今回の民意は、これまでの教育委員会制度にNOをつきつけたということを理解していただいて、これからよい方向に考えてほしい。それが嫌なら選挙で民意を問うてほしい。前市長とはどれくらいの頻度で議論していたのか。

 永井:毎年予算をめぐって意見交換をしていた。

 矢野:頻度は年に1回である。

 高尾:私はまだ1回も意見交換したことがない。

 橋下:これこそ形骸化の最たるものである。私は府教委と何度も公開で議論した。メールでのやりとりも頻繁にしている。タウンミーティングは開いているのか。

 永井:開いたことはない。

 橋下:ではどうやって保護者の感覚を感じ取るのか。

 矢野:学校現場を訪ねて、自分の目で学校の様子を見て、校長や教職員の話を聞いて、現場の状況を感じている。

 橋下:学校サイドの価値観と保護者の価値観ではずれがある。学力テストの市町村別公表について教育委員会は一斉に反発した。保護者は公表を求めている。しかし、教育委員会は序列化をあおるなどを理由に拒んだ。条例は保護者の感覚を注入するのが主眼である。学校はこれまで供給者側で進めており、今後はユーザーサイドの声を入れるべきである。教育委員会制度が破綻している。教育現場は保護者の要求を実現していない。学力テストだけでなく、英語教育についても同様の問題がある。皆さんがたてた目標の正当性はどのように担保するのか。

 長谷川:私も教育をやっている。クラスを見ればすべてわかる。保護者より子どもの方が大事である。学校へ行って子どもの顔を見ることが大事だと考えている。

 橋下:今の大阪市の教育状況と直面している課題、目標について教えて欲しい。

 長谷川:マネジメントが機能していないことが課題。市長のおっしゃるところと着地点は近いと考えているが、私とは仕組みと方法論が異なる。

 橋下:国際化の視点が大事。僕が府知事になるまで、府では国際化という視点がなかった。今大阪の子に何をしてあげなければならないのか一致しないと政策を打ちようがない。何をするべきと考えているか。

 長谷川:うちの学校は留学生が多く、国際化は必要だと思っている。

 橋下:なぜ国際化が必要か。

 長谷川:今の弱い状況では駄目。しっかりとした競争力が必要である。

 橋下:それは全委員で一致した意見か。

 高尾:私は減災教育、グローバル教育、キャリア教育。とりわけ減災教育が一番重要であると考えている。子どもの命に関わる問題である。防災基本計画の中に災害時の児童生徒が中核的な役割を担う旨明記すべきであり、予算もつけてほしいと言っているが、なかなか実現しない。

 佐藤:私は多様性の中で選択できる力をつけることが大事であると考えている。それは私たちの世代では経験のないことである。今の子どもの悩みは多様な選択肢がある中で選べないということである。それをどうエンカレッジするか。自分の意見を言えるとか、他者とコミュニケーションをとれるとか、家庭状況が厳しくても外で色々な仲間を作っていけるとかいった状況の中で、学力も上がっていくと思う。問題のある地域であっても頑張っている学校はある。

 矢野:昨年教育振興基本計画を策定した。「ええとこのばそ」という合言葉で子どものいいところを伸ばす教育に主眼を置いている。学校だけでなく、地域の力などいろんな力を結集して子どもを育んでいくというプランを作っている。これに関わっては何度も議論して、パブリックコメントも行い、市民の声を取り入れながら半年以上かけて作り上げていった。議論の中でずいぶん委員の意見を反映してもらった。計画は大きなところで市民の思いとずれていないと思う。学校現場を見に行ったときに、校長室にPTAの役員が頻繁に来たり、歴代PTA会長の写真が飾ってあったりする学校があり、地域が学校を見守り、校長に働きかけている学校はうまくいっていると感じた。地域社会の力を借りて教員が元気になり、子どもがいきいきと育つような環境でやりたい。グローバル社会には対応しないといけない。日本の人が海外の人と伍して負けないということと、海外からも人々に来てもらわないといけないということがある。今後ますます多様性は高まっていく。国籍、文化、宗教の違う人たちの教育も保障しなければならない。

 勝井:それぞれの子どもが認め合えるような教育を目指したい。しんどい家庭環境の子どもを支援したい。スクールソーシャルワーカーの配置について言い続けているが、なかなか増員など実現していない。スクールローヤーなど弁護士が学校に入っていって調整を行うことも重要。それと学力問題については、基礎的な能力を身につけてほしい。点数よりも、子どもが互いに教えあうことや教員の指導力育成といった、下支えという点に目を当ててやっていきたい。

 橋下:教育委員会制度の問題がある。教育委員は首長に並ぶ最高責任者である。しかし、意見を言うだけの立場になっている。言っているだけで実現しないというのはあり得ない。教育委員会がご意見番になっている。今のような非常勤で低報酬では絶対に無理である。大阪市教育委員会は教員12,000人を率いる大組織である。市長は4万人の組織を動かすのに毎日朝から晩までつきっきりでやっている。教員が言うことを聞かないなら人事権を発動すればいい。人事権はみなさんが持っている。皆さんが掲げた目標はいつまでに実現するのか。

 高尾:教育の責任のあり方について現状の問題点を解消するには、教育委員会の公選制もしくは首長部局化のどちらかしかない。私としては首長部局化すべきであると考えている。

 橋下:それが教育基本条例である。

 高尾:そこまで踏み込んでいるようには見えない。

 橋下:教育委員会として教育目標がまとまっていない。教育振興基本計画は責任の所在が曖昧になってしまっている。大阪の子どもに就職できる力を持ってもらう。新卒の就職率が6割を切った。とんでもない状況である。就職できる能力の中で国際化がある。それともう一つ、少年犯罪率が高すぎる。規範意識をどう持たせるかが課題である。それをどう教育で押さえるか。この2点を目標に掲げたい。教育委員会がどう目標を立てたのか。制度上の欠陥がある。

 長谷川:今私は事務局とマネジメントプロジェクトを進めている。教育委員会が学校に示している学校教育指針がどの程度学校に浸透しているのか知りたくて校長の話を聞いている。話を聞いているといい面と悪い面があるというように思った。ある学校では50年間芯の強い子という方針を掲げ続けていた。地域文化に根ざしているといういい点と、全然変わっていないという悪い点がある。私は、学力向上については数値化すべきと考えている。それと地域に根ざした教育の2点を目標にしてやっていきたい。

 橋下:なぜ今は学力テストを数値化していないのか。

 永井:学力テストについては、全国平均を目標としている。

 長谷川:正答率と関わって、生きる力をどうとらえるか。学力はその一つと私はとらえている。数値のないマネジメントは意味がない。学力は数値化すべき。それと地域の中での教育。こちらは数値化できなくていいと考えている。地域文化を大事にする仕組みがあればよい。今は調査段階なので、提案できるまでは至っていない。教育委員会の形骸化については、対処できると私は考えている。入り口である目標と出口である評価をしっかり議論すれば、今後も教育委員会制度で十分やっていけると考えている。着地点は市長と一緒だが、方法論は違うと申し上げた趣旨は、D評価を2年連続でとった教員を排除するということや、学校をなくしていくということであり、性悪説の考えは教育の世界ではなじまないと考えている。教育は性善説でやっていける。なでしこジャパンは支援しあったからこそ厳しい状況の中でやっていけた。

 橋下:具体的にはどういうことか。

 長谷川:D評価の教員を排除するのではなく、エネルギーをかけて支援していくことが必要だと考えている。

 橋下:D評価が2回連続続いた教員をどうしていくのか。異動させるのか。

 長谷川:異動させて支援すればいい。

 橋下:ではやってもらいたい。

 長谷川:調査検討をすすめ提案していきたい。

 橋下:中学生は3年で卒業してしまう。子どもは学力面において、小学校3年から4年でつまづくことが多い。子どもの教育にとって1年は大きい。その1年どうするのか。行政の理論ではだめである。D評価の教員に対して何年もかけてというのはだめである。それでは子どもに向き合っていない。スピード感がなさすぎる。教育基本条例に対する認識も薄い。条例は2回連続したら指導研修を受けさせるとなっている。長谷川委員の考えと一緒である。今も指導研修はあるが、その対象となっている教員の数があまりにも少なすぎる。教育委員の感覚は市民からずれている。民意が入っていないから入れようとしているのである。5%はD評価というのが保護者の感覚である。子どもや保護者に指導力不足教員の申立権を与えるのなら5%にはこだわらない。教育委員会が把握している数が少なすぎるというのが保護者の認識である。

 長谷川:排除する論理が前に強く出ることに危惧しているのであって、私もパーセントにはこだわらない。

 橋下:タウンミーティングをしていないから保護者の感覚とずれている。D評価を2年連続取るというのはよほどひどい教員である。5%×5%で2.5%しかいない。保護者はもっと厳しくしてほしいという意見であるのに、教育委員会は選挙がなければ変わらない。

 高尾:非常勤では無理である。区ごとに支部を置いて、区長や保護者、地域、児童生徒で実質的に教育を決め、支えていく。一方で大阪都なりの教育委員会では大局的な判断や支部の支援をしていく。教育委員会の機能を2分化していくのが問題を解決する手段と思う。

 橋下:市の学校の数525校を6人で所管するのは無理である。それだけの数の小中学校をサポートすることなんかできない。コントロールの範囲を超えている。その認識はあるのか。統廃合は切捨てでない。どの価値観を優先するのかの問題。子どもか地域コミュニティのどちらを重視するかである。学年に1クラスでは体育や運動会ができない。子どもを集団で生活させることが必要である。この問題についてどうするのか。

 矢野:教育委員会の基本方針は出ている。小規模の学校は望ましくないとしている。ただ、子どもだけでなく地域のことも考えていかなくてはならない。確かに時間がかかりすぎているという思いはあるが。どう迅速に進めていくか知恵を出す方法はある。

 橋下:みなさんは執行機関だから方針を決めたらやらなければならない。住民を説得して動かすには政治の力が必要である。今の教育委員会は政治が入れない。議論があると言って何も進んでいない。

 矢野:執行責任を持ちながら進まないもどかしさはある。現行制度の仕組みの中で我々は任命されており、そのことに賛同してここにいるという理解である。教育委員は与えられた枠組みの中で教育の充実に努めるということである。非常勤という制約はあるが、精一杯やっている。

 橋下:現行制度の枠内でやるというのはその通りである。しかし、現行制度でいいのかどうかを判断するのは政治の役割である。僕は制度論をやりたいので、文部科学省とけんかしている。教育目標を市長が定める。教育委員の罷免含めぎりぎりのところで提起している。条例は政治マターが多く、教育の部分まで踏み込むつもりはない。政治マターと教育マターを切り離す。僕は制度を変えていこうとしている。

 高尾:経済格差について留意してもらいたい。経済格差に学力は比例する。東京で調査した結果が出ている。金持ちの子どもはいつまでも金持ちで、貧しい人の子どもは貧しいままということがないよう、社会的流動性を活性化し、アファーマティブアクションをしなければならない。しんどい地域に対して特段の配慮を行い、子どもたちに自分でもできるんだという気持ちを与えるよう考えてほしい。

 橋下:そのとおりで、僕は府で私学助成をした。私学の授業料にも上限を設定し努力してもらった。経済格差が学力格差につながっている。アファーマティブアクションは言うのは簡単だがやるのは大変である。私学助成には150億円かかった。いろいろなお金を削ってようやく実現した。

 高尾:お金をかけないやり方はいくらでもある。例えば学校選択制などはそうである。

 橋下:小中学校ではそうであるが、高校は授業料の問題がある。昨年の結果として、公立から私立に4,000人流れた。小中については、優先順位をつけ塾代の助成の制度を考えてほしいという指示を担当部局に出した。これも財源を用意しなければならない。言っているけどできないというのはお金を持ってくる権限がないからである。財源に対する権限と目標に対する権限を一致させないといけない。地教行法では権限が分散化している。それを大阪市から変えていきたい。

 矢野:目標設定権と予算権を一致させるという趣旨はわかるが、地教行法はそれを分けることに価値を置いている。現行法の考えに基づけば、市長と教育委員の話し合いで合意に基づいて目標を設定すれば十分にできると思う。話し合ったときに大きな違いがあって歩み寄れないということはないと思う。

 橋下:議論による合意も大事だが、現状では決定できる仕組みがない。合意という名の下に責任をとらない。合意が得られないときにやる方向にしないと意味がない。教育の内容について僕は口出しするつもりはない。評価、選択制などの制度について、議論はするが、我々は24区を回って1回2時間かけて議論した。みなさんにも同じことをしてもらわないと議論の土俵に乗れない。できないのならこちらで決めさせてもらう。権限と責任をどの分野でどちらが負うか。教育の内容について僕は負うつもりはない。指導力不足教員としての研修対象者が少ないと言う点については政治マターとして関わらせてもらいたい。戦前教育と言うが、僕に戦争はできない。時代が変わっていく中で第二次世界大戦を引きずって教育行政を行っていては、時代についていけない。そうこうして3年かけて議論している間に子どもは卒業していく。仕組みを変えていかなければならない。

 長谷川:私が心配するのは、これまで政治家がしたこと、例えば、ゆとり教育、これはとんでもないことをしてくれたと思ったが、そういうことが行われることである。明確に分けてもらいたい。今は市長と着地点は変わらないので大丈夫だと思うが、市長が代わって、異なった考えでそういうことをやられたら困る。

 橋下:ゆとり教育は政治でなく文部科学官僚がやったものである。今の成熟した日本では何が正しいかは有権者に委ねるべきである。これまで教育は専門家が考えたことが正しいということだった。専門家と有権者の声をミックスしてやるべきである。レイマンコントロール、非常勤、低報酬ではできない。公選もしくは常勤、高額報酬。僕は公選については反対。予算を分けられるのなら公選でもいいが、現状では無理。選挙で選ばれた者が権限を持ち、教育マターについては教育委員会の意見を聞かなければ物事を動かせないというように整理すべき。最後の責任を有権者が負うというのが僕の持論である。

 高尾:世界平和研究所が出した提言が参考になる。

 橋下:首長だけが教育を語るわけにはいかない。教育マターについて、首長の歯止めがかけられるような仕組みがいる。学校選択制や統廃合は政治マターである。行政では進めるのは無理である。

 佐藤:条例は政治だけの問題ではない。それをどう緩和していくか。分かれているようで重なっている。

 橋下:その通りである。ある意味挑戦である。専門家があれだけ反対した条例を6割の人が賛成している。ただ、あのままは進めないので府市統合本部で議論する。

 佐藤:個人から見た場合と全体で見た場合をきちんと区別しておかなければならない。

 橋下:条例について教育委員会は勉強不足である。Dが2年連続しても即免職ではない。首長が全部学校現場に介入すると言うのも間違いである。教育委員会の権限を地域、保護者に取り戻す。学校の運営目標は地域、保護者と一緒になって決める。現在学校ではマネジメントが回っていない。府立高校では設定した運営目標に対しPDCAサイクルをまわしており、教員の評価は運営目標に従って、保護者の参画のもと行われている。ある事例として、土曜日に補習をしようとした先生がまわりの教員から、自分たちもやらなければならなくなるからやめろと言われたとメールが来た。また、内申書が手書きになっており、パソコンが使えない。内申書が相対評価になっているのは大阪だけである。教員に相対評価を入れるのは反対で、子どもたちは無理に割合で振り分けられている。こんなおかしいことはない。教員の身分保障について性悪説はだめで、子どもたちに対してはいいというのはおかしい。こういうことは僕が言わないと直らない。マネジメントとはこういうことである。これを教育委員会に負わせるのは違うと思う。今言った内容はある意味政治マターである。すべて教育委員会が負うことになっているが本当にできるのか。

 矢野:教育委員会と政治の緊張関係、区分けは大事である。地教行法のもとで学力テストが行われ、大阪市は低迷しているが、上位の県は学校が元気であり、子どもや教員も元気である。そういう学校に対しては教育委員会が援助している。文部科学省、都道府県、市町村のレベルがあるが、その関係は指導、助言、援助である。上位の県は学校が働きやすいような援助がうまくいっている。援助をどう充実させるかで学校は変わってくる。厚生労働省がセーフティネット補助事業として200億円予算措置し、その一環として生活保護世帯に対して学習会を行い、進学を支援する事業がある。それなりの成果が上がっているとのことであり、話を聞いたら、教科の勉強をさせるよりも、子どもといろいろな話をすることが大事であり、そうすると学校や家庭に居場所がない子どもにとって、そこが居場所になり、それが大きな効果を生むと言っていた。こういうことの中に大阪の学力を上げるヒントがあると思う。

 橋下:それをうけて市では何をしたのか。

 矢野:最近聞いた話なので、今後具体化したい。

 橋下:地教行法は全国一律でうまくいっているわけではない。学力テストの上位は都市部ではなく、地域がしっかりとしており、規模も小さく、声が教育委員会に届きやすく、保護者の意見が反映されやすいという点で政治の力が働いている。秋田県や福井県では国旗国歌に反対する人はいない。全国学力調査で上位の秋田県や福井県は大学入試では順位が下がる。これは大都市部では格差が激しく、上位層はすごくお金がかけられている子が多いということである。大阪では公立小中をどう立て直すかが大事である。学力が高い層は私学へ行く。教育委員会や学校現場はいろいろ言うのに、自分の子どもは私学へ行かせている。いかに小中を立て直すかを考えてほしい。

 佐藤:困難な学校の子どもは人間関係に飢えている。先生に自分の方を向いてほしいから、問題を起こす。家庭の問題を学校に持ってきているのである。また、教員へのパソコンの普及率が3割であるが、これは民間ではあり得ない。事務を効率化して教員が子どもに向き合う時間を確保するべきである。現在の学校は教頭が一番疲れている。教育に向き合えるよう支援をしていかなければならない。

 橋下:具体的にはどういうことか。

 佐藤:事務を担う管理職を置くとか、パソコンを一人一台与えるとかである。

 橋下:それは優先順位をつけて実施しなければならない。今学校がうまくいっていないのは校長に人事権がないからである。教員は校長や教頭の言うことを聞かない。校長に人事権がないから従わない。9割の先生は頑張っていると思うが、がんばるだけでなく、校長が決めた目標に向けて頑張るようにしないといけない。それを改めるのが教育基本条例である。学校を普通の組織にするための条例である。がんばってはいるが、組織としての体をなしていない。今は頑張っている教員に負担が集中する。若手中堅の人たちで秘密のチームを作って検討してもらっている。若手の中では不満が渦巻いている。若手の思いを汲み取って学校を変えていかなければならない。非常勤の教育委員ではそこまでできないので、僕に任せてほしいと言っている。

 矢野:指導主事やOB校長を現場に派遣して支援している。そういう人の話を聞いて間接的に現場の状況を把握している。ただ、直接話を聞く努力はしなければならない。

 橋下:今の待遇ではできない。

 勝井:ある高校へ行ったら、どうせ自分の学校はなくなると後ろ向きに受け止めていた。現場の子どもたちがどのように感じているかを考えて情報発信すべきである。今よりいい方向にするというのは賛成するが、努力してできなかったらどうするかという点を考えていきたい。

 橋下:政策を実施するのにはお金がいる。お金を生み出すために非常に努力している。優先順位をつけるのは政治の判断がいる。条例について、公立高校はなぜ生徒が集まらないと思うか。

 勝井:統廃合となると今いる子どもたちは辛い。学校が居場所である子どもも多い。

 橋下:今いる子どもたちが卒業するまではつぶさない。募集を停止するだけの話である。さきほど勝井委員が言われたスクールソーシャルワーカーの事業をするのにいくらぐらいかかるのか。

 勝井:必要となる経費の規模についてはまだつかんでいない。

 橋下:1校維持するのにどれくらいのお金がかかっているのか知っているのか。新しく事業をするにはそういう判断をしなければならない。生徒が集まらなかったら私立は廃校になる。だから必死で生徒を集めている。公立だけなぜ残す必要があるのか。高校では公立と私立の違いはない。役割が違うといっても、お金がある人は私立へ行く。僕の子どもは全員公立へ生かせている。僕にはこういう職についている責任がある。みなさんは公立の小中を立て直す責任がある。それが僕たちの厳しい立場である。

 長谷川:教育の内容の部分は教育委員会に任せるということだったので、一つは納得できた。性善説について、マスコミによって、イメージを持ってしまっているところはある。私は経営者なのでマネジメントの視点で見ている。競争原理で厳しい仕組みではなく、上の人が下の人を引っ張っていく仕組みという形で考えてもらえれば我々も十分やっていけると思う。

 橋下:府の教育委員と話をしてそういうことになった。教育目標の設定は知事が行うべき政治マターであり、それ以外の学校を運営していく目標は教育委員会及び学校が立てる。2つの条例に分けようということになっている。学校運営条例はマネジメントの問題。しかし、外の意見を聞いて欲しいということで、採用や評価には外部の声を取り入れるようにする。教育委員会の人事に介入するかというとしない。首長と教育委員で話をして、それを受けて教育委員会が行政を執行していく。首長が話をするのは教育委員までで、校長の任用も公募が集まらなければ内部でもいい。保護者の声を聞いて不適格教員を授業から外す。保護者の声でも極端な声は外して、平均的な声を拾えばいい。

 長谷川:保護者だけでなく子どものことをもっと言ってほしい。

 橋下:学校現場だけでなく外の人間にも子どもの顔を見てもらうべき。学校現場を外からの意見で評価してもらうのが大事。僕がなぜ教育にこれだけ必死かというと、今の僕があるのも教育をちゃんと受けさせてもらったからである。都市部の学校は格差があり、公立の小中はお金がなくて学力の低い子が集まっているから、学校が地域に縛られると格差が固定化する。現状として格差があるのは事実。学校選択制を認めずに指定した学校にしか行けないとなると、しんどい学校しか行けない子どもをどうしてあげるのか。しんどい学校にいろいろな要因があるのはわかる。しかし、保護者や地域が改善するのに何年かかるのか。今のままでは駄目である。公立の小中を引き上げるにあたって、底上げも重要だが、上を引っ張り上げることも重要である。大都市部の問題はお金のある子は私立に行っていることである。公立にお金をつぎ込んで、保護者に学校を選ばせてうまくいっている学校に入れてあげたらいい。教育でしか貧困の連鎖は断ち切れない。犯罪率が高いのは特定地域に固まっている。その連鎖はずっと続く。うまくいっている学校に行かせてあげて、また元の地域に戻してあげて、その地域を再生してもらう。それしか再生の道はない。

 矢野:本日は率直な意見を聞けて大変有意義であった。教育委員会との継続的な対話から形にしていくこと、我々がうけとめてやっていかなければならないことがある。今後も時間をとっていただいて、各論のことを形にしていくための場をもってほしい。

 橋下:条例のことがあるので、頻度を多く設定して欲しい。

 永井:本日の意見交換を手始めに教育委員会としても議論を進めたい。できれば教育委員会会議の開催日にあわせて議論の場を設けたいと思う。

 橋下:条例、学校選択制の話をしていきたい。喫緊の課題として統廃合の問題もある。教育委員会の制度論についても話をしたい。内申書の相対評価の件については市からも声を上げてほしい。定期テストもシステム化して学校間の差をなくすために統一して欲しい。現場では教材についてひどい格差がある。子どもたちへは機会を均等にしてほしい。

 永井:一つお願いがある。「学校はだめだ」という言い方ではなく、「このままでは学校はだめだ」という言い方にしてほしい。今学校に通っている子どもが自信をなくすような言葉は避けて欲しい。

 橋下:人と予算をつけるので、どうやってマネジメントしていくか議論させて欲しい。

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